ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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今話から、悪維持さんの小説『煉獄の義姉弟』とのコラボストーリーとなります!


8.5章 特別編『異文化交流のPURGATORY EDEN』
114話_Purgatoryからの来訪者


此処は、他人からすれば異世界と呼ばれるとある世界…

大地は闇の如く漆黒で覆われ、いたるところにある樹木全ては灰色に染まり、木の象徴である葉は一つも付いていない。まさに地獄と呼ぶには相応しいと言えるだろう…

そんな世界の中枢には、まるでおとぎ話に登場する巨大な白き西洋の城が建てられており、その城の内部では様々な異形と呼ばれるモノ達…あるモノは全身が黒で統一されたパーカーを纏った怪人達が、あるモノは黒と白をイメージとしたギャングファッションをした怪人達が、またあるモノは青と黒を基調とした戦国時代の足軽に似た怪人達があちらこちらと慌ただしく、何かの準備を整える為に働いていた。

そんな城のある一室…其処には卓上型の機械を操作する白衣を着こんだ白のセミロングヘアーに深紅の瞳をした青年と、それを見守る赤のロングヘアーに蒼い瞳の女性と、黒髪のセミロングヘアーに翠の瞳の少女。そして彼等が視線を向けている場所にいるのは、まるで地獄の番犬ことケルベロスの装飾が施された全身が深紫色のカラーリングで、黄緑色のマントを着けた仮面の戦士だった。そして、その手には刀身にイコライザーの様なメーターがついた剣を持っていた。

 

『ウウウ…ヴヴォオオ!!!』

 

何処からか現れた全身黒色で岩を鷲掴みにする手のようにも見えるイメージをした巨大な怪物が唸り声をあげながら、背後から仮面の戦士に襲いかかる。仮面の戦士は怪物の存在をまるで最初から居たかの様に察知し、背後からの攻撃を回避すると左手で剣の持ち手にあるグリップを引っ張った。

 

『ヒッパレー!』

『ヴヴォオオオーーー!!!』

『スマッシュヒット!!』

 

グリップを引っ張った事で男性の音声が響き、テンポの良い音楽が周囲に流れる。すると剣の刀身を紫色の炎が燃え上がる様に包み込む。そして、怪物が再び襲いかかると仮面の戦士は剣のボタンを押しながら、紫炎を纏わせた斬撃を怪物に浴びせた。

 

『ヴォガァアアアアアア!?!?』

 

斬撃を食らった怪物は断末魔の悲鳴をあげながら、大爆発を起こして霧散した。怪物の最期を見届けた仮面の戦士は腰部の中央にある機械に装着された装置に手をかけて取り外すと、仮面の戦士は光と共に瞬く間に黒髪のウルフカットに深紫の瞳をした少年へと姿を変えた。そして少年は手にした装置に装填された小さなボトルを抜くと装置はまるで小さなケルベロスの姿をしたロボットに変形し、青年に視線を向けながら飼い犬の様にじゃれつきながら「ケル!ケルケル!」と吠える。

 

「『ロストケルベロス』とのシンクロ係数に異常は見当たらない、『ビートクローザー』の使い方は…まぁ、君なら剣に関しては問題は無いか。さて、これで一通りのシュミレーションプログラムは終了だ」

「はい、ありがとうございます。陽太郎(ようたろう)義兄(にい)さん」

一輝(いっき)、お疲れ様!これはぁ~アタシからのご褒美だよ♪」

「わっ!?ちょ…か、(かおる)義姉(ねえ)さん!?」

「義姉さん?少しは彼を休ませてあげなよ…これから実戦経験の為に()()()に出掛けなきゃ行けないんだからね?」

「イ・ヤ。だって長ったらしい研修みたいなのを一時間も休みなく続けたんだから、頑張ったご褒美くらいあげても良いじゃん?ねぇ、一輝ぃ~♪」

「あ、あの義姉さん…む、胸があたって…」

「アハハ…本当に薫義姉さんは一輝義兄さんの事が大好きだね?」

「ハァ、先が思いやられるよ全く…」

 

先ほどの仮面の戦士だった少年…鬼鉄(おにがね)一輝の元に、白衣を着こんだ青年…鬼崎(きざき)陽太郎がタブレットを片手に持ちながら記載された数値や、その結果を告げていると女性…兵鬼(ひょうき)薫が一輝へ力いっぱいに抱きつく。陽太郎が注意するも、薫はご褒美と称して一輝を更に抱きしめる。当の一輝は更に抱きしめられた事で、彼女の豊満なバストがあたり頬を赤らめる。苦笑と共に二人を眺める少女に対し、陽太郎は呆れながらタブレットを操作する。

 

「あ、話は変わるけどさ…なんでアタシが呼ばれた訳?夏煉(かれん)だって、今はヴラドさんが管理してる【ハイスクールD×D】の駒王町で仕事があるはずじゃん?」

「今回はその駒王町…正確には【ハイスクールD×D】の別世界に用があるのさ」

「「「???」」」

「まぁ、詳しい内容は“幽霊列車”に乗りながら話す事にするよ…フッ!」

 

薫の疑問に陽太郎は答えるが、薫と一輝と少女…鬼町(きまち) 夏煉は未だに頭上へハテナマークを浮かべている。陽太郎は詳しい説明を伝える為に場所を変えることを告げ、羽織っていた白衣を翻す様に脱ぎ捨てる。すると、彼の衣装が某幽霊世界のそれとそっくりな黒い軍服となった。

 

「さぁ、みんな。行くとしようか…」

 

陽太郎はそう言いながら微笑むと、開かれた扉へと足を運んだ。

 

------------

 

一方此処は、10月某日夜の駒王町。

 

「いやぁ、久々に静かな夜だぜ。あれ程あったテロリストの襲撃も、親父とトーテマが京都で奴らの牙を引っこ抜いてやった途端にパタリと無くなった。やっぱ平和な日常って良いもんだぜ。久しぶりにヴァイパーのエンジン吹かして風になろうかねぇ?」

 

『裏』の住人達にとっては最早お馴染みとなったバグスター達による日常パトロール、この時間帯を担当する1体であるモータスは、此処最近まで騒動に満ちたのが夢であるかの様に静けさを取り戻した夜の街中で、ご機嫌な様子で独り呟いていた。

そう、9月に入った頃から毎日の様に仕掛けられ、そして必ずや実行前に襲撃者が確保されていた禍の団によるこの街への襲撃、だがそれも主に行っていた英雄派の大幅な弱体化、具体的には神滅具所有者の殆どが一誠のリプログラミングによって己が神器を奪取された事で、襲撃どころでは無くなったのか嘘の様に無くなったのだ。

そんな平和な時間を満喫しながら街中を巡回するモータス、だが「嵐の前の静けさ」という諺がある様に、こういう時に限って思いも寄らない事態は起こるものだ。

 

「ん、何だ?空が、ぐにゃぐにゃに…

な、何じゃありゃぁ!?骸骨、いや、機関車!?」

 

人気が無くなった為にすっかりと寂れた工場跡地が見える場所へとやって来たモータスだったが、其処で信じられない光景を目の当たりにした。

何の遮蔽物も飛行物体も無い、秋雨シーズンにしては珍しい澄み切った夜空、だがその空が突如として歪み出し、其処から想像だにしない物が現れたのだ。

現れたのは列車、それも世間一般的にみられるそれではなく、先頭部が頭蓋骨を模した複雑且つ世間受けしない不気味なデザインの蒸気機関車だった。

 

「えーっと今日のシフトは、リボルとアランブラとロボル、オペレーターはパラドか!よし、繋がった!こちらモータス!たった今、街外れの工場跡地の上空から突如、骸骨みてぇな蒸気機関車が出現、線路を空中に敷設して走行中だ!殆ど前触れのねぇ出現の仕方からしてテロリスト共によるものの可能性が高い!直ぐ現場に急行してくれ!」

『了解!』

『承知!』

『任せろ!』

 

そんな光景を目の当たりにしてからのモータスの行動は早かった。

同じくこの時間帯を担当しているリボル、アランブラ、ロボルと、オペレーターであるパラドと通信を繋げ、今見た光景を報告、工場跡地へと向かう様指示を飛ばし、他の3体も応じた。

 

『ちょっと待て、骸骨みたいな蒸気機関車…

ま、まさか!?おいお前ら、それはテロリストのものじゃねぇ!それに乗っているのは』

 

そんな彼らに、パラドが通信機から必死に制止を訴えるも、聞く者は誰一人としていなかった。

 

「おぅ、来てくれたか」

「うむ、1人の欠員も無く到着だ」

「あれが、お前が言っていた骸骨らしき蒸気機関車か。あの如何わしさは反則だろ、よくもまあのこのこと現れたものだ」

「此処まで堂々と現れたのだ、禍の団でも相当な手練れかも知れん。近辺には奇襲に適した遮蔽物も電子機器も無い、心して掛かるぞ」

 

それから程なく、列車がまるでショッピングモールの車用スロープを降りる様に地上へ降り立とうとしていた頃には、第一発見者であるモータス、彼の連絡を受けたリボルにアランブラにロボル、そして暗い色合いにデジタルパターンの迷彩を施した軍服を纏う一方で、モータスヴァイパーのフロントカウルの様なド派手なヘルメットを装着するという何ともミスマッチな風貌の兵士達――戦闘員型バグスターウィルスの大軍が、列車を包囲した。

尚、何かに気付いて制止を訴えていたパラドの声はもう聞こえない、これは余りにしつこく制止を訴える彼の声が鬱陶しくなり、あろう事か皆して通信回線を切断した為である。

 

「総員構え!」

 

リボルの号令と共に各々の装備武器を構えて列車の扉へと向け、出て来るであろう存在に直ぐにでも対応すべく神経を張りつめるバグスター達、そして、

 

「さあ、お前らの罪を数えろ!」

「動くんじゃねぇ、テロリスト共!」

「貴様ら、此処が我らが義母様、リアス・グレモリー様の管理する街と知っての行動か!?」

 

扉が開いた瞬間、其処にいた存在に向けて、誰もが武器を突きつけた。

 

「夏煉。おかしいな、僕達は君達の主人が属する冥界とアポを取って来たんだけど?」

「あぁ?テロリストが何を証拠にそんな寝言を」

「此処にその証拠たる許可証もあるんだけどね」

「な!?た、確かにそれは冥界政府が発行している入界許可証、まさか…!」

 

現れたのは陽太郎に、モデル並みの体形に某独裁国家の制服を模した軍服を纏った薫、某人斬り治安部隊の副長が着ていたのと同じような黒い軍服を纏った一輝、モデルの様な体形に某忍者育成学校の選抜メンバーが着るそれの様な黒い軍服を纏った夏煉の4人、バグスター達の敵意剥き出しな行動に反応して何かを取り出そうとした夏煉を諫めた陽太郎が、事情を説明しながら、その証拠となる書類を取り出すと、列車を囲んでいたバグスター達に動揺が広がった。

 

『お前ら落ち着け!彼らは今日『煉獄の園(パーガトリー・エデン)』から親父を訪ねて来た人達だ!』

 

テロリストだと思っていた存在が実は、ちゃんとした手順に則ってこの地を訪ねて来たお客様だった、それを聞いて慌てて通信回線を接続すると、端末からはパラドの焦り丸出しな声が聞こえて来た。

 

「え、親父を訪ねて来た客だったのか!?パラド、おま、早く言えよ!」

『言っただろ、さっきから!だというのにお前ら「うるせぇ」と言って通信切りやがって!まずい事態になって相手を滾らせないか、俺は冷や冷やしたぞ…

今、黒歌のおふくろが車を飛ばしてそっちに向かっている。到着するまでにさっさと謝罪しろ、全く』

 

聞いていないと言わんばかりにモータスが非難の声を上げるが聞こうともしていなかったのはモータス達である、お前達が文句を言う資格は無いと言わんばかりに、相手方に謝罪する様指示を飛ばした。

 

「そう、か…

此度の無礼、誠に申し訳ございませんでした。遠く離れた地よりお父様を訪ねられたと言うのに、とんでもない事を…」

 

パラドからの連絡によって一誠を訪ねて来た客だと判明した陽太郎達、それを知り、そんな相手にとんでもない事をしてしまったと思い知ったバグスター達、その中からアランブラが謝罪の言葉と共に頭を下げ、モータス達も続いた。

 

「まあ、分かってくれたら良いよ。ほら、夏煉達も殺気を収めて」

「よ、陽太義兄さん?でも…」

「この世界の情勢は確認していただろう、禍の団が未だ倒されていない中で警戒心を解かないのは道理という物だよ」

「けどコイツら仕事でパトロールしている連中だろ?アタシらが来る事に関して何の連絡もしていないとか、一体こっちを何だと思っているんだか」

「義姉さん。どうやら向こうのオペレーターの話からして、彼らが連絡を遮断していたみたいですよ」

「それはそれで従業員教育がなっていないねぇ、全く」

 

その謝罪を素直に受け取った陽太郎、一方で何かしらの迎撃行動を取ろうとした夏煉達は不信感を抱いてはいたが、何とかこの場の騒ぎは収まった。

 

「はい、到着っと。全く、アンタら何やってんのにゃ。禍の団への警戒心があるのは分かるけど、早とちりして良い理由にはならないでしょうに。まあその様子だとパラドからこってり絞られたみたいだし、とやかくは言わないのにゃ。後は私に任せて、ささ、パトロールに戻った戻った」

「「「「了解!」」」」

 

陽太郎達がこの街に到着して早々に起こった騒動が収まってから程なく、黒歌が運転するテスラ・モデルXが到着、運転席から降りて来た彼女がバグスター達に指示を飛ばしながら一行へと向き直った。

 

「貴方達が煉獄の園からイッセーを訪ねて来た人達ね。私はリアス・グレモリーの騎士、いや、仮面ライダーパラガスって名乗った方が良いかにゃ?塔城黒歌、今日は宜しく頼むにゃ!」

(黒歌さん!?この世界の黒歌さんが、リアス・グレモリーの眷属…)

「ん?どうかしたかにゃ?」

「あ、いえ、何でもありません。煉獄義姉弟の次女、鬼町 夏煉です」

「先に言われちゃったか。異世界『煉獄の園』を統治する煉獄義姉弟の長男、鬼崎 陽太郎です」

「アタシは煉獄義姉弟の長女、兵鬼 薫だよ」

「僕は煉獄義姉弟の次男、鬼鉄 一輝です」

 

バグスター達を見送り、互いに自己紹介を始めた黒歌達、その際に夏煉が驚いた様な表情を浮かべたのに気付いた黒歌が気に掛けたが、深入りする事も無いと早めに切り上げた。

 

「イッセー達が待っているし、送るのにゃ。ささ、席へどうぞにゃ」

 

互いの自己紹介も終わり、一誠達が待つ屋敷へと送迎する為に車の座席へと案内する黒歌、陽太郎達も勧められるがまま其々が乗り込んで行った。

 

「それじゃあ、出発進行にゃ!」

 

そして、陽太郎達4人が乗り込んだのを確認した黒歌は車を起動させ、屋敷への道を進んで行った。


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