「全員、揃っているわね」
「はい、部長」
「1人のもれなく、此処へと戻りましたわ」
「ふぅ、間一髪だったにゃ」
「後はイッセー先輩が担当した依頼者への説明及び保障と」
「アーシアへの事情聴取だけ、ですね。アーシアを連れているであろうモータスが到着するまで僅か数分、早急に方針を決めましょう」
堕天使の襲来を察知し、安全の為にオカルト研究部の部室へと転移した一誠達、全員が戻った事を確認した彼らは、近いうちに訪れるだろう事態に備えて打ち合わせを始めた。
「イッセー、そんな貴方に朗報、と言って良いのかしらねこれは…
今回の件に関して朱乃がバラキエルさんに連絡を取った所、幹部からの指示どころか、把握すらしていなかったそうよ。つまりこの街に潜入している堕天使達の独断で、隠れて起こした事案、という事ね」
「ゑ?ギリルからは、複数の堕天使にアーシア、あと結構な数のはぐれエクソシストを連れて教会に潜伏していたと報告を受けました。其処まで大規模な人員を動かす事案を全く把握していない筈が…」
「信じられないでしょうけれど、私の連絡があるまで幹部の誰も気づいていなかったそうですわ…」
「部下の管理が全くなっていないのにゃ…」
「実際に依頼者への襲撃もあったのですし、被害が出たとしたらどうするつもりだったんでしょうか?イッセー先輩、及びバグスターの皆さんによる警備があったから未然に防がれたものの…」
「以前にも似た様な事案があったみたいだし、組織として大丈夫なのかな…?」
その冒頭、朱乃による連絡の結果が報告されたのだが、その内容は一誠達にとって信じがたい物だった。
複数の堕天使が独断で大多数のはぐれエクソシストを引き連れ、悪魔が管理する土地に潜伏していた…
そんな大規模な行動を独断で、しかも上層部に把握される事無く行えたのだ、管理の杜撰が過ぎると言われても文句は言えない事態だ。
「まあその辺は後で、お兄様に抗議して貰うわ。で、今回の件は私達が、ひいては我々悪魔勢力がどう対応しても構わないとの、私達に対応を一任するとの連絡があったわ。つまり…」
「堕天使やはぐれエクソシスト達を俺達が、煮るなり焼くなり好きにして構わない、と?」
「ええ、そういう事よイッセー。折角だから貴方の実力、私達の目の前で見せて貰っても良いかしら?恐らくはモータスが連れて来るであろうその、アーシアだったかしら?シスターを追って堕天使が来るかもしれないわ。その迎撃に、ね?」
「勿論です、部長。ノーコンティニューで
そんな堕天使勢力の信じがたい裏事情を垣間見て頭を抱えざるを得なかった一誠達だったが、今はそれを追求すべき時では無い、今この街に潜入している堕天使達への対応について話が続行され、それに関して一任を受けたとリアスから報告され、一誠が実力披露の為に迎撃する事が決まった。
其処へ、
『済まない、親父!堕天使を1人、取り逃がしちまったみたいだ!後の連中は確保出来たんだが如何せん数が多くて足止めを食らって…』
「大丈夫だ、パラド。後は俺達が対処して置く」
「オトン、今連れて来たぜ!」
「良くやった、モータス!白音ちゃん、案内を頼めるか?」
「任せて下さい、イッセー先輩!」
パラドからは堕天使を1人取り逃がしたという連絡が、モータスからはアーシアを連れて到着したという報告がほぼ同時に届いた。
それを聞いた一誠は白音に案内を頼み、自らは、
『ガシャコンブレイカー!ジャ・キーン!』
「それでは、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、イッセー!」
「期待していますわ、イッセー君!」
「油断しちゃダメにゃ、イッセー!」
「頑張って来て、イッセー君!」
「オトン、待っていたぜ!」
ガシャコンブレイカーを装備すると同時にその打撃部分の側面にある2つのスイッチ状の機構、その内『A』と書かれた方を押して刀身を展開させ、皆からの声援を背に窓から校庭へと飛び降りて行った。
其処には既にモータスヴァイパーから降り、自動小銃を持つモータスが、駒王学園へと来襲するであろう堕天使を今か今かと待ち構えていた。
そして、
「来るぞ、モータス!」
「あいよ、オトン!ハチの巣になりやがれ、烏如きがぁ!」
「なっ!?くっ!」
案の定と言うべきか学園へと向けて堕天使が襲来、それを見てモータスの自動小銃が、弾丸をばら撒く。
それを目の当たりにした堕天使が射線から外れようと回避行動をとったり、右手から光で出来た槍を生成し弾丸を防ごうとしたり等の行動を取るが、
「はぁっ!」
「きゃぁ!?」
其処に悪魔の翼を展開して飛び立った一誠の斬撃が、ガシャコンブレイカーの刀身による斬撃から放たれた衝撃波によって翼が斬り裂かれ、地上へと落ちて行った。
それを見て自らも着地する一誠、
「まさか貴様が現れるとはな。1日振りか」
「ああ、コイツが昨日オトンを殺そうと近づいて、ガットンのワンパンで返り討ちにした奴か!」
「兵藤、一誠…!」
モータスと共に、地に落ちた堕天使と対峙する一誠、その相手は昨日、一誠を襲撃しようと近づいて来たあの堕天使だった。
「我が主リアス・グレモリーが管理するこの街に、大層な人員を引き連れて潜入していたそうだな。一体何を企んでこの様な事を?」
「オトンに話した方が良いんじゃねぇか?どーせテメェは詰んでいるんだ、お仲間は既に俺のキョーダイ達によってお縄だしなぁ」
「く…!」
翼は斬られ、一誠とモータスの2人による「下手な動きをしたら殺す」と言わんばかりの威圧には流石に屈さない訳には行かなかったか、素直に何を企んでいたかを話し出した。
「教会から追放されたアーシアがレアな神器を持っていたから、有効に使えるよう私が頂こうと、この街で儀式を執り行おうとしt」
「もう良いや、喋んなクソアマ」
「きゃぁ!?」
その余りにも身勝手な計画にブチ切れたモータスは、未だ話している真っ最中の堕天使に向けて発砲、話を中断させた。
「碌でもない計画を立ててこの街に大挙して殴り込んだ挙げ句、邪魔だからとオトンに刃向けたクソアマを許すとでも、俺一言でも言ったっけか?許す訳ねぇだろうが!行くぜオトン!」
「ああ、モータス。アーシアの運命は、俺達が変える!」
『マイティアクションエックス!』
「大変身!」
『ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』
そして一誠もまたブチ切れた1人である、真っ先に殺意を向けたモータスの怒号を合図に、エグゼイドのレベル2の姿に直接変身した。
「な、何なのよその姿は!?」
今しがた一誠が変身して現れたエグゼイドの姿に驚きを隠せない堕天使。
それも無理は無いだろう、昨日の言動からして一誠が何の神器も持っていない人間というのが堕天使の認識だったのだ、それが神器による力としか思えない姿への変身を遂げれば誰でも驚く。
そんな堕天使に向けて、エグゼイドはこう告げた。
「仮面ライダーエグゼイド。この街を、この街の住人達を守る戦士だ。
ノーコンティニューで、クリアして見せる!」