海風に舞う桜   作:座右の銘は天衣無縫

10 / 36
第九話

 

それから三日後。

 

完全に魚人島では救世主扱いになった私は盛大なお見送りを受けて魚人島を後にしました。

 

フカボシ王子、リュウボシ王子、マンボシ王子にしらほし姫とも仲良くなりました。

個人用の電伝虫を持ってなかったのが悔やまれますね。

 

魚人島からシャボンディ諸島まで浮上し、シャボンディ諸島で七武海の四人と分かれました。

ドフラミンゴさんはそのままもう一度潜って行ったんですけど、何しにシャボンディまで来たんですか。

 

そしてシャボンディ諸島から凪の海に入り、マリンフォードへと戻って来ました。

 

ああ〜、やっぱり何かホッとしますね。

 

そしてそのまま自宅であるゼファー先生の家まで直行しようとしたのですが、

 

「お、いたいた。 おい、オキタ。」

 

「あ、クザンさん。 またサボりですか。」

 

「半分当たり。 サボりついでに帰ってくるであろうお前を呼んで来いっておつるさんがな。」

 

「おつるさんが?」

 

まさか、魚人島の件が既に伝わってるんですか。

お褒めの言葉かお説教か。

お説教ですね。 わざわざ明日で有給が終わるのに呼び出してるんですから。

 

はあ、気が重いです。

 

「分かりました。 あと、あんまりサボるようならセンゴクさんとサカズキさんにチクりますからね。」

 

「よぉし。 そろそろ仕事やろうじゃないの。」

 

私のチクり発言によって、クザンは本部の建物の方に戻って行きました。

本人はいつも通り歩いているつもりでしょうが、微妙に焦ってますね、あれは。

 

「ハァ。 取り敢えず荷物だけ置いてきましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、失礼します。」

 

いつもの軍服に着替えた私は海軍本部のおつるさんの部屋に来ました。

 

ドアをノックして返事が返って来たので恐る恐る中に入っていきます。

あ、センゴクさんまでいますね。

 

「何の用で呼ばれたかは分かってるね?」

 

「ぎょ、魚人島、ですよね。」

 

「その通りだ。 はっきり言うよ。」

 

ああ、これから長い長いお説教ですか。

 

「良くやった。」

 

「へ?」

 

「ジンベエから聞いたよ。 今回の事件で犯人は人間の海賊に罪を着せようとしてたんだって?」

 

「あ、はい。 そうですね。 本人もそう言ってましたし。」

 

「そうなった場合。 最悪、人と魚人で全面戦争が起きることもあり得た。 そうなると、明らかに私らの方が不利だ。」

 

海中からの奇襲に加えて、海中に潜られたら能力者の殆どが使えなくなりますからね。

それに非能力者でも海中では勝てる要素は殆どありませんし。

 

「はぁ〜〜〜。 休暇中の呼び出しだったのでお説教かと思いましたよ。」

 

胸に手を置いて大きく息を吐きながら愚痴ります。

 

「それは悪かったね。 実は明日から少し海に出ようと思っててね。 出来れば今日中に終わらせたかったのさ。」

 

「? 何をですか?」

 

「アンタの昇格だよ。」

 

「なん…………だと。」

 

早くないですか昇格。

おつるさんの所に来てから二ヶ月とちょっとですよ、まだ。

 

あ、因みに今の私の階級は軍曹です。

いきなり実戦配備ならもう少し高くても良かったのですが、他の人からの嫉妬とかも考えると、戦闘の少ないおつるさんの所からなら、階級を上げてから実戦配備する、という調整が利くのでこの階級から、とゼファー先生が言ってました。

 

「という事は曹長ですか。」

 

「いや、准尉だ。」

 

「何で!?」

 

二階級特進ですか!? 殉死どころか死んですらいませんよ!?

 

准尉ならギリギリ将校ではありませんけど。

 

「戦闘能力、カリスマ性、指揮能力、影響力、将来性、そして私含め将校からの期待。 それだけでも十分だと思うが?」

 

「指揮能力、ですか?」

 

「ああ、今回の件で犯人の捕縛にドフラミンゴを一瞬で選んだと聞いた。 その程度なら、と思うだろうが磨けば光るかもしれん。 現状では指揮を取れる人材が少なくてな。 是非ともその能力を伸ばして活用してほしい。」

 

まあ、そういう事なら。

 

「分かりました。 不肖、このオキタ。 慎んで承らせて貰います。」

 

「それじゃあ、この書類にサインを。 それだけで今日は終わりだよ。 休暇中に悪かったね。」

 

「いえ、元はと言えば私が無茶言ったのをおつるさんが許してくれた休暇なので。」

 

スラスラっと渡された書類にサインをしてセンゴクさんに渡します。

 

「それじゃ、失礼しました。 また、明日からよろしくお願いします。」

 

ペコリ、と頭を下げて部屋を後にしました。

 

昇格ですか。 将校まではあと一歩。

焦らず、ゆっくりと上を目指しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、二階級特進か。 センゴクの奴も随分と評価してるようだな。」

 

その日の夜、ゼファー先生に昇格の事を話したらそう言われました。

 

「そうなると、またスカウト合戦が始まるかもな。 上の三人が何も言わなくても他が勝手にやり始めるかもしれん。」

 

「また?」

 

またって事は前も有ったんですよね。

当事者たる私は全く知らないのですが。

 

「ああ、お前が訓練生だった時にな。 俺のところで止めていた。」

 

「あ、そうだったんですか。 道理で。」

 

「階級が上がればやれる事も増えるが、自ずと責任も増えていく。 あまり身勝手な事はするなよ。」

 

「勿論です。 自分のエゴで他の人を巻き込む訳にはいきませんから。」

 

「・・・そうだな。」

 

? 今の一瞬の間は何だったんでしょうか。




アンケートは今日の23:59まで受け付けています。

まだ投票されていない方は早めの投票を。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。