ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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31話_幼馴染、Ambush!

「聖剣計画、か…」

「そ、そんな、主に仕える者が、その様な非道な行いを…!」

 

昨日のアルバム鑑賞の際に祐斗から感じられた憎悪の感情、それがきっかけかは分からないが今日の彼は何処かおかしいと、一誠は考えていた。

唐突に上の空になったり、何かぶつぶつと呟いていたりと、何時もの彼を知っているならば、様子が変だと直ぐに気づく程の異変。

リアスも気づいた為に休む様指示をしたのか、或いは祐斗自ら休んでいるのかは定かでは無いが彼がいないオカルト研究部の部室、其処で一誠とアーシアは、祐斗がリアスの眷族となった経緯を明かされた。

聖剣計画、それは嘗て教会で密かに行われていた、教会の秘密兵器と言っていい力を持った武器である聖剣を扱える存在を人工的に生み出し、育てる為の計画で、悪魔に転生する前の祐斗も被験者として携わっていたとの事。

だが計画は失敗、聖剣を扱える存在を生み出す事が出来なかった事から祐斗達被験者は不良品として毒ガスによって殺害されてしまったそうだ。

その中で祐斗だけは仲間達の手助けもあって脱出に成功したものの、リアスが見つけた時には既に虫の息、救い出す為に自らの眷属悪魔として転生させたらしい。

その後は悪魔として、自らの過去に、聖剣計画という名の呪縛に囚われること無く真っ当に生きて欲しいと願ったリアス達の尽力によって、今の様な生活を送れてはいたのだが…

どうやらあの時の写真に映っていた聖剣らしき物、それが祐斗の過去を、憎悪を呼び覚ます事になってしまったと思われる。

 

「はぁ…

これはまた絶妙な時期に、とんでもない厄介事を持ち込んでくれた物だ…」

「厄介事?まさかまたこの街にはぐれ悪魔や、他勢力の存在が侵入して来たの?」

 

そんな祐斗の過去を聞いて、嘗て同じ主を信仰していた者同士であった筈の教会関係者が起こした蛮行に青ざめるアーシア、一方の一誠は、同じく昨日起こった『事件』を思い起こし、渋い顔をしていた。

そんな一誠の困った様子を恋人達は見逃さない。

 

「ああ。この件は、昨日対処に当たったアイツの口から話して貰った方がいいか」

『ギリギリチャンバラ!』

「父上、只今参った」

 

一誠の呟きに反応したリアスから聞かれて彼は懐から、黒を基調としたガシャットを取り出し、起動させた。

すると背後に、障子を切り裂いて出現した『GIRIGIRI CHAMBARA』の文字と剣豪がデカデカと映るスクリーンが出現、それと共にカイデンがスクリーンから飛び出した。

 

「ギリギリチャンバラのライダーガシャットから…

イッセー先輩、もしかしてそのバグスターは、カイデンって名前ですか?」

「左様。己が名はカイデン、ギリギリチャンバラのバグスターなり。位は剣豪」

「ああ、白音ちゃん。知っていると思うけどカイデンは、ギリギリチャンバラに登場する凄腕の剣豪を模したバグスター。

 

そして、バグスターの中でも最高クラスの力を有した『伝家の宝刀』だ」

「勿体無きお言葉、感謝の極み」

「さてカイデン、昨日遭遇した事態に関して、説明を頼む」

「承知」

 

現れたカイデン――一誠が開発したゲームの1つ、一瞬の隙が命取りな緊迫感が持ち味のチャンバラゲーム『ギリギリチャンバラ』にて幾度となく立ち塞がる凄腕の剣豪を模したカイデンバグスター、一誠による紹介と指示を受けて、昨日の事件を話し出した。

 

「今しがた己が脇に差している得物こそが、その時に貰い受けた物でござる。此方に」

「こ、これは、聖剣!?」

「しかもこれ、教会で保管されていた筈のエクスカリバーです!」

「何でまたこの様な物を、その襲撃者が所有していたのでしょう…?」

「確かにイッセー先輩の言う通りタイミングが絶妙過ぎます、祐斗先輩がこの場にいなくて幸いでしたね、いたらどうなっていたか…」

「阿鼻叫喚な展開待った無しね」

 

その中でカイデンが持っていた件の剣を見せると、それを見たリアス達から驚きの声が上がった。

無理もない、それはアーシアの言う通り教会にて厳重に保管されていた筈の聖剣エクスカリバーだったのだから。

尚、エクスカリバーといえばアーサー王物語に登場する聖剣として有名であるが、そもそもその出自に教会は関係なく、また1振りしか存在しない筈なのだが…

 

「という事は、この街に教会の関係者が潜入していると言う事かしら?でもカイデンの話からそれは無いわね」

「そうね、リアス。幾らカイデンがバグスターでも最強クラスと言っても、エクスカリバーを授けられる程の実力者があっさりやられるとは思えないわ。そもそもそれ程の存在が、この街の管理を魔王の妹でもあるリアスが担っている事を知らない筈は無いのにゃ」

「ですね、姉様。そして、知っていて辻斬りみたいな真似は出来ない筈です。藪を突いて蛇どころではありませんから」

「カイデンさんが上げていた協力者の存在も何か引っかかりますわ…」

 

それはともかく、そんな代物を何故この街に潜入した者が持っていたのか、協力者も含めて潜入した者の目的は一体何なのか、疑問が尽きないリアス達だった。

 

――――――――――――

 

部室の中で考えを巡らせていても仕方ない、そんなリアスの判断からこの日の部活動は解散、一先ず帰宅する事となった一誠だったが、

 

「イッセーきゅぅぅぅぅぅぅん!」

「うぉっ!?て、い、イリナ!?」

 

自宅まであと数十メートルと言った所で、自らの名を叫ぶ声と共に何かが抱きついて来た。

 

「うん!久しぶり、イッセー君!ずっと、ずっと会いたかったよぉ…!」

 

自らに抱きつき、挙げ句手足を背中に回してガッチリとホールドして来た『何か』、それはあの写真に映っていた一誠の幼馴染である少女、紫藤イリナだった。

尤も、ボーイッシュを通り越して男子にしか見えなかったその風貌は、茶髪のツインテール、出る所は出ている体躯等も相まって美少女と言えるものになっていたが。


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