ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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97話_襲来、Trickster!

「オーディン様、もうすぐ日本の神々との会談なのですから、旅行気分はそろそろお収め下さい。このままでは帰国した時、他の方々から怒られますよ」

「全く、お主は遊び心の分からぬ女じゃな、ロスヴァイセよ。何時もそんな張りつめていては疲れるじゃろう。もう少しリラックスを覚えたらどうじゃ、其処のバラキエル坊みたいに」

「元気があれば何でも出来る!元気があれば会談も上手く行く!」

「バラキエル様、その物真似、お気に召したのですか…?」

「中の人が嵌れば私も嵌る!有難う!バカヤロー!」

「お父様、メタ発言までしないで下さい、恥ずかしいですわ…」

 

来日してから数日が経過したが、日本の神々との会談に臨む筈のオーディンは緊張感など微塵も感じられず、会談本番が刻一刻と迫る中、護衛として同行している筈のバラキエル達(リアス眷属も、悪魔側の護衛に任ぜられる事となった)を連れ、視察と称して毎日の様に遊び回っていた。

ある時は寿司屋、ある時は遊園地、ある時はゲームセンター、ある時はキャバクラ等々…

様々な場所を遊びまわっている状況にロスヴァイセは毎日の様にツッコミを入れるもオーディンは聞く耳を持たず、その側で某プロレスラーの真似をしているバラキエルを見習えと、父親の醜態に恥ずかしがる朱乃の姿を他所に、ギャグにしか思えない返しをされていた。

尚北欧ではお決まりの返しだったのか、来て直ぐの頃は彼氏いない歴=年齢である事をネタにロスヴァイセをいじっていたオーディンだったが、一誠という彼氏が出来るまで同じく彼氏いない歴=年齢だったアラサーである黒歌の逆鱗に触れ、色々と痛い目を見て以後はそれをネタにしなくなったのは余談である。

 

「あの、兵藤さん」

「折角です、イッセーと呼んで下さい、ロスヴァイセさん」

「は、はい。ではイッセーさん、凄い量のチーズケーキですね。それもベイクドチーズにレアチーズ、チーズスフレ…

それ、1人で食べるのですか?」

 

その中でオーディン達がキャバクラに立ち寄った際、年齢の関係から外で待機する事となった一誠達は其々、思い思いの行動をしていた中、ゲーム開発作業をしていた一誠の所にロスヴァイセがやって来た。

その一誠の周囲には開発作業用のノートPCの他、様々な種類のチーズケーキが、全て4号ホールケーキの状態で置かれていた。

 

「ええ。ゲーム開発は頭脳労働、脳を酷使するので糖分補給は欠かせません。それとどうやら俺、牛乳や乳製品を摂取すると傷や体の不調が回復する体質らしいので、どちらも摂取できるチーズケーキが大好きなんです」

「そ、そうなんですか。オーディン様から伺ったのですが、幼少期より数々の大人気ゲームを世に送り出して来たとか。凄いですね…」

 

とロスヴァイセの疑問に応じながらチーズケーキを口に運ぶ一誠の思わぬ嗜好が判明した一場面もあったがこれも余談である。

それはさておき、そんな賑やかな、というか騒がしい状態な一行を乗せた巨大馬車、オーディンの愛馬である8本脚の軍馬『スレイプニル』が引っ張る巨大馬車の中でただ1人、

 

「はぁ…」

 

深く思い悩んでいる存在がいた、アザゼルだ。

数日前にバラキエルから一喝されたアザゼルはそれ以来、ずっとこの調子である。

それでも昨日まではサーゼクスらとの打ち合わせもあり同行していなかった為、この視察に悪影響を及ぼす事は無かったが…

 

「全く、これからにこやかにせねばならん場に臨むと言う時にそんな辛気臭い顔しおって!シャキッとせんか、アザゼル!」

 

そんなアザゼルの姿にとうとう見かねたオーディンが、彼を叱り飛ばした。

 

「これから1年、10年、いや1世紀先の将来について、いきなり悩んだ所で答えなぞ直ぐに出ぬぞ!それよりも今日じゃ、今日この時をどうすべきかを考えんか!バラキエル坊に喝を入れられた途端ウジウジしおって、これだから小僧だと言うんじゃ!」

 

オーディンが来日して直ぐの頃にバラキエルから指摘された事、それが未だ心に引っ掛かっていたアザゼルの様子を察したオーディンは、今すべき事、考えるべき事に専念しろと諭した。

 

「だったら爺さんは考えているのかよ。爺さんはこれから先の事、そして今日この時をどうすべきか考えているのかよ!」

「考えとるぞ、お主みたいな青二才と違うての。考えた末に答えを見つけた後はもう平気じゃからバラキエル坊と遊んd、ゲフンゲフン、異文化に触れておる訳じゃ。それに」

 

ならばそっちはどうなのかと聞き返すアザゼルに応じるオーディンだったが、

 

「こうやって態と隙を見せて置けば、この前言った厄介な輩がこうして殴り込んで来るからのう」

 

その最中、突如として馬車が大揺れした。

どうやらスレイプニルが急ブレーキを掛けた事で停止した事による物だった様子、それに驚きを隠せない面々の一方、オーディンはどうやらその理由を察していた様だった。

 

「初めましてだな、諸君!邪魔しに参った!我こそが北欧の悪神、ロキだ!」

 

その原因、それは馬車の進路に立ちはだかる、水色の長髪で端正な顔立ちの男――北欧のトリックスターとして名高い悪神、ロキだった。

 

「これはロキ殿、この様な所でお会いするとは。失礼ながら、如何様な御用でしょうか?この馬車には貴方の拠点たる北欧の主神オーディン殿がおられますが、それは承知ですかな?」

 

その存在に驚きを隠せない一同だったが、その中でも(思い悩んだ状態のアザゼルでは役に立たないと判断した)バラキエルが護衛の、堕天使の代表として前に出て、落ち着いた様子で対応していたが、

 

「いやぁ何、我らの主神殿が、我らが神話体系を抜け出で、我ら以外の神話体系に接触して行くのが耐えがたい苦痛でね。我慢出来ずに邪魔しに来たのだ」

「ほう、堂々と言うな、ロキ。この地で刃を交えようという訳か」

 

ロキの答えに態度は一変、殺気剥き出しで対応し出した。

 

「本来、貴様ら堕天使や悪魔、天使達と会いたくは無かったが致し方あるまい。オーディン共々我が粛清を受けるが良い」

「オーディン殿が接触するのには異議を唱えるのに、貴様が接触するのは良いと?明らかな矛盾だ」

「他の神話体系を滅ぼすのなら兎も角、和平をするのが納得出来ないのだよ。我々の領域に土足で踏み込み、聖書を広げたのはそちらの神話だろう」

「生憎だがそれを行った教会に属する者は此処にいない、抗議がしたいのなら此処では受け付けんぞ」

「抗議は後でするとして、主神オーディン自ら極東の神々と和平を結ぶのが問題だ。これでは我らが迎えるべきラグナロクが成就出来ないではないか。ユグドラシルの情報との交換条件で得たい物とは何なのだ、全く」

 

そんな殺気を平然と受け止めたロキとバラキエルの押し問答が始まった。

 

「埒が明かぬか。ならば1つ、貴様の行動は禍の団と繋がりが?いや、律義に答える悪神でも無いか…」

 

それでは得る物は無いと判断したバラキエルが問いかけるも、まともな返事は帰って来ないだろうと思っていたが、

 

「愚者たるテロリストと我が想いを一緒にされるとは不愉快極まりない事だ。これは己の意志だ、テロリストなど関係ない、我が意志で此処に参上している」

 

如何にも面白くないといった様子で、律義に答えてくれた。

 

「禍の団じゃねぇ、と来たか。だがこれはこれで厄介な問題だな。爺さん、これが、北欧が抱える問題って訳かい?」

「うむ、どうにも頭の固い奴がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向くアホまで登場するのでな」

 

その問答を後方にて聞いていたオーディンとアザゼルは、禍の団関連では無いにしても厄介である事に変わりのないこの事態に渋い顔をしながら馬車から出て来た。

 

「ロキ様、これは越権行為です!主神に牙を剥くなど許される事ではありません!然るべき公然な場で異を唱えるべきです!」

「一介のヴァルキリー如きが、我が邪魔をしないでくれたまえ、我はオーディンに聞いているのだ。オーディンよ、まだこの様な北欧を越えた行いを続けるお積りか?」

 

同じく出て来たロスヴァイセが、臨戦態勢とでも言うべきか鎧姿となりながらもロキに物申していたが、彼は聞く耳を持たず、オーディンに迫る。

 

「そうじゃよ。少なくともお主よりサーゼクスやアザゼル、後バラキエルじゃな、こ奴らとコミュニケーションをとる方が万倍も楽しいわい。日本の神道を知りたかったし、向こうも此方のユグドラシルに興味を持っていた様でな。和議を果たしたら互いに大使を招き、異文化交流をしようと思っただけじゃ」

「認識した。なんと愚かな事か。

 

 

 

此処で黄昏を行おうではないか」

 

それを受けたオーディンの答え、それはロキにとってはふざけるなと言いたくなる物だった様で、ラグナロクを行おうと宣言した。

 

「それは宣戦布告という訳だな」

「如何にm」

『ギャァァァァァァァァ!?』

「なっフェンリル!?何時の間、に!?一体どうしたのだその深い傷は!?」

『ガ、アァ…!』

 

バラキエルの確認に応えようとしたロキ、だがそれは突如として現れた存在の叫び声で中断させられた。

それは体長10mを越していそうな巨体の狼――ロキの息子、フェンリルだった。

だが今のフェンリルは息も絶え絶え、何か苦痛に耐えている様子であり、その身体から流れ出たらしき血の池が地面に広がり出していた。

 

「またイリナに、風魔に助けられたな」

 

その要因にいち早く気付いた一誠、その視線の先には漆黒の装甲で覆われた白髪の戦士――ライジングゲーマーレベルXとなった風魔が、ロキ達を挟んで一誠達の反対側に、ガシャコンニンジャブレードを振り切った状態で立っていた。

良く見るとその刀身は血らしき液体で覆われているのか、赤黒く染まっていた。

そう、ロキが宣戦を布告したその瞬間、風魔に変身したイリナが奇襲を仕掛けたのだ。

軽く走るだけで音速を越える素早さを有するライジングゲーマーレベルXとなった風魔の奇襲には流石のロキも反応出来ず、親の危険を第六感で察知し駆け付けたフェンリルも出来る事と言えば、風魔の前に立ちはだかってロキを庇う事だけ。

大した抵抗も出来なかった末、その腹部は深々と袈裟斬りされ、立っているのもやっとな状態に至ったのである。

 

「くっ!今日は一旦引き下がるとしよう!だがオーディン!この国の神々との会談の日、またお邪魔させて貰おう!その時こそ我と我が子フェンリル『達』が、その喉笛を噛み切って見せよう!」

 

ロキもそれに気づき、このまま戦うのは不利と判断したのか、その捨て台詞を残し、何かしらの転移術式を使って消えていった。


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