ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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60話_リアスのDreamは…

先程のゴタゴタはサイラオーグの介入等で収まり、その際にシーグヴァイラの魔力による攻撃でボロボロになった待合室も修復され、遅れていたソーナ達や、化粧直しの為に場を離れていたシーグヴァイラも改めて到着、後は会合の始まりを待つばかりとなった中、

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス、大公アガレス家の次期当主です。先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」

 

それまでの時間潰しを兼ねてか、今回の会合に参加する悪魔、その王達が自己紹介を始め、先のゴタゴタへの謝罪もあってシーグヴァイラが最初に挨拶をした。

 

「ごきげんよう。私はリアス・グレモリー、グレモリー家の次期当主です」

「私はソーナ・シトリー、シトリー家の次期当主です。宜しくお願いします」

「俺はサイラオーグ・バアル、大王バアル家の次期当主だ」

「僕はディオドラ・アスタロト、アスタロト家の次期当主です。皆さん、どうぞ宜しく」

 

それに続いて、リアス達他の悪魔達も挨拶をし、

 

「俺はゼファードル・グラシャラボラス、グラシャラボラス家の次期当主『代理』だ。本当だったらこの場には、次期当主である俺の兄貴が来る筈だったんだが、お前らも知っての通り、先日グラシャラボラス家で一悶着あってな、それに兄貴が巻き込まれちまって、死んじまったんだ。で、俺が今回の会合に次期当主の代理として来たって訳だ。まあ、宜しく頼むな」

 

そして最後、会合に参加する悪魔の中で唯一、次期当主『代理』扱いであるゼファードルが、その経緯も含めて挨拶をした。

それで丁度時間となったのか、

 

「皆様、大変長らくお待たせ致しました。どうぞこちらへ」

 

使用人と思しき悪魔が待合室へと姿を現し、リアス達を案内した。

 

------------

 

「今回の会合に良くぞ集まってくれた、次世代を担う若き悪魔達よ。今回、貴殿らの顔を改めて確認すべく、集まって貰った。これは一定周期毎に行う、若き悪魔を見定める会合でもある」

「早速、やってくれた様だがな」

 

コンサートホールからステージを取っ払った様な配置をしている会場、その一番低い場所で並ぶ若手悪魔達を見下ろすかの様に着席したサーゼクス達四大魔王と、その他の上層部と思われる悪魔の面々、その中の1人である初老男性と思しき悪魔の言葉で、会談は始まった。

尚、先のゴタゴタを耳にしていたのか、同じく初老男性と思しき他の悪魔が、ゴタゴタの原因であるシーグヴァイラに向けて皮肉たっぷりに声を掛け、それを聞いたシーグヴァイラは俯いていたがこれは余談である。

 

「君達は家柄、実力、共に申し分ない。文字通り、次世代を担うであろう悪魔だ。故に、デビュー前にお互い競い合い、力を高め合って貰おうと思っている」

「我々もいずれ禍の団との戦いに投入される、そういう事ですね?」

 

会合が始まったのを受けて、若手悪魔の面々を見回しながらそう言葉を掛けるサーゼクス、其処へサイラオーグが、禍の団という今現在の時点でデリケート過ぎる話題を挙げて質問する。

 

「それはまだ分からない。だが私達としては、出来るだけ若手悪魔を投入したくは無いと考えている」

 

それに対するサーゼクスの答えは『NO』であった。

 

「何故です?我らは若いとは言えど、悪魔勢力の一端を担っております。冥界の為に死力を尽くしたいという想いは皆同じです。それにこの場には、件のテロ組織と戦い、勝利し、生きて帰った者達もおります。この歳になるまで、これ程の力を付けるまで先人の方々からご厚意を受けて尚、何も出来ないと言うのは…」

「サイラオーグ・バアル、貴殿のその心意気は認めよう。だが無謀だ。何よりも、次世代の悪魔を失うのは余りにも大きいんだ。理解して欲しい、君達は君達が思う以上に、我々にとっては宝なんだ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている。

 

人間界にこの様な言葉がある。勇気と無謀を混同してはいけない。この言葉を、肝に銘じて置くんだ」

 

その答えに納得がいかないと言わんばかりに食いついたサイラオーグを窘める様にサーゼクスがそう言葉を掛ける、それには流石のサイラオーグも、渋々ながら納得した様だ。

サイラオーグの質問は終わったと判断したのか、その後は悪魔勢力の情勢や、レーティング・ゲームに関する仕組み等の小難しい話が続いた。

 

「さて、長い話に付き合わせて申し訳無かった。なに、先程も言ったが私達は若い君達に、私達なりの夢や希望を見出しているのだよ。其処だけは理解して欲しい、君達は冥界の宝である事を」

 

それはサーゼクスも理解していたのか、その言葉で一連の話を締め括り、

 

「最後に其々の、今後の目標を聞かせては貰えないだろうか?」

 

若き王であるリアス達6人に、そう問いかけた。

 

「俺は魔王になる事が夢です」

 

それに、最初に答えたのはサイラオーグ。

 

「大王家から魔王を輩出したとあらば、前代未聞だな」

「俺が魔王に相応しいと冥界の民が感じれば、必ずやそうなるでしょう」

 

その答えに感嘆の息を漏らし、そう呟く上層部の悪魔。

その呟きにもきっぱりと言い切ったサイラオーグ、初っ端からシンプルなれどインパクト十分な宣言をした彼に「先越されちゃったわね」と苦笑いを浮かべながらも、次にリアスが答えた。

 

「私もまた、魔王になる事が夢です。魔王となり、冥界をより良き世界へと導く、悪魔社会を皆様と共に発展させる。それが、私が果たすべき夢だと考えております」

 

リアスの答えもまた、サイラオーグと同じく魔王になる事、だがそれだけでは印象に欠けると思ったか、魔王になってからについても(思いっきりぼやけた形だが)付け加えた。

 

「兄妹揃って魔王となれば、これもまた前代未聞ですな」

「既に兄が魔王である以上、そのハードルはサイラオーグ以上であると考えています。並大抵の実力で魔王になっては『兄妹魔王にしたいが為の依怙贔屓』と捉えかねない、という考え故に。だからこそ、そのハードルを飛び越えて見せましょう」

 

だがそんな付け足しはいらなかった様だ、その目標に先程と同じく感嘆の息を漏らす者が多数を占めた。

 

「私の目標は、冥界にレーティング・ゲームの学校を設立する事です」

 

その後もゼファードル達が目標を口にし、最後にソーナが答えた、が、

 

「レーティング・ゲームを学ぶ学校ならば、既にある筈だが?」

 

その答えに、上層部の面々は眉をひそめ、その真意を問い掛けた。

 

「それは上級悪魔や、一部特例の悪魔の為の学校です。私が建てるのは下級悪魔等、全ての悪魔が平等に学ぶ事の出来る学校です」

 

それに、己の考えを包み隠さず宣言するソーナ。

人間界での生活を通じ、今の悪魔社会が抱える問題は何なのか、それを解決するにはどうすれば良いのか、それらを踏まえてソーナが思い至ったのが、現代の人間界におけるそれの様な差別なき学校。

そんなソーナの考えを、彼女の眷属達は誇らしげに聞いていたが、

 

『ハハハハハハハハ!』

 

それを聞いた上層部の面々は、喜劇や漫才等を見ていた観客の如く爆笑していた。

 

「これは傑作だ!」

「成る程、夢見る乙女という訳ですな!」

「若いと言うのは良い!然しシトリー家の次期当主ともあろう者が、その様な夢を語るとは。此処がデビュー前の顔合わせで良かったと言う物だ」

 

笑いながら、ソーナの夢を馬鹿にする上層部の面々。

 

「私は本気です」

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常。その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事になりますぞ。幾ら悪魔社会が変革の時期に入っているとは言え、変えて良い物と悪い物があります。全く関係のない、たかだか下級悪魔に教えるなど…」

 

そんな上層部の面々に毅然と言い放つソーナだったが、それすらも非難の声が上がった。

 

「黙って聞いていれば何でそんなに会長の、ソーナ様の夢を馬鹿にするんですか!こんなの可笑しいですよ!叶えられないなんて決まった事じゃ無いじゃないですか!俺達は本気なんですよ!」

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の躾がなってない様ですな」

「…申し訳ございません、後で言い聞かせます」

 

そんな状況に我慢ならなかった元士郎が反論したが、そんな主張も軽くあしらわれた。

更にはその言葉に同調するかの様に、リアスに朱乃、白音に黒歌までもが、今の発言をした元士郎を、まるで養豚場の豚を見るかの様な目で見ていた、が、これは彼女達が上層部の面々と同じような考えだからという訳ではない。

リアス達は忘れてなどいなかったのだ、嘗て駒王学園で顔合わせをした際、元士郎が一誠の事を『史上最悪の性犯罪者(兵藤誠次郎)の兄』という偏見を基に、ボロクソに罵倒した事を。

自らの想い人である一誠自身の人となりを見もせず風評だけをベースに対応していた元士郎、そんな偏屈で浅はかで愚鈍な輩がソーナの夢を語っても薄っぺらい物だ、リアスも朱乃も、白音も黒歌も、そう言わんばかりに元士郎を見ていた。

尚、イリナとゼノヴィアは当時その場にいなかったが故、アーシアは生来の優しさ故にそうしなかった。

 

「これが、この様な体たらくが、悪魔社会の現実なのか…」

 

一方、そんな光景を目の当たりにした一誠は、頭を抱えながら、そう小声で呟いていた。

想像を絶する程の、今の悪魔勢力が抱える腐敗振りを嘆くその呟きは幸か不幸か、誰にも聞かれることは無かった、が、

 

「もう!おじ様達ったら寄って集ってソーナちゃんを虐めて!私だって我慢の限界があるのよ!これ以上言うなら、私もおじ様達を虐めちゃうんだから!」

 

悪魔勢力を引っ張る存在にも、今の状況をおかしいと思う存在が(着眼点はともかく)いない訳では無かった。

自らの妹であるソーナがボロクソに批判される事に我慢ならなかったのか、魔王であるセラフォルーが涙目になり、身体に魔力を纏わせながら叫んだ。

その剣幕には流石に上層部の面々もタジタジとなる。

 

「そうだ!ソーナちゃんがレーティング・ゲームに勝てばいいのよ!ゲームで好成績を残せば文句は言わせないんだから!」

「それは良いな、尤も近日中に君達、若手悪魔同士によるゲームをする予定ではあったがね。アザゼルが各勢力にいるレーティング・ゲームのファンを集めて、デビュー前の若手悪魔による試合を観戦させる名目もあったし」

 

そんなセラフォルーの提案も(影響したかと言えば無いと断言は出来るが)あって、夏休み終盤でのレーティング・ゲームの開催が決定した。


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