アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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続きというか外伝です。
拾われっ子視点
ちょっと重いです


拾われっ子編
拾われっ子世にはばかる


夜の話。

 

目が覚めると拾われていた。

 

「……」

「お、目が覚めたか」

 

目の前には男の姿。

見知らぬ顔、そして部屋。

そして身体にはなんの機器もついていない。

つまり自由である。

 

「あ、おい」

 

泣いた。

彼女は恥も外聞も関係なく泣いた。

男に見られていることなどもはやどうでもよかった。

 

もう体を切り刻まれることもない。

もう心を引き裂かれることもない。

もう頭をこねくり回されることもない。

 

嗚呼、誰にも自身を傷つけられることはない……!

 

 

 

 

「―――――あの、その」

「まあなんだ、無事なようだな」

 

しばらく後、泣き止んだところで自分が何をしていたのか思い出した彼女は布団に包まっていた。

今更ながら恥ずかしい気持ちが込み上げてきたのである。

隠れてやり過ごしたい気持ちでいっぱい。

いっそのこと消えてしまいたいくらいである。

 

 

 

 

「スピカ」

「……なに?」

 

彼女――スピカが男に拾われてから数日が経った。

男の名前がアーラシュであることも分かった。

 

スピカはそのアーラシュに連れられ、麻帆良学園と呼ばれる場所に住むことになった。

不思議な街並みだったけれど、綺麗な場所。

初めてみた、まともな街。

 

 

 

「……スピカ、です」

 

 

 

気付けば学校に入学させられて。

気付けば学校生活させられて。

 

それはちょっと楽しくて。

それが少し虚しくて。

 

もし最初からこんな生活ができたらと考えたら周りのみんなが憎らしくて。

もしあの痛みを感じることなく過ごすことができたらと考えたら周りのみんなが憎らしくて。

 

 

 

「ふん……」

「……くくっ」

 

小さな子に笑われる。

エヴァンジェリン・A・K・マグダウェルというらしい。

1度喧嘩を売ったら軽くあしらわれた。

 

なので本気を出した。

いいところまで行ったのにアーラシュに止められた。

曰く「それ以上は殺し合いだ。止めるぞ」とのこと。

 

失礼な、殺し合いになんてならない。

私は死なないのだから、殺すのはこっちだけだ。

そう言ったところで、彼女は怒られた。

 

「どうあっても誰かが死ぬのは駄目だ」

 

割と強めのげんこつだったと彼女は記憶している。

仕方がないのでやめた。

決して怒られたのが悲しくて泣きだしそうだったからではない。

最早幼女。

 

 

 

「なんですか」

「いやなに、眩しそうな顔をしてる奴を見つけてな」

 

また小さく笑って、エヴァンジェリンは去っていく。

最近アーラシュのおかげで登校地獄の効果が緩んだことで機嫌がいいのだ。

スキップしてる姿を茶々丸が目撃したとか何とか。

 

 

 

ともかく。

スピカは八つ当たりをすることにした。

自分より小さい子供に笑われて怒ってるのである。

年齢的には同じなのだが。

 

八つ当たり相手は勿論アーラシュである。

最近帰ってきたことをタカミチに教えてもらったからだ。

 

「アーラシュ!」

「なんだスピカか。久し振りだな」

 

出合い頭に跳び蹴り。

がっちり受け止められるがそれはそれ。

本命は魔法の矢23本である。

 

それを顔面に叩き込む。

遠慮がないというよりも容赦がない。

というか仮にも保護者相手にこれはどうなんだろうか。

 

 

 

「ははっ、元気がいいな」

 

しかし、アーラシュはそんな一撃を喰らっても平然としていた。

それどころか笑って許してしまう。

まさに頑健。

 

「……むう」

 

ぶらーんとぶら下がりながら不満の声を上げるスピカ。

スカートの中身が丸見えだが、短パンだから恥ずかしくない。

 

 

 

 

 

 

 

「くくっ、また返り討ちか」

「ふん……」

 

後日、スピカはエヴァンジェリンの家にいた。

魔法を教わる為である。

出所が怪しく面倒臭そうな少女を相手してくれる人間なんて限られるだろうと考えたからだ。

 

実際のところ、そんな相手であろうと親切丁寧に教えてくれるのが麻帆良学園の魔法先生なのだが。

それを知らないスピカは身近にいる魔法使いっぽいエヴァンジェリンに目を付けたのだった。

 

「しかし才能がない。できることは魔法の矢と低級の治癒魔法だけだろうな」

「ぐっ……」

 

しかし、エヴァンジェリンの言う通り。

スピカには魔法の才能が欠片しかなかった。

欠片だけある分質が悪いというかなんというか。

 

「気の訓練でもするか? まだ芽がある方だと思うぞ」

 

魅力的な台詞を蠱惑的な顔で誘ってくるエヴァンジェリン。

しかし、スピカの決意は固い。

意地でも魔法を習得してやろうという思いがあるのである。

 

 

 

……実際のところ、魔法の矢という響きに憧れがあるだけなのだが。

アーラシュの弓矢の腕を見て、自分も似たようなことができればと考えているとか。

なんとも可愛らしい理由である。

 

「まだ頑張る……」

「くくく……」

 

くじけることなく頑張るスピカに、面白いものを見るかのようなエヴァンジェリン。

なんだかんだ言って仲がいい様子。

スピカに言ったところで否定されるだろうが。

 

 

 

「とにかく、打倒アーラシュ」

「何年かかることか」

 

 

 


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