所変わって一誠の自宅のリビング、此処にリアス及び彼女の眷属全員が集結していた。
10日後にリアスの婚約を賭けて行われる事となったライザー・フェニックスとのレーティング・ゲーム、それに向けて仮面ライダーにならないかという一誠の提案を受けて。
「さて。仮面ライダーに変身するには、バグスター達を現実世界に具現化する為の媒介であるライダーガシャットを、装着しているゲーマドライバーに装填する事でなれる、とは以前説明しましたね」
全員が集結し、心の準備が出来たのを確認した一誠が説明を開始する。
「ですが、単にゲーマドライバーを身に着けてライダーガシャットを装填する、それだけで誰でもライダーになれる訳ではありません。これも以前説明しましたが、ライダーへ変身する為のパワーソースとなる、ライダーガシャットに封入されているバグスターウィルスは同時に、生物にとって毒性の強い病原体となりえます。フィルターとなるゲーマドライバーを介したとしても、下手に扱えば感染しかねません。ではどうすれば安全に扱えるのか、仮面ライダーとして変身できる様になるのか。それにはまず、このライダーガシャットを使用します」
そう説明しながら一誠が懐から取り出したのは『DOCTOR MIGHTY XX』とラベルに記入された白い、他と比べて大柄なガシャット。
「ドクターマイティXXのライダーガシャット…?」
「ええ。このドクターマイティXXガシャットは、他のライダーガシャットと比べてその毒性が大幅に弱まったバグスターウィルスが封入されています。これを、対象者が装着しているゲーマドライバーに装填する事で、封入されている弱毒化バグスターウィルスを投与します」
「え、と、投与するってつまり、バグスターウィルスが体内に流れ込んでくるって、感染するって事だよね?だ、大丈夫なのかい?」
今しがたその危険性を指摘したばかりであるバグスターウィルスを投与する、一誠の口から出た言葉に、幾ら弱毒化したそれとは言え大丈夫なのかと疑問に思った祐斗が一誠に問いかける。
「大丈夫だ、木場。予防接種の際に注射されるワクチンと同じ様な原理だ。あれもまた弱毒化した、或いは死んだ微生物やウィルスを体内に投与する事で、その感染症に対する免疫を得られる。そう、このドクターマイティXXガシャットによって弱毒化したバグスターウィルスを体内に投与する事で、バグスターウィルスに対する免疫を得られるのです」
「その免疫を得られさえすれば、仮面ライダーへ変身する事が…」
そんな祐斗の疑問に答えた一誠、それを聞いて仮面ライダーへ変身する事に対するハードルが意外と低いと感じ、そう呟いたリアス。
しかし、
「いいえ、部長。免疫を得られた人全てが仮面ライダーに変身出来るわけではありません」
事はそう甘くは無かった。
「弱毒化したバグスターウィルスを体内に投与して免疫が得られると言っても、その効果の発現には個人差があります。その中で高いレベルの免疫能力を持った存在が、仮面ライダーに変身出来ます。実際俺の両親も投与を受けていますが、免疫能力が仮面ライダーに変身出来るレベルに届きませんでした」
「何事も上手い話ばっかりじゃないって事かにゃ。まあ投与するデメリットが無いのが幸いね」
個人差があるバグスターウィルスへの免疫能力の強弱、それが高くなければ仮面ライダーになれない。
その事実を聞き、自分がその資格を得られるのかどうか想像したのか、何処か厳しい表情を浮かべるリアス達。
「イッセー先輩。その仮面ライダーへの変身資格を有しているか否かは、どう判別するのですか?」
「判別方法は処置方法と同じく、極めて簡単だよ白音ちゃん。このドクターマイティXXによる処置が終了次第、その判別が行われます。もし免疫能力が基準値を上回った場合、ゲーマドライバーのレバーがひとりでに開き、装着者を、医療ゲームをモチーフとした仮面ライダードクトル、ドクターゲーマーレベル1へと変身させます。下回った場合は、処置が終わっても何の動作もありません。今回の処置に関する説明は以上です。何か他にご質問は?」
そんな中で質問をした白音に答えつつ、説明を終えた一誠、改めて質問があるか問いかけたが手は上がらなかった。
皆の眼からは、仮面ライダーになるんだという決意がにじみ出ていた、心の準備は万端の様だ。
「それでは、処置を開始します。まずは、誰から行きますか?」
「そしたら、私が行くわ」
こうして開始したバグスターウィルスへの免疫を付ける為の、仮面ライダーへの変身資格を得る為の処置、最初に行うのは、リアスだ。
「分かりました、部長。ではゲーマドライバーを」
「ええ。確か腰の部分に押し当てれば、ベルトが自動で伸長して、ひとりでに装着されるのよね」
一誠からゲーマドライバーを受け取り、そう言いながら腰に押し当てたリアス、すると彼女の言う通りゲーマドライバーからベルトが伸び、彼女の腰に丁度いい長さで装着された。
『ドクターマイティダブルエックス!』
「では、始めます」
『ダブル・ガシャット!』
それを見てドクターマイティXXガシャットを一誠が起動、ゲーマドライバーに装填された事を示す音声を最後に、リアスの意識は失われた。
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「
「了解。これより患者リアス・グレモリーへの、バグスターウィルス免疫付加手術を開始する」
(ぱ、パラド!?これは、一体…!?)
リアスが目覚めると、其処には医療ドラマ等で見られる様な手術室の光景が広がっており、手術衣で全身を覆ったパラドと、その助手と思われる、オレンジを基調とした奇抜な形状のヘルメットらしき物で顔を覆った白衣姿の人物達が、手術台らしき物に何時の間にか寝かされていた彼女を囲っていた。
ドクターマイティXXガシャットを装填した直前まで目にしていた物とは明らかに違う光景にリアスは驚きの声を上げようとするも、その口はこれまた手術の際に着けられるマスクで塞がれている為に喋れない、というか喋ろうと口を動かす事すら出来なかった。
「
「はい」
(これ、本当に手術なの!?)
その急展開と言っても差支えない状況に戸惑うリアスを他所に、パラド達は作業を着々と進める。
最初に助手の1人から外科手術刀を受け取り、それを彼女の腹部に突き立てる。
(熱い感じが、直線的に!?これってまさか、斬られているの…!?)
「鉗子」
「はっ」
腹部を切り開かれている、痛みこそ感じない代わりに線上に広がって行く火傷した様な感覚からそう感じ取り、もはやこの処置が手術の域である事を実感したリアス、そんな彼女の反応を知ってか知らずか、パラドは助手から鉗子を受け取り、切り開いたリアスの腹部を固定した。
「
「はい。ワクチンの準備、完了しました」
だがまだ処置は終わらない、パラドは助手から注射器を受け取りつつ、他の助手が持っていたパウチ状の物に入った液体を、その注射器の中に満たした。
その液体は言うまでも無く弱毒化したバグスターウィルスで満ちている物、いよいよこの処置の本番を迎える…!
(か、身体の奥が、熱い…!)
「飲み込みが良いな。これは期待出来そうだ、親父に次ぐ2人目のライダー誕生かな?」
身体の奥に何かしら熱い物を注ぎ込まれた様な感覚がリアスを襲う、その感覚に耐える彼女の側で、パラドは何処か嬉しそうな声音でそう呟いた、まるで良い結果が出そうだと言わんばかりに。
そして、
「喜べ、リアス・グレモリー。俺達の力、お前に託そう!」
『ガッチャーン!レベルアップ!』
一連の処置が終わった影響か意識が再び朦朧とする中、リアスはそんな言葉が聞こえた気がした。
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『ガッチャーン!レベルアップ!ドクターマイティ!二人で作る!ドクターマイティ!二人でメイキング!エックス!』
「へ、変身した…?」
「凄いです、部長さん…!」
再び目覚めたリアス、其処は先程までの手術室では無く一誠の自宅で、自らの眷属が己を囲っているという何時も通りの光景だった。
いや、何時も通りと言うのは語弊がある、何故なら、
「ん、んぅ…
あ、あれ、私…」
「部長。起きて早々すいませんが、一先ず身体の方、確認をお願いします」
「身体?私の身体が一体…
え、こ、これって、仮面ライダーの!?」
リアスの身はモノクロの宇宙服を纏ったかの様なずんぐりとした物――仮面ライダードクトル・ドクターゲーマーレベル1に変貌していたからだ。
そう、リアスは今この時を以て、仮面ライダーに変身する資格を得たのだ。
その後、他のメンバーにも同様の処置が行われたが、驚く事に眷属全員が仮面ライダーに変身する資格を得られるという、良い意味で予想外な結果となった。