ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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87話_聖女とのDate

翌日、9月の第2日曜日に行われる体育祭に向けての練習が全校で行われている中、二人三脚に出場する一誠とそのパートナーであるアーシアもまた、練習を行っていた。

尚、出場する種目を決める際、一誠達のクラスメートであり松田及び元浜の変態コンビに次ぐ変態として有名(ただ変態コンビの様な行動はしない為か、嫌われてはいない)な女子生徒、桐生(きりゅう)藍華(あいか)が一誠を罠に嵌める形で選出したり、そのパートナーに名乗る女子生徒がアーシアやイリナ、ゼノヴィアを始めとして殺到した末にその立場を巡るじゃんけん大会が開催されたりといった波乱が起きたが余談である。

 

「アーシア、二人三脚を行う上で重要な要素、それは個人個人の瞬発力でもスタミナでもない、2人のコンビネーションだ。2人の息を合わせなければ、コケるだけで前には進まない」

「私とイッセーさんのコンビネーション、ですね」

「ああ。其処で今回は、アーシアのペースに合わせていこうと思う。自分のペースに合わせ、1、2と声を出しながら足を出してくれ。俺もそれに合わせる」

「分かりました、イッセーさん!宜しくお願いします」

 

それは兎も角、一誠のアドバイスを受けてまずは自らのペースで進む事となったアーシアは、己の掛け声と共に足を運び、一誠もそれに合わせ、2人は着実に前へと進んで行く。

 

「おっと!どうした、アーシア?」

「す、すいませんイッセーさん、ちょっとボーっとしちゃって…」

 

が、ある程度進んだ所でアーシアのストライドが乱れたのか、よろけてしまった2人。

一誠が踏みとどまった事で転びはしなかったが、急にストライドが変わる程アーシアの集中力を乱す事があったのかと一誠は考えた末、何かを決心した。

 

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「アーシア。急に済まないが、今日は寄り道して行こう」

「え?で、でも、家に皆さんが待っているでしょうし、バガモンさん達もお夕飯を作って…」

「バガモンには既に連絡してある。今日は俺とアーシアの晩御飯は要らない、と。バガモンからは『2人きりのデート、しっかり楽しんで来るんだガ』と快く応じてくれたよ」

「で、ででで、デートですか!?わ、私と、イッセーさんの…」

 

その日の放課後、一誠はアーシアをデートに誘った。

唐突なタイミングだった事、一誠から誘う形での2人きりのデートが初めてだった(2人きりでなくても初めてだが)事もあって大いに驚いたアーシアだったが、恋人である一誠の誘いとあらば喜んで応じ、2人は何時もの帰り道とは逆の方を進んで行った。

 

「ディオドラ・アスタロト君。またこの辺りをうろついているとはねぇ」

「ま、魔王様!?魔王様こそ何故人間界に足しげく通われているのですか!?」

「私はこの学園の理事長でもある、視察に来ても何ら可笑しな話ではないだろう。だが君はこの学園、いやこの街の何処とも何かしらの関りを持たない。違うかね?」

「そ、それは…」

 

その背後からまたも人間界に来ていたディオドラが一誠達のどちらかに声を掛けようとして、更にその背後からサーゼクス(に擬態したラヴリカ)が呼び止めたのに気付くことなく…

 

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「今日の晩御飯は、此処で一緒に食べよう。丁度個室が空いていたからな」

「こ、此処って確か、凄く美味しいけど値段が張るってよく言われている焼肉屋さんですよね…?」

「お金の事なら気にするな」

 

駒王学園を出発し徒歩数分、駅前の繁華街に建てられた商業ビルに辿り着いた一誠達、そのまま一誠の先導で目的の場所がある階に到達すると、其処は高級焼肉チェーンとして全国的に有名な焼肉店だった。

普通の高校生はまず立ち入らないであろうこの場所を躊躇なく進んでいく一誠に戸惑いを隠せないアーシア、尤も一誠にとってこの店は何度も行った事がある、アーシアを案内しながら手慣れた様子で指定の個室に向かい、

 

「まずは、特選タン塩2人前に、海鮮盛り合わせに、キムチ2つ、ウーロン茶2つで」

「畏まりました」

 

そのままメニュー片手に注文を進め、それが届くや否や事も無げに目前の網に乗せていく様は正に常連のそれだった。

 

「俺の気のせいだったら良いんだが、今日の、いや、昨日のあの映像を見てからのアーシア、何処か変な様子だったからな。何か引っ掛かるものがあるのでは、と」

 

注文した物が焼けるのを待っている中、ふと一誠はアーシアに尋ねた。

今日の練習での事もそうだったが、昨日レーティング・ゲームの映像を見てからのアーシアは、何処か様子がおかしい所が見受けられたからだ。

 

「すいませんイッセーさん、気を使わせてしまって…

以前、私が教会を追放された経緯についてリアスお姉様を通じて聞かれましたよね?」

「ああ。ケガをしていた悪魔の傷を神器で治した事によって『魔女』の烙印を押された、と…」

「実はその方と、あの映像に映っていたディオドラさんが、そっくりだったんです」

「そ、そうか。それは気になるのも仕方ない、か」

(アスタロト家次期当主であるディオドラ氏が人間界、それも当時は敵対関係にあった筈の教会に、ケガした状態で、だと?由緒正しい家柄の者であれば教会には絶対近づくなと口酸っぱく言われてきた筈、そもそも用も無いのに人間界をフラフラしていては家の者、支援者、果ては冥界のマスコミが黙っていないのは分かるだろうに。然も教会に近づいて『普通の』ケガをしていたというのも気になる。教会のエクソシストは光の剣など、悪魔にとって天敵となる武器を使う筈、彼らの攻撃を食らっては『普通の』ケガで済むはずが無い。だとすれば、目的はアーシアに近づく為の自作自演か?いや、エクソシストに殺される危険性が高いのに其処までしてか?昨日の映像で見たご都合主義的過ぎる逆転劇、それを引き起こした不自然極まりないパワーアップと言い、何から何まで怪しいな、ディオドラ・アスタロト…)

 

そんな一誠の疑問に、素直に答えるアーシア。

その答えに様子がおかしくなるのも無理は無いと応じた一誠、一方でその一件での当事者らしいディオドラへの疑念は募るばかりだった。

それも当然と言えば当然だろう、昨日見たディオドラ眷属とシーグヴァイラ眷属によるレーティング・ゲームの映像、其処には途中まで圧倒的不利な状況に追い込まれていたディオドラが、正に唐突と言って良いパワーアップを遂げ、その力を以て逆転勝利を収めたという不可解極まりない光景が撮影されていたのだから。

能ある鷹は爪を隠すという諺の通りディオドラが真の実力をひた隠しにして来たからだという説は、実際にその力を測った堕天使勢力が否定、追い込まれるまでのそれがディオドラの『本来の』全力だと見ている。

其処までの実力者じゃなかったディオドラの不自然なパワーアップによる逆転劇、そしてアーシアが追放された一件に関わっていた件、それらがディオドラに対する不信感を募らせるのは必然だった。

 

「私、彼を、あの方を救った事、後悔していません。今でも彼を救えて良かったと思います」

「後悔は無い、か。それが切っ掛けでアーシアが色々と辛い目にあったにも関わらず。強いな、アーシア」

「い、いえ、そんな事無いですよ。確かに教会を追放されて色々悲しい事もありました。でも変な話ですけど、それが無かったらこうしてイッセーさんと出会う事も、お話する事も、こうして愛し合う事も無かったと思います。

 

 

 

私、この街が、学園が、オカルト研究部が、イッセーさんが好きです。皆さんと共に暮らし、共に学び、共に遊び、と、共にゴニョゴニョ…

と、とにかく皆さんと一緒の生活は本当に大切で、大好きな事ばかりで素敵なんです。ずっと一緒に過ごしていきたいです」

「そうか、アーシア。そう思ってくれているとは、恋人として嬉しいよ。さあ、湿っぽい話は終わりにして、食べよう。丁度タン塩も、海鮮も焼けて来た。キムチもまろやかな味付けで旨いぞ」

「はい、いただきます!」

 

それを知ってか知らずか、その件に対する後悔は無い事、今この時が幸せであり、大切な物である事を素直に話すアーシア、その顔は心の底からそう思っていると言わんばかりの笑顔に満ち溢れていた。

その笑顔には、ディオドラへの不信感で何処か渋い顔をしていた一誠も思わず表情が緩み、食べごろと言って良い焼き加減となった肉を、海鮮を取り、食事をスタートした。

その後2人は、初めてのデートを思う存分満喫した。


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