「では始めるぞ、ギャスパー。試合とは言え、手加減はしない!」
「はい、ゼノヴィア先輩!お互い、全力で戦いましょう!」
『ハコニワウォーズ!』
『バクソウバイク!』
ゼノヴィアがステージ・セレクト機能を用いて展開した、サーキットを思わせるバトルフィールド。
その中心部で対峙するゼノヴィアとギャスパーは其々、己が仮面ライダーへ変身する為のガシャットを起動し、
「変身!」
「
『『ガシャット!』』
ゼノヴィアは左足を軸にターンを決めながら、一方のギャスパーは真横に傾けて構えていたガシャットの向きを変えて、と言った感じで、各々の変身ポーズを取りながらガシャットをゲーマドライバーに装填した。
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』
まずはゼノヴィア、ゲーマドライバーのレバーを開かないまま、周囲を回るパネルの中から、他のパネルとは違ってメカメカしい外見のキャラクターが映ったパネルを、デュランダルで斬り付ける様に選択、『Select!』の文字と共に、バイクを思わせる機構が随所に取り付けられた姿の仮面ライダー――仮面ライダーレーザー・バイクゲーマーレベル1の姿に変身した。
『ガッチャーン!レベルアップ!ハコニワウォーズ…!』
一方のギャスパーはレバーを開き、クロノスの顔が映ったパネルを選択、『Select!』の文字と共に仮面ライダークロノスのレベル1の姿に変身、その直後に登場した緑色のパネルを通過すると共に異空間へと転移、戦場と思われる異空間の司令室らしき場所で指揮を執っている状況で突如、腹部に銃撃を受けて身体が爆散、したかと思ったら残った頭部から新しい身体が、仮面ライダークロノス・ウォーズゲーマーレベル2としての身体が出現、そのまま帰還した。
「ノリ良く行かせて貰おう!」
「貴方は、絶版です!」
其々の仮面ライダーに変身したゼノヴィア――レーザーと、ギャスパー――クロノス、2人は己の武器を構え、決め台詞と共に互いに飛び掛かった。
まずはレーザー、両腕に盾の如く取り付けられたバイクのタイヤ型パーツと、変身前から所持しているデュランダルを正面に構え、真正面に斬りかかる。
一方のクロノス、ゲンム達が所有しているガシャコンバグヴァイザーの兄弟機である青緑色のガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザー
「流石です、ゼノヴィア先輩!レベルはこっちが上なのに、それを諸ともしない立ち回りで食いついてくる…!
流石に、教会のエクソシストとしてもまれて来た事はありますね!」
「そっちこそ、碌に鍛えていない軟弱な奴と思ったが、中々の立ち回りだ。まさか私が押されるとはな、レベル差もあるとはいえ、流石は仮面ライダーの『王』を名乗るだけはある!」
まずはデュランダルとガシャコンバグヴァイザーⅡの打ち合い、それでチェーンソーモードとなっているバグヴァイザーの特性を理解したレーザーは、バグヴァイザーの斬撃を両腕のタイヤパーツで受ける立ち回りに切り替え、クロノスを斬り払おうとする。
だがそれもクロノスは見越していた、タイヤパーツで受け止められた瞬間、チェーンソーにおける事故の要因として良く上げられるキックバック(木を切れなかった事等によって行き場を失った駆動力によってチェーンソーが反発し、使用者へと跳ね返る現象)を敢えて起こし、その勢いで身体を無理やり回転させ、デュランダルの斬撃を跳ね飛ばす。
そんな互角の戦況だったが次第に、レベルで劣るレーザーが押され始める。
レベル1の仮面ライダーは共通して、そのゆるキャラと表現出来るずんぐりむっくりとした体躯故に、パワーこそ引けを取らないが、立ち回りが鈍重になりがちなのだ。
故にレベル2であるクロノスの身軽な立ち回りに、レベル1のレーザーは対処し切れなくなり、胸のディスプレイに表示されている体力ゲージも攻撃を食らった事によるダメージの影響で少しずつ減って来た。
とはいえこれはレーザー自身も分かっていた事、では何故レベル2にならないのか。
別にレーザーは、変身前が如何にもひ弱そうだったり、戦闘のせの字も経験していなさそうだったりなクロノスに、教会のエクソシストとして数々の修羅場を潜って来た自分が相手では試合が直ぐに終わりかねない、と手加減しているつもりではない、寧ろ大人げない位に本気である。
では何故かと言うと、
「バイクに姿を変えるというのは初めての体験だが、これも慣れだ!2速!」
『ガッチャーン!レベルアップ!爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!』
『ガシャコンスパロー!ブゥンブゥーン!』
「ぜ、ゼノヴィアが、レーザーが、バイクになった!?」
レーザーのレベル2の姿形が問題だからだ。
ゲーマドライバーのレバーを開くと共に前方に現れた黄色のパネル、それをレーザーが通過すると共に異空間へと転移、荒野を思わせる異空間に延々と伸びる道路を両腕のタイヤ型パーツを駆使して駆け抜け、道路が途切れた所で大ジャンプすると、その身体を覆っていたパーツが飛び散った、と思ったら、中から出て来たバイクの車体と思しき身体に、飛び散った筈のタイヤパーツが前後に装着、同時に出現した弓形のガシャコンウェポン――ガシャコンスパローが真っ二つに割れ、ハンドルがある筈の部分に装着、最後にデュランダルを荷台部分に括り付けて帰還した。
その姿――仮面ライダーレーザー・バイクゲーマーレベル2の姿は、観客であるイリナの言う通り、何処からどう見てもバイクとしか言い様のない姿だった。
そう、これが、レーザーがレベル1で戦っていた理由である。
元々レーザーは、レースゲームを司るが故に、他の仮面ライダーの移動手段としての能力も導入されて生み出された仮面ライダー、その為かレベル2の姿はバイク型となったのだ。
その能力を持った為か、一応自分自身の意思で立ち回る事も出来るのだが、真の力を発揮するには他のライダーを乗せて運転して貰う必要がある、というより元々人の姿で生きて来た変身者がいきなりバイクになってまともに立ち回れるかと問われると、お察しくださいと言われそうな案件である。
故に今のレーザーはレベル1で戦わざるを得ないのだ。
尤も更なるレベルアップによってその問題も解決出来なくは無いのだが…
「第2ラウンドだ、行くぞギャスパー!」
「望む所です、ゼノヴィア先輩!」
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「今日は試合に付き合ってくれてありがとう、ギャスパー。お陰でいい実戦経験になった」
「ボクもいい経験になりました!ありがとうございます、ゼノヴィア先輩!これからよろしくお願いします!」
結局、決着がつかぬまま戦いは終了、変身を解除したゼノヴィアとギャスパーは、互いの健闘を称え合っていた。