イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜 作:S・G・E
「四国ってどんなところなんだ葦川?」
「四国がどうかはそれほど知らないが、愛媛は落ち着いたところだよ。田舎過ぎずかといって派手なわけではない」
木暮が正式に、創良が暫定で合流したイナズマキャラバンは京都からさらに西、四国へと向かっていた。
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京都の夕暮れ時にキャラバンに集合した一同。
「監督、見てもらいたいものとは……?」
「皆揃っているようね。では見せましょう」
そう言って瞳子はモニターの記録映像を再生する。その中に現れたのは雷門にとって因縁の相手だった。
「なっ!影山だと!?」
『久しぶりだな、雷門中サッカー部の諸君。私はエイリア学園の力を借り地獄の底から蘇った。……四国、愛媛にて待つ。キサマらを葬るためのチーム『真・帝国学園』と共にな」
延々と語られる鬱屈とした怨恨の感情と宣戦布告。
「この映像はちょうどあなた達とイプシロンの試合終了と同時に送られてきました。発信場所は不明ですが、映像の中で語った内容が真実ならば場所は愛媛でしょう」
瞳子はこの言葉を受けて愛媛に向かうと伝えた。
「あの野郎また何か企んでやがんのか!?」
「影山って中学サッカー協会の副会長だった人だよね?」
「ああそうだ。そして帝国学園の総帥でもあった男だ」
皆の間に動揺が広がる。
「あいつ、神のアクアに懲りずにエイリア学園にまで味方するなんて……」
「真・帝国学園だと……?」
「ああ、俺だってまたサッカーを汚されるのを黙っているわけにはいかない!皆、愛媛に行こうぜ!」
こういった時に円堂の言葉はまさに『鶴の一声』。困惑するメンバーの気持ちを一方にまとめる一つの才能だ。
「話は分かった。俺と日天も同行しよう」
「葦川!お前も来てくれるのか!」
「今回はな。愛媛は俺の地元だ、ある程度なら案内できる」
「え、地元だったのか?」
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「日天、今のうちに寝ておけ。しばらくはバスの中だ」
「んー分かった、膝~」
日天は車中泊などで眠るときに創良の膝を枕にして眠るのが一つの癖になっていた。その仲睦まじい様子を見て隣に座った円堂が話しかける。
「妹と仲良いんだな」
「ああ、この世にたった二人だけの家族だからな」
「え……ごめん」
「もう昔の事だよ」
不味い話題に触れてしまったと落ち込む円堂に創良は逆に気を遣う。
「なんかお前と妹見てるとさ、初めて会った頃の豪炎寺を思い出すんだ」
「豪炎寺……あのFWに妹がいたのか?」
「ああ、夕香ちゃんっていうんだけどサッカーが大好きな子なんだってさ!といっても少し前まで寝たきりであんまり話したことないんだけどな」
「寝た切り?何か病気でも持っているのか?」
「いや、交通事故だ」
話題に多少強引に鬼道が入り込んでくる。かつて影山の手足のように動いていた身として黙って聞いているわけにいかなかったのだろう。
「それも悪質な、故意に『豪炎寺の妹』を狙った轢き逃げだ。影山の策略によってな」
「さっきから聞いていれば随分悪質な男らしいな。無関係な俺はサッカー教会のお偉方としか知らなかったが」
「俺は、また影山が何か企んでいるとしたならそれを見過ごす訳にはいかない。エイリア学園と関係がなかったとしてもな」
「俺たちも勿論手を貸すぜ鬼道!」
前方から土門が同意を示す。話によると土門もかつて帝国学園で後ろ暗い行いをしていたらしい。改心した今からは想像もつかないと創良は思った。
「俺はエイリアに関わっているからこそ手を貸すわけだが、まあ右に同じく」
「むーうるさい~」
「はは、悪い悪い」
起こしてしまったことを謝り、もう一度日天を眠らせる。
「葦川さん、愛媛に着いたら美味しいお土産教えてほしいッス」
「食い意地張るのはまだ早いでやんすよ壁山!」
しばらくすれば暗い話題ばかり考えないようになり、みんなそれぞれで会話を始める。
「ところで葦川、お前とは幼少の頃以来だが、あの時からサッカーをやっていたのか?」
「……ん?俺の話をしたいのか?」
鬼道も気を紛らわせようとしたのか創良に関しての話題を振る。鬼道からは前々から聞きだしたかったことの一つだ。
「そう言えば二人は知り合いだったんだよな?」
「まあ言葉通りの知り合いだな、こいつがまだ3歳くらいの時に何かのパーティだったかでね」
「お互い子供には豪華過ぎるパーティで会ったからな。妙に引っかかると思えばその時に会った仲だったというわけだ。縁はあの時の一度きりだったがな」
「へぇー。そんな昔に会ってたのか」
「しかし、昔の記憶だがお前はもう少し……」
「もう少し、なにかな?」
「いや……言う必要もないだろう。数年も経てば性格は変わる物だ」
「昔より妙に丸くなった人が言うと説得力ありますねー。ビデオで見たぞ、『デスゾーン……開始』だっけ?」
「それを言うな……」
着いていけない円堂を挟みこんで二人は珍妙な会話を繰り広げる。だが結局、創良が鬼道の質問に答えることは無かった。
「葦川君、そろそろ愛媛に着くけれど、海隣学園に立ち寄ってもいいかしら?」
四国に入り、高速を降りた頃に瞳子がある提案をした。創良からしても一度生活の場に戻れるのだから断る理由はない。携帯を取り出し連絡を取る。
「ああ理事長さん、葦川創良です。もうすぐ寮に戻ります。そう言えば、他の生徒はどれくらい残ってます?……はい、分かりました」
創良は許可が出たことを肯いて瞳子に伝えた。
「ではまず私立海隣学園に向かいます」
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海隣学園、ジェミニストームの破壊からしばらく経って少しずつ校舎の再建も進んでいた。
「ここが葦川の通ってる所か!」
「名門私立だけあって流石に広いな」
午後の三時頃にキャラバンは到着した。時間を考えるとまずは早々に泊まりの準備に入ることになるだろう。
鬼道は出来るだけ早く影山の居場所を見つけるべきといったが、瞳子は選手のコンディションを優先し今日は見送りとなった。
「じゃあ寮に……ん?」
海隣の学生寮に案内しようとしていた創良を校舎の方角から一人の教師が血相を変えて走ってきた。
「葦川君!聞いてないよ雷門中と一緒なんて!?」
「まぁいいじゃないですか校長先生、ちょっとしたサプライズですよ。生徒数を聞いてたでしょう?あの人数なら寮も結構空いていることだし」
海隣の校長を務める相手だが、臆することなく創良は無理やり納得させようとする。
「ま、まあこの人数が泊まれる分はあるが……」
「なら決まりでしょう。案内は僕がやりますから」
元々海隣は雷門と同じく理事長が居る私立だ、校長の権限は比較すると小さく、本人の気弱な性格もあってかあっさりと創良の提案通りに雷門は寮へと受け入れられた。
「葦川はここで生活しているんだな」
「集団生活って毎日が合宿みたいなものだから慣れたら楽しいもんだよ」
「俺たちも昔やったよな」
アメリカ留学時代に経験がある一之瀬と土門が寮生活について語り始める。それまでも創良は学校側と話し続けていたらしい。
「グラウンドの使用許可ももらっておいた。君たちが好きに使ってくれ」
「え?葦川は練習しないのか?」
「近くに用事があってね、問題ない。夕暮れ時には戻るから日天をよろしく頼む」
それだけ言って創良は自転車で海隣を出て行った。
「あ~またお兄ちゃんアレするんだ~」
「何か知ってるの日天ちゃん?」
「いーえ何でもないです~」
日天の訳知り顔に皆が首をかしげる。だがやはり円堂が練習に集中するように言うと皆グラウンドへと駆け出していった。
この作品では文章には起こしてませんがあのホモ臭が漂う赤毛と円堂は北海道の時点で出会ってます。
2018/6/15 追記、修正