イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜   作:S・G・E

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(待ってくれている人がいたなら)大変お待たせしました。ぽつぽつと創作意欲が戻ってきたのでぽつぽつと再開したいと思います。
温かく見守っていただければ幸いです。

ついでに前話までの言い訳っぽい前書きを(見苦しいので)削除しました


19話 良き創造者

 エイリア学園マスターランクチームの一角、プロミネンス。用意されている訓練エリアにキャプテンのバーンから集合が掛けられ、早朝から集まっていた。

 

「全員揃って……いないな、レアンはどうした?」

 

 その場にはチームメンバーの一人を除き全員が集まっていた。その一人がどうしているかは誰も知らなかった。

 

「まぁ居ない奴のことはいい、訓練の前に今日から暫定で俺たちのチームに加わる新しいメンバーを紹介する」

 

 その言葉にプロミネンスのメンバーに動揺が広がる。マスターランクチームは基本的にメンバーの補充はされず、一部が降格ないしは交換という形でメンバーに変化が起きるためだ。だが今回は例外的に追加という形で加わる。それを聞いて何人かは安堵のため息を吐いた。

 

「そいつの名は『グクリ』だ。予定通りならそろそろ来るはずだが……ああ、来たみたい…だ…な……」

 

 足音に振り返ると丁度訓練エリアに姿を現したところだった。プロミネンスメンバーの証であるユニフォームを身に纏い――

 

「あのー、ここがプロミネンスの練習場で合ってるかな?」

「あ、ああ……その、背中に乗っけてるのは……」

 

 同じチームのメンバーであるレアンを背負っている彼こそが、新メンバーのグクリだった。

 

「低血圧なんだとさ」

 

 結論から言えば、ああそうだね。低血圧だったんだね。なら仕方ないね。となる程にバーンは温厚ではなかった。

 

「レアアアアン!」

「はいぃぃぃ!背番号7番のレアンです!……あれ?」

 

 バーンの喝で完全に覚醒したレアンは自分がどのような状況に置かれているのかをゆっくりと理解し、すべて理解すると顔を真っ赤に染め、全力で元凶の脚を踏みつけた。

 

「ちょっと理不尽じゃないかな?」

「うるさい!何勝手に人をおぶさってくれてんのよ!」

「勝手にじゃないです~本人から許可貰ってますー」

「本人!?『本人』って言葉辞書引いてみなさいよ!」

 

 そのやり取りを見ながらプロミネンスの面々は思う。これから大丈夫だろうか、と。その生暖かい視線に先に気付いたのは新入りの男だった。

 

「あー今日付でプロミネンスに加わるグクリだ。よろしく」

 

 しかし、そんな空気を読むことなくマイペースに自己紹介をする葦川創良改め、プロミネンス12番目の選手グクリ。

 

 バーンは泣きたかった。マスターランクのキャプテン。エイリア学園の頂点に立つ一人なのだから新入りに対してもっとこう…大物然とした雰囲気を出したかったのにそれが初日から崩れ去ってしまった。とは言え切り替えねば何も変わらない。

 レアンは泣きたかった。ひたすらサッカーに打ち込む毎日。とはいえ花も恥じらう十代が赤子のようにおんぶをされたのだ。羞恥心だけで世界を埋め尽くせる気がした。

 グクリも泣きたかった。踏まれた脚が今になって効いてきた。

 

「……質問は訓練の後に受け付ける。では早速開始だ!」

『「「はい!」」』

「はいはい」

 

 

 

 ~~~

 

 

 

「バーン様は何故今になってメンバーを増やしたんだろうな?」

「さあな、俺たちはただ言われた通りにやるだけだ」

 

 一段落して休息となる。既存のメンバーからのグクリへの評価は一部を除き可もなく不可もなし、といった所だった。最も彼がブランクがある状態という情報を隠された上での評価ではあるが。

 

「なるほど、あれがレアンの恋人ということね」

「何をどう推理したらそうなるの?」

「ふふふ、私が貸したスポーツ大河作品(近日新シリーズ連載開始)の恋人役にソックリです。一目惚れというやつです」

「ならバーラが勝手に惚れてなさい」

 

 そしてそれ以外の評価をした一部は、全く方向性が違う話題で盛り上がっていた。プロミネンスの女子二人組は団結してレアンに詰め寄っている。

 

「隠したってダメよ?深夜のトレーニングまでした仲でしょう?」

「いかがわしい物言いはやめて!……あれ、ちょっと待って?何で夜の事知ってるの?」

 

 その問いにボニトナは勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。

 

「やられた……」

 

 カマをかけられ、それにまんまとハマってしまったことに気づきレアンは力無く項垂れた。

 

「悪くないじゃない。今までサッカーしか興味無いみたいな雰囲気出してたから一生彼氏出来ないかと心配だったもの」

「何でそんなガッチガチな心配してくれてるの……?」

「面白いから」

「おいこら!?」

 

 女三人寄れば何とやら、それでもレアンはその状況を楽しんでいたのだが現実の男に耐性のない事から一転していじられポジションに定着することになってしまった。

 

「女性陣がお揃いで」

 

 そして渦中の人物は二人がサムズアップをしたいほどにベストなタイミングで現れる。

 

「1名除いて初めまして、いつまでかは分からないがよろしく」

「ご丁寧にどうも。私はボニトナ」

「バーラです。よろしくどうぞ〜」

 

 とうとうレアンの心労要因が揃ってしまう。だがその前にレアンが先手を打った。

 

「ちょっといい?」

「え、いや話なら後で「ちょっといい?」はい」

 

 意地でも会話させてなるものかと創良の首根っこを摑まえるかのようにフィールドの外へ連れ出すレアン。シリニシイテンナー、カカアテンカー等と後ろから声が聞こえる度に頬を引き攣らせていたことを知るのは創良だけであった。

 

「簡単に言う。私に協力して」

「どうせ恋仲みたいな噂が立たなきゃいいみたいなかんじでしょ?」

「分かってるなら尚更。絶対に協力してもらうから……返事は?」

「はいはい分かったでございますよ」

 

 その光景が傍からどう見えるのか。分かりやすく一人が割り込んできた。

 

「休憩中に新メンバーとデートかしら?まったく余裕だこと」

 

 プロミネンスとは真逆の蒼く凍り付くイメージのユニフォーム。エイリア学園三強の一角。マスターランク、ダイヤモンドダストの女子メンバー。

 

「彼女は?」

 

 とはいえ創良も全員を把握しているわけではなくレアンに詳しく聞こうとする。

 

「あぁ、ダイヤモンドダストのメンバーの一人。たしかアイスみたいな名前だった」

「アイシーよ!」

「あら失礼。私より活躍しない選手なんて覚える気がないから」

 

 レアンと同等のツッコミ気質ということもあってか彼女を逆にからかうことで多少なりとも溜飲を下げている。

 あまり上等なストレス発散ではないと自覚していたがだから何だと構わず続ける。

 

「ねぇあなたが噂の彼氏君?こんな性わ「噂って何!もうそっちに広がってんの!?」ほほーうやっぱり」

「別に彼氏というわけではないんだけど」

「そ、そうだそうだ」

 

 アイシーはその反応を見て分析する。恋愛経験なさそうな女とそんな女に知り合い程度の対応をする男だと。

 

「あらそう?なら新入りクン。私はどうかしら?」

「はは、ごめん。髪が短い子が好みなんだ」

 

 それは残念と言って特にレアンを煽るわけでもなくアイシーはその場を去っていった。

 

(プロミネンスで髪が短いのは私だけ……)

(何しに来たんだあの子。え、なにその引き攣った変顔)

 

 

 

 ~~~

 

 

 

 創良がそんなやり取りをしている間、イナズマキャラバンは目的地の大阪に着いていた。離脱していたサッカー部の仲間や真・帝国学園での負傷の結果一時的に検査入院することとなった染岡を送るために東京へ戻ったため大回りになったがそれで二日。その間にもマネージャーの夏未の家に仕えている黒服(比喩にあらず)が現地で調査を続けていたらしい。

 

「ここが大阪かぁ!」

 

 円堂を皮切りに鬼道などを除くメンバーの大半が勢いよく降りていく。

 

「き、緊張感ないですね。いえ、いいことでもあると思いますよ」

 

 兄との旅行気分を捨て去った心積もりの日天は対照的に観光気分でキャラバンを降りる面子に戸惑っている。

 

「コンディションの調整が楽で助かるわ」

「エイリアとの戦いだからこういう時くらい明るくしないとね」

 

 皆あの状態を受け入れている以上日天が言うことは何もない。郷に入りては郷に従えだ。

 その後、黒服から引き継いだ情報による実地調査の結果。エイリア学園の拠点が大規模な遊園地、ナニワランドのどこかにあることを突き止める。

 

「お兄ちゃんとも行ってない場所だ」

 

 かつて大阪滞在時は下宿させてもらっていたお好み焼き屋の近場のアミューズメントだったので日天も初めての場所だった。軽く不安を覚える。まだ小学生で外出は常に肉親と一緒だった日天にとっては未知の冒険にも等しい。

 

「大丈夫。日天ちゃんにはこの私が付いていてあげるから」

「ありがとうございます。音無さん」

「うん。……ところで、音無さんじゃなくて春奈お姉ちゃんって言ってくれない?」

 

 日天は首をかしげる。呼び方一つで変わるものがあるのかと。

 

「えっと、春奈お姉ちゃん?」

「はぁっ!なんかビビっときた!」

「あ、あの、私にも言ってくれないかな?」

「あ、秋おねえちゃん?」

「ああ、葦川君の嬉しそうな顔の理由分かる気がする」

「夏未さんもどうです!?」

「わ、私はその……」

 

 その後しばらく女性陣に引っ張りだこになった日天であった。




文章力には期待しないでください(小声

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