ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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103話_First Day

色々と微笑ましい光景が所々見受けられた新幹線での時間も目的地である京都駅に到着した事で終わり、一行は集合場所であり、今回の宿泊先である高級ホテルへと移動、其処で教師から旅行における注意事項の連絡を受けていた。

因みに今回宿泊するホテルの名は『京都サーゼクスホテル』…

言うまでも無くサーゼクスらグレモリー家が経営に関与しているホテルであり、その縁から毎年、駒王学園の修学旅行では宿泊場所となっており、ホテル代もかなり安く出来ているとか。

尚、其処から少し離れた所には『京都セラフォルーホテル』、これまた読んで字の如くセラフォルーらシトリー家が経営に関与している高級ホテルがあり、それを聞いた一誠達は某新喜劇の如くずっこけていたが余談である。

 

「皆さん。これから自由行動の時間ではありますが、駒王学園の生徒であるという自覚を持って、他人様に迷惑を掛ける事の無い様、楽しい旅行を満喫して下さい。間違った行動1つが場合によっては、楽しい旅行を台無しにしてしまいます、節度を守った行動を取る様に。旅行気分に浮かれて不純な異性交遊なんてもっての外ですよ、確かに修学旅行と言えば気になる異性と近づく機会だったり、親密を深めたり、なんて話をよく聞きますが、其処は学生ですから例え恋人同士であっても純粋で真面目な交際を心がける様、に…

イッセーさんと私の不純異性交遊、という事はあんな事やこんな事も…!?

イッセーさ、わたす初めてだから、優しくしてほしいだ…」

 

一誠達のクラスはロスヴァイセが連絡をしていたが、その途中で一誠と『見せられないよ!』と言いたくなる光景を想像、いや妄想したのか、ひとり己の世界に入ってしまっていた。

駒王学園に就任してからのロスヴァイセは、美人で真面目ではあるが何処か抜けた所が可愛らしいく、また歳も近いため『ロスヴァイセちゃん』と親しみを込めて呼ばれる人気の教師となっていた。

それ故か一誠との間柄がバレた際には、彼女に対して好意を抱いていたらしい男子生徒達が打ちひしがれる光景が広がり、彼への敵意が増加したとか何とか。

 

「何してんのにゃ、ロスヴァイセ。まあ良いにゃ、という訳で其々の部屋にデカい荷物を置いたら、午後5時まで自由行動なのにゃ。時間に余裕を持って行動する様にね。それじゃあ、解散!」

『はい』

 

それはともかく、完全にトリップしてしまったロスヴァイセを見かねた黒歌が連絡を引き継ぎ、其々のグループは行動を開始した。

 

「確か俺達の部屋は2階の207号室、2人部屋だったね、イッセー」

「ああ。で、イリナ達は3階の310号室、3人部屋だったな」

「うん。じゃあ私達は310号室に向かうね、イッセー君。ロビーで待ち合わせね」

 

一誠達もまた大きい荷物を自分達の部屋に置いていき、ロビーで集合する事とした。

 

「皆集まったか。今は午前11時、昼時か。何処で昼飯にしようか」

「なら皆、此処から電車やバスで40分位と遠くはなるが、行きたい店がある。其処にしないか?」

 

グループメンバー全員がロビーに戻ったのを確認した一誠、丁度昼時となったのを見て、まずは昼飯にしようと決めたが、其処にヴァーリがリクエストして来た。

 

「その店は、てんいちの総本店だ」

「てんいちって、あのスープが濃い、濃すぎてポタージュみたいになっているラーメンで有名な?」

「確かてんいちのファンは『ラーメンではなく、てんいちを食べに行く』と言う位、他のラーメン店とは一線を画す存在だったね」

「そういえばてんいちは京都発祥だったな」

「ほぇー、そんなお店が京都にあるんですね」

 

てんいち。

今しがたイリナがいった様に「箸が立つ」と言われる程の濃厚な鶏と野菜ベースのスープで有名なラーメン店であり、その独自の味で人気を博して来た。

今でこそ名古屋の『おおいし亭』などのてんいちをも上回る、箸はおろかレンゲすらも立つと言われる程の濃厚なラーメンを出す店も出て来てはいるが、それでも濃厚ラーメンの元祖として『関東の太朗、関西のてんいち』と未だ並び称される存在である。

 

「ああ、京都と言えばてんいち始まりの地!折角京都に来たんだ、てんいち総本店で昼飯にしようじゃないか!」

「ヴァーリって、こんなにテンション高かったっけ…?」

「確か美猴が言っていたな、ラーメンの事となると人が変わると。戦闘の時とは別の意味で確かに人が変わっているね…」

「あ、あはは…」

「ま、まあ良い、折角だからヴァーリの提案通り、てんいち総本店で昼飯にしよう」

 

そのてんいちの総本店での昼食を提案したヴァーリのキャラ崩壊と言うしかないテンションに一誠達が引き気味になりながらもその提案に乗り、一行はてんいち総本店へと向かう事にした。

 

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「これがてんいちのラーメンか。話には聞いていたが、凄まじい濃さだね」

「見るからに『濃いッッッ!』て感じのスープだよね」

「凄く濃厚なスープです、でもそんなにしつこい感じじゃないと言うか…」

「鶏だけではなく、野菜もスープに使っているらしいからな、それでクドさが和らいでいるのかもしれないな」

 

ヴァーリが言っていた通り出発から40分位でてんいち総本店へと到着した一誠達、全員がヴァーリのおすすめである『スープライスセット・こってり』を注文した。

各自がその味に驚きつつ舌鼓を打っている中、提案した本人であるヴァーリはと言うと、

 

「ぷはー…

学園近くのてんいちにも行った事はあるが、総本店の味はまた違うな」

 

スープをレンゲで口にした後は如何にも幸せそうな顔で一心不乱に麺を啜り、具を口にし、器からスープを飲み、セットに付いていた明太子ご飯も共に完食した。

食べ終わったヴァーリの表情は、正に至福の時、と言いたげであった。

その姿にヴァーリ以外の面々は普段とは明らかに違うヴァーリの姿に戸惑いを隠せない為か、或いはその幸せそうな姿が微笑ましく見えたか、度々箸を止めてその姿に見入っていた。

 

「どうしたお前達、早く食べないとのびるぞ」

 

その視線に、完食してから気付いたヴァーリの指摘を受けて再び食べ始めた一誠達、とは言え度々箸を止めていただけで食べ進めてはいたのでヴァーリからそれ程遅れる事無く全員完食した。

 

「さて昼飯も食べ終わったし、今日は何処を回るか」

「丁度ここから歩いて数分で銀閣寺がある、まずは其処へ行くか」

 

完食し、てんいち総本店を後にした一行、その近くに京都の観光名所として十指に入ると言って良い程有名な世界遺産である銀閣寺――正式には慈照寺と呼ばれる寺院へと向かう事にした。

その途上、

 

「…皆、気付いているかい、私達は監視されている様だね」

「ああ、俺達悪魔がこの街を散策しているからね、パスがあるとは言え警戒するに越した事はない、という訳か」

 

一行は自分達悪魔を監視しているであろう存在の視線を感じた。

ヴァーリが言った通り悪魔はこの地において余所者、信用出来る存在にしか配布されないパスを持っているといってもそれは変わらない、念のために見張りが付いているのだろうと彼らは思ったが、

 

「…いや、そうでも無いみたい。

いや、その目的もあると思うけど、それだけじゃ無くなっちゃっているみたいだね、あの様子は」

「この好意的な視線、そして微かに聞こえるはしゃいだ様子の声…

間違いない、妖怪か或いは『裏』に関わる人間か、監視に出向いた存在が俺のファンみたいだ」

 

イリナと一誠は、それとはまったく違う、好意的な物と感じた様だ。

その言葉を受けて一行が耳を澄ませると、

 

「ヤバいよヤバいよ、生ISだよ、本当にISが京都に来てるよ…」

「八坂様がおっしゃられた通りだ、本当にISがあそこに…!」

「監視の任が無かったら今すぐにでもサイン貰いたいのになぁ…」

 

雑踏の中に聞こえて来た声、ISとしての一誠のファンであろう存在の声がした。

あの様子からして気にしなくても大丈夫かと考えた一行は放置を決め、初日の京都観光を満喫した。


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