「姿が変わった位で思い上がるな、そんな虚仮威し、フェニックスの『不死』の前には無力だ!」
ゲンムとポッピーの変身を目の当たりにして驚きを隠せなかったライザー、だがそれでも己の勝利を疑っていないのか平静を取り戻し、彼女達に向けて無数の炎を乱射した。
その1発1発がゲンムを、変身しているリアスを焼き尽くさんと言わんばかりの火力を持った物、それらを簡単に乱射出来る所が、単なる『不死』だけではない、ライザーが将来を嘱望される所以と言える。
尤も、
『ギュ・イーン!』
「ふっ!はぁっ!」
『ちゅ・どーん!』
「や、やぁっ!」
「なっ馬鹿な!?」
ゲンムも、ポッピーもそれらを苦もなく消しとばして見せたが。
ゲンムは先程構えていた紫色のゲームパッドらしきガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザーをチェーンソー型に変形させ、彼女が持つ滅びの魔力を纏った刃で文字通りライザーが放った炎を薙ぎ払い、跡形もなく消した。
一方のポッピーは、同じく構えていたピンク色のゲームパッドらしきガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザー
その光景が信じられないといった様子で、尚も炎を乱射するライザーだったが結果は同じ、その中でもゲンムは彼に近付きながら炎を消しとばして行く。
そして、
「せいっ!やぁっ!」
「ぐっ!がぁっ!」
ゲンムが放った刃がライザーを捉え、その身を叩き落とした。
此処がチャンスと言わんばかりに、立て続けにライザーを斬り裂くゲンム。
しかし、
「が、はぁ、やるなリアス…!
だが無駄だ、この程度の傷、直ぐに回復してくれる!」
それによってライザーの身に出来た傷は、其処から発生した炎が塞ぐ様にして元通りになった。
「それは百も承知よ、ライザー。並大抵の斬撃を浴びせただけでは貴方を倒せない事位、ね。だから、これで行くわよ!」
『ガッシューン』
だがそれはゲンムにとって分かっていた事、その合間にゲーマドライバーからガシャットを抜き取り、
『ガシャット!キメワザ!』
左腰に付けられているガシャットのホルダー、その上部にあるガシャット挿入スロットに装填、脇に付いていたスイッチを押した。
それによってゲンムの両足に膨大なエネルギーが収束され、
『マイティ!クリティカル・ストライク!』
「ふっ!はぁっ!喰らいなさい!」
「ぐっ!?がっ!?ごはぁっ!?」
もう1度スイッチを押すと共にライザーに飛び掛かり、連続での跳び蹴りを打ち込む中で解放していった。
その1発1発だけでも威力は強烈であり、ライザーに直撃する度に強大なダメージを物語るかの様な負傷の証を彼の身に刻んで行き、その身を吹っ飛ばすが、
「う、ぐぁ、は、はぁ、無駄だと、言っているのが、分からないか、リアス、例え強烈な、一撃であろうと『不死』の前には…
な、ば、馬鹿な、回復しないだと!?」
その真価は其処では無かった。
何と、今までどれ程のダメージを負っても自らの『不死』で回復して見せたライザーの傷が、今になって治らなくなったのだ。
余りの事態に狼狽するしか無いライザー、そんな彼に、ゲンムは衝撃の事実を告げる。
「ライザー、今の一撃で貴方の体内に膨大な滅びの魔力を、貴方の『不死』に反応する様に指向性を持たせた上で注入させて貰ったわ。これで貴方の『不死』は、暫くは効果を発揮しないわ、した所で滅びと相殺されるしかないけれどね!」
「な!?ば、馬鹿な、そんな事が」
「出来るのよ、それが。このライダーシステムなら、天才ゲームクリエイターであるイッセーなら!」
ゲンムは衝撃の事実を告げる。
「これで終わりよ、ライザー!」
『シャカリキスポーツ!』
その事実を受け入れられないライザーを他所に、ゲンムはトドメと言わんばかりに、ライムグリーンのガシャットを起動させる、すると背後に『SHAKARIKI SPORTS』の文字とBMXを乗りこなすライダーがデカデカと映ったスクリーンが出現、其処からピンクとライムグリーンを基調としたBMXがゲンムの側に出現した。
「行くわよ、チャーリー!」
『Yes,Sir!チャリンGOGO!』
『ガシャット!キメワザ!』
それが到着したのを受け、ふと虚空に向けて呼びかけながらBMXに搭乗、するとそれに応える様に陽気な声が響き渡った。
その声に乗せられたかどうかは分からないが、ゲンムは先程強烈な一撃を放つ為にマイティアクションXのオリジンガシャットを装填したガシャット装填スロットに、今度は今起動させたガシャットを装填、先程と同じくスイッチを押し、BMXにエネルギーを収束させると共にライザーに向かって漕ぎ出した。
「ま、待て、リアス!この縁談は魔王サーゼクス様も関わる、今後の悪魔社会にとって重要な物」
「黙りなさい、ライザー!」
その行動に、文字通り死の危険を感じ取ったライザーは、このレーティング・ゲームを行う切っ掛けとなった婚約の正当性を主張してゲンムの動きを躊躇わせようとしたが、それが逆に彼女の逆鱗に触れた。
「今の言葉で改めて分かったわ!所詮貴方は、私を『グレモリーの後継』としてしか、『魔王の妹』としてしか見ていない!そんな貴方との結婚なんか、まっぴら御免よ!貴方を、この婚約を、完膚無きまでに叩き潰させて貰うわ!」
『シャカリキ!クリティカル・ストライク!』
「い、嫌だ!嫌だ!嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
再びスイッチを押しながら、BMXの上級者向けトリックであるメガスピンを披露しながらライザーへと突っ込んで行くゲンム、やがてその回転は滅びの魔力を纏った竜巻となって、恥も外聞も関係ないと言わんばかりに逃げようとする彼へと直進し、
「ライザー・フェニックス様の
直前にライザーが投了した事によって空振りとなったものの、間違いなく勝負を決める一撃となった。
――――――――――――
「ありがとう、皆。皆のおかげで、ライザーに勝つ事が出来たわ」
「良かったのにゃリアス、あんな焼き鳥野郎と結婚なんてならずに済んで!」
「まさか地形まで抉るとは思いもよりませんでしたわね…」
「いや考えなしに最大出力にしたんですか朱乃先輩」
「今でも色々とドキドキしています…」
「イッセー君の戦略眼と、ライダーシステムのパワー…
正に、イッセー君がいたからこその勝利だ、本当にありがとう、イッセー君」
「止せ、木場。俺は俺の出来る事をしたまでだ。それに、それを最大限生かしたのはお前達だろう?」
レーティング・ゲームが終わり、激戦が繰り広げられた旧校舎屋上に集結したリアスとその眷属達。
少年少女達の話題は、レーティング・ゲームに関する物で持ちきりだった。
其処へ、
「イッセー、本当にありがとう。祐斗も言ったけど、貴方がいてくれたからこそ、私はライザーに勝つ事が出来た。私は私の権利を勝ち取る事が出来た。本当に、本当にありがとう!」
「部長、木場にも言いましたが、俺は俺の出来る事をしたまでですから。実際、あの焼き鳥野郎を倒したのは、他ならぬ部長です」
今回のレーティング・ゲームの勝敗を決定づけたリアスが、影の功労者と言っていい一誠に歩み寄り、感謝の言葉を掛けていた。
それに対する一誠の返答を受ける彼女、その眼は何処か、決意を秘めたものだった。
「…うん、やっぱりこういう事よね、今の私の想いは」
「ん?部長?」
「イッセー」
「はい、どうし」
改めて己を呼ぶリアスに、どうしましたか、そう尋ねようとした一誠の言葉は、最後まで放たれる事は無かった。
「ふふ、人間界じゃあファーストキスは、愛する人に送る物なのでしょう?
…これが、私の想いよ、イッセー。
貴方の事を、1人の男性として愛しているわ」
リアスが一誠に、キスをしたからだ、今度は頬ではなく、唇同士で。
まさかの事態、そして続けて行われた愛の告白に、一誠は先日の一件とは比にならない程長時間固まっていた。
やがて事の次第を把握し、顔を赤らめながら何かを言おうとした、が、
「ぶ、部長だけずるいです!こうなったら躊躇しません!私もイッセー先輩の事が大好きです!」
「うぉっ!?白音ちゃ」
それが口に出る事は無かった。
リアスの大胆な行動に触発されたのか、まずは白音が、
「あらあら、先を越されてしまいましたわ。ですが、イッセー君への愛なら負けませんわ!」
「あ、朱乃先ぱ」
次に朱乃が、
「わ、私もイッセーさんへの愛を捧げます!」
「え、あ、アーシアま」
そしてアーシアが一誠にキスをし、告白をしたからだ。
「イッセー、これが私の、私達の想い。受け取ってくれるかしら?」
余りの事態に動揺しきりな一誠に対し、恋敵と言ってもいい3人の行動に対しても、何処か予知していたのか、それでいて受け入れたのか冷静な様子で彼の返答を待つリアス。
彼女が何故冷静でいられるのか、それは所謂ハーレムが容認されている悪魔社会の制度や風潮もそうだが、何より天才ゲームクリエイターとして、何十体ものバグスターの父親として、そして仮面ライダーとして、己の使命を本気で全うしようとする彼の、沢山の人達を惹きつける魅力ゆえだろう。
「…まさか、1度に4人もの女性に告白されるとは思わなかったな。
ですが、部長に、朱乃さんに、アーシア、そして白音ちゃん…
本当に嬉しいです、俺自身異性として気になっていた女性達から此処まで慕われると言うのは。
兵藤一誠17歳、心火を燃やして貴女達を幸せにします!こちらこそ、よろしくお願いします!」
「「「「はい!」」」」
そんな彼女達の想いを、一誠は受け止めた。