海風に舞う桜   作:座右の銘は天衣無縫

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最近では珍しい早めの投稿。

なぜか、虚月館ピックアップを呼符単発で引いたらナーサリーが来て困惑。

呼符セット→金回転→こ、これは来たんじゃないか!?→キャスター→うん?→ナーサリー→なんでや。

あれか、使った呼符が終局特異点の『Ⅳの座』のクリア報酬の呼符だったからか。


第二十七話

コツコツと洞窟の壁に反響した足音が聞こえる。

 

「それにしても深い洞窟ですね。 多分遺跡に繋がってるんでしょうけど。」

 

「あの滝から遺跡まで直線距離で凡そ450m程。 この曲がりくねった洞窟ではそれなりに時間がかかるかと。」

 

「そりゃそうじゃろ。 今は退屈との戦いじゃな。 幸いにも後ろからはまだ誰も来とらんしの。」

 

洞窟を進み始めて既に二時間ほど。

ゆっくり慎重に歩いているとはいえ、長くないですか。

 

「そういえばじゃが、最近あちこちの海でルーキーが暴れ回ってるらしいの。」

 

「そう言えばそんな報告が上がって来てましたね。 格上を倒す無名の海賊達が多いって。 個人的には東の海で魚人のアーロンが倒されたのが気になりましたが。」

 

「元魚人海賊団のアーロンですか。 懸賞金は確か2000万ベリー。 元々はもっと高かったのに行方が分からなくなってから落ちていましたな。」

 

「ああ、その件だったら原因が分かりました。 東の海の海兵が買収されていました。 この間から東の海での海兵の軍規違反が目立ってるので、今度一斉に調査が入るそうですね。」

 

まあ、最弱の海と言われるだけあって海兵たちも慢心してるんでしょうね。

全員がそうだとは言いませんけど、もう少しどうにかなりませんかね。

 

「ああ、それか。 ま、お前ンとこは心配ねぇだろ、オキタ。」

 

「直属の中では無いと思うんですが、流石に支部となってくると報告書とかでしか分かりませんからねぇ。」

 

「まあ、報告書に書かれてる事が全部本当なら世話ねぇもんな。」

 

「いや、そもそもクザン大将は仕事しとらんじゃろ。」

 

「……段々辛辣になって来てんなノブナガちゃんよ。」

 

「ちゃん付けは止めい。」

 

「お三方。 どうやら、ここから遺跡の内部に入るようですよ。」

 

コウメイさんの声で周りを見てみるとゴツゴツしていた洞窟が、どう見ても人の手が入ったようなちゃんとした道になっています。

 

「本当ですね。 ここからはトラップに注意しながら進んで行きましょうか。」

 

トラップが相手では見聞色の覇気も意味がありませんからね。

 

まあ、いざとなったらクザンさんに凍らせて貰って無効化しますけど。

 

暫く歩き続けると、今度は分かれ道が出て来ました。

 

「これ、どう考えても迷路の始まりな気がするんですが。」

 

「ふむ、迂闊に入って迷えばそう簡単には出てこれないでしょう。 とは言えどもあの様な隠された入り口から入ってきた以上、何らかのヒントがあると思いますが。」

 

「ヒント、ねぇ。 周りにはぱっと見それっぽいのは無さそうだな。」

 

壁には凹みが幾つかあるだけで、床には一見何もないようですが、コウメイさんの言葉が当たってるとすれば残るは……天井?

 

松明を掲げてみれば天井に何やら絵画が描かれています。

 

「天井に絵、じゃな。」

 

天井に書かれている絵には、良くありがちな光を纏った人が雲の様な物に乗っており、そこから地上の人たちを指差し、地上の人達はひれ伏しています。

 

そして、人々が何かを囲って踊っている様子。

 

「神から与えられた物。 …………火、ですな。」

 

「火?」

 

「ええ。 神話では良く火は神から与えられた物として描かれることが多い。 そして、この場面でヒントとなり得るもの、それが火です。」

 

「なるほど。 けど、火をどうするんだ?」

 

「恐らくですが本来なら人々が囲っている所に焚き火が描かれているはず。 それがないという事は、そこに火を当てれば何か起こるのでは無いでしょうか?」

 

「……まあ、やってみましょうか。 クザンさんなら天井に手が届きますよね、お願いします。」

 

この中で一番身長の高いクザンさんに松明を渡し、天井の絵に当てて貰います。

 

しかし、暫く当て続けても何も起こりません。

 

「何も起こらねぇぞ。」

 

「なら、別の方法ですか。 と、なれば、」

 

「この壁の凹み位しかないけどのう。 ちょっと、松明で照らしてくれんか?」

 

壁の凹みを良く見てみると何か彫ってありました。

 

「太陽に、月に、星に、雷か。」

 

「じゃあ、雷ですね。」

 

基本的に火を何も無いところから手に入れて、且つ神から貰ったと解釈するなら火山か雷です。

 

その凹みの中を見てみると油のような物が器の中に入っています。

そこに火を付けると、

 

 

ボッ、ボッボッボボボボボ

 

 

次々と壁の凹みから火がついていき、左の道の方を照らして行きます。

 

その火を追い掛けていくと今度は横幅の広い通路に辿り着きました。

横には幾つもの穴が空いています。

 

「わし、知っとる! これ、通路を進もうとすると矢が横から飛んでくるトラップじゃろ!」

 

「クザンさん。 全体的に凍らせちゃって下さい。」

 

「あいよ。」

 

クザンさんにこの通路全体を凍らせてトラップを無効化させて貰います。

 

「え〜〜、つまらんぞオキタ。 ここは四苦八苦しながら面白可笑しく進むところじゃろうに。」

 

「安全第一です。 それに、もしここのトラップがノッブが言ったのじゃなくて落とし穴とか吊り天井とかだったらどうするんですか。 もしかしたら合わせて使ってくるかもしれませんし。」

 

と話しながら凍った通路を歩いて進みます。

 

暫く歩き続けると行き止まりの小さな小部屋に辿り着きました。

 

「おいおい、ここで終わりか? 宝はどこ行った。」

 

「この部屋にあってもう既に誰かに持ち去られたか、もしくはここにまた、何か仕掛けがあるのか。」

 

そこで、見聞色の覇気に何か引っかかりました。

 

「上、凄い速度でこっちに落ちて来ます。 戦闘態勢!」

 

「上ぇ? 上は天井じゃぞ。」

 

「相手方に何か特殊な悪魔の実の能力者がいるのかもしれません。」

 

「あと数秒で来ます!」

 

そして天井をすり抜け、何かが床に潜って行きました。

そして地面から二頭身の男とマッド・トレジャーと幹部二人が出て来ました。

 

「スルルルルルル。 はい、ご到着。 おや、先客ですか。 予想よりも速いですね、海軍。」

 

こちらの事がバレてる!?

 

「ええ。 隠し通路を偶然見つけたもので。 この通り、ハズレの道を選んだ様ですが。」

 

「ジャララララ。 おい、教えてやれよタナカさん。」

 

「ええ。 別にハズレではありませんよ。 この壁の向こう側に宝はあるのですから。 もっとも、海楼石の壁が邪魔して私の能力でも入れないのですがね。」

 

「タナカさん、ですか。 なるほど、ギルド・テゾーロが一枚噛んでいたようですな。 こちらの情報を流したのも彼、と。」

 

既にマッド・トレジャーとギルド・テゾーロが手を組んでいたとは、完全に予想外でした。

 

「ジャラララ、そういう事だ。 これがギルド・テゾーロからの初仕事なもんでな。 邪魔しないで貰おうか。」

 

「どう致します、中将。 バックにギルド・テゾーロがついているのでは。」

 

「ええ。 本当に悔しいですが、ここは引きましょう。 私達四人だけで決めて良い問題じゃありません。」

 

ギルド・テゾーロを敵に回したとなれば最悪の場合CP0が出張ってくる可能性もありますし。

 

「スルルルルル。 懸命な判断だと思いますよ。 帰りは私の能力で外に出してあげましょう。 では、マッド・トレジャーさん。 少しの間失礼します。」

 

「おうよ。 宝は俺に任せて、そいつらをしっかり(・・・・)と帰してやりな。 ジャッララララララ!!」

 

ギリ、と歯を食い縛ります。

決めました、いつか絶対痛い目見せてやります。

 

「それでは皆様方、お手を拝借。 壁を抜けますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で失敗しました。 申し訳ありません。」

 

「いや、今ギルド・テゾーロと事を構える訳には行かない。 今回の件は仕方なかった。」

 

数日後、海軍本部へと戻った私はセンゴクさんに頭を下げていました。

 

「マッド・トレジャーだけならどうとでも出来たのですが、ギルド・テゾーロの幹部がその場に居たとなると、手を出す訳には行きませんでした。」

 

「ああ。 下手に手を出して、CP0にでも動かれた日には目も当てられんからな。」

 

ハァ、と二人揃ってため息を吐きました。


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