ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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注:今作でのイリナは、原作との違いが凄まじいです。
イリナファンの方、すいません。


33話_イリナ、色々とBerserkerだな…By一誠

迎えたイリナ達との会談の時間、此処オカルト研究部室には、リアス達オカルト研究部メンバーが悪魔側の代表、イリナとゼノヴィアが教会側の代表として、会談に臨んでいた。

正確にはリアスと、イリナとゼノヴィアの2人が向かい合う形での会談であり、一誠達は後方で待機しているのだが。

 

「この度、会談を了承して貰って感謝する。私はゼノヴィアという者だ」

「紫藤イリナです」

「私はグレモリー家次期当主、リアス・グレモリーよ。早速で悪いけど、悪魔を嫌っている教会側の人達が私達悪魔に何の用かしら?会談を求める位だから相当な事があったのでしょう?」

 

挨拶をそこそこに早速本題を切り出すリアス、つい先日教会で保管していた筈のエクスカリバーを所有した存在がこの街に潜入した挙句、辻斬り行為をしていた件もあってか何処かその言葉には棘があった。

 

「簡潔に言おう。

 

 

 

我々教会側が所有・管理していたエクスカリバーのうち数本が、堕天使達によって奪われた」

「なっ!?」

「っ…!」

 

そんなリアスの様子を察したかどうかはともかく、ゼノヴィアはその理由をあっさりと言った。

教会で管理していた筈のエクスカリバーが堕天使勢力の者達によって盗まれた、その事実に、カイデンが遭遇した一件を知らされていない祐斗は純粋に驚き、一方で堕天使勢力の幹部バラキエルの娘である朱乃は、この前のアーシアに関する一件に続きまたも同族の者がやらかした事を知って頭を抑えていた。

 

「教会は私が属するカトリック、イリナが属するプロテスタント、そして正教会の3つの派閥に分かれていて、所在が不明な1本を除いた6本を、其々2本ずつ所有していた。然しその内の1本ずつ、計3本が盗まれた。残るは私が持つ『破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)』と」

「私が持つ『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』、様々な形状に変化する力を有した聖剣です」

 

その子細を話すゼノヴィア、その中で自らが持つ布で巻かれた大剣を指さしていたが、同じく自らが持つエクスカリバーを指さしながら、能力まで明かしたイリナに眉をひそめた。

 

「イリナ、悪魔相手にエクスカリバーの力を明かすな、どぅっ!?」

 

が、苦言を呈そうとした瞬間、顔面に何かが炸裂した様な衝撃で吹っ飛ばされてしまい、遮られてしまった。

何が起こったのかと見回すと、其処にはどこからともなく取り出したハリセンを振るったイリナの姿。

 

「バカ言ってんじゃないわよ、ゼノヴィア。教会のザル警備が原因で堕天使にエクスカリバーを盗まれた挙句、直接関係のない悪魔勢力が管理するこの街に迷惑かけてんのよ。ならその慰謝料代わりになるかは兎も角、相手側に有益な情報を渡すのが筋ってもんでしょ、全くこれだから頭の固い異教徒は…

おっと、話が逸れましたね。我々がこの街に来たのは、エクスカリバーを盗んだ堕天使達がこの街に潜伏しているという情報を掴んだからです。我々はそれを奪還、或いは破壊する為にこの街へと来ました。堕天使に奪われ良い様に使われる位なら壊した方がマシ、という判断です」

「…そ、そう。

それで、盗んだ堕天使の名は?」

 

緊迫した空気の中で唐突に、目の前で繰り広げられたコントみたいな展開に唖然としながらも、意に介さず引き継いだイリナの説明を何とか理解したリアス。

 

「今回の一件を主導したのは、

 

 

 

グリゴリの幹部、コカビエルです」

 

そんな彼女からの質問の答えに、室内は驚きに満たされた。

無理もない、コカビエルと言えばバラキエルと同じく聖書にその名が記された堕天使、そんな大物がこの件を主導したとなれば、相当な大事になりかねないからだ。

 

「成る程、事の子細は分かったわ。そしたら、此方で預かっていた物は貴方達にお返しした方が良いわね。イッセー、カイデンを此処に呼んで」

「了解」

『ギリギリチャンバラ!』

「只今参った」

「うわっ!?ひ、人が出てきた!?」

 

ともあれあの一件の経緯がこれで判明した、そう考えたリアスは、カイデンが持っていた2本のエクスカリバーを返却すべく、一誠に彼を呼び出させた。

 

「其方の事情は把握した。この得物は盗品とあらば、元の鞘に収まるべきでござろうな」

「な、こ、これは盗まれた『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』と『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』!?やはり悪魔は堕天使と手を、ぐはぁ!?」

 

一誠がガシャットを起動させた事で出現したスクリーン、其処から突如としてカイデンが現れる、という一連の展開に初めて遭遇したイリナが驚きの声を上げる、という今更な状況をスルーしつつ、現れたカイデンが差していた2本のエクスカリバーを彼女達に差し出した。

それは彼女達が奪還する様に命じられていた件のエクスカリバー、その姿に驚きを隠せず、実は堕天使と悪魔は手を組んでいるのではないかとリアスに詰め寄ろうとしたゼノヴィアだったが、今度は後頭部に何かが直撃した様な衝撃を受けて倒れ伏した。

 

「だからバカ言ってんじゃないわよゼノヴィア。仮に手を組んでいたとして堕天使側から渡されたとして、なんでそれを態々教会側に返すの?教会側との交渉を優位に進める為?だったらまずちらつかせて、返して欲しければと言いながら条件を突きつけるのがお約束ってもんでしょうが。そんな事も分からないなんて、これだから異教徒は…」

 

と言いながら倒れ伏したゼノヴィアを見下ろすイリナ、その手には何処からともなく取り出したフライパンがあった。

 

「い、イリナ?お前が持っているのは、教会で厳重管理されていたエクスカリバーの1つだろう?それをツッコミ用の小道具みたいに使うのはどうかと思うが…」

 

そんな幼馴染のコントじみた行動に、流石の一誠も苦言を呈した。

無理もない、イリナはこれらの行動の為に、擬態の聖剣の能力を駆使してああいった小道具に変形させたのだから。

 

「良いの良いのイッセー君。元はと言えば教会のエクスカリバーなんて、アーサー王伝説に出てきたそれを元に教会の錬金術師達が勝手に作った奴だもん。まあ言うなれば、海賊版?パクリ商品?って奴よ。しかも嘗ての三大勢力間の争いでバラバラになっちゃった後の割れ物だし。そんな傷物でパチモンの扱いなんてこれで十分よ」

 

そんな一誠の苦言にも何のその、寧ろその経緯から教会のエクスカリバーを海賊版やらパチモンやら傷物やらとボロクソに罵倒するイリナだった。

教会に属する筈のエクソシストによる爆弾発言どころではない放言にまたも唖然とするオカルト研究部員達、然しながらこれが、教会内で『信者(自称)』と言われて問題視されているイリナの素なのだ。

 

「え、えーと…

それで、貴方達は私達に何を要求するのかしら?」

 

リアスもイリナのぶっちゃけ振りに、ちょっとズレた意味で動揺を隠せないながらも、自分達に交渉を求めたその目的を問いかける。

 

「はい。私達の要求、というか完全に上層部からの注文ですけど…

簡単に言えば悪魔勢力は関わるな、という物です」

「…成る程、悪魔にとって聖剣は忌避すべき物、使えなくしてしまえば万々歳だもの。

それを踏まえて堕天使と手を組みかねない、という訳ね」

 

その要求は、自分達の失態を、この街に及ぶかもしれない危害すらも棚に上げた理不尽極まりない物。

こんな理不尽な要求をされては普通マジギレする物だが、それでもリアスが落ち着いていられるのは先程のイリナが見せた言動から、彼女にとっても上層部からの要求を告げるのは不本意だと気付いたからだろう。

 

「なら言わせて貰うわ。私はそんな邪な想いを抱いた堕天使と手を組んだりはしないわ、決してね。グレモリーの名に賭けて、魔王様の顔に泥を塗る様な真似はしないわ。上層部にそう伝えておいてね」

「どうもすいませんでした。管理を担っているこの街の住人にも危害が及びかねない今回の件に関わるな、なんて無理難題なのは重々承知していますし、嘗て住んでいた私自身としても心苦しいのですが…」

 

そんなリアスからの言葉を聞いたイリナは、心から申し訳ないという様子で彼女に謝罪した。

 

「今日は忙しい中、会談に応じて頂き、ありがとうございます。ほらゼノヴィア、早く行くわよ!」

「あら、お茶は飲んで行かないの?」

「い、いえ!会談に応じてくれた上にそんな!」

「は、放せイリナ!貴様に引っ張られずとも歩ける!」

 

会談は一先ず終了、イリナは先程の一撃で倒れていたゼノヴィアを引っ張りながら足早に部室を後にしようとし、リアスからの誘いも丁重に断った。

其処で意識が戻ったゼノヴィアが、自らの首根っこを掴んでいたイリナの手を振り払いながら起き上がり、同じく部室を後にしようとしたが、

 

「もしやとは思ったが、アーシア・アルジェントか?」

 

その際、嘗て教会に属していたアーシアの姿を見つけた。

 

「あ、あの、えっと…」

「よもやこんな極東の地で『魔女』に出会おうt、がはぁ!?」

 

教会内でそれなりに有名だった彼女の姿を見つけ、何やら剣呑な雰囲気を纏わせて近づいたゼノヴィア、だが突如として顔面中に何かが突き刺さり、悶絶していた。

刺さっていたのは何処からともなく出て来た、華道で用いられる剣山、それを出したのは、

 

「あの頑固な異教徒が怖がらせて御免なさいね、アーシアさん。後でシバいて置くから」

「あ、はい」

 

勿論、イリナである。

 

「貴方の事、教会内で噂になっていたわ。我らの神から人々を癒す力を授かった聖女だったけど、悪魔をも癒して魔女として追放されたって。でも、私は貴方の事を誇りに思うわ」

「えっ?」

「貴方は神の教えに則り、その悪魔を癒した。そうでしょう?なら、その事を誇りこそすれ後悔する必要なんて無いわ。頭の固い連中があれこれ言ったかも知れないけど、そんなの右から左に流しときゃ良いのよ、小市民の戯言だって」

 

悪魔を自らの神器で傷を癒した、それによって『魔女』と罵られた挙句教会を追放され、その果てに悪魔に転生したアーシア、ゼノヴィアもそれに気づいて剣呑な雰囲気を出しながら近づいたのだろうと気付いて、同じく(雰囲気こそ違うが)近づいたイリナにどこかびくついた様子の彼女だった。

だがイリナは彼女の行動を否定しなかった、寧ろ誇りに思って良いとまで言い放った。

 

「それで、イッセー君とは何処まで行ったのかな?A?B?もしかしてCまで?」

「ふぇ!?な、なんでイッセーさんとの事知っているんですか!?」

「いやいや、信仰深かった貴方が悪魔に転生するなんて相当な事でしょ。その原因で思い当たるとしたら、イッセー君絡みかなって。大方、自分の身に危険が迫っていた所をイッセー君が颯爽と駆け付け救われ、イッセー君を追い掛けるべく悪魔になりましたってクチ?」

「な、なんで分かったんですか!?」

「ああ、やっぱりね。私もそのクチだから。幼い頃、ピンチだった私を助けてくれたのがイッセー君だったの。それで、思ったの。これは神様が繋げてくれたイッセー君との運命の赤い糸だと、強くなってイッセー君の背中を守るのが私の使命だと!何なら、私も悪魔になろっかな?」

 

そして、彼女が悪魔になった経緯も察知、図星を指されて動揺しまくる彼女を他所に、恋バナはヒートアップしていた。

事実、彼女はこの街に住んでいた幼い頃、一誠の弟である兵藤誠次郎に襲われ、性的暴行されそうになってしまった事があるのだが、それを阻止し、救ってくれたのが一誠だったのだ。

それ以来彼女は一誠に恋心を抱き、またこの出来事は神によって繋がれた、一誠と自分とを繋ぐ赤い糸による運命だと確信、それ以来神を深く信仰する様になったとか。

…その割には教会に対する言動がかなりアレであるし、たった今教会を裏切ると宣言したも同じ事を口走っていたがこれは本人曰く「神様は信じているけど教会は信用していない」というスタンス故だ。

が、其処へ、

 

「おのれイリナぁ!貴様事ある毎に私を甚振りおって!」

 

イリナからツッコミという名の暴行を受け続けてきたゼノヴィアが、怒りの声を上げながらイリナに詰め寄った。

 

「はぁ?それはアンタが甚振られる様な振る舞いをするからでしょうが、直そうとする気配すら無いし。これだから被害妄想甚だしい異教徒は嫌ねぇ」

「何だと、信仰心の欠片もない異教徒が!もう我慢の限界だ、表に出ろ!」

 

そんなゼノヴィアをまるで養豚場の豚を見るような目をしながら嫌味を言うイリナに、ゼノヴィアの怒りはますますヒートアップ。

このままエクソシスト同士で決闘、という仲間割れする事態は避けられないと思われた。

だが、

 

「おいおい、仲間割れは止めなよ。そんなに戦いたいなら、僕が相手になろうか?」

「何だ貴様、部外者は黙っていろ」

「部外者じゃないさ、君達の先輩だよ。

 

 

 

失敗作だったそうだけどね」

 

其処に、祐斗が割って入った。


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