第二十一話
ビュオオオオオォォォォ!!
「くっ、流石は『新世界』 海の荒れ方は前半と桁違いですね。」
どうも、沖田さんです。
今、『新世界』に居るんです。
自前のヨットで。
『新世界』の基地に少し用があって、ヨットの方が軍艦よりスピード出るんでそれで来たんですけど、帰りに見事に大嵐に遭遇しました。
あ、因みに前回から何年か過ぎてます(メタ発言)
今は、ギリギリ原作開始前、といった所ですかね。
現在の私の階級は少将。
新派閥の立ち上げに完全に成功し、海軍内での発言力もそれなりです。
「仕方ありませんね。 近くの島で嵐が去るまで待ちますか。」
おあつらえ向きに近くに島がありますしね。
微かに灯台の光も見えますし、有人島みたいですから。
「あれ? あの船って。」
港から少し沖に離れた位置に一隻の大型船が停泊しています。
あの船は…………いやいやいや、流石にそれは無い、と思いたいですね。
うん、旗印が白ひげ海賊団のだとしても知らないです。
(ここ、白ひげ海賊団の縄張りじゃないですかぁ!!)
流石に主船のモビーディック号ではありませんが、これだけ大きな船なら二番隊やら三番隊のかもしれませんね。
知りたくなかった事実が、目の前にあります。
いや、私は何もやましい事をする気も無いですし?
白ひげ海賊団って情やら義やらを大切にするって有名ですし?
そもそも、私が海兵だとバレなければ何の問題もありませんし?
大丈夫です!! 多分、恐らく、Maybe
スピードを落とさずに港に入ろうと、白ひげ海賊団の船の横を通っていた時。
バッシャアァァァン!!
船から何か落ちて来ました。
それもそこそこ重量の有りそうな物です。
覗いてみれば、人が浮かんでいました。
しかも血が流れています。
「なっ!? 急いで助けないと!」
かと言って海には入れないので急いで鉤のついたロープを用意し、それを服に引っ掛けて船の近くまで引き寄せます。
船のすぐ横まで来たその人を今度は、海中に腕だけ入れて紐を巻き付けます。
「っ!!」
勿論、そんな事をすれば力が抜けますが、ここで見殺しにするわけにもいきません。
何とか紐を巻き付け、船に引き上げます。
冬島ではないとは言え、体温がかなり奪われている、さらに海に浸かったせいで血も相当流れ出していますね。
取り敢えずヨットの居住スペースに運び入れ、容態をもう一度確認します。
傷は腹部、傷跡からしてナイフなどの刃物で切られたもの。
傷はそこまで深く無さそうですが、如何せん今までの出血量が多いですね。
なら、傷口の周りだけ気圧を上昇。
圧迫させて止血します。
これでこれ以上、血が流れることは無いでしょう。
体温の低下は、どうしましょうか。
暖房設備があるわけでも無いですし。
取りあえずは水分を拭き取ってベッドに寝かしときましょう。
早く島に行ってこの人を診てもらわないと。
外に出て、風を操って島に向かいます。
島についたら怪我人を担ぎ、急いで医者を探します。
そして、医者、というか病院を見付け、預けたら、ある事実が発覚。
この人、白ひげ海賊団四番隊隊長のサッチ、と言う人でした。
え、そんなビッグネームが出てくるんですか。
白ひげ海賊団は一般人を襲わないのと、サッチさんの特徴であるリーゼントが崩れていたせいで全く分かりませんでした。
あ〜〜、って事はこの人を襲ったのは黒ひげですか。
もしかしたら、私が助けたのを見られたかもしれませんね。
医者の先生の言うことには、命の心配はないそうで、患部を手術で縫合して後は輸血を続ければ問題ないそうです。
「サッチ!!」
数時間すると、二人の男性が病院に飛び込んできました。
うわぁ、エースさんにマルコさんだぁ。
「先生! サッチは!?」
「落ち着いて下さい。 命に別状はありません。 しばらく安静にしている必要がありますが、無事です。」
「よ、良かったよい。」
そう言って椅子に倒れ込むように座るマルコさん。
「そちらの彼女が、海から引き上げたそうです。 彼女がいなければ恐らく死んでいたでしょう。」
「あ、どうも。 初めまして。」
「ああ。 ウチのサッチを助けてくれてありがとう。」
「礼はちゃんとするよい。 て言うか、礼をしなきゃ、俺達がオヤジに怒られる。」
後半の言葉で『良いですよ、お礼なんか。 それじゃあ、お大事に。』と、この場から離脱する作戦がお陀仏に。
「と、言われてもですねぇ。」
「俺達も詳しい話が聞きたいんだ。 な? 一回、俺達について来てくれないか?」
うぅ、どんどんと断りにくい状況に。
「あのですね、私、実は海兵でして。 今回は、目の前で命の危険があったから助けただけで。」
これでどうですか。
私が海兵と知れば、そうホイホイと自分達の船には入れないでしょう。
「そんなの関係ねぇよい。 大事なのはアンタが、ウチの兄弟を助けてくれたって事実だけだよい。」
少しは躊躇って!
「それに、私はこの嵐が収まったらすぐにマリンフォードに戻らなくちゃいけないんです。 あんまり帰りが遅いと、色々な人に迷惑とか心配とかかけちゃうかもしれませんし。」
「だったらウチの縄張りに迷い込んで、とっ捕まってた事にすれば良いだろ。」
うわぁ、なんて海賊っぽい考え方。
いや、海賊でしたね。
「それはそれで私の名誉とかその他諸々が傷付くんですけど。」
ようやく、少将まで来て人望もそれなりに厚くなって、上からの信頼も結構得てるのに。
「悪い様にはしねぇよい。 何だったら、オヤジからオタクのトップに手紙か何かを書いて貰えるように俺達が頼むからよい。」
「ううぅ、分かりました。 ですが、余り長居はしませんからね。」
これ以上ゴネても実力行使で連れて行かれかねない。
相手はどちらも炎系なので相性は悪くありませんし、外はまだ雨ですから天候も私に味方してます、けど、
(不死身とか海楼石も無しにどうしろと。)
マルコさんの能力が強すぎる件について。
トリトリの実モデル『不死鳥』
これが本当なら通常攻撃はおろか、即死攻撃も効かず、さらに海水や海楼石を使った攻撃でも、一度止んでしまえば全回復。
倒すには海楼石で縛り付けて、殺した後も暫くはそのまま放置しなければいけませんからね。
「そうか! ありがとう! そんなに手間は取らせねぇから。」
「サッチは…………こいつの隊の奴に運ばせりゃ良いか。」
ええ…… そんな扱いで良いんですか?
「よっしゃ、じゃあ行こうぜ! 案内は俺達がするからよ!」
ああ、もうどうにでもなれ。