アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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アーラシュが絡むと筆が進まない問題
神霊が多い……?(毒されてる感)


コスプレライダーちう2

「……はぁ」

 

スピカを見送った長谷川千雨は大きくため息をついた。

怪我をさせられたのも気にしていない様子だったのが幸いだったが、スピカがあっさり頷いてくれて助かった。

説得できなかったらライダーが何をするか分からなかったからだ。

 

とはいえ、ライダーもそれほど強硬手段に出ることはないだろうというのも長谷川千雨の予想である。

それは、黒い何かに向けられている感情を、スピカには向けていなかったからだ。

 

それはきっと敵意というもので。

そして殺意というものなんだろうと、長谷川千雨は思ったのだ。

 

 

 

「ところで、だ」

「なんだよマスター」

「ずっと疑問に思ってたんだが、()()は何だ?」

 

長谷川千雨の言う()()とは、今までライダーが斬り刻んできた黒い何かである。

言われるがまま連れられるがままだったが、今漸く状況が飲み込めるようになったのである。

 

「……()()()()()って奴さ」

「……」

「この目で見てきたからな。人間の悪意って奴を。それにそっくりだ」

 

嫌いなんだ、とライダー。

まるで自分のことを映し出されているようで。

 

「あんなもんがのさばる場所じゃねーだろ、ここはよ」

 

だから掃除してやってんだ。

ライダーは吐き捨てるようにそう言った。

 

なんだかんだ言って完全な悪人というわけではないらしい。

長谷川千雨はそう思いながらも、常日頃の傍若無人っぷりを見るに、完全な善人でもなさそうだとも思った。

自分の持つ領域を自分なりの法則で守っているような印象を受けた。

 

 

 

「ほら、帰るぞマスター。今日はもう出ねぇはずだ」

「ああ」

 

帰ろうとしたところで、唐突に爆発音。

音がした方向を見れば、どでかい穴の開いた女子寮が見えた。

 

「はぁ?!」

 

驚天動地とはこのことか。

それくらい驚いた長谷川千雨だったが、それ以上に驚くべきことを見てしまう。

 

「壁が……()()()()()()()()……!」

 

そう、壁がひとりでに直っていくのである。

まるで時間を巻き戻したかのように。

 

「こりゃあマズいな……」

「どういうことだ、ライダー?」

「あの女子寮が()殿()()()()()()()()()。あそこはもうキャスターの根城ってわけだ」

 

いつの間にやりやがったんだ、とライダー。

そもそも神殿化というのが分からない長谷川千雨は、その神殿化について聞こうとした。

しかし、口を開くその前に長谷川千雨はライダーに物陰へと引きずり込まれた。

 

「なにす……!?」

「黙れ。サーヴァントだ」

 

口を塞がれた長谷川千雨は、ライダーに促されるままに物陰から通りを見る。

すると、そこにはアーラシュがいた。

 

「おい、もしかして」

「ああ、あいつがサーヴァントだ」

 

まさかの真実というべきか。

スピカがいつも一緒にいたアーラシュがサーヴァントだったとは。

 

アーラシュは女子寮の方角を見て、世界樹の方へと向かった。

どうやら気付かれてはいないようだ。

 

「知り合いか?」

「私自身はあんまり知らねぇんだけど、さっき追い払った奴が知り合いなんだ」

 

まさかな、と小さくつぶやくライダー。

長谷川千雨が問いただそうとすると、ライダーはそれを遮る。

 

「追いかけるぞ」

「マジか」

 

放置すると何するかわからんとライダーの直感が言うらしい。

その直感に助けられたことはないが、それでもアーラシュを放置するのは危ないと感じた。

なので長谷川千雨は若干の不安を感じながらも追いかけることにした。

 

不安とはアーラシュのマスターがスピカだった場合だ。

そうなるとその真実を知ったアーラシュが報復にくるのではないかと考えているのである。

そうなる前に何とかしたい、というのが長谷川千雨の考えであった。

 

 

 

「ん、長谷川千雨君か。それと隣の子はサーヴァントだな」

 

即バレた。

しかも余裕なのか攻撃体勢もとっていない。

 

「ハッ。マスターもいないのに余裕面か!」

 

ライダーは宣戦布告だと受け取ったようだ。

今にも薔薇の剣を持って飛びかかりそう。

 

「まあ待て。お前達が黒い何かを倒して回ってるのは知っている」

「……それがどうしたってんだ」

 

ライダーの警戒度が上がる。

自分達の行動を把握されているわけだから当然と言えば当然だ。

 

「いや、むしろ続けて欲しい。魔法使い達も対応に追われているんだ」

「ふーん……」

 

ライダーが多少警戒を解く。

知っていて放置されていると聞いて、長谷川千雨もなんだかいい気分ではないが、それでも話を聞いてみることにした。

 

 

 

「多分分かっていると思うが、黒い何かはサーヴァントだ」

「……ああ」

 

初耳である。

人間達の悪意とは何だったのか。

問いただしたい気持ちはあるが、今は我慢。

 

「そのサーヴァントが厄介でな。()()()()()が召喚したんだが……」

 

知らない人である。

その人物があの黒い化け物を召喚したのか。

 

「そのサーヴァントに()()()()()()制御不能になった」

「乗っ取る……そんな化け物が……」

「ふん、だから言ったろ。あれは悪意だって」

 

だから滅ぼすしかねえ、とライダーは言う。

確かにそんな化け物なら倒すしかないと思う。

だけど、乗っ取られたという天ヶ崎千草という人は無事なんだろうか。

 

「ああ、生きてはいるはずだ。()()からな」

 

アーラシュが自信満々に言う。

それは一安心、とも言えないか。

 

「とにかく、黒い何かを倒し続けてくれると助かる。あとはなんとかできるはずだ」

 

まるで誰かがどうにかしてくれる、とでも言いたげな台詞である。

 

 

 

長谷川千雨はこれからどうするべきか考える。

確かにサーヴァントを倒すことは最終的に勝利へとつながる。

しかしこれは戦闘で消耗させるという手段ではないかとも考えられるのである。

 

「……いや、ねぇか」

 

お人好しそうだし。

長谷川千雨はそう断じた。

 

 

 

「ところでよぉ。ひとつ聞きたいんだが」

 

ライダーがいやらしい顔でアーラシュに声をかける。

嫌な予感しかしない。

 

「あんたのマスターはスピカか?」

「やっぱりかー!」

 

ダイレクトに聞いていく。

そんなことを聞いて答えてくれるとは思えなかった。

 

「? そうだぞ」

「答えたー!?」

 

衝撃であった。

聖杯戦争に参加しておきながらこの気軽さ。

いや、もしかして自分が身構え過ぎなのかと長谷川千雨は考える。

 

 

 

……いや、考え過ぎか。

アーラシュが考えなしなんだろうと思ったほどだ。

 

「まあ今は協力関係ってことでよろしくな」

「ああ。楽しくいこうぜ」

 

とにかくスピカと敵対する必要がなくなった。

それだけはいいことだと思った長谷川千雨だった。

 


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