ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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79話_激走と特捜の駆動、その名はDrive!

「此処は何処だ?何故私は此処に?」

 

その頃ゼノヴィアも、目覚めたばかりの自分の眼に映る光景に疑問を覚えた。

ゼノヴィアが目覚めた場所は、免許センターを思わせる施設の、広場と思しき場所だった。

 

「緊急事態か。となればまずは…

不味いな、ギリギリチャンバラガシャットが無い。というか、何だこのガシャットは?」

 

その光景を見て、己の身に何かあったのだと、抱いていた疑問に自答しつつ、左腰のホルダーを確認したが、何時もホルダーに差していた黒いガシャットは無く、代わりにあった赤いカラーリングで、ラベリングが施されていないガシャットの存在に、ゼノヴィアは訳が分からないと言いたげな様子だった。

 

「レベル1でこの場を切り抜けるしかない、という事か。幸い、デュランダルは取り出せる様だが…

む、アイツは?」

 

他に使える武器は無いか調べたら、悪魔に転生する以前から所有していた聖剣デュランダルは(内包する聖なる力が余りに強大であるが故の暴発を避ける為に普段保管されている)異界から呼び出す事が出来る事を確認したゼノヴィアは、状況を打開すべく調査を始める。

と、そんな彼女に向かって、1体の異形が歩いて来るのが見えた。

黄金を基調とした筋肉隆々な体躯は、同じく黄金の装甲を身に纏っている一方、胸は心臓が露出しているかの様な状態、頭部からはバッファローの様な極彩色の角を生やした人の様な姿をした異形を見たゼノヴィアは、それが今回の一件に関わりがあると判断、一瞬の内に警戒を強めた。

 

『バクソウバイク!』

「変身!」

『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

「貴様も仮面ライダーか。来い!」

 

何時も通りの手順で変身したレーザーを見て、彼女がどういう存在かを察知した異形が突進して来たのを切っ掛けに戦いは始まった。

 

(くっ!ギリギリチャンバラガシャットが手元に無いのは誤算だ、これ程の相手、レベル1ではどうにもならない!)

「どうした、それでも仮面ライダーか!」

「ぐぁっ!」

 

が、いざ戦いが始まってみると、実力差は『悪い意味で』明らかになった。

対峙する異形は嘗て仲間達と共に死闘を繰り広げたコカビエルと同等と言っても過言では無い強さを有している一方、自らは初期形態であるレベル1。

(他のライダーと比べて)鈍重な立ち回りで繰り出される攻撃は簡単にいなされ、一方で異形が放つ強烈且つ素早い打撃の数々は防ぎ切れず、みるみるうちに胸のディスプレイに表示された体力ゲージが減っていた。

異形との実力差に焦りを隠せないレーザー、そんな彼女に、異形は何処か失望した様子で言い放ち、吹っ飛ばした。

 

「俺の知っている仮面ライダーはもっと強い人間だった。力だけでなく、心もそうだった。どんな苦難に直面しようと、あらゆる手を、それこそ大きな危険を伴う手段も講じて立ち上がり、突っ走って来た!俺の友達は、今のお前の如く簡単に足を止めたりしなかった!」

 

受け身を取れず倒れ伏すレーザーに向けて喝を入れるかの様に言葉を重ねる異形、

 

「言ってくれるじゃないか。確かに、私としたことが弱気になっていた様だ。戦う前から、敵の力量を図る前から勝てないと決めつけていては、勝てる戦いにも勝てないし、イッセーの、リアス部長の夢を叶える為の助けにもなれない。

 

後ろ向きに考えるのはもう止めだ、今は全力で突っ走る!」

 

その言葉で目が覚めたと、ネガティブ思考になっていた自分に「このままではいけない」と気づけたと言わんばかりに、レーザーは立ち上がった。

 

「『FULL THROTTELE DRIVE』、まさに突っ走って行けと言わんばかりのタイトルだね」

『フルスロットルドライブ!』

 

そんな彼女に共鳴するかの様に、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいて取り出すと、既にラベリングされていて、『FULL THROTTELE DRIVE』というタイトルと、赤をベースカラーとし、車を模したであろう仮面ライダーと思われる存在がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを起動すると、レーザーの背後に『FULL THROTTELE DRIVE』のタイトル、車を模した仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、

 

「7速!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走!激走!独走!暴走!バクソウバイク!アガッチャ!ブブンブン!ブンブブン!脳細胞がトップギア!』

 

それをゲーマドライバーに装填、レバーを開くと、身体を覆っていたパーツが飛び散った後、変形する事無く浮き上がると同時に、タイヤを思わせるエネルギーが周囲に展開、其処にミニカーらしき物体が集結すると、腕と思しき物と脚と思し物、2対の赤いパーツが形成しそのまま装着、そして左肩部分にタイヤ型のパーツが装着され、レーザーの新たなる形態――ドライブバイクゲーマーレベル7となった。

 

「化け物よ、ひとっ走り付き合え!」

『カモン!モンスター!レッカー!トラベラー!タイヤカキマゼール!タフガイ!』

「その姿、ドライブの力を…!

良いだろう、その走りに付き合おう!」

 

新しき姿と化し、決め台詞を言いながら左腕に装備されたブレスレット状の装備を操作したレーザー、すると某2020年大河ドラマの主役である武将の子孫らしいマルチリンガルなナレーターと思しき声が発せられると共に、3つのタイヤがレーザーの左腕を通ってタイヤパーツと融合した。

その姿から誰かを思い出したのだろうか、何処か感慨深げに呟いた異形だったが、レーザーの決め台詞に反応する形で、再び突進、戦いが再開された。

其処からの戦いは、先程とは違って互角、いやレーザーが若干有利な展開と言って良い物だった。

互いに相手の攻撃をさばきながら打撃を繰り出していく両者、だがさばききれないと判断したのかノーガードの殴り合いに発展、立ち回りで追いついた上にパワーも上回ったのかレーザーが押して来た。

 

「はぁっ!」

「ぐぅっ!」

「これで決める!」

『ガシャット!キメワザ!フルスロットル・クリティカル・ストライク!』

「やぁぁぁぁぁ!」

「ぐぉぉぉぉぉ!」

 

そして胸部を狙ったストレートパンチが炸裂、異形が怯んだ隙に何時も通りの手順で左腰のスロットに装填してその力を解放、飛び蹴りを放った。

 

「それで良い、それでこそ仮面ライダーだ!」

 

その一撃をまともに食らった異形は、ネガティブな思考を振り払ったレーザーを評価するかの様な言葉を残し、爆発した。


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