アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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スピカには頑張ってもらいました


拾われっ子頑張る

「諦めるのはまだ早ぇぜ!」

 

思考に沈んでいたスピカの耳に、聞きなれない声が届く。

声の先には小動物。

何やら騒いでいるようだが、スピカには関係なかった。

 

 

 

「仮契約だ! 魔力の塊になったとはいえアーラシュには違いねぇ!」

「っ! 魔力を注ぎ込んで無理矢理形を取り戻させるというのか?!」

「それしかねえ!」

 

 

 

関係なくなかった。

小動物はすぐに動き出し、魔法陣を作り出す。

これが仮契約の為の魔法陣なのか。

 

 

 

「キスがキーだ! ブチューとやっちまってくれ!」

 

 

 

キス。

そう聞いて一瞬戸惑うが、今のアーラシュは光の塊だ。

迷う必要はなかった。

 

 

 

「仮契約―――――!」

 

 

 

唐突に違和感。

何かが体から離れていくような感覚。

離れていくそれは何となくアーラシュだった光の塊へと向かっているようだった。

 

あ、これは魔力か。

唐突に思い至ったが、すぐに気づくべきだったと思う。

いつも使っているものだから。

それだけ参っているということか。

 

 

 

しかし、足りない。

分かってしまう。

これでは流れていく魔力よりも、拡散する魔力の方が多い。

 

 

 

「……スピカ、瞬間的に魔力を引き上げる方法がある」

 

 

 

すると、エヴァンジェリンが口を開く。

嫌々というか、最終手段というか。

そんな感じの雰囲気を感じた。

 

 

 

「昔蟲使いの小僧に教わった術式だ。名を令呪と言う」

 

 

 

スピカに難しいことは分からなかった。

しかし、それがスピカの為に示された道だということだけは分かった。

スピカはわかったとだけいい、頷く。

 

 

 

「行くぞ……!」

「ぐっ……!?」

 

 

 

激痛が走る。

感じたことのない痛みが、全身に広がっていく。

やけどのような、骨折のような、よく分からない感覚。

なるほど、これは最終手段だ。

 

それと同時に、魔力がその痛みに沿って溜まっていく感覚。

これはエヴァンジェリンの魔力だろうか。

凍てつくような魔力が痛みを少しだけ和らげる。

 

 

 

「僕に手伝うことはありますか!?」

 

 

 

ネギ先生の声がする。

声がするが内容がわからない。

激痛が和らいだとはいえ、辛い。

思考がまとまらないのである。

 

 

 

「魔力の充填を頼む。魔力が足りん」

「はい!」

 

 

 

少しすると、溜まってくる魔力の質が変わるような感じがした。

暖かい、けれど少しピリピリした感覚。

 

暫くして、これがネギ先生の魔力だと分かった。

脱がしやがって畜生。

ノイズが混じった。

 

 

 

少し経つと痛みが引き、注がれた魔力が体に馴染むのが分かった。

これで準備完了ということだろうか。

スピカにはよく分からない。

 

ただ、背中に大きな文様ができたらしい。

ネギ先生が驚いている。

 

 

 

「これで完成だ。スピカ、アーラシュに命令するんだ」

「命令……?」

「そうだ。この令呪は使い魔に膨大な魔力を注ぐ為に使うんだ」

 

 

 

本来とは違う使い方だがな、とエヴァンジェリン。

しかし今は関係ない。

魔力を注ぎ込むということが重要なのかとスピカは納得する。

 

 

 

「死なないで」

 

 

 

令呪が輝く。

 

アーラシュに向かっていく魔力が一気に増える。

これなら何かが起こるかもしれない。

そう確信するだけの勢いだった。

 

 

 

「帰ってきて」

 

 

 

令呪が輝く。

 

体が熱い。

まるで魔力で体を焼かれているようだ。

 

それでも。

それでもスピカは魔力の流れを止めない。

 

 

 

「……傍にいて」

 

 

 

令呪が輝く。

 

瞬間、光の塊から強烈な閃光が起こった。

一瞬だけ目を瞑ってしまうが、目を見開くと目の前にはアーラシュが寝ていた。

令呪は成功したのだ。

 

 

 

なのに、魔力の拡散が止まらない。

体の端から光が漏れている。

 

どうすればいいのか。

スピカにはこれ以上の手段が思いつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、スピカのとなりにそっとザジが寄り添った。

口に人差し指をつけ、その指をスピカの唇へとつける。

 

 

 

「―――告げる」

 

 

 

そして小さく一言。

誰に向かっての言葉かわからない。

 

いや、分かった。

これは呪文だ。

きっと手助けしてくれてるんだ。

 

 

 

「告げる!」

 

 

 

復唱する。

それだけで体中の魔力が削られる。

 

 

 

「汝の身は我の下に」

「汝の身は我の下に!」

 

 

 

魔力を贈る回路が太く、太くなっていく。

今まで送り込まれていた量とは比べ物にならないほど魔力が送られていく。

 

 

 

「我が命運は汝の弓に」

「我が命運は汝の弓に!」

 

 

 

わかる。

これは呪いだ。

 

自分だけじゃない。

相手も縛る禁忌のそれだ。

 

 

 

「聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら」

「聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら!」

 

 

 

ギリギリと心臓が鳴る。

この心臓が聖杯なのだろうか。

スピカはかろうじて残る意識を手繰り寄せながら叫ぶ。

 

 

 

「「―――我に従え! ならばこの命運、汝が弓に預けよう……!」」

 

 

 

―――――魔力の拡散が止まり、収束していく。

 

 

 

 

スピカはアーラシュの手を握った。

暖かい。

アーラシュの手だった。

 

 

 

そう感じた瞬間、スピカは眠気に襲われた。

その眠気に負け、スピカは急速に眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 


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