ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

49 / 143
36話_動き出すIS

祐斗が聖剣に対して抱く憎悪の根深さを目の当たりにして落ち込んでいたイリナを励ました一誠、彼は今、祐斗の監視に向かわせたカイデン達からの連絡を待ちつつ、自らもまた街を探索していた。

カイデンに祐斗の護衛を命じた事、その根本的な原因と言っていい聖剣に関する事に関しては他のバグスター達にも連絡しており、其々パトロールの中で祐斗にゼノヴィア、そして街に潜伏しているであろうコカビエル達を監視し、いざと言う時は実力行使で鎮圧する様命じてある。

電子生命体であるバグスター達だからこそ実現出来た迅速な情報共有、それをベースにして十数年もの間練り上げて来た組織力が成せる捜査網、1体1体が上級悪魔をも圧倒する個々の実力を以てすれば、そしてバグスター達と自分達悪魔との繋がりが浮かび上がっていない現状なら、今回の騒動も丸く収められるだろうと一誠は考えてはいるが、そんな中で何故一誠が自ら探索に出向くという、危険極まりない行為に出ているのか。

その理由は3つある、1つ目は純粋に祐斗が心配で、彼の憎悪を如何にか出来ないかと思い立った事。

祐斗が抱く憎悪の根深さは一誠も重々理解している、それが自分では対処のしようが無い様な物である事も、それでも同じリアスの眷属として、どうにか出来ないかと居てもたってもいられなかったのだ。

2つ目は、この件に悪魔として関われないなら『仮面ライダー』として関われないかと、ゼノヴィアに提案するのを思いついた事。

悪魔として転生する前からこの街の平和を、街に住む人々の平穏を守る戦士『仮面ライダー』としてバグスター達と共に活動して来た一誠、その点を挙げてゼノヴィア達と共闘出来ないかと閃いた。

此処で共闘関係を結んでおけば、現状において1人この街を彷徨う祐斗を監視・護衛するという名目で動かざるを得ないバグスター達を遠慮なく動かす事も、自らがこの件に介入する為の大義名分を得る事も出来る、一誠はそう考え付いたのだ。

勿論それが屁理屈である事は一誠も承知している、だが今まで十数年もの間、仮面ライダーとしてこの街を守り続けて来た彼は、今回の件を見て見ぬふりはやはり出来なかった。

そして3つ目は、

 

(リアス達は教会からの要求を呑んで、自分から首を突っ込んだりはしないだろう。しかしイリナは任務の関係で自ら関わらざるを得ない。だが、イリナを危ない目に合わせる訳には行かない!コカビエルは、聖剣を盗んだ連中は、俺達が討伐(クリア)する!)

 

単純にイリナを危ない目に合わせられない、と彼女を想っての事だ。

教会に属するイリナと、悪魔勢力に属する一誠、しつこい様だが幼馴染といえど立場的に相いれない2人である、にも関わらずイリナは悪魔となった自分と再会しても尚、自らへ向ける好意を捨てる事無く自分を慕ってくれている、しかもその場のノリから出たジョークだろうとはいえ教会を裏切ろうかと堂々と宣言もしていた。

幾らジョークでもそんな事を口にするなど大事、それを平気で口にするまでに想われているとあらば、それに応えないのは男ではないと、一誠は決意していた。

 

(さて、ゼノヴィアは一体何処へ、ん?)

 

そんな様々な理由の中から、まずはゼノヴィアとの接触を図るべく彼女を探そうとしたが、

 

「えー、迷える子羊にどうかお恵みをー」

「…思い至ったら直ぐ見つかるとか、ご都合主義にも程があるだろう、しかも何をしているのだろうか、アイツは?」

 

思いのほかあっさりと見つかった。

一誠の目の前には、乞食の如くカンパを募るゼノヴィアの姿があったのだ。

 

「…怒りに任せてイリナを置いてけぼりにした報いが此処で返ってくるとはな。

路銀の一切、アイツが持っている事を失念した結果、朝からパンの1つにもありつけぬとは…」

 

どうやらイリナが路銀を全て持っていたのを失念した事で、朝から何も食べられず空腹になっていた結果、今の様な行動に移っていた様だ。

尚、イリナも朝から何も食べていなかったが、先程ホットミルクを貰っただけでなく、一誠が出て行った後にバガモンが手作りのハンバーガー等を振舞った事で腹を満たしていたのは余談である。

 

「ゼノヴィア、腹を空かせているなら、このハンバーガーでも「う、美味い!」早いなお前!?」

 

そんなゼノヴィアを放って置けなかったか、或いは早速見つかってラッキーだと考えたのか、家を出る時にバガモンから弁当として貰ったハンバーガーをゼノヴィアに差し出そうとしたが、言い切る前にゼノヴィアはハンバーガーを手に取ってかぶりつき、その極上な味に舌鼓を打っていた。

 

------------

 

「それで、君が私に話し掛けた目的は一体何だ?」

 

それから数分後、ハンバーガーを食べ終えたゼノヴィアは一誠に対し、単刀直入に尋ねて来た。

先程までバガモンの手作りハンバーガーに舌鼓を打っていた時の騒ぎっぷりから一転、真面目な雰囲気で尋ねる様子からして、今回の件に関する物だと察した様だ。

 

「では1つ聞きたい。

 

 

 

仮面ライダーと相乗りする気、あるか?」

 

そんなゼノヴィアに、一誠は問いかけた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。