「その後、ギリルは追手の撃退に難なく成功、同時刻に連絡を受けていたバグスター達の尾行等によって追手はこの街の、アーシア・アルジェントが赴任した教会に潜伏している堕天使及びはぐれのエクソシストだと判明しました。其処で何か大掛かりな事を成そうとしているらしく、その妨害となりかねないギリルの始末に出向いたのだと思われます。バグスターであるギリルの敵ではありませんでしたが」
こうして一連の説明を終えた一誠、今更ではあるが、ギリルもまた一誠が生み出したバグスターの一体である、故にアーシアとの意思疎通が可能だったのだ。
「部長。潜伏している堕天使の目的が何であろうと、これは立派な侵略行為です。宜しければ、バグスター達に調査及び突入を指示致しますが、どうしましょうか?」
「確かに私が管理するこの街で好き勝手されるのは我慢ならないわね…
でも急いては事を仕損じるわ。バグスターの存在が公になっていない以上なるべくなら足が付かない様にしないと。バグスター達が堕天使達の集団を蹴散らせる実力を持っていると、その力を借りて変身する仮面ライダーが人間でもなれる、という事が知られたらそれこそ危ないわ」
そのギリルからの連絡によって今説明した様な情報を得た一誠、何か大事が起こる前に対処すべきではないかとリアスに判断を仰ぐが、問題が問題なだけに彼女も慎重な対応をする事にした様だ。
「まずは裏を取らないとね。そのギリルが入手した情報を踏まえると、教会に潜伏している堕天使及びはぐれエクソシストは相当な人数の筈。その『大掛かりな事』も、上層部が関わっているかも知れないわね。朱乃、貴女のお父様に、バラキエルさんに連絡をお願いできるかしら?」
「分かりましたわ、リアス」
が、此処で朱乃に、何処かへ連絡をする様に指示を出した。
「部長、今出て来たバラキエルって、聖書にも出て来る堕天使の名前でしたよね?その堕天使に朱乃先輩が連絡って…?」
「イッセー?まさか貴方、朱乃がどういう存在か知らなかったの?数年前に助けた時に、朱乃のお父様に会ったりしなかった?」
「あ、はい。撃退して、直ぐに帰りましたけど…?」
その指示が、というよりその際に出て来た名前が気になりリアスに訊ねた一誠だったが、それに対するリアスの反応は、何故か困惑していると言いたげな物だった。
その問い掛けに対して素直に答えた一誠に「私てっきり知っている物だと思っていたわ。何処から説明しようかしら…」と頭を抑えながら呟き、
「実を言うとね、今言ったバラキエルは貴方の言う通り聖書にも記された堕天使で、堕天使勢力を統括する組織『
朱乃の実のお父様なの。朱乃は元々、堕天使の父と人間の母の血を継いだハーフ堕天使なのよ」
「ゑ?」
一誠の疑問に答えた。
「貴方が朱乃を助けた時に戦った、武装した男達だけど、彼らは朱乃のお母様、姫島
「成る程、そうだったんですか。何とも物々しい雰囲気だとは思いましたが…」
その答えに驚きの余り固まる一誠を他所に説明を続けるリアス、それを聞き、何故朱乃が襲撃を受けたのか一誠は納得した。
「その後も襲撃が続いた或る日の事。自分の存在が、姫島の家から狙われる自分の存在が、両親にとって重荷になっているんじゃないかと悩んだ朱乃は家出、紆余曲折の末に私と出会い、眷属にして欲しいって頼んで来たのよ。当時の私も快諾して彼女を女王として迎え入れたのよ」
「あれ?でも、朱乃先輩は堕天使勢力においてトップクラスの存在であるバラキエルの娘、一方の部長は悪魔勢力でも指折りの家と聞きました。大丈夫でしたか、その、勢力間の問題とか…」
その後朱乃がリアスの眷属となるまでを聞いた一誠はふと思った、敵対関係にある勢力における実力者の娘を悪魔勢力に引き入れて大丈夫だったのか?と。
「事が発覚して、朱乃共々こっぴどく叱られたわ…
『考え無しに行動し過ぎだ!』とか『今回の件は悪魔勢力を揺るがしかねない問題だというのを分かっているのか!』とか、色々とね…
事実その件に関して、グリゴリのトップであるアザゼルと、悪魔勢力を統括する四大魔王の一人『ルシファー』であるサーゼクス兄様が極秘裏に会談する事となったの。どうやら個人的な関係を持っていたみたいだったが故に実現した会談の結果、姫島家に対するグリゴリの対応に不手際があったが故として朱乃は正式に私の眷属となったわ」
「成る程、ところで部長って悪魔社会トップと兄妹だったんですね。さらりと流していましたが…」
「ええ。だからこそと言うべきか、叱られ方も壮絶な物だったわ。挙げ句その後アザゼルからはリアス・ヒ○トンなんて変なあだ名を付けられるし…
私は何処の人間界にその人ありと言われていたお騒がせセレブよ…!」
大丈夫じゃ無かった。
その時の事を思い出して何とも複雑な表情を見せながら一誠に答えていくリアス。
何気に自らが悪魔勢力のトップである魔王と血の繋がった兄妹だと発言していた、だったら尚更ダメな事ではあるが。
「良い、イッセー。今言った様に、他勢力の存在、それも天使勢力や堕天使勢力の存在との接触は相性の悪さだけじゃない、悪魔勢力を揺るがしかねない、いわば国際問題に繋がりかねない行為なの。今回の件だって、もしバグスター達と私達との関係が明るみに出たりしたら、それを口実に突っつかれかねないわ。分かったら今回の様な事は控える事、良いわね?」
「分かりました」
そんなリアスの忠告、余りにも痛い目を見たが故か迫真に満ちた忠告には、流石の一誠も頷かざるを得なかった。