やはり俺に霊が見えるのは間違っている   作:寿限夢

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 お待たせしました!


無いものは見えない

 Caseその七、小町、比企谷家にて。

 

「えっ!? お兄ちゃん部活入ったの!?」

 

「ああ、"奉仕部"ってやつにな」ナリユキデ……

 

「ふ~ん……」

 

「まぁ、部員のほとんどいない、同好会みたいな部だけどな。俺を合わせて二人、ひとりは雪ノ下って奴で……」クロカミノ……

 

 

「……お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「その人ちゃんと生きてる?」

 

「大丈夫、今度は(・・・・)ちゃんと生きてる」

 

 

 Caseその八、雪ノ下&由比ヶ浜、奉仕部にて。

 

 

 ガラガラッ

 

「し、失礼しま~す……」

 

「あら、依頼かしら?」

 

「……みたいだな」ジッ

 

「平塚先生に言われて……って、ヒッキー!?」ビクッ!?

 

「ん?」

 

「な、なんでヒッキーがここに……!?」

 

「あなた、比企谷くんのこと知ってるの?」

 

「うん! クラスでも有名だもん! だっていつも朝礼で……」

 

~~回想~~

 

「橋本~」

 

「は~い」

 

「葉山~」

 

「はいっ」

 

「ぐぅ……」zzz……

 

 

 

「……比企谷」

 

 

 ガタガタッ『はぁ~い』

    『ほ~い』     ガシャッ 『うあぁぁ……』

『はい』  『いるでござるぅ!』

          ギィィッ      『うにゃあっ』

 『ニンニ~ンッ!』

 ガリガリガリッ  『YESッ!』  『破ァッ!』

 

 

「「「  」」」

 

「……むにゃむにゃ」zzz……

 

~~

 

「――いつも無数の謎の代弁者の声が……!」ガタガタッ

 

「比企谷くん、あなた……」アオザメ

 

「いや、朝は弱くて……」

 

 

 caseその九、雪ノ下&由比ヶ浜、家庭科室。

 

 

「それじゃあ、依頼どおりクッキー作りを手伝っていくわ」

 

「うん! よろしくね!」

 

「まず最初は材料の計測からね。まずはバターを……」

 

「……なぁ雪ノ下」

 

「何かしら、比企谷くん?」

 

「フードプロセッサーは使わないのか? あれ使えば生地をまとめるの楽だし、風味が落ちる一番の原因の“生地の触りすぎ”も回避出来るし」

 

「えっ?」

 

「ヒッキー料理出来るの!?」

 

「一通りな。ちなみに一番作れるのは和食」

 

「意外ね……誰かから教わったりしてるの?」

 

「ああ、絹枝さんっていう手の綺麗な和服の人で……」

 

「へぇ~!」

 

 

 

 

「首から上がないんだ」

 

 

 

「「   」」

 

「まだ頭部が見つかってないらしくて――」

 

「わんわん!! わんわ――ん!!」

 

「ゆ、由比ヶ浜さん落ち着いて!!」

 

 

 Caseその十、雪ノ下&由比ヶ浜、家庭科室。

 

 

上手に焼けましたーー!!

 

 

「と、とりあえず完成したわ……」

 

「疲れた~……」

 

「途中色々あったけど……無事やり遂げたわね……味も問題なかったし……作り方も、もう大丈夫よね?」

 

「うん、それはもうばっちり!」

 

「そう、なら大丈夫ね。あとは……」

 

 ドン★【バタークッキー】

 ドン★【チョコチップクッキー】

 ドン★【ココアクッキー】

 ドン★【紅茶クッキー】

 ドン★【抹茶ラテクッキー】

 

 ズラ~~……

 

「少々……いえ、かなり作りすぎてしまったわね……」

 

「うん、どうしようっか。これ……」

 

「とてもいま食べきれる量じゃないし、とりあえず小分けにして、各自で持ち帰りましょう。余った分は、先生に……」

 

「なら、雪ノ下はとりあえずこれだな」スッ【紅茶クッキー】

 

「えっ?」

 

「ヒッキー?」

 

「紅茶クッキー。好きなんだろ?」

 

「え……ええ、でもなんで……」

 

「お前のおばあちゃん」

 

「あっ――」

 

 

 

 

 

「……が、小さかった頃のお前との思い出をダイジェストに映像化して俺に伝えてきてる。具体的に言うと、ネコのぬいぐるみ抱きかかえた五歳くらいのお前が、おばあちゃんの膝の上でニコニコクッキー頬張ってるシーン」

 

「なっ!?」ボンッ!

 

「なにそれ可愛い!」

 

『もうちょい詳しく』

 

「誕生日に買ってあげた、ネコのぬいぐるみが大のお気に入りで……」 

 

「~~おばあちゃんッ!!」カオマッカ!!

 

 

 Caseその十一、由比ヶ浜、校庭。

 

 

「いや~ゆきのん顔真っ赤だったね~!」ホッコリ

 

「ああ、そうだな……」ワルイコトシタ……

 

「結局ひとりで職員室にクッキー届けに行っちゃったし」

 

「ああ……」ゴソゴソ

 

「最初はちょっと怖いイメージあったけど、全然そんなことなかったし! 作ってるときも、すごい……」

 

「――由比ヶ浜」

 

「ん?」

 

 

 

 

「これ……」スッ【クッキー】

 

「……えっ?」

 

 

「犬用のクッキー。さっき別で作っといた」

 

「えっ、えっ?」

 

「ちゃんと犬が食べても大丈夫なように作ってあるから、帰ったら犬に……」

 

「いや違っ、そうじゃなくて! なんでヒッキー……!」

 

「……あいつも(・・・・)そうだったように、お前も気にしてるみたいだからな。別にあの事故はお前のせいじゃないんだから、気にしなくていい」

 

「……ッ!」

 

「感謝の気持ちなら、もうもらってる。今日焼いたクッキー、帰ったらゆっくり食わせてもらうわ」

 

「う、うぅ……」

 

「だからもう、自分を責めなくてもいい」

 

「うぅ~~ッ!」ポロ、ポロポロポロ……

 

「……出来れば、泣くのは勘弁してくれないか? なんかこう、俺が泣かしたみたいに見えて、色々……」

 

「……グスッ! うぅ……ヒッキー」ポロポロッ……

 

「ん?」

 

 

 

「……ありがとう……!」

 

「……どういたしまして」

 

 

 ……夕焼けの光が、優しく照らしていました。

 




 Case番外 平塚先生 職員室。


「失礼しました」

 ガラガラッ……ピシャッ

 コッ、コッ、コッ……

「……ふぅ、とりあえず雪ノ下は比企谷と、なんとかうまくやれてるみたいだな……一時はどうなるか、少し不安だったが……」キィッ

 ドン★【クッキー(大盛り)】

「それにしてもクッキーか……なんだか妙に量が多い気がするが、気のせいだろうか? ……まぁいい。生徒が作ってくれたんだ。教師冥利に尽きる……」ヒョイッ、パク、モグモグ……

「ふむ! なかなか美味いなぁ!」

『ホントダネ!』

『オイシイワ!』

「……ん?」フリカエリッ

『クッキーサクサク!』(着物の子)

『オイシイワ! オイシイワ!』(白いドレスの子)

「……」

『モグモグモグ』

『モグモグモグ』

「  」


 ~~~

 ウワァァ~~ッ!!



「……そういえば、なんで比企谷は、先生の分は多めに包んだのかしら? 先生も甘いもの、好きなのかしら?」クビカシゲ


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