イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜   作:S・G・E

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 大まかな時系列としては豪炎寺離脱の直前です。が、この話終わると一気に京都か真・帝国戦辺りまで飛ぶかもしれません。勢いだけでこの展開だから仕方ないね。


4話 拒絶

「無様な敗北だな雷門。これで分かっただろう。圧倒的な力の前ではお前達などいかにちっぽけな存在か」

 

 試合終了、0ー15の点差が否が応でも実力差を示している。その結果に余裕の表情を取り戻したレーゼたちは光の中へ消えていった。

 

「ま、待て!……くそ!」

 

 雷門中の完敗。皆それぞれが試合を振り返る。

 

「ごめんみんな。あたしじゃあ何の力にもならなかった」

 

 自身の力不足を嘆く塔子。

 

「仕方ねぇよ、攻撃だけで勝てるわけがねえんだ。あの監督何考えてるのか訳わからねぇ!理事長に言って監督を変えてもらおうぜ!」

 

 無茶な指示にメンバーの心を代弁する染岡。

 

「まて染岡」

 

 逸るメンバーを制止するのは司令塔の役割だ。染岡を鬼道が抑える。

 

「何だよ鬼道、お前あの監督の肩を持つのか!?」

「そうでは無い。だが冷静になって考えろ。俺たちの体力は前半を終えた時点で限界に近い状態だった。ならもし後半、俺の作戦通りに戦っていたならばどうなっていたか」

「どうなったって……!俺達もマックスや半田たちみたいに病院送りに!」

 

 風丸の言葉でようやく皆が理解する。

 

「今の俺たちの実力ではベストコンディションでも勝ち目はなかった。監督は見抜いていたんだろう」

「じゃあ今回の試合は捨て試合だと分かってて試合を続行させたでやんすか?」

「ああ、その結果は―――」

 

 鬼道の視線につられて全員が円堂を見る。GKというポジションで強烈なシュートをくらい続けたことで一番怪我をしている。幸いなことに軽い手当てを終えて五体満足で済んでいる。

だが、その姿がチームを勇気付ける。雷門がジェミニストームと初戦を戦った時から今まで、まともに反応できなかったシュートを後半になり、ついに止めたのだ。これは必ず次の勝利に繋がるだろう。

 

「次は勝つ、絶対にな」

 

 鬼道の言葉に皆が頷く。敗北を味わってなお、誰の心も折れることは無かった。

 

「葦川!今日ボールを取れたの、は……あぁ、悪い」

 

 時を同じくして、当の円堂は喜びを抑えきれず創良に語りかけていた。それを創良が口に人差し指を立てて止める。今ベンチに座っている創良の膝を枕に日天が眠っていた。

落ち着いて話をしようと創良のほうからベンチの隣を指差す。遠慮無く円堂は座り込み、再び話しかけた。

 

「お前のおかげでボールを取れた。でもなんでだ?どうしてボールが消えなかったんだ?」

「あのさぁ、ボールは消えないの。消えたのはあくまでも錯覚。予想以上のボールスピードに目が追いつかなかっただけ。実際、正面から受け止めた三発はちゃんとみえていただろ?」

「ああ、それは確かに」

「相手の宇宙人くん?何をするにしても完全にスピード偏重でシュートコースが予備動作で丸分かり。だからキーパーに正面に立ってもらえば後はスピードに慣れるだけ。事実として3球目にはもうキャッチできてたじゃないか」

「なるほどな。眼で追うのが間に合わないなら先に受け止めるタイミングを体に覚えさせればいいというわけか」

「おや、鬼道くん」

 

 いつの間にか鬼道が近づいてきていた。そして創良の目の前で立ち止まる。

 

「お前は、()()葦川なのか?」

「そうだと言ったら?」

 

 仏頂面の鬼道に対してどこか卑屈に笑う創良。

 

「何だ鬼道、知り合いだったのか?」

「特に言うことは無いな」

「立場が逆でもそう言っていたよ」

 

 どうやらこの二人は面識があるらしいと円堂が悟ったところで剣呑な雰囲気を和らげようとする。

 

「ま、まあまあ…昔何があったか知らないけどさ、これからは一緒にエイリア学園と戦う仲間だろ?仲良くしようぜ。な?」

「…………………………………………………………………………………………………………はい?」

 

 『鳩が豆鉄砲を食ったよう』という故事成語がある。今の創良の顔はまさにその表現がこれ以上ないほどに的確だろう。

 

「いやほら、イナズマキャラバン「ほうほう!」の一員として「ふむふむ!」日本中の最強メンバーを「何か格好良いな!」探して俺達と一緒に戦お「お断りだ!」ええ~!?」

 

 一瞬ノリがいい風に見せてNOの答えは決まっていた意地の悪さを見せる。

 

「何でだよ!?あんなに強いのに!」

「悪いけどそのナントカキャラバンとかいうのに入ると全国飛び回るんだって?じゃあ日天はどうなる?家に放ったらかしか?ノーだ。絶対にノーだね」

 

 創良に取って唯一血の繋がりを持つ妹。ただ一人の身内に甘くなるのは自然なことだろう。

 

「俺は自分可愛さに断っているんじゃない。日天に少しでも危険があるならそんな道はごめんだと言ってるんだ」

「じゃあ一緒に来れば!」

「いや、エイリアとの戦いは危険だ。その子の意思を聞くべきだろう」

 

 鬼道の言葉でお互いに日天の意思を尊重しようと決まった。創良は膝を揺らしてゆっくりと日天を起こす。

 

「んー?何さお兄ちゃん?」

「日天。俺にサッカーして欲しいか?」

 

 別れ道、分岐点の鍵は日天が握っている。

 

「……やめとこうよぉ。きっと迷惑かけちゃうよ?」

 

 日天が告げた言葉に創良は微笑み、円堂は残念そうに頬を掻く。

 

「決まりだな」

「ん~まぁしょうがないか。もっと強くなってエイリア学園は俺たちでぶっ飛ばしてやる!葦川はしっかりと妹守れよな!」

「!……当然だ」

 

 創良は円堂がもう少し食い下がると考えていた。だが実際には嘘偽りなく激励だった。

 

「じゃあ俺たちはここら辺で。叔父さんに挨拶して帰るとするか」

「ねぇお兄ちゃん、今日どこに泊まろっか?」

 

 またしても日天を背負い、創良は去っていく。

 

(叔父に挨拶に来たと言いながら。寝泊りする場所を探す?葦川……お前達は一体?)

(あいつって家族思いなんだな!鬼道や豪炎寺に負けないくらい!)

 

 去っていく兄妹の背を見ながら二人はそれぞれ思いを馳せていた。

 そして当の葦川兄妹は二人からだいぶ距離が離れた頃、ようやく会話を再開した。

 

「お兄ちゃん、本当に入らなくてよかったの?」

「真剣にサッカーやらない奴にあのチームに入る資格はないよ。それにお前をダシにしてしまって……ありがとな、打ち合わせ通りに言ってくれて」

「うん……あ、うん!日天はお兄ちゃんの妹だもんね!」

 

 実は円堂と話す前に創良は『もし雷門イレブンに誘われそうになったら断る方向で手伝ってくれ』と日天に頼んでいた。初めから出来レースを仕組んでいたというわけだ。ただ、妹が大切というその一点は本心だった。

 

「あー叔父さんに挨拶はしとかないとな。それと泊まるのはガイドにあった旅館な」

「イェイ!お兄ちゃん太っ腹!」

(しかしあの豪炎寺というFW何か様子がおかしかったな、ただ不調なだけか?)

 

 創良は結局一言も話すことのなかった雷門のエースストライカーに何か引っかかるものを覚えた。




 何故か最後の兄妹の会話が想定以上に闇深な感じに仕上がってしまった……

↓二人が去った後の会話は多分こんな感じ

土門「あれ?鬼道、あの葦川ってやつは?」
鬼道「ああ、帰っていったよ」
一之瀬「そうか、仲間になってくれなかったのは残念だな」
栗松「頼れそうな人だったでやんすのに」
円堂「またいつか会えるさ!いまはエイリア学園との戦いに集中しようぜ!」
唐突な瞳子「豪炎寺君。あなたにはチームを抜けてもらいます」

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