アクセル・ワールド~地平線を超えて   作:真ん丸太った骸骨男

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こんにちわ、真ん丸骸骨です

勢いで書けました。
今回は対戦では無くレースになってしまっています。
アクセルっぽくないと書き終わって気が付いたので、もはや修正のしようがないですね。


第七話

あれから現実時間で二年。主観時間でどれほど経ったか。

それだけの時間を過ごす内に、僕には新しい二つ名らしきもので呼ばれるようになった。

『EKハンター』、それが僕の現在の行動を比喩しての名だ。

そもそもEKなどと言う事をやらかす人間は少ない。EKはテリトリーを持つ神獣級でしかできない。そんなリスキーな事をやる人間は相当性格の曲がった人物だろう。

が、皆無と言う事も無い。

だから僕は、すべてのテリトリーを把握し、定期的にその場所を訪れては警戒していた。

だがこの活動の過程でいくつかの副産物ともいえる物が生まれた。数名の王と面識を持つようになったのだ。

なにせ、EKをされる者の多くはレギオンを抜けようとする者や、レギオン未加入の人間。

その避難先に、彼らは各王たちのレギオンを選んでいくのだから。そんな事がたび重なり、王が興味を持って接触を望んでくる。彼らとの会話は実りのあるものとなった。

彼らの公認を得る事が出来た事で、僕も気兼ねなく避難先を紹介できる。レギオンにとっても人数が増える事は、支配範囲を広げる一助ともなるのだから当然ともいえるのだが。

 

現実では中学校に進学。

学校を決める事が一番苦労した記憶がある。ほかにバーストリンカーがいないかを見なければならないからだ。

幸いな事に一人もいない学校を発見する事が出来た。だが、それを見つけるまでにいくつポイントを消費した事か、EKをする不届き者を倒す以外対人戦をしない僕にとってかなり痛い失費と言える。

それでも現実の僕はリアル割れした時、抗いようのないハンデがあるので、それも仕方ないと解っているが理解は出来ても納得はし辛い。

 

現在住んでいる場所は世田谷区、グレート・ウォールが半ばまで進出してきているが、ほぼ無所属の領土である。

そう言う事もあってか、激戦区である都心などと比べれば、対戦を申し込まれる事も少なくて済んでいるので助かっている。いつかは昔のように通常対戦も楽しくやって行きたい所だが、まだ心の折り合いが付かない。

通常対戦を断っている僕だが、当然すべてを断れると言う事はない。

中には対戦時間をすべて逃げる僕を面白がって的として対戦を吹っ掛けてくる奴までいる。生活で不便な事が多い僕はニューロリンカーを外す訳にはいかないし、全く持って手に負えない。

 

「今日は誰も対戦を吹っ掛けてきませんよう――――」

 

帰宅するため学校を出た瞬間、強制的に加速世界へと誘われる。

祈った直後の為、堪らずため息を零してガイドカーソルを確認する。相手の位置が解るのでこのカーソルの真逆に走り続ければそれで終わりだが、こうも何度も対戦を掛けられ続ければ流石の僕も多少イラつくと言うもの。

ギャラリーも含め、この場にいる人間に、改めて対戦をしない僕のスタンスを訴えてやろうと考えた。

 

「……エンジン音?」

「ヒャーハッハッハッハッ!!用事ついでにバトル相手探してたらお目当て見つけちまったぜ!メガラッキイィィ―――ッ!!」

 

現れたのはどぎつい髑髏仮面のライダー。相手の名前を確認するとアッシュ・ローラーと言うらしい。

大きなバイクに跨り、ハイテンションにエンジンを吹かしていた。ステージが世紀末ならば、その姿は何処までもらしいだろう。

だが残念な事に今回のステージは煉獄、そもそもこの気味の悪いステージにお似合いのアバターとは正直戦いたくはない。

 

浅く広くそれなりの数のリンカーは知っているつもりだが、今日初めて見る顔である。新人≪ニュービー≫だろうか。

いや、それだと尚更おかしいか。向こうから対戦を申し込んだと言う事は此方のレベルを知っていると言う事だ。新人であれば、いきなり高レベルと戦う旨味はそれほどないだろう。

経験と言う意味では貴重かもしれないが、下手をすれば無為にポイントを失う行為と言える。

色々と考えたが、相手のレベルが幾つだろうと、僕のやる事は一つだ。

 

「テンション上げてる所悪いけど、僕は戦うつもりないからね?」

「おうよ、あんたの噂は聞いてっからよ。今日は対戦とは少し違うぜ!」

「対戦じゃない?」

 

レギオンか何かの勧誘だろうか。それともエネミー討伐の助成だろうか。

レギオンなどの勧誘はもちろんお断りだが、エネミーならば今までも手伝いを頼まれたことがある。

 

「今日はあんたと勝負しに来たッ!」

「いやいや、僕戦わないってば。言ってる事滅茶苦茶だって事自覚ある?」

「ん?おぉ、ソー・スマナッシングだぜ。勝負ッつーか、あんたと走ってみてぇと思ってよ。加速世界でなお最速の走り屋。ギガ・クゥ――ルだぜ!」

 

詰まる所競争がしたいと言う事だろう。

走る事だけを望んで対戦と言うのは珍しい。走る事は好きなので、この申し出は素直に嬉しかったりする。

アッシュの声に、対戦もしない僕なんかに予約観戦を入れているアバターが騒ぎ出した。

 

「お!?なんだなんだ?今日はレースか?」

「お~~い、誰かゴールとモニタ用意しろ!俺たち置いてけぼり喰らうぞ?」

「任せろ任せろ。ホリゾンのファンになってからこんな時が来るんじゃないかとずっと用意してたぜ!……誰か動かし方教えてくんね?」

「中継器の設置に行くぞ?よし、散れッ!」

 

当人たちそっちのけで、外野が何やら用意し始めた。

ガヤガヤと、本当に楽しそうに準備に奔走する彼ら、やがて準備が終わると何やらマイクを持った奴がこちらを見下ろして発言を始めた。

本当に準備の良い事だ。

 

『お待たせしました!準備にちょっと時間かけちまったから十分しかないけどコース説明だ!』

 

「ヘイヘイヘイ!俺様のVツインエンジンは準備オーケーだぜッ!?ヒャッハハハ!」

「盛り上がってきたな、まぁいいけどね。っしょ」

 

軽く屈伸運動などで体を解かしながら彼らが考えたルートを見る。

直線とコーナーが程よい感じにあるコースで、折り返しでビルを回ってまたこの場所に戻ってくると言う単純なものだが、十分と言う短い時間では最初から最後までトップスピードで駆け抜けなければならないだろう。

必殺技を使えばその半分以下で余裕だろうが、準備時間に話を聞いたところ、彼はまだレベル1との事なので、今回はそれらは無しと言う事で決まった。

アビリティ無しでは少し厳しいが、今回は久しぶりに楽しむとしよう。

 

『ではカウント3でスタートッ!3,2,1』

 

レースが始まった。

まずは直線、初速はどちらも同じ出だしとなった。通常バイクなどは徐々にスピードが上がり、最初は遅れる筈だが、彼はロケットスタートを熟しピッタリと横に並走して見せた。

ブレイン・バーストと言うゲームの特徴を考えると彼も僕と同世代の筈だが、そのバイク捌きは手馴れており、決して免許取立てと言う風には見えない。

どこぞのレーサーと言われた方がシックリくるくらいだ。

子供にもそう言ったエンジンを搭載した乗り物のレースがあると聞いた事があるが、彼はそれの選手か何かなのだろうか。

 

「凄いね!僕に最初から着いて来れた人は久しぶりだよ!」

「ヒャハハハ!伊達にモンスターマッシーンに乗ってねぇって事だ!」

 

やはりあちらは馬力がある。必殺技無しではジリジリと距離が開いてくる。同じレベル1だったとしてもレースの総合力は負けるつもりはないが、直線スピードは負けるかもしれない。

しばらく走り、次は直角コーナーに差し掛かる。

アッシュはコーナーに合わせ、ドラフトをして綺麗に曲がりに掛かるが、僕は構わずその速度で突っ込んだ。

 

「おいおい!?突っ込んでジッエンドしちまうぜ!?」

「良いんだよっと!」

 

速度はそのままに、僕は飛び上がり壁にうまく取りつきジャンプしてコースに復帰。

速度を維持したまま走り続ける。

 

「はぁ~~!?壁蹴って三角飛びだと!そりゃねぇだろがよ!!」

「研究と練磨の成果だ!アビリティじゃないもんね!」

 

どこからか歓声が起こる。今の一連の流れを見ていたのだろう。

これがアビリティ有ならば、壁に取りついたまま走ってコーナー無視して爆走なのだが、たまには技術を凝らした走りも楽しいものだ。

 

お互い一歩も引かないとはこの事だろう。

直線距離はアッシュに分があり、コーナーやカーブと言った部分では減速を余儀無くされるアッシュに比べ僕に分がある。

そして最後、戻ってくる道においてコーナーなどが多発し、アッシュとの距離が少しだが広がっていく。しかし、あと僅かと言う所で残す所直線のみとなった。

 

「俺様が貰ったァァァ――――!!」

「抜かせないッ!」

 

『来た来た来たッ!どちらも譲りません!全くの互角!どちらが先にチェッカーフラッグを切るのか!!』

 

ギャラリーも実況している者も興奮状態で、それほど人数がいる訳でもないのにその声で耳がおかしくなりそうだ。

 

『そして今……ッ!ゴ――――……ルっ!!これは驚きです!同着!同着でのゴール!結果は判定待ちとなります』

 

実況者と後ろにいる測定を担当していた者が話し始めた。

今走った距離のタイムを出しているのだろう。待っている時間も勿体ないので、楽しい走りをさせてくれたアッシュを自分の観戦予約に入れておいた。

 

『おい、タイムタイム……、あとスロー再生してどっちが速かったか……てか時間ねぇ!?』

 

(マイクくらい切れよ……。さて、それはそれとして勝てたかな?)

 

色々とハンデを背負った競争だったが、持てる全てを出したつもりだし、負けているとも思っていない。

しかし、加速世界でスロー再生とは何とも言えない現象だ。

 

『出ました!判定ですが、なんと!!なんと僅か頭一つ分!頭一つ分の差ではありますがホリゾン・ソニックの勝利です!』

 

「ソ――――・バッァァァァァド!?あとちょっとだったじゃねぇかよ!?俺様アン・ラッキィ~……」

「ハハハハッ!勝った勝った!よぉし!」

「負けちまったがよ、流石だぜ。いい走りじゃねぇか、ギガ・クゥールだったぜ……」

「うん、アッシュもいいテクだ。またやろう」

 

二人で健闘を讃え合い、固く握手をする。少し臭いかもしれないが、これはこれでたまには良いかもしれない。

 

「もう時間みてぇだな?ンじゃ、俺様がレベル上がったらまた対戦吹っ掛けてやるからよ!待ってろや兄貴ッ!」

「ああ、またって……。おい、兄貴ってなん――――」

 

今まで上で減り続けていた時間がゼロとなり強制的に加速世界から弾かれた。

結果は両者体力がフルの状態のままだったのでドロー、引き分けとなった。

 

「兄貴って……なんだよ……」

 

その僕の独り言に、誰も答えてくれなかった。




何と言いますか、最初の所が今一つな気がして仕方ないですね。
二年間の事や、現在の状況を説明的に書いたのですが、それぞれ個別になってしまって読み辛く感じる自分がいます。
もっとうまく書けるように色々読んできます。

原作開始、として最初に出てきたのがアッシュと言うのは在り来たりでしたでしょうか。
一応主人公のタイプが決まって最初に考えていた話だったので今は書けた事にホッとしております。

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