ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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61話_次のGameに向けて…

「君達も知っての通り、夏休み終盤に若手悪魔同士でのレーティング・ゲームが行われる事となった。その組み合わせだが、リアス殿の眷属はソーナ殿の眷属と戦う事になっている。それに向けて我々グリゴリが、其々の陣営に人員を送り、指導を行う。リアス殿、貴方の陣営にはこの私バラキエルが付く事となった。宜しく申し上げる」

「まさかいきなりソーナと対戦する事になるなんてね…

分かりました、バラキエルさん。宜しくお願いします」

 

会合から一夜明け、リアス達はグレモリー家の邸宅、その庭に集合し、グリゴリから指導者として送り込まれたバラキエルと顔を合わせていた。

どうやら夏休み終盤に行われるレーティング・ゲームに向けて各陣営に指導者を送り込んだらしい、バラキエルもその1人との事だそうである。

 

「お父様、1つ質問良いでしょうか?」

「どうした、朱乃?」

「お父様はグリゴリの最高幹部、本拠地を空けて大丈夫なのですか?その、運営面とか…」

 

だが最高幹部であるバラキエルがその役目に任ぜられた事に、彼の娘である朱乃が違和感を覚えた。

朱乃が言う様に、バラキエルはグリゴリの最高幹部、その役目から三大勢力の首脳会談に参加し、何度も場を凍り付かせる発言をしたアザゼルに対して、その度に鉄拳制裁を下した事は記憶に新しい。

 

「ああ、それか。グリゴリの運営に関してはアザゼル(バカ総督)シェムハザ(副総督)が手を尽くすから問題ない、それより、中々会う時間の取れない娘と夏休みを過ごして来い、と当のシェムハザから半ば強制的にこの件を任されたのだ。しかしあのバカを、アイツ1人に任せて本当に大丈夫なのだろうか?今回の件も自分から、しかも皆に黙って行こうとしていた様だし…」

「まあ、アザゼルですからね。お察しします、バラキエルさん…」

 

そんな娘の質問に、問題ないというシェムハザの言葉を伝えたバラキエルだったが、やはり内心は空けて来たグリゴリの事が(主にアザゼルのサボり癖に対して)心配だった様だ。

 

「さて、グリゴリにまつわる裏事情についてはもう良いだろう、指導の話に戻る。今は君達も知っての通り、禍の団という存在がある。よってレーティング・ゲームのルールに沿った戦術面では無く、其々の能力強化に重点を置こうと考えているが、何か提案はあるだろうか?」

「はい、バラキエルさん。提案、というより要望なのですが…」

「何だね、イッセー君?」

 

だがもう冥界の、グレモリー家の邸宅に来た以上はどうにもならないとバラキエルは切り替え、今後の指導方針を説明し始めたが、其処で皆からの提案を求めた所、真っ先に一誠が挙手をした。

 

「実を言うと、その禍の団への対策で今、新しいライダーガシャットを開発しています。出来れば其方に時間を割きたいのですが…」

「良いとも、先の襲撃でライダーガシャットの有用性は知られている、それ以上の戦力となるガシャットを作ってくれるとあらば有難い。そう思って君へのメニューは、この様に軽めの、基本的な物となっている。これも、時間があればで良い」

 

一誠の要望は、ライダーガシャット開発の為の時間捻出。

だがバラキエルは想定していた様で、最初から軽めのトレーニング内容になっていた。

 

「さて、他に提案はあるか?

 

無い様だな、では残るメンバーのメニューを今から発表する。まずはリアス殿」

「はい、バラキエルさん」

「と言っても、リアス殿の魔力、頭脳、そして仮面ライダーゲンムとしての運動性能、どれをとっても文句の付け様がない。このまま行けば何をせずとも成人を迎える頃には、最上級悪魔の候補にもなるだろう。然し今すぐにでも強くなりたい、それが貴方の望みと聞いたが?」

「はい。魔王になると宣言した以上、悠長に構えていては『本気で魔王を目指しているのか?』と周囲から厳しい目で見られるのは明らかですから」

「ならば、このメニューをきっちりとこなす事だ」

 

他に意見は無かった様で、それを受けてバラキエルは個人別の指導内容を伝える。

まずはリアス、魔王を目指すと決めた以上、精進しなければと意気込む彼女に、バラキエルは指導方針が書かれた紙を手渡すが、

 

「あの、これ殆ど基本的なメニューだと思うのですが…」

「それで良いのだ。貴方の才も、実力も既に上級悪魔でもかなりの物、総合的に纏まっている。故に凝った手を加えてはその強さが崩れかねない。よって、基本的なメニューをこなす事が重要なのだ」

 

書いてある内容はほぼ全て基本的なトレーニングメニュー、そんな内容に何処か困惑した様子のリアスに、バラキエルがその真意を伝えると、リアスは納得したのか頷いた。

 

「次に朱乃」

「はい、お父様」

「仮面ライダースナイプとなったお前は、雷光の力を機関砲の如くばら撒いたり、ミサイルの如く強烈な一撃を見舞ったりと、状況に応じた攻撃が行える。だが何れの攻撃であっても、お前自身が有する雷光の強さが欠かせない。よってお前の力を高める方針で行くぞ」

「分かりましたわ」

 

娘である朱乃への指導方針は、彼女に宿る雷光の力を高める、という単純明快な物だった。

 

「続いて祐斗」

「はい」

「君はあの聖魔剣を生み出す禁手を継続して使える様にならねば。仮面ライダーブレイブに変身していようといまいと、あの力が重要な物であるのは間違いないからな。目安としてはまず、禁手を解放した状態で1日、それが出来れば、実戦に明け暮れる中で1日…

目標は一週間持続出来る様にする事だな。神器についてはグリゴリ本部と連絡を取りながら私が行う方針だが、実戦、剣術の方は確か、君の師匠である沖田総司殿に習うそうだな?」

「はい、一から鍛え直して貰う予定です」

「「ゑ?」」

 

祐斗は、エクスカリバーに関連した騒動の中で至った禁手『双覇の聖魔剣』を持続させる事と、己の剣術を磨く事と決まったが、其処で日本人である一誠とイリナにとって意外な名前が出た。

 

「沖田総司って、新撰組一番隊を率いていた、あの沖田総司…?」

「剣術においては、新撰組の中でも右に出る者はいないって言われていた剣豪だよね?あれ、でも結核を患った事で若くして亡くなったって聞いたけど…?」

「ああ、そういえばイッセー君達は知らなかったのだな。実際そうなのだが、生き永らえようと様々な術式に手を出す中で偶然、サーゼクス殿を召喚したらしく、その縁でサーゼクス殿の騎士に転生したそうだ」

「まさかそれ程の剣士を師としていたとはな…」

 

まさか史実において、若くして死んだと言われていた筈の剣士、幕末において反幕府勢力を取り締まる組織『新撰組』にて最も強いと言われた剣士、沖田総司が実はサーゼクスの眷属として生きていたとは思わず、驚きを隠せない一誠とイリナ、一方で外国生まれの外国育ちであるが故に沖田総司について知らなかったゼノヴィアは、それ程の腕前を持つ剣士の存在に関心を寄せていた。

 

「続いて黒歌と白音」

「はい!」

「はいにゃ!」

「黒歌の場合はベースが出来ているし、応用力も十分だ。様々な術式の扱いや、仮面ライダーパラガスの特性を活かしたトリッキーな立ち回り…

故に私から、此処をこうしろという必要は無いと考える、寧ろそれは逆効果だ。だから黒歌には、白音のコーチをお願いする。人に物事を教える中で、自分もまたその物事の極意へと触れてゆくのだ。白音も、戦車としての才は十分、戦い方も仮面ライダーノックスの特性に合った物だ。

 

だが、今のままでは他のメンバーで良い、となってしまう」

「っ!は、はい、それは、分かっています…!」

 

続いて黒歌・白音姉妹の番となったが、其処でバラキエルは白音に、厳しい現実を突きつけた。

バラキエルがそう言い放つのも無理はない、白音が変身するノックスは、格闘ゲームをモチーフとしているが故に近距離での肉弾戦に特化した仮面ライダーではある(遠距離攻撃手段が無い訳ではないが)が、今のリアス眷属においては接近戦において、オフェンスという立場において、白音以上に力を発揮する者が多い。

祐斗が変身するブレイブは、神器による聖魔剣の生成と、騎士としてのスピードを活かした立ち回りで相手を圧倒できるし、王である為に本来は前線に出ないリアスが変身するゲンムも、滅びの魔力を纏わせた防御無視の斬撃や銃撃で妨害を突き破れる。

そういったライダー達に比べると、ノックスはパワーこそ勝るが、それ以外に秀でた所を見出しにくい、バラキエルはそう指摘したが、それは当の白音も分かっていた。

 

「ただ敵陣に殴り込むだけが戦車では、仮面ライダーノックスではない。君は基礎トレーニングに加え、黒歌の指導の下で様々な術式を学ぶのだ」

「了解なのにゃ」

「分かりました…!」

 

それ故か、妹が厳しい事を言われていて尚冷静な黒歌も、当の白音も、バラキエルが示す方針に頷いた。

 

「続いてアーシア」

「はい!」

「当初グリゴリでは君に、身を守る術を覚えさせた方が良いのではないかという話もあった。戦場において君の様なヒーラーは重要な存在、故に敵は君を狙ってくるだろうから、と。だが仮面ライダーポッピーとしてあの場で戦った姿を見て、それはもう十分だと理解した。故に長所を伸ばす方向で行こうと思う。神器による回復のオーラ、あれを広範囲に広げたり、遠方へと飛ばしたりといった応用を覚えて貰おう。後は基礎トレーニングで体力と魔力を上積みするんだ」

「はい、分かりました!頑張ります!」

 

現状、アーシアの神器『聖母の微笑』は回復したい相手に近寄らないとその効果が及ばないが、これでは先に挙げた様に、回復したい相手へと向かう隙を突かれかねない、それを防ぐ為のトレーニング方針にアーシアはやる気十分だ。

 

「続いてギャスパー」

「はい!」

「随分と元気の良い返事だな、朱乃から聞いていた通りだ。嘗て誰もが匙を投げる程だったあの様子から立ち直らせるとは、クロト殿は一体どんなメンタルケアを施したのか…

とはいえ、君の持つ神器は強力な分、少しでも扱い方を間違えれば危険極まりない代物である事に変わりはない。よって君には基礎トレーニングの他、神器を使いこなせる様、場数を踏んで貰おう」

「分かりました!勝利のイマジネーション全開で頑張ります!」

 

ギャスパーがリアスの眷属になってからつい数か月前までの引きこもり振りも、此処最近の異様とも言える快活な振る舞いも、全て朱乃を通じて知っていたバラキエル、そんなギャスパーを此処までにしたクロトの手腕に何処か興味を覚えながらも、やはりギャスパーの神器『停止世界の邪眼』は暴走の危険性を秘めた物、使いこなす為の場数は欠かせない、と指導方針を示した。

 

「続いてイリナ」

「はい」

「イリナ自体はエクソシストとしての、剣士としての戦い方で言えば十分だ。擬態の聖剣を使っていたが故の一級品な技術とスピード…

だが仮面ライダー風魔はステルスゲームをモチーフとした仮面ライダー、それだけでは特性を活かせるとは言えない。奇襲、諜報、トラップ配置、情報発信。こういったスパイ活動、まさに忍者と言える行動こそが風魔の戦い方だ。それらを習得して貰おう」

「了解しました!」

 

尚、イリナのトレーニング内容の中に『かくれんぼ』『缶蹴り』の文言が、バラキエル曰く「アザゼルの筆跡」で入っていたそうで、この件でバラキエルは後でアザゼルを〆ると決意したのは余談。

 

「そしてゼノヴィア」

「私か」

「正直、君のメニューが一番苦労した。何せ、バイクになって戦うなど異例だからな。流石にバイクでの戦いに慣れろと言うのは、この短時間では少々無理がある。よってまずは、デュランダルの扱いに慣れる事だ。仮面ライダーレーザーで戦うにしても、デュランダルは重要な武器だからな」

「分かった、やってみよう」

 

こうして各メンバーへの指導方針が伝えられ、各自其々のトレーニング内容をこなし始めた。


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