ここからこの物語の本当のスタートみたいな感じですね。
吹雪と約束をした次の日の朝5時。
まだ艦娘は起きてこない時間だ。
俺はそのタイミングを見計らって荷物を持ち、鎮守府正門へと向かった。
「ついに、この場所ともお別れか....名残惜しいが、誰も起きてこない内にさっさと行こう。」
俺はそう言って正門を出ようとする。
その時だった。
「別れの挨拶もなしとは、随分と寂しいことしてくれるじゃない。」
俺は驚きつつも、声のする方向に体を向ける。
「....加賀か。」
そこに居たのはこの鎮守府の主力艦隊のメンバーの1人、正規空母一航戦、加賀だった。
「どうした?俺が居なくなるのがそんなに寂しいのか?」
と俺は煽り気味に加賀に問いかけた。
「私は別にそうでも無いですけど、寂しくと思う艦娘は沢山いると思うから、しかたなく艦娘達の代表として提督に挨拶をしに来たの。」
「流石加賀。ツンデレは戦争が終わっても変わらないんだな。」
加賀は頬を赤らめながらこう言った。
「だからツンデレじゃ無いです。しかたなくと言ったでしょう?」
「あーハイハイわかったよ。」
と俺がここにいた時とほとんど変わらない会話をする。
しかし、そんないつもするような会話なのに、加賀は少し、泣き目になっていた。
そして、俺はそんな加賀を見て、こう言った。
「....加賀。」
「はい、何でしょう」
「....泣きたい時は、泣いていいんだぞ。」
「はぁ、本当に提督にはかないませんね。」
そう言って加賀は俺に今まで見せたことのない、涙をたらしながら俺の所に来て、俺の体に抱きついてきた。
俺は驚いて、うまく反応をすることが出来なかったが、慰めるように加賀の頭を撫でながらこう言った。
「本当に、今までありがとうな。また、何処かで会おう。」
加賀は落ち着いたのか、俺の体から離れていく。
目にはまだ微かに涙が残っている。
そして、加賀は俺に向かって今まで見せなかった、最高の笑顔で言葉を発した。
「提督。本当に今までありがとうございました。そして、また何処かで会いましょう。」
俺はその言葉を聞いて安心し、その場から去ろうとした。
「あ、そうだ加賀。」
「はい、何でしょう。」
「泣きじゃくった後で悪いんだが、この紙を大淀に渡しといてくれ。俺の電話番号と住所が書いてある。大淀以外には見せるなよ。なるべくバレたくないからな。」
「わかりました。渡しておきます。」
「それじゃ俺はこれで、また何処かで会おう。」
俺は加賀に背を向けて手を振った。
じゃあな、俺の過ごした鎮守府、共に戦ってくれた艦娘達。
お前達が自由になったらまた何処かで会おう。
俺は歩き出す目的地は、駅だ。
電車に乗って俺の家のある所に向かう。
その後のことは家に着いてから考えよう。
「....懐かしいな。」
電車に載ってたどり着いたのは俺の家のある地域だ。
俺の住んでいる場所は都会ではない。田舎だ。
その為、とても風が心地よい。鎮守府にいた時と同じ様な感覚だ。
ここから家まではそこまで距離はない。ゆっくり歩いて、懐かしの景色を楽しもう。
そして、俺は家に向かって歩き出す。
「久しぶりだな。この家に来るのも。」
家に着いた俺は懐かしさを感じながら家の中に入ろうとする。
ドアノブに手をかけると腹からグゥーと音が鳴る
「そう言えば昨日の夜からなんも食って無かったからだな。よし、まずは食事をしよう。」
俺はそう言いながら玄関のドアを開けた瞬間
「あ!おかえりなさい!司令官!」
「....え?」
家の玄関には、エプロン姿の吹雪が笑顔で出迎えていた。
という訳で第一章いかがだったでしょうか?
正直内容結構悩んでたんですけどね。
それでは次回お会いしましょう。