ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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59話_ライバル、Arrival!

リアス達が冥界のグレモリー領へと帰省して2日目、この日は前以て知らされていた若手悪魔の会合へ参加する為、サーゼクス達魔王が直接統治している領地、魔王領の都市ルシファードへと来ていた。

ルシファード、其処は嘗ての魔王ルシファーの一族が住処としていた事からその名が付けられた冥界の旧首都であり、それ故に今は魔王領となり、サーゼクス達の統治によって人間界のそれと余り変わらない現代的な都市と言わんばかりの光景になっていた。

其処へ、冥界へと来た時と同様、電車で移動したリアス達眷属一行だったが、

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!リアス姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

まるで大スターを迎えるかの様な歓声、事実この冥界においてトップアイドル級の知名度を有するリアスを迎えるべくホームに集結した悪魔の大群に捕まっては会合に遅れてしまう、よってこの会合での案内の為に送られたらしい黒服男性達に守られながら地下鉄で移動、会場の真下に建てられた駅のホームに到着した。

 

「皆、何が起こっても平常心を保って頂戴ね。これから私達が出会うのは、いわば私達にとって将来のライバルよ。無様な姿を見せては、これからずっと軽く見られるなんて事になりかねないわ」

 

其処から会場へと運ぶエレベーターで黒服男性達と別れたリアスは、乗り込む間際、己の眷属達にそう伝える、その顔は今から戦いに臨むと言わんばかりの気合に満ちた物だった。

それを受けて気を引き締める眷属達、そんな彼女達を乗せたエレベーターは程なく会場に到着した。

 

「サイラオーグ!」

 

其処で見知った顔と出会ったのだろう、リアスが声を掛けた。

 

「久しぶりだな、リアス」

「ええ、懐かしいわ。変わらない様で何よりね。あ、初めての人もいたわね。彼は、サイラオーグ、サイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟なの」

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

その知り合いと思しき、黒い短髪、紫の瞳を有した野性的な顔立ち、プロレスラーと言わんばかりのがっちりした体格の青年――サイラオーグが、リアスの紹介に応ずる形で彼女の眷属達に名乗った。

バアル家とは、リアスの生家であるグレモリー家や、ソーナの生家であるシトリー家ら『元72柱』と呼ばれる、悪魔勢力において由緒正しい家系の中でも最も格が高く、魔王に次ぐ『大王』の地位を有した家系である。

リアスとサーゼクスの母親であるヴェネラナは実を言うとこのバアル家の生まれであり、リアス達が滅びの魔力を有しているのはこのバアル家に連なる血筋故である。

 

「ところで、サイラオーグ達は何故こんな通路にいたのかしら?」

「ああ。下らないから出て来たんだ」

 

それはともかくとして、まさかエレベーターから出て来て直ぐに鉢合わせするとは思わなかったのか、リアスが何故、待ち合わせ場所として手配された奥の待合室ではなく、此処で待っていたのかをサイラオーグに尋ねた。

 

「下らない?他のメンバーも来ているのかしら?」

「アガレスとアスタロトの跡取り、後はグラシャラボラスが既に来ているんだが…」

 

その訳をサイラオーグが話し始めると、

 

「…全く、だから開始前の挨拶などいらないと進言した筈なのだが」

 

その背後、待合室と思しき場所から巨大は爆発音が聞こえた。

それに何処か呆れた様子で嘆息しながら待合室へと向かうリアスとサイラオーグ、2人の眷属達もまたそれに続くと、

 

「ゼファードル、さっきから黙っていれば言いたい放題、こんな所で戦いを始めても文句は言えないのではなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」

「ハッ!言いたい放題なのはテメーの方だろうが、このクソアマ。俺は事実を突き付けてやったまでだぜ、それをまあいきなり魔力をブッパしやがって。テメーの所為で会場がぐちゃぐちゃじゃねぇか、魔王様達もこの会合に来られるってのによぉ。これだからアガレス家の甘ちゃんは短気で嫌だねぇ。とどのつまり、大公家の跡取りって言っても一皮むけば単なる世間知らずのおバカ姫ってか。なら仕方ねぇ、この俺様が、テメーが井の中の蛙だって事を教えてやらねぇとな」

 

待合室は既にボロボロと言うしかない惨状、テーブルも椅子も粗方壊され、その中央ではこの惨状を引き起こしたと思しき2人の悪魔が睨み合い、其々の背後で控える2人の眷属と思しき悪魔達もまた只ならぬ様子で構えを取っていた。

 

「此処は若手悪魔が軽く挨拶をする場として設けられたそうだが…

案の定と言うべきか、血気盛んな若手悪魔を一緒にした途端、この有様だ。此処に着いて少ししたら、アガレス家の次期当主シーグヴァイラと、グラシャラボラス家の次期当主『代理』ゼファードルがどうもやり合い始めたんだ…」

「あ、アイツは!?」

 

眼鏡を掛け、青いローブを来た高貴そうな風貌とは裏腹に、如何にもマジギレしていますと言わんばかりに殺気をまき散らしながら物騒な言葉を並べる女性――大王バアル家に次ぐ『大公』アガレス家の次期当主であるシーグヴァイラに対し、上半身裸、履いているロングパンツは装飾品だらけ、緑の短髪に術式を思わせるタトゥーを刻んだヤンキーの様な出で立ちで、獲物を見つけた猛獣の如き構えを取りながらシークヴァイラを馬鹿にする男――元72柱の一角であるグラシャラボラス家の次期当主『代理』との事らしいゼファードル。

2人の言葉をそのまま受け取るならば、どうやらこの惨状は、ゼファードルの挑発にキレたシーグヴァイラが、彼を狙って放ったらしい魔力の攻撃によって引き起こされた物らしい。

このまま戦いは始まる、そう思われたが、意外な形で幕引きとなった。

 

「んぁ?おお、ISじゃねぇか!久しぶり!」

「Z!?Zじゃないか!ああ、久しぶりだな!」

 

2人のうちのどちらかが知り合いだった事に驚いた一誠、その声に反応したゼファードルがその方向に振り向くと、どうやらゼファードルも一誠の事を知っていた様で、親しげに話しかけた。

そう、ゼファードルこそが、Lことレイヴェルと肩を並べる天才ゲーマー、Zの正体だったのだ。

 

「LからISが悪魔に転生したとは聞いていたが、まさかこの場で会うとはなぁ、世間は狭いぜ」

「まあ、な。ところでこの惨状、一体何があった?」

「ああ、それな。あのアガレス家の甘ちゃんがよぉ、ゲキトツロボッツで勝負しねぇかって持ち掛けて来たんだが、アイツのランクがCの2だったんでさぁ、どれ位のハンデ付けた方が良いかって聞いたんだ。そしたら何を勘違いしたのか、ハンデなんていらないとか抜かしやがったんだよ。こちとら天才ゲーマーZとしてブイブイ言わせている身、ゲキトツロボッツのランクも最高であるSの1、身の程知らずも良い所だと、出直せと言ってやったら、これだよ。だろ、アスタロト家の兄ちゃん?」

「ああ、此処で一部始終を見ていたから、間違いないよ」

 

久しぶりに会い、親しく言葉を交わす2人だったが、それもそこそこに、この惨状の訳を聞く一誠。

それを受けてゼファードルが訳を話し、隅っこの席でお茶を飲んでいた、緑髪で優し気な雰囲気の悪魔に賛同を求め、彼もまた応じた。

 

「アガレス家の姫シーグヴァイラよ、この件は明らかに、其方に非がある。これ以上、事を荒立てるなら俺が相手になろう。これは最後通告だ」

「くっ…!

申し訳ありませんでした…!」

 

元72柱の一角アスタロト家の次期当主と思しき男性の証言もあってか、明らかにシーグヴァイラが悪いと言いたげな空気となる、そしてサイラオーグが強烈なプレッシャーと共に言い放った通告が決め手となったか、彼女は悔しそうにしながらも謝罪し、化粧直しの為かその場を離れていった。

 

「おぉ、こりゃあスゲェ…

助かったぜ、バアル家の兄ちゃん。流石に落ちこぼれから這い上がって、バアル家の連中をボコして次期当主の座を勝ち取った奴は違うなぁ。アガレス家の甘ちゃん、尻尾巻いて逃げやがったぜ」

「構わん、此処で間に入るのも大王家次期当主の仕事だ。然しゼファードル、お前も言葉を慎め。今回は明らかに、シーグヴァイラに非があるとしても、お前の言葉が火に油を注いだと言っても過言ではない」

「分かったよ、今度から何とかするぜ」

 

そのプレッシャーは、向けられていないゼファードルも感じ取れた程、その強烈さに感心しながら、この場を収めたサイラオーグに礼を言った。

とはいえゼファードルに何のお咎めも無しかと言えばそうでもない、終始シーグヴァイラを挑発していた彼にも、その言動を直すよう釘をさされた。


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