ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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130話_敵にSaltを送る

「兵藤一誠、戦いの前に1つ頼みがある。

 

俺の兵士、レグルスをリプログラミングしてくれないか?」

「「「「『ゑ?』」」」」

「さ、サイラオーグ様!?」

 

この戦いがどう転がろうとレーティング・ゲームの勝敗が決まる事実上の最終試合、其処へと転移して来たリアス達の姿、というより一誠の姿を確認したサイラオーグは開口一番、まさかの依頼をして来た。

リプログラミングをしろって一体?つまりレグルスは神器らしき物を保有しているって事?なら駒価値が7のも納得だけど、だとしたら何でそんな半ばデメリットしかない依頼をして来た?もしかしてリスクの高い神器なのか?いやそうであっても何で態々崖っぷちなこのタイミングに?様々な疑問が浮かぶ余りリアス達は唖然とするしか無かった。

 

「唐突で済まない。この頼みをしたのには、レグルスの出自が関わっているんだ」

 

サイラオーグも、無理も無いかと思い、事情を説明し始めるが、その際、レグルスに装着している仮面を外させた。

すると、

 

「ば、バキボキボーン!?ガキゴキボーン!?」

「メラメラバーン!?」

「いや2人共、つい先日完結した仮面ライダーじゃないんだから…」

 

一誠達とそう変わらない少年の容貌が露わになった瞬間、身体中から怪音を響かせながらその体躯を肥大化・変形させ、やがてその身が体長5~6m位の栗毛のライオンと化した。

まさかの事態に、イリナと白音が某小説家にして剣士が変身する仮面ライダーが、禁書を基とした力による強化形態へ変身する際の変身音を思わず口走り、リアスからツッコまれていた。

 

「『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』。ギリシャ神話にて、ヘラクレスの十二の試練の相手として登場するネメアの獅子、その一匹を聖書の神が封印して出来た神器、それも兵藤一誠が手にした『赤龍帝の籠手』や、紫藤イリナが手にした『黄昏の聖槍』と同じく神滅具に位置する物だ」

 

そんなリアス達を他所に説明を続けるサイラオーグ、其処でレグルスが神滅具の一角を占める存在であると明らかになり、外野が騒然となる。

だが本当に驚くべきは此処からだった。

 

「と言っても俺が正式な所有者と言う訳では無い、俺自身は純血悪魔だから先天的には神器を宿せない身だ。俺がコイツの本来の所有者を見つけた時は、既に怪しげな連中に殺された後で、神器である斧だけが無事だった。然し所有者が死ねば神器はいずれ消滅する、その斧もまたそうなるであろうと思っていたんだが…

あろう事か意志を持ったかの様に獅子に化け、所有者を殺した集団を全滅させたのだ。俺が眷属にしたのはその時だ。獅子を司る母のウァプラ家の血筋が呼んだ縁だと思ってな」

 

それは神器の仕組みを知れば知る程、その異常性が分かる信じられない事だった。

何と所有者が死亡したにも拘らず神器は顕現したまま、己が意志で獅子に変貌して仇敵を皆殺しにした末、サイラオーグの眷属悪魔として新たなる生を得たと言うのだ。

神器のシステムから思いっきり逸脱している事実に、観客席の方からのざわめきが増した。

 

「然し所有者がいない状態のままな上、聖書の神が構築した神器のシステム内にいながら、魔王ベルゼブブ様が構築した転生悪魔のシステムにも強引な形で組み込んだ所為で、力がとても不安定でな。敵味方見境無しの暴走状態になって、勝負どころでは無くなるから単体で出せるものではなかった。出せるとすれば今回みたいに、俺と組める時だけだ。いざ暴走した時に止められるのは俺だけだからな」

 

当然、そんな神器のシステム上におけるバグだらけな挙げ句、その開発者たる聖書の神とは敵対関係な魔王アジュカ・ベルゼブブが開発した転生悪魔のシステムに組み込んだ事による影響は甚大だ、実際、レグルスの実戦投入は慎重に慎重を重ねる様バアル家関係者から釘を刺されていたそうな。

 

「無論、コイツの力を借りて禁手に至る事も出来るが、素の状態で暴走するのに禁手でも使ったらどうなるかは自明の理という物、故に俺は冥界の危機に関してのみ使うと決め、レーティング・ゲームではこの身体のみで戦うとしていた、2ヶ月近く前に行ったゼファードル・グラシャラボラスとのレーティング・ゲームで惨敗してからも、焦りにかられて誓いを破ってはそれこそ駄目だと自制した。

 

だがある日、耳にしたのだ。リアスの眷属である兵藤一誠と紫藤イリナ、塔城黒歌が修学旅行先である京都の地にて、禍の団・英雄派の幹部から神滅具を奪取した事を、その際に行使した力『リプログラミング』の存在を。そして思い至ったのだ、レグルスにリプログラミングを行えば、俺は『獅子王の戦斧』の正式な所有者になれるのではないか、レグルスの力を何の懸念も無く発揮出来るのではないか、と。尤も今俺達とリアス達は若手同士のレーティング・ゲームにおける対戦相手、事前の接触は躊躇われる身だから今この時までそれを口にする事は出来なかったが」

 

ゼファードルとのレーティング・ゲームはレグルスどころか自分自身も前線に出られず敗北していたのだがそれはさておき、自分自身と己の眷属が全力を発揮出来ないままその評価は地に落ち次期当主の座が揺らいでいたその頃、状況を一変出来るであろう情報を耳にした。

京都の地を襲撃した禍の団・英雄派が返り討ちに逢った挙げ句、幹部メンバーが所有していた3つの神滅具が一誠のリプログラミングによって奪取されたという情報だ。

神器はあくまで人間しか『先天的に』宿せないだけで、今回の話みたいに天使や堕天使、悪魔等の人外種族が神器所有者から神器を奪取して後天的に宿す事は出来る、其処でレグルスをリプログラミングして後天的に神器所有者になれば、そしてレグルスを所有者がある状態にすれば暴走の危険なく扱えるのではないかとサイラオーグは考えた。

だがサイラオーグは口にしていないが、リプログラミングによって初期化された神器はその後、己の所有者に相応しいとした存在へと飛んでいく、要はレグルスがサイラオーグ以外の存在を所有者に選んだ結果、己に次ぐ戦力を失うという可能性もあるのだ。

シークヴァイラとのレーティング・ゲームにおけるワンマンプレイこそあったが所謂脳筋では無く王として充分以上な知性を備えているサイラオーグが、その事実に気づいていない筈が無い、恐らくはそれを理解して尚、レグルスなら間違いなく自分を選ぶと信じて疑っていないといった所か。

まあその前にレーティング・ゲームにおける対戦相手の眷属である一誠がその依頼を受け入れるかどうかが問題なのだが…

 

「リアス、どうする?」

「イッセー、王として命ずるわ。

 

やっちゃいなさい!」

 

だがその前提となる問題は杞憂だった。

その事を察した一誠がリアスに判断を仰いだ所、彼女は満面の笑みで快諾したのだ。

 

「此処で拒否し、本領を発揮出来ないサイラオーグ相手に圧勝するのは簡単よ。だけどそれじゃあ何の意味も無いわ。皆も知っているでしょう、お兄様と同じく魔王になるという、私の夢を。その為にはこういう場でこれまで以上の力を見せつけなきゃならない。そう、真の本気で無いにもかかわらず既に最上級悪魔と同等の実力を得たサイラオーグの、本当の意味での全力を乗り越える位じゃないと!」

 

明らかにリアス側にとってデメリットにしかならなさそうなこの依頼、だがあっさりと受け入れたリアスの様子に驚きを隠せない観客席、だが一誠達はその真意を理解していた。

リアスの夢である魔王の座、それを勝ち取る為には依怙贔屓による物と言わせない程の実力を見せつけなければならない、そのハードルは他の誰よりも高い。

だが己の身だけでも最上級悪魔クラスなサイラオーグの、本当の意味で最強の力であるレグルスとの『禁手』に打ち勝てばその座はぐっと近づく、そのチャンスを逃してはならんと快諾したのだ。

ぶっちゃけてしまえばリアスの夢に向けての『踏み台』にしてしまおうという訳だ、尤もその『踏み台』は魔王の座への距離を一気に縮める程の高さだと認めてもいるが。

 

「分かった。なら!」

『ガシャット!キメワザ!』

 

真意が何であれ主であり恋人でもあるリアスが快諾するなら断る理由も無いと、一誠は手にしたガシャコンキースラッシャーにマキシマムマイティXガシャットを装填、その切っ先、というよりガンモードなので銃口をレグルスに向け、

 

「迷える魂に導きの光を!」

『マキシマムマイティ・クリティカル・フィニッシュ!』

「はぁっ!」

「ぐぅっ!?」

 

周囲を巻き込まない様にとの配慮からか限りなく集束させましたと言いたげな細めの、然しながら膨大なエネルギーを有するビームが発射、寸分の狂い無くそれは獅子の巨躯に直撃した。

 

「さ、サイラオーグ様!?ひ、引き寄せられる!?」

「レグルス!?」

 

すると次の瞬間、レグルスの身がまるで磁石に引き寄せられる砂鉄の如く、サイラオーグに向けて吹っ飛んで行ったのだ。

まさかそんな形になるとは思わなかったのか思わずたじろいだサイラオーグだが、その間にも2人、いや1人と1匹の距離は瞬く間に縮まり、そして、

 

「レグルス。お前は今、此処にいるのか?」

『はい!我が身は今、貴方の御側に!共に参りましょう、サイラオーグ様!』

 

衝突すると思われた次の瞬間、レグルスの巨躯は霧が晴れるかの如く消えて行った。

いや、消えたと言うよりサイラオーグの身に吸い込まれて行ったと言うべきか、事実、サイラオーグは己が身の中にレグルスの存在を感じ取り、呼び掛けると案の定、彼の声が内の方から聞こえて来た。

そう、分かり切った事ではあるが一誠のリプログラミングによってレグルス、いや『獅子王の戦斧』は正式にサイラオーグを所有者とした神器となったのだ。

それだけじゃない。

 

「これはレグルスの転生の為に使った兵士の駒…

成る程、正式に俺の神器となると同時に転生悪魔の枠から外れ、駒が排出された訳か。ならば何の問題なく力を発揮出来る。行くぞ、レグルス!我が獅子よ!ネメアの王よ!獅子王と呼ばれた汝よ!我が猛りに応じて、衣と化せ!『禁手化』!」

 

ふと足元へと目を向けたサイラオーグが見つけたのは、レグルスを悪魔に転生させる為に用いたのと同じ7つの兵士の駒、これが意味するのはレグルスがサイラオーグの眷属ではなくなったと言う事、転生悪魔では無くなったと言う事、神器でありながら転生悪魔でもあるという異常を解消し、元の神器としてのあるべき状態に戻ったという事だ。

 

「『獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)』、これが獅子王の戦斧の禁手だ!この力で試合、いや、死合と行こうでは無いか、リアス!紫藤イリナ!塔城白音!兵藤一誠!」

 

それを理解したサイラオーグは一切の躊躇なく禁手に至る為の呪文を詠唱、その身はやがて金色の獅子を思わせるデザインの全身鎧に包まれた。

 

「ええ、サイラオーグ!行くわよ、私の可愛い眷属達!」

「「「はい!」」」

『マイティアクションエックス!』

『デンジャラスゾンビ!』

『マキシマムマイティエックス!』

『HURRICANE RISING!』

『『デュアル・』』

『マキシマム・』

『『『『ガシャット!』』』』

「「マックス大!」」

「グレードX-0!」

「チャプターX!」

「「「「変身!」」」」

『『『『ガッチャーン!』』』』

『レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!デンジャー!デンジャー!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!』

『デュアルアップ!レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

『マザルアップ!赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!』

『レベルマックス!最大級のパワフルボディ!ダリラガン!ダゴスバン!マキシマムパワー!エェェェェックス!』

 

その全力の姿を、その身から発せられる圧倒的な威圧を感じ取ったリアス達は、此処で油断したら一気にひっくり返されると気を引き締め、其々が今なれる最強の形態へと変身した。

 

「「ノーコンティニューで、貴方に勝つ!」」

「心の滾りのままに、殴り勝ちます!」

「さあ、振り切っちゃうよ!」


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