悪魔の妖刀   作:背番号88

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50話

 

  S(中脇)           S(釣目)

    LB(薬丸) LB() LB(具志堅) LB(角屋敷)

 CB(井口)            CB(艶島)

     DL(猪狩) DL(大田原) DL(上村)

 

 

 王城の守備の隊形が、変わった。

 

「具志堅先輩とプレイができるなんて! キッカーに専念しなかったら、俺なんてディフェンスチームには選ばれなかったに違いありません」

 

「よせやい。お前は立派にやれてるさ。俺と監督の目は間違ってなかった。まあ、キッカーとしちゃあ、泥門に負けちまってるが、ラインバッカーとしてなら、そこそこやるから、頼りにしてくんな」

 

「はい! 頼りにしてます、具志堅先輩」

 

 1年ディフェンスラインの渡辺頼弘を下げ、代わりに入ったのは3年キッカーで、元ラインバッカーの具志堅隆也が中間層の列に加わる。

 

「……っ、後は頼んだ、井口」

 

「任せとけ、桜庭」

 

 それから、桜庭春人が下がり、コーナバックの井口広之が入った。

 

(巨深の『ポセイドン』と同じ、ラインバッカー4人体制。総動員してパスターゲットを増やした『背水の陣(エンプティバックフィールド)』に対抗するために、後衛の人数を増やした、とも考えられるが……)

 

 ディフェンスライン。

 ラインバッカー。

 ディフェンスバック

 

 この鉄壁を三列敷いたような3-4-4の守備フォーメーションは、まさに『三重の防壁』。

 ディフェンスラインは減らしたが、ラインバッカーを一枚増やして中間層を増やすことで相手オフェンスに対する対応力を高め、多彩な戦術性を可能とする隊形だ。

 増員した後衛で、パスカバーの範囲を拡張させるか。

 あるいは、ラインバッカーを前線へ加えるか。

 はたまた、『電撃突撃』を狙ってくるか。

 

 

(何を仕掛けてくるか。いずれにせよ、リードしている泥門(こちら)には都合が良いともとれる陣形をしてきたというには、必ず意図があるはずだ)

 

 

 ~~~

 

 

 プレイ開始のコールがされる直前、モン太は圧を覚えた。

 真っ直ぐな圧の正体。それは顔に穴でも空けようとするくらい、こちらに向けられた、鋭い視線だ。

 発生源は、すぐにわかる。隠す気などなく真っ向からこちらを睨む相手。

 

「お、気づいた。中々に勘は鋭いみたいだねぇ、キミ」

 

「あからさまMAXじゃないっスか」

 

 桜庭先輩……ではなく、交代して入った井口広之だ。

 

 どこか尊大ぶった態度ながら、こちらを相当意識しているようだ。だけど、一方通行ではない。意識しているのはモン太とて同じ。

 

「へぇ、ちゃんと僕を勝負する相手だって意識できてるんだ。てっきり、関東四強レシーバーの雷門太郎様は、桜庭が下がったからほっと一安心って思ってそうだったけど」

 

「んなわけねぇっすよ、井口先輩。……俺は選ばれなかった、あの東京ベストイレブンの一人なんすから」

 

「それくらいは知ってたか。ま、俺の相手なら楽勝だとか思われてるようなら、インターセプトをかましてやったけどねぇ」

 

 井口広之は、東京ベストイレブンに選出されるほどのコーナーバックだ。

 王城でも有数な金持ちの家庭で育ち、命令も半分も聞かないとも言われるが、王城ホワイトナイツの一員として胸に抱く思いは皆と同じ。

 独断専行もそれだけ咄嗟の判断で動けるという見方もできる。事実、実力はあり、特に彼のバック走の技術は、この関東大会に参加した全コーナーバックの中で神龍寺の細川一休に次ぐレベルだろうとも評価されている。

 

「あの細川一休を倒したキミを倒したら、この関東大会で俺がNo.1コーナーバックだってことにならないかい? ねぇ?」

 

 カチン、ときた。

 確かに、キャッチ勝負では一休に勝ったモン太だが、全体的なレベルでは劣るとは思っている。

 一休先輩は、これまで相手してきたコーナーバックの中でもNo.1だというのは、モン太の中でも確固たるもので、だからこそ、彼と繰り広げた勝負の数々は今も色褪せることなどないくらいに、誇りに思っている。

 そう安々と発案していいものじゃない。もしもそんな道理が通ってしまうのだというのなら、絶対に阻止する。自分が不甲斐ないせいで、尊敬する相手に泥を塗るようなことはあってはならないのだから。

 

「俺はそうとは思わねーっスけど、もしそうだっつうんなら、全力MAXで相手させてもらうっスよ、井口先輩」

 

「そうさ、全力できなよ、雷門太郎。こっちも全力で相手してあげるからさ」

 

 挑発に闘志に火が点いたモン太に、井口は笑う。

 

 

 ~~~

 

 

「フゴーー!!?」

「3人も……同時に『電撃突撃』!!」

 

 スナップされるや、進以外の3人のラインバッカーが特攻を仕掛けた。

 リスク承知の攻撃的な守備。そのうち2人は戸叶と十文字が捕まえたがあと1人、角屋敷はその小柄な身体で潜るように前衛を突破し、長門へ迫る。

 指揮官の前に、壁役の後衛はいない。後衛全員を、パスターゲットとして出しているのだから。

 

 だが、背水の陣を敷くこの男に動揺はない。

 今の『電撃突撃』3枚で、厚みの増した守備ゾーンに綻びが生じたのを、長門は察知した。

 

 如何に王城の守備が堅牢であるとはいえ、セナ、石丸、瀧、雪光、モン太、この5人全員をカバーし切れるはずがない。

 だが、それでも油断はできない。

 

(弛んでる、とさっきはそう言ったが……0.1秒たりとも気が抜けんなこれは)

 

 常に相手を視界に入れている。

 一挙手一投足に細心の注意を払う。

 弛みなどない、張り詰めた糸の如く結ばれた両雄の視線。

 唯一、『電撃突撃』を仕掛けていないにもかかわらず、中央を陣取っている進清十郎は、その存在感だけで牽制になる。まるで筋線維の収縮まで見通されているかのような気分を長門は覚えていた。

 それ故に、その動向に注意することは、間近に迫る脅威よりも優先度として勝るくらいには意識を割かざるを得なかった。

 

「おおおおお角屋敷が、長門に突っ込んだァーー!」

 

 陣形は変わっても、姿勢は変わらず。

 守りには入らず、攻撃的に相手を攻める強気な守備。

 

 

 ――食らえ……っ! 『トライデントタックル』!!

 

 

 進先輩と互角にやり合ってるのは、認めてやる。

 進先輩の渾身の『三叉槍』をその身に受けて、尚も倒し切れなかった最強の敵。

 だけど、俺のことを眼中にない相手だと侮ってるなら、その油断を一刺ししてやる……!

 

「まだ、その『トライデントタックル』は、不完全だ」

 

 120%の超加速に入った角屋敷の三叉槍を、躱す長門。

 途中のコマが抜け落ちたかのように“起こり”を悟らせない、抜重の初動。

 反応した角屋敷は咄嗟に進行を切り替えようとし、前足(ブレーキ)を踏んでしまう。追うために、その勢いを殺してしまう。

 

「進清十郎ならば、ここで減速どころか加速してカットを切っていた。躱された相手への追尾が拙い」

 

 っ……!

 何も言い返せず、角屋敷は歯噛みする。

 指摘されずともわかってる。採点すればまだ自身の『三叉槍(タックル)』は及第点には届かない。そんな不完全な技が通用する相手ではない。

 

 ――モン太が、井口と1対1になっている。

 これを長門は好機と見た。相手コーナーバックのマークが張り付かれているが、それでもこちらに分があると計算できるエースレシーバーへの信頼と実績。

 即断決行。角屋敷を躱しながらの、変則的な横投げ(サイドスロー)。抱え込んでいた体勢、腕が下がった状態から振りかぶらずに、クイックモーションでパスを放つ。

 

 

「!? 棘田の『薔薇の鞭(ローズ・ウィップ)』までやりやがるのか、長門!」

 

 あのスマートなキックに続いて、また驚嘆する佐々木コータロー。

 横走り投げ、『薔薇の鞭(ローズ・ウィップ)』は、棘田キリオの必殺技。

 元盤戸の選手で、帝黒の4軍でくすぶっているが、昨年は東京No.1のエースクォーターバックとして、王城の黄金世代を相手に翻弄したその技量。

 それをいつの間にやら我が物としていた『妖刀』、長門村正。

 

 

『サイドライン際のモン太へ、パスだーーっ!!』

 

 

 モン太には井口がマークについている。スピードもあり、バック走でありながら5秒の壁を切るモン太と競っている。

 先に飛んだのは、井口。

 空中でボールを奪う、アメフトの超花形プレイ、インターセプトを狙う。

 

「だが、接戦にさえ持ち込めば、モン太のキャッチ力が強引にボールを捕る」

 

 飛来したボールの先端に井口が触れた。それとほぼ同時に、モン太ががっちりと抑えた。ボールの縫い目に五指を合わせ、鷲掴みにしていた。

 

「しゃぁああーー! モン太ーー!!」

 

 泥門は、この光景にモン太は勝ち(キャッチ)を確信する。

 

(全然びくともしない……! コイツ、思ってた以上の確保力……!?)

 

 だけど、まだだ。

 キャッチ勝負で負けても、勝負はここからだ。

 

「!!」

 

 井口の手を振り払い、キャッチに成功したモン太だったが、走れなかった。

 インターセプトを諦めた井口は、即座にタックルへ意識を切り替えた。モン太の腰に食らいつき、これ以上の前進を許さなかった。

 

『パス成功ーー! 泥門、5ヤード前進!』

 

 荒い息を吐きながら、モン太は改めて対決した相手を見やる。

 

 連続攻撃権獲得だって狙えたのに、それを阻止された。

 

 

 ~~~

 

 

「はっ!?」

「オラアアアアアア! 『サック』かましてやらアアアア!」

 

 ディフェンスラインの猪狩とラインバッカーの薬丸の突撃の役割交換、『スタンツ』

 猪狩の抑え役だった十文字は、薬丸の長距離タックルを受けて体勢を崩し、自由となった猪狩は発射台の長門へまっしぐらに迫る。

 これまでの修羅場でもお目にかかったことのない、最強の敵。そして、最も倒したい相手。その好機を目前にして、吼え猛った狂犬は剛乱打を――――寸前で、止めた。

 

 

 消え、た……!?

 猪狩は、止まった。止まらざるを得なかった。もう二度と見過ごすまいとしたボールを見失ったため。

 

 

「上だ、猪狩!」

 

 ハッとして見上げて、視界に過るボールの影。

 猪狩の頭上をまたぐ山なりのパス。それを高角度に放つことで初速を上げている。急上昇するボールは、ヘルメットで遮られる視界から一瞬で外れた。

 これに気付き、急ぎボールを探すが、天井の照明がその行方を眩ますのに一役買っていた。

 

「アハーハー!」

 

 守備が見失ったボールを、この男は誰よりも早く捉えていた。

 何故なら、この軌道は慣れ親しんだもの。ストリートの荒くれ者だけど、ビーチフットに直向きな仲間達と駆けた幻影。波飛沫弾ける砂浜(ベストプレイス)を思い起こさせる、瀧夏彦の十八番へ昇華したパスだ。

 

 

 ――『デビルバット・ポップダンス』!

 

 

 今こそ、光り輝くチャンスへ手を伸ばそう……!

 燦々と太陽の光が降り注ぐ中でボールを追っていた瀧は、人工の明かり程度でボールを見失わない。

 ディフェンスが割って入ろうとするが、砂浜で跳び抜けてきた瀧は、不安定な姿勢からでも柔軟に修正を図ることに長けていた。

 

「これは、僕のボールDa()!」

 

 乱戦激しい密集地帯での、キャッチ成功。

 ボールを捕って即座に倒されるも、仰向けにドームの天井を見上げる瀧は笑う。チャンス(ボール)を掴み取った腕を突き出して。

 

 

 ~~~

 

 

『具志堅が突撃ーー! 王城またも『電撃突撃』を仕掛けたーっ!』

 

 投手狙いの直接攻撃(ダイレクトアタック)

 しかし、この瞬間、鉄壁の城塞に空白が生じる。

 担当する守備区域を放り出したリスク。いくら王城といえども、5人のパスターゲットをマークしながら、一人抜けた分の守備をカバーするのは厳しい。

 

「アハーハー! もう一度、『デビルバット・ポップダンス』さ!」

 

 マークを振り切り、その空白地帯へ駆け込むは、先程パスキャッチを決めた瀧。

 具志堅はパスが発射される前に投手潰しを決行したが、直前でボールが視界から消えた。

 

 

「あはああああぁ!!?」

 

 

 張り切ってパスを要求した瀧が、強引に押し込まれた。割って入られた守備にルートを遮られる。

 

 

『なななんと! 前衛の上村が後ろに回り込んでたァァーーー!!?』

 

 

 これが、現代フットボールの戦術、『入替(ゾーン)ブリッツ』

 具志堅が突入すると同時に、三年ディフェンスライン、上村直樹が入れ替わりでカバーに入る。

 誰もいないはずのスペースに突然防壁が現れたのだ。どうにかして絶好のポジション取りに潜り込もうとする瀧だが、ライフセイバーのバイトで波と闘い、防御力を鍛えた上村はそれを許さない。

 あとは、飛んできたボールを奪うだけ――

 

 ・

 ・

 ・

 

 ボールが、ない……??

 

 一瞬、天井の照明でボールを見失ったかと目を凝らしたが、違う。

 ボールは、飛んでいない。投げられていない。

 

 

 振りかぶった姿勢から投げ放つ間際に、ボールを手放し、背後へ落とす。

 落としたボールを左手で背面キャッチし、自分の身体をブラインドにすることで相手に気取られずにボールを右手から左手へスイッチしていた。

 そして、守備が天井を見上げる最中に、下手投げのスナップパスが抜き放たれていた。

 

 

『こ、これは……! パスを投げたと思いきや、左に切り替えていた!? 守備を欺いたトリックプレーから放たれたパスに駆け込むのは――』

 

 

 まるでマルコのボールハンドリング技術をキッドの『二丁拳銃』に掛け合わせたようなプレイだ。

 そして、長門が投げ放ったコースを走り込んだのは、この土壇場の『速選ルート』を判断できる文化系レシーバー――

 

 

(瀧君が上へ視線を誘導してくれたおかげで、隠れやすい……!)

 

 路傍の石ころや雑草であろう。舞台裏の黒子のように目立たずに役目を遂行しよう。

 深く静かに息を吸い、雪光学は呼吸を止める。

 元々、自分には強者固有の威圧感(プレッシャー)なんてないのだから、ならば、逆にその微弱な存在感を消す方向へ働きかける。そうすることで、守備の意識から逃れる『光学迷彩(ステルス)』を纏う。

 

(運動音痴の僕は、こうやって先手を取らなければ戦えない……けど!)

 

 『アメフトは頭を使うスポーツでもあります。ルールの中で賢くやってやりましょう』

 

 思い切って、新世界へ踏み出したあの日。

 『地獄の塔(ヘル・タワー)』に屈しかけた自分へ、掛けてくれたあの言葉は今も忘れない。

 まったく、かつて自分が憧れたスポーツ選手の理想像からは程遠いかもしれない。こそこそと相手の不意に縋るような真似だけれど、これが自分の戦い方だと胸を張ろう。

 

((ここだ!!))

 

 長門村正はこのチャンスに気づくと信じた。

 雪光学もまた迷いなく、一心で動いていた。

 

 厳重な警戒網、それが一瞬、外れた隙を掻い潜る低空飛行のパスへ飛びつく雪光。

 マークは、ない。

 あとは自分がこのチャンスを掴めるかにかかってる……!

 

 

『パス成功! 泥門、連続攻撃権獲得!!』

 

「雪光ゥゥゥゥ!」

「おおおお雪さーーん!!」

 

 失敗したヘッドスライディングみたいな、不格好ながらもボールを捕った。

 駆け寄ってくれる仲間たちに、気配を押し殺してプレイしていた雪光は、ようやく胸の内を吐露した。

 

「やった……!」

 

 目立つことはなくても、その握った拳は確かに、思い焦がれたガッツポーズに違いなかった。

 

 

 ~~~

 

 

 長身と優れた柔軟性を持つ瀧夏彦。

 運動能力には欠けるが判断力に長けた雪光学。

 関東四強の中でも群を抜いたキャッチ力を誇る雷門太郎。

 

 事前に情報収集し、警戒していた泥門デビルバッツのパス攻撃。

 この三枚のパスターゲットに、ヒル魔妖一は選手の限界を当然のごとく要求するスパルタで引き出させてきた。

 そして、今、長門村正がその才覚を加算させて火力を引き上げさせている。

 一段と、手強くなった。

 王城の守備をも突破し得る程に、脅威だ。

 

 加えて、それらの武器を駆使して、陣形の急所を突いてくる指揮。

 長門には、ヒル魔妖一にはない才能があり、集中力の深みが増している現状、僅かな“起こり”からでも全体の動きを察知してくる。

 そう、進化とは過酷な環境へ適応するために起こる。

 元々、白秋戦から二代目クォーターバックという発芽があった。この決戦の最中にヒル魔妖一の離脱という戦況が、長門に指揮官としての才覚を開花させるに至らせた。

 

 守備を指揮するラインバッカーとして、進清十郎は認める。

 

 ……想定した通り、泥門の攻撃は止められない。

 戦術性となれば、野生の獣の如き本能と冷徹な指揮官(ヒル魔)から学習した知略を併せ持つあの男に軍配が上がる。

 こうして、三度も読み合いで上を行かれている以上、おそらく失点は免れないと覚悟をするべきだ。

 

 故に、止められないのならば、削る。

 戦術では覆しようのない、戦略で王城は勝つ。

 

(勝負はこれからだ、泥門)

 

 過小評価も、過大評価もしない男は、常に現実を見定めて動く。

 

 

 ~~~

 

 

 嫌な予感がある。

 

 今のところ、流れは泥門にある。

 しかし相手は王城。これまで試合した中で最強のチームであり、全国でも最高の守備を誇る相手だ。間違っても侮ってはならない。

 彼らの対応力ならば、一度使った戦術(カード)の成功率は下がるだろうと見ている。特に進清十郎に二度も同じ手が通じると信じるのはあまりに迂闊だ。

 だが、それとは別として、何かが仕掛けられてる、と長門は感じ取った。

 

(……もし、考えている通りならば、試合はまだ……)

 

 いずれにせよ、ここで追加点を獲れば、精神的な余裕ができるのは確かなのだ。

 今は攻撃の手を緩めずに、攻めるべきだ。このチャンスをものにできなければ、それこそ泥門が窮地に立たされることになる。

 そう、ここで試合の流れを完全に泥門のものとするために、最大のインパクトを狙いに行く

 

「であれば、その『三重の防壁』の急所にして、最難関を突かせてもらおうか」

 

 

 ~~~

 

 

WR(モン太)  T(十文字) G(黒木) C(栗田) G(小結) T(戸叶) TE()

        QB(長門)         WR(雪光)

        RB(石丸)

        RB(セナ)

 

 泥門デビルバッツが、攻撃隊形を変えた。

 『エンプティバックフィールド』から、泥門が基本とする、アメフトの正統派攻撃陣形『Iフォーメーション』へ。

 ベンチから見ていた王城の指揮官、高見はすぐさま相手、長門の意図を悟る。

 なるほど、真っ向勝負を仕掛けてきたか。

 

「ラインバッカーを増やして、『三重の防壁』と見立てたかのような3-3-4の守備フォーメーション。だが、前衛の壁を一枚減らした以上、直球力勝負には弱い」

 

 また、散々飛び道具(パス)で攻撃した後の真っ向勝負というのは、心理的にも対応しづらい。

 たとえあからさまにランで勝負するような隊列を組んできても、『だからこそ、やる』という逆説戦法を嬉々としてやるヒル魔妖一の薫陶が染みついた泥門が相手では確信などできようがない。パスへの警戒は解かれず、人数を割かざるを得ないだろう。

 

(まあ、直球力勝負を避けたいのはこちらも同じではあるんだがな。――何せ、中央には進清十郎が控えている)

 

 たとえ前衛の壁を人数差のゴリ押しで突破したところで、すぐ前には高校最高の守護神がいる。

 進清十郎を破らない限り、すぐにボールキャリアーは仕留められるだろう。後衛に人数を増員したため、より真っ向からの突撃への対処に専念できるはずだ。

 そんな死地も同然のところに臨む。

 

(だからこそ、だ。進清十郎を避けるようなパス回しをするより、ここで王城の絶対的なエースである進清十郎と勝負して制した方が、より王城をビビらせる)

 

 チームから信奉される最強(エース)の仕事は、相手の最強(エース)を倒すことだ。

 雌雄を決することが、何よりもチームに勢いをもたらす。

 無論、それは相手も同じ。

 

 

(来るか、長門村正)

 

 高見が相手の狙いに慎重になる中で、進の奥底に抑え込んであるモノが湧きたつ。

 怪物・峨王力哉を擁する白秋ダイナソーズを打ち破った、あの力が来る。真っ向からの力ずくのランだ。最高の強敵手から醸される気配に当てられてか、己の本能が騒ぐ。理性は、パスの可能性を考慮から外すことへの警告を発している。守備の指揮を任される者として、あらゆる攻撃を想定して、全神経を張り巡らせていなければならない。しかし闘志を深く鎮め込んでいても、この予感は無視できようがないほど大きい。

 もはや身体が勝手に前傾の姿勢に寄ってしまう。ともすれば、暴走してしまいそうな激情を制するのは苦労する。

 

「来るか、泥門」

 

 進に同調するのは、大田原。

 チームの中で最も最前線で戦い続け、力というものを誰よりも肌身に感じてきた男は、その気配に敏かった。 そして、素直だった

 相手の策謀に考えを巡らせている高見も、大田原の顔つきが変わったのを見て、余計な思索は止めた。外野として、共にプレイしてきた戦友をただ信じて見守るのみ。

 

「ばっはっは! 確かに数はそっちの方が多いが、そう簡単に突破できるとは思わんことだな」

 

 前衛の人数は減ってはいるが、その程度の不利は己の腕で支え切ってみせようと豪語する。王城ホワイトナイツの土台たる主将として、この立ち合い、押し負ける気など毛頭ない。

 この気概にチームも奮起する。

 

 来るなら来い、泥門!

 どんな攻撃が来ようと、全て迎え撃ってやる!

 

 

 ~~~

 

 

「SET! HUT! HUT!」

 

 

 スナップされたボールを捕るや、掲げる体勢を取る長門。パスモーション。フィールドへ視線を走らす、ほんの僅かな仕草に、後衛陣は駆け抜けるパスターゲットへの意識が寄る。

 何気なく挟んだ一工程。

 王城ホワイトナイツならば必ず見逃さずに察知し、警戒すると長門は確信していた。

 

 

『長門がスクランブル発進! 自分で持ってったーー!!』

 

 

 司令塔であり、戦士でもある。

 指揮しながら、自らも猛威を振るう。

 パスを警戒した一瞬の隙を、長門は逃さず突いた。

 

「ばっはっはー! だから、そう易々とは突破させんと言っただろう、長門!」

 

 その本能が感じ取るがままに動く重戦士は、機敏に反応した。

 ベンチプレス155kgと145kg。悔しいが、力比べでは向こうが上だが、全身全霊でのブチかましは数値上の差など一気に覆す。重戦士でありながら、後衛並の速力を誇る大田原がフルスピードの正面衝突を仕掛けるため、後ろ脚を力強く踏み締め――

 

「見切った」

 

 小細工なしの突進。下手な駆け引きなど意にも介さぬ揺るぎない威力だが、()()()が判り易い。踏み込みを溜める分だけ勢いづくが、隙も大きくなる。

 

 エースランナー級のスピードで間合いを詰め、振るった拳が見えないほどのハンドスピードで0秒で相手を制圧。

 身体に当たったと認識すらする前に、()()()()()()()()()()大田原は大きく仰け反り、突き倒されかける。

 

 

 ――『蜘蛛の毒(スパイダーポイズン)』!

 

 

 重戦士を一押しで崩してしまう猛毒。

 

「――――だがしかーし!!」

 

 重心を崩されるのはこれが二度目。春大会にしてやられたのを、大田原は忘れていない。今こそリベンジだ。あの時の屈辱が、即座に立ち直らせた。しかし、これ以上の暴挙は許さない、もう一人の主将。

 

「これ以上、長門君はやらせない! 僕が護る!」

「栗田!」

 

 泥門デビルバッツの主将、栗田良寛が殺意に昇華した闘志を漲らせて大田原を抑え込む。

 

 ――『三重の防壁』の第一陣(ディフェンスライン)を突破。

 

 ――『三重の防壁』の第二陣(ラインバッカー)、最強の守護神が強襲。

 

 カットを切る時間すら与えない。

 最速の槍が、侵略する敵を容赦なく貫く。

 この局面、間に合うものはいない。――同じ、最速を除いて。

 

(進さん……!)

 

 アイシールド21が、盾に入っていた。

 長門がボールキャリアーで、セナがリードブロッカー。いつもとその役割が逆転。

 腕を使い、伸ばした相手の腕を弾いて逸らそうとする。残念ながら、あまりに力に差があり過ぎるがため、逸らせるのもほんの僅かで、足止めも一瞬。

 だが、その貴重な0.1秒の時間が、長門にこの死線を掻い潜らせた。

 

『アイシールド21のリードブロックが破られた! がっ! その隙に長門が横から抜けたーー!!』

 

 迫るのは進だけではない。

 具志堅と薬丸が挟み打つように長門を狙う。しかし、具志堅は切れ味鋭い曲がり(カット)で躱され、薬丸のタックルは太刀の如くリーチの長い腕を使っていなされる。瞬く間に二人抜き。

 

 ――『三重の防壁』の第二陣を突破。

 

 最終防衛線を敷くセーフティの二人、中脇と釣目が飛びつくが、構わず突っ切る。

 中脇をブチかましで吹き飛ばし、もうひとりの釣目が腰にしがみついたが、ほとんどスピードが落ちない。

 生半可なタックルでは止まらない馬力。アメリカンフットボールの原点ともいえる、剛の走法(チャージ)

 

「おおああああああああああっっ!!!」

「っ、くそ……!!?」

 

 捕まえてこようが止まらない。雄々しく強引に前進して、しがみつく相手を引きずり、やがては振り切る。

 王城の鉄壁を侵略し、征服する蹂躙走破。

 

 ――『三重の防壁』の第三陣(ディフェンスバック)を突破。

 

『長門、最後の砦の釣目君を振り切って、独走ォーー! ゴールラインまで一直線―――!!』

 

 

 ~~~

 

 

「そうはさせん」

 

 

 ~~~

 

 

(っ! 速い! もう俺に追いつくか!)

 

 突破はされたが、仲間達の奮闘は奴に1秒以上の遅滞を招いた。

 それだけあれば、追いつける。逃しはしない。

 

(長門村正、貴様を俺の全身全霊で止める……!)

 

 後方から襲い掛かるプレッシャー。振り向かずとも誰かわかる。覚悟を決めたその直後、120%に超加速した光速の槍が、この身を貫いた。

 純粋な力では長門が上回る。だが、高校最速のトップスピードを掛け算させたその威力が、高校最強のパワーを誇る峨王力哉のチャージをも上回りかねない。

 

「かはっ!?」

 

 だが。

 それでも。

 ボールは落とさない。会心のタックルを受けて姿勢が崩れても、尚、一歩前を踏みしめてから膝をつく。

 

 

『最後の一歩で、泥門、10ヤード前進! 連続攻撃権(ファーストダウン)獲得!!』

 

 

 ~~~

 

 

 止まらない。

 長門村正を起点とした泥門デビルバッツの攻撃。

 試合会場の誰もが彼の一挙手一投足に注目を集めた…………その次のプレイ。

 

 

「え?」

 

 

 栗田からスナップされたボールを、長門はスルーした。

 司令塔に受け取られなかったボール、彼のプレイを警戒し、目で追っていた選手らはその行方をあわや見逃しかけるも、その後方にいた男がボールを受け止めた瞬間、最大音量の警報が脳内に響いた。

 

 

「アイシールド21だっ! 爆走ランが来るぞ!」

 

 

 泥門のエースランナーにボールが渡る。同時に、泥門最強の『妖刀』が、一身巨大な矢となり鉄壁へ放たれた。

 

 ――『巨大矢(バリスタ)』!

 

 セナがボールキャリアーとなり、長門がリードブロッカーに入る。これこそが、無敵の直球勝負。

 城塞を破壊し得る威力を経験した王城の意識がセナと長門の二人に向けられる。

 

 

 フゴッ、フゴフゴ……(この試合、自分は力に溺れていた)

 

 腕、肩、頭から同時にブチかまし、三倍の威力を爆発させる『Δ(デルタ)ダイナマイト』

 白秋戦、峨王力哉を吹き飛ばした時、感動に髄まで痺れた。己の力以上の破壊力という快感を味わった。

 『Δダイナマイト』を成功させれば、己に壊せぬ壁はない。

 

 だが、三点同時着弾のタイミングを外せば、不発に終わる。力は分散し、容易く跳ね返されてしまう。

 この試合で相対したのは、峨王のように只管に突っ込んでくるような真似はしない、衝突の最中にも駆け引きを講じてくるような難敵ばかり。当然、こちらの狙いも読まれているし、必殺技の『Δダイナマイト』も研究されている。タイミングを掴んだ、と思えばあっさり外され、あっけなく突進をいなされていた。

 思い返してみれば、醜態をさらしていたものだ。

 

『次のプレイで仕掛ける『巨大矢』は、栗田先輩と大吉の間を狙う』

 

 それでも、仲間たちは自分の背中を信じてくれていた。突破口を切り開く大役を任せてくれた。

 おかげで、目が覚めた。

 

 自分は、三倍の力がなければ倒せないような軟弱者ではないはずだ

 むしろ、タイミングを計ることに気を取られるばかりで、自分の持ち味を殺してしまうようならば、今の未熟な己には過ぎたこだわりは封印する。

 チームのためになすべきことを我武者羅にやる。

 

 フゴ(今だ)ッ……!

 

 親友(ながと)(プレイ)を見た。

 己の師(くりた)と渡り合う王城で最もパワフルな強者(おおたわら)を、片腕だけで制したあの場面を目撃した小結は理解する。

 全てはタイミング。

 腕っぷしの強さも大事だが、押し合いには機が肝心なのだと。

 

 マッチアップした上村は、『スイム』を得意とする相手。自分のような小柄な相手をリーチの差で制する。実際、この試合の最中にも何度かしてやられている。

 だが、もうそうはいかない。

 小結大吉の脳裏に過るのは、対決した強敵手、水町健吾。長身という己には持ちえない武器を振るった強者(ツワモノ)を打ち破った時、どうしたか。

 

 『水泳(スイム)』は、腕を振り上げたその一瞬、胸が押せる的になる。

 

「な……っ!?」

 

 頭、肩、腕を一体に固めて突撃してくるかと思いきや、腕だけを伸ばした突っ張り。

 それもこれまでよりも一気に迫る爆発的な突進力で、上村は突き飛ばされた。

 

 

「これは来たっしょ、小結っち」

 

 ようやく。

 この決戦で、自分にはない武器を持った強敵手(ライバル)の活躍に、水町の胸が躍る。喝采を上げて、脱いだ上半身のシャツをぶんぶん振り回す。

 

 

(そうだ、大吉。お前はそのままでも十分に強い。ああ、これは俺も負けてはいられないな)

 

 大田原が栗田に抑えられ、上村が小結に倒された。

 『三重の防壁』の第一陣を打ち破る突破口。

 そこへ真っ先に切り抜けた長門村正は、崩壊した第一陣のカバーに入った、己が抑えるべき相手を臨む。

 

「次はこちらから仕掛けさせてもらうぞ、進清十郎!」

「長門……っ!」

 

 長門と進。

 両チームの最強が衝突。

 

 長門は理解している。この男に一切の隙は無い、大田原誠のように重心を崩す真似はできない。

 

「だが、単純な力勝負であれば、勝つのは俺だ!」

「ぐ……っ!」

 

 長門は、進を抑えることに専念する。接近戦(インファイト)は、こちらの土俵。先程はスピードの差で捕まったが、今度はパワーの差で捕える。

 そして、進清十郎でなければ、アイシールド21のスピードには追い付けない……!

 

 

 ~~~

 

 

 VS薬丸。

 抜く――

 

 VS中脇。

 抜く――

 

 VS井口。

 抜く――

 

 あっという間に三人抜き。

 悉くを抜き去る圧倒的なスピード。疾い。力で上回っていても、触れられなければ意味がない。

 だけど、総掛かりで包囲していけば、走るコースの限定はできる。先輩達も抜かされながらも、抜く方向を誘導している。おかげで、一足先に回り込めた。

 

 VS釣目。

 抜く――

 

 あと5ヤード!!

 

 アイシールド越しの視界に、ゴールラインが飛び込んだ。

 あと1秒あれば、タッチダウンできる。

 だけど、その前にはあと一人――執拗にこちらに追いすがる41番のユニフォームが視界の片隅を掠める。

 

 来る……!

 

 この試合の最中に成長してくる、計算ができない相手。

 角屋敷吉海が持つ可能性を、セナは正しく認識しているつもりだ。先程もあと少しで止められるところだった。

 

 ――『トライデントタックル』!!

 

 120%の超加速で特攻するタックル。

 だけど、角屋敷のそれは進とは違い、急な曲がりには対応できない。一度躱せば修正が利かない。

 

 疾……――

 

 急角度で右へと曲がる。伸びてくる腕を回転(スピン)で躱す。先程よりも僅かに速い。だけどその程度のことはもう織り込み済み。更に身体を捻り気味にして避け、再び急角度の曲がり(カット)を切る。

 これであとはゴールポストまで40ヤード走4秒2のトップスピードで駆け込むのみ――

 

 

「よっしゃ、セナの圧勝だーー!」

「進が相手でなければ、止められねぇ!」

「追加点ゲットだぜ!!」

 

 

 そう、この瞬間、会場の誰もがセナのタッチダウンを確信していた。

 

 だが、その時、長門村正は、不意にフィールドの流れが変わる気配を覚えた。

 

 死ぬ気で1mmでも止めに入った角屋敷と、後はゴールラインを越えさえすればよかったセナ。

 必然、角屋敷の気迫はセナのそれをほんの僅かに上回っていた――

 

(何度も同じパターンでしてやられてたまるか……!)

 

 相手には余裕がある。相手は今、油断している。

 このチャンスを絶対に逃すな――!

 

 狙った相手から外れた()が地面を突く。メギィと右手の関節が着地の衝撃と、これから行う無茶の反動に悲鳴を上げたが構わず。地面を突いた()を、起点として跳ね上がる。

 

 

(片腕で、ジャンプ! 顔…面で、止……――)

 

 

 渾身の特攻からの、捨て身の特攻。

 角屋敷の頭(ヘルメット)が、セナの脇をどつく。予想だにしなかった一撃によろめき、バランスを崩し倒れた。

 

「うおおおおおおっ!!?」

 

 会場の誰もが驚愕した。

 高校最速のランナーが、撃墜されたのだ。思わぬ伏兵によって。

 

 

『こ……これは、角屋敷君! 顔面で! 高校最速のアイシールド21を必死のブロック!!』

 

 

 残り1ヤード。

 あともう少し、腕を伸ばせたら届いていたかもしれない白線。

 だが、届かなかった。

 

 

「しゃああああああ角屋敷ぃぃぃいい!!」

「よくやった! よくアイシールド21の足を潰した!」

 

 

 王城陣営から歓声が沸いた。

 それはこれまで攻められっぱなしであった王城が活気づくには十分すぎるプレイだった。

 

 

(……このプレイで、試合の流れを一気にものにするはずだったんだがな)

 

 長門は、再び試合の流れが変わり始めているという印象を強めた。

 

 

 ~~~

 

 

「ごめん! 後、少しでタッチダウンだったのに……!」

 

 折角のチャンスをものにできなかったことをチームに謝るセナ。

 それを栗田が一番に励ます。

 

「だだだだ大丈夫だよセナ君! まだチャンスはあるから! ね、みんな!」

「おうよ、泥門の攻撃はまだ終わっちゃいねぇ! 名誉返上――じゃなくて、汚名挽回……――でもなくて、ええと、とにかくリベンジMAXだぜ、セナ!」

「フゴッ!」

 

 仲の良いモン太と小結が消沈しているセナを盛り立ててる。

 進清十郎に止められたのとはまた違う。勝てる相手のはずだったのに勝てなかっただけにより自分自身に不甲斐なさを覚え、悔しさが湧きたってくる。

 『進化する新星(ルーキー)』角屋敷吉海という脅威を改めて思い知った。

 

「確かに、アレはセナの油断があったな。抜いた後も気を抜かなければ対応はできたはずだ」

「……うん。もう絶対に気を抜かないよ」

 

 長門の指摘を受け、セナは気を引き締め直す。それを見た長門はチームメイトらへ向き直る。

 王城に流れが傾きかけている現状、ここは時間をかけてでも確実を取るか、それとも……

 

「あと1ヤードだ。相手の守備はより厚みを増してくるだろうが、次で獲りに行くぞ」

 

 

 ~~~

 

 

 残り1ヤード。

 ゴールラインまで目前。

 だけど、ゴールラインが近づくほど、ただでさえ最強の王城守備が有利になる。

 守る範囲が少なくて済むから、守りに厚みが増す。

 

「この距離なら、パスよりランの方が確実だ。それで考え付く泥門が取り得る手立ては二つだな。前半の時のように栗田のところからゴリ押しで突破してくる『爆破(ブラスト)』か、『デビルバットダイブ』で飛び越えてくるか……」

 

 山本鬼平の目からして、泥門の攻撃力でも王城の最終防衛は難しいと見る。ここで確実に追加点をものにしたいが果たしてどうくるか。セオリーを踏むならば、ここはランで決めに来るはず……

 

 

「(その逆が来るで。鬼平予想絶対外れるから)」

「(つまり、パスっちゅうことか?)」

 

 

 ピクリと耳が大きくなる鬼平。

 いつの間にやら試合観戦の保護者役兼解説役を請け負うことになった虎丸ら子供たちがこそこそと話してる。

 その囁きに、自分の予想にむくむくと不安感を覚え始める鬼平であるが、男として、吐いた唾は呑めない。

 

「いいや、ここはランだ。モン太たちへのパスはない、はずだ」

 

「最後若干自信なさげやったで」

「ほんなら、泥門は『爆破』か『デビルバットダイブ』のどっちで来るんや、鬼平」

 

 と問いかけてくる虎丸。けれど、その目が『これまでの経験からして、鬼平の予想とは逆になるはずや』と言っているのが聴こえてくる

 子供たちから発言を迫られた鬼平は、少し目を瞑って考え込んだのち、クワッと見開き答えた。

 

「どちらかが来る……!!」

「汚え鬼平!!」

 

 

 ~~~

 

 

 先程のプレイで手首を痛めた角屋敷はベンチへ下がり、ディフェンスラインの渡辺が交代で加わる。

 中盤の人数を減らし、前衛を増やした4-3-4の陣形は、それだけ壁の強度が増している。

 

 『爆破』か、『デビルバットダイブ』か。

 当然、パスもあり得る。だが、ゴールラインまで狙えるパスエリアが狭くなり、こちらの守備範囲の密度が増している状況で、その手段の成功率は低い。

 確実に決めるのなら、やはりランだろう。

 そして、王城の壁を破るにせよ、越えるにせよ、大勢で力押しする必要がある以上は、パスに人員を割くのも惜しいはず。

 

(前半と同様に長門のパワーランで来るか、それとも泥門の伝家の宝刀ともいえるアイシールド21の『デビルバットダイブ』か)

 

 長門かセナか。

 栗田から最初にどちらにボールがスナップされるかで決まる。

 どちらが来るにせよ、全力で阻みに行くのみ――

 

 

『長門だァアアア! この場面でボールが託されたのは泥門最強のエースだ!!』

 

 

 峨王に競り勝った栗田と、優れた体格と力強い脚質を有する長門の強行突破を確実に阻めたチームは存在しない。

 残り1ヤードならば、ゴリ押しで狙える。

 

 

「ァアア舐めるなァァァ栗田! 泥門!」

 

 

 チームのピンチ、敗北の可能性が脳裏に過った場面で、ついに殺気立つ。轟然と咆哮上げ、『護る為の殺意』を滾らせる大田原が、自分よりも巨漢の栗田の進行を、ゴールラインの白線10cm前で止めた。

 

「行く…んだ……勝ってみんなで決勝に行くんだ……!!」

「違ァァァう! お前をここで倒して、王城ホワイトナイツが勝アアアアつ!!」

 

 大田原の気迫は、泥門の選手らの身を強張らせた。

 それでも、栗田は倒れず、身を呈して皆に危害を加えるのを許さない。肉体的にも、精神的にもチームを守護すると決め、そのためならば、相手を破壊することも厭わないと覚悟を決めている。

 

 両主将の力は拮抗。

 天井を覆うドームが震えるほど激しく鬩ぎ合う一線はもはやこれ以上揺らがない。

 であれば、最後の一押しをするのはチームのエースの役目だ。

 

 

 ――空を、飛ぶ。

 

 

 栗田の背につく寸前で、長門が跳躍した。長門は力だけの選手ではない。その高さは桜庭を上回る高校最高の跳躍力。一身、人間砲弾となって壁をブチ破いてくるのか。

 

 

 いや、『デビルバットダイブ』、ではない。

 

 

 そう、長門にはまだ選択肢がある。

 その強靭なボディバランスは、中空という不安定な体勢からのパスを可能とする。西部戦の決勝点となったあの『空中(エアリアル)デビルレーザーバレット』がある。

 

 

 ――その空中狙撃(パス)は、王城の想定内だった。

 

 

『井口と艶島は何があっても雷門太郎と雪光学から目を切るな』

 

 西部戦で披露したそのプレイを、当然、王城は研究し、対策も検討済みだ。

 瀧は最前線の押し合いに加わっている。残るレシーバー、モン太と雪光の二人もコーナバックの艶島と井口が完璧にマークをしている。

 そして、眼前に伸ばされた大きな手がパスコースを遮る。

 

「ばァーーーッ! はァーーっ!!」

 

 大田原だ。

 身長+体重、そして、あの剛腕にスピードを持った大型重戦車。

 それが全力で滞空する狙撃兵を撃ち落としに迫る。

 

「危ない、長門君!?」

 

 大田原の相手は、栗田がしていた。余人が入り込めない力の衝突だったはずだ。それに割って入れる存在は、そうはいない。だが、王城にはいる。

 全速でぶつかれば、破壊神(がおう)の衝突力を上回る高校最強の守護神(しん)が中央のブロックに加わっていたのだ。

 進が栗田を抑え、自由となった大田原が、長門を狙う。

 マークに躊躇して時間をかければ、相手守備の頭上から撃ち抜けたパス発射高度も低下。奇策に打って出たが、結局、パスは投げられずに失速、失敗だ。

 

 

 ~~~

 

 

「エースランナーなら、名誉挽回はさっさと済ませた方がいいだろう、なあ、セナ?」

 

 

 ~~~

 

 

 パスが、投げられた。

 手首だけの軽いスナップで、横へボールが飛ぶ。それはとても柔らかく、優しい、捕り易いパス質だった。

 あまりにゆったりとしたパスに、時が止まったかのような感覚さえ覚え始めた時、閃光は飛んだ。

 

 

 『空中(エアリアル)デビルレーザーバレット』からアイシールド21へ『天空(スカイ)デビルバットダイブ』……!!

 

 

 戦闘機の空中給油のような、アクロバットな曲芸だ。唖然とするしかない。だが、唖然としている場合ではない。

 

「一か八かのギャンブルだったが、こうした方が泥門には合う。そんな風にチームが染まっちまっているからな」

 

 あんな弾丸スピードで、空中でキャッチしながらなんて……!?

 離れ業に次ぐ離れ業は、王城の想定を飛び越えていた。

 

(無茶だってなんだって、ボールを捕るんだ……!)

 

 セナは、この場面で思い出してしまう。

 そう、自分が初めてキャッチしたのは、王城ホワイトナイツとの試合で長門君から放られた、今のような、初心者でも獲り易いパスだったことを。

 

 

『タッチダーーーウン!! 王城の『三重の防壁』を破り、泥門、更なる追加点です!!』

 

 

 ~~~

 

 

「この試合、泥門の勝ちだ」

 

 観客の中の誰かがそう口にした。

 武蔵のボーナスキックも決まり、23-13。泥門が王城に10点差をつけてリードしている。一回タッチダウンを決めても覆せない差をつけている。

 このままいけば、泥門が勝つ確率の方が高いはずだ。

 

 

「勝負は最後の0秒までわかりはしない……!!」

 

 

 ~~~

 

 

「よく頑張ってくれた」

 

 指揮官の高見はディフェンスチームを労った。

 マネージャーの若菜小春がせっせとタオルを配るのを受け取りながら、チームは指揮官の言葉に耳を傾ける。

 追加点を奪われてしまった以上、守備陣で満足な顔をしている者は誰一人としていないが、作戦は達成している。

 この10点差のリードも、想定内だ。

 

「タッチダウンは獲られた。しかし、泥門はそれ以上に高い代償を支払ったと、後で思い知ることになるだろう」

 

 そして、天下無双の騎士団による逆襲が始まる。

 

 

 ~~~

 

 

「泥門の諸兄に宣告しよう。ここから先、王城の攻撃は『作戦会議0秒(ノーハドル)』で行う」

 

 は?

 高見の発言を、大半は理解できなかった。

 単語の意味は知っている。『ノーハドル』、指揮官の暗号のみで作戦を決行する。

 だが、第三クォーターの途中から試合終了まで丸々『ノーハドル』で攻め立てるなど無茶苦茶が過ぎる。

 

 

「再度、宣告する。これはハッタリではない。君達を息吐く暇もなく徹底的に攻め立てる」

 

 

 ~~~

 

 

「……すまない、モン太」

 

「? いきなり、何すか桜庭先輩」

 

「モン太とは対等な条件で雌雄を決したかった。けど……」

 

 右手首のリストバンド、そこに寄せ書きされた言葉を見つめ、それから再度モン太へ通告する。

 

「俺個人の勝負よりも、王城の皆とクリスマスボウルへ行くことを優先する」

 

 

 ~~~

 

 

「“ハートのジャック”」

 

 

 ~~~

 

 

 蹂躙劇(ゲーム)が始まった。

 

 高見へボールがスナップされるや、スタートを切った桜庭。それを追うモン太。

 

 速い……!

 

 自分よりも速い相手だけど、開始3秒でマークが貼り付けないほどの距離をつけられた。

 

 何で桜庭先輩がいきなりこんなに速く……――って、考えてる場合じゃねぇ! 今はとにかく全力ダッシュMAーーーーXっ!!

 

 必死に走るが、振り切られた背中は触れないほど遠い。

 そこへモン太が全力で跳んでも届かない高度で剛弓(パス)が飛来する。

 

 

 ――『ツインタワー剛弓』!!

 

 

『王城、パス成功! 6ヤード前進!』

 

 

 ~~~

 

 

「“クローバーの2”」

 

『王城の『巨大矢』が炸裂! 猫山のランで、5ヤード前進! 連続攻撃権獲得です!』

 

 

「“ダイヤの8”」

 

『王城、神前へパス成功! 6ヤード前進!』

 

 

「“スペードの7”」

 

『またまた『射手座』が決まったーー! これで三連続! 更にパス成功からモン太のマークを振り切り、桜庭独走! 15ヤード前進! 王城、止まりません!』

 

 ・

 ・

 ・

 

「“スペードのキング”」

 

『最後は進君が自分でボールを持って力ずくでゴールラインに押し込んだー! 長門君がブロックに入りましたが止め切れない! 王城、タッチダーウン!!』

 

 『巨大矢』と『剛弓』を主軸とした王城の攻撃手段に変わりはない。

 だが、前半以上のハイペースで繰り出す。『射手座』の五月雨撃ち。無呼吸連打の如く、相手に息を吐かせぬ猛攻だった。

 

「審判、タイムアウト」

 

 息を切らしてフィールドに腰を落とすものが大半の泥門ベンチ。

 その中でもひどく消耗しているのは、二人。

 

「足関節が、熱い……!?」

「ほれ、どぶろく特製『急冷アイシング腹巻』だ。コイツでクールダウンさせとけ。気休めだがやらんよりましだ」

「はい、足が一気に軽くなりました……!」

「馬鹿野郎。神龍寺戦でも言ったが、冷気で靭帯を伸びにくくして、一時的に痛みを麻痺させてるだけだ。回復してるわけじゃないってことを肝に銘じとけ」

 

 一人は、セナ。

 最終防衛線として、抜けたヒル魔の分まで全速でカバーしていたが、やはり無茶が過ぎた。

 神龍寺戦と同様、溝六トレーナーの『急冷アイシング腹巻』のお世話になっている。

 このまま全力疾走を続ければ、試合終了までもつかは怪しい。

 

「        」

「大丈夫、モン太君!?」

「おい、目が逝ってやがんぞこいつ!?」

 

 そして、セナ以上にヤバいのは、モン太。

 長門がカットしたボールを拾う『デビルバットホップ』や高校最速の剛速球『デビルレーザーマグナム』、さらには『オンサイドキック』にまで『デビルバックファイア』を決めるなんて極限技を連発。

 そして、王城コーナバックの井口に徹底してマークされ続けてきたのだ。

 その上で、桜庭を我武者羅に追い続けた。『ノーハドル』で息を吐く間も与えられずにだ。

 完璧にリミットオーバーしている。

 

(そう、桜庭春人が速くなっているんじゃない。モン太がガス欠になってきている)

 

 守備は休んでいた桜庭と、井口を相手に守備でも全力疾走でプレイに臨んでいたモン太。体力の消耗の度合いが違うのは必然だ。

 だがしかし、性格上、“手を抜く”という真似ができないモン太は桜庭を全力で追いかけ続けた。もう追いつけないとわかりながらも諦めることはしたくなかった。

 

「バカ、やっちまった」

 

 十文字に思いっきり水を頭にぶっかけられて、目が覚めたようにハッとするモン太。意識が落ちかけていたことに自分でも気づいたのだろう。

 

「こんな大事なトコで……バテてちゃ世話ねえよな。鉄馬先輩や一休先輩、それに如月先輩……他にも全力で戦ってきた奴らに恥じないようにって張り切っちゃってよ。東京ベストレシーバーに選ばれなかったから、今度こそ桜庭先輩に勝って、最強レシーバーになるんだって頑張っちゃってよ」

 

 後悔の滲む吐露を零す。

 俯いて、まだ視界が白く霞む今の己の在り様を、この上なく無様晒していると自嘲する。

 

 

「バカだな。バカだ、俺は……!」

 

 

 ずっとずっと、10年以上も、心底から憧れ続けた偉大な野球選手、『キャッチの神様』、本庄勝。

 あの時、ヒーローだったあの人からグローブをもらった時から夢見た。“本庄二世”と呼ばれるようになりたかった。

 だけど、俺には無理だった。

 俺よりもずっと“本庄二世”に相応しいのがいた。本庄鷹。東西交流戦で、鉄馬先輩と桜庭先輩を圧倒した、本庄勝の一人息子(サラブレッド)

 息子として本庄選手からの英才教育を受け、走り幅跳び8m25cmという高校ぶっちぎりの日本記録保持者でもある本庄鷹以上に“本庄二世”が相応しい奴なんていない。東西交流戦の試合映像を見て、そのキャッチがどれだけすごいのかわかってしまっている。

 雷門太郎は、“本庄二世(たか)”になれないんだって思い知らされた。

 

 でも、そうだ。そうなんだ。

 端から俺は誰の二世でもねえ。

 あの時、野球を辞めて、アメフトをやると決めた時に誓った。

 世界最強のレシーバー、雷門太郎になる!

 だから、俺は『キャッチの神様』を超える存在になるんだ!

 

 ・

 ・

 ・

 

 鉄馬先輩、一休先輩、桜庭先輩に勝って、関東最強レシーバーになる。

 そして、『クリスマスボウル』で、“本庄二世(たか)”に勝って、『キャッチの神様』を超える。

 そのためには、どんな状況でも何があってもだれが相手だろうと全力で挑む。そうしなければ、届かない。

 ……って、張り切るあまりに自分の限界を無視して試合途中でガス欠になるとは、バカとしか言いようがない。まだ試合は終わっていないのにお荷物になってしまうなんて、あまりにも不甲斐ない。

 だから、ここで倒れるわけにはいかない。

 

「長門、俺のことブン殴ってくれ……!」

 

「何?」

「極度の緊張感からM(マゾ)に目覚めたか」

「違う」

 

 失礼なことを言う戸叶に突っ込みを入れてから、モン太は頼む。

 

「いっつも気合入れてるバチーン! ってアレ。自分でブン殴る体力もねぇ」

 

 両頬を両手で挟み打って気合を入れるモン太の儀式。それを情けないが、長門に依頼する。

 

「いいねぇ! よ、よ~し! みんなで1発ずつ気合を入れ合おうよ!」

 

「おしきたあああ!」

「オラァ!」

「オラァアア!」

「フンッ!」

「アハーハー!」

 

 とそれを聴いていた栗田が提案。他の面々もモン太式の気合入れを早速実践する。

 そのはしゃっぎっぷりに、長門は苦笑し、モン太の要望に応えた。

 

「ほれ、気合注入だ」

「うごっ!?」

 

 ガツン、と軽い調子で、重いチョップ。

 西部戦でもやられたが、この一発が一番効く。頭蓋が割れたんじゃないかって思うくらい脳天に響く。頭を抱え蹲るモン太に、心配した長門がしゃがみ、小声で言う。

 

「(今、王城の守備に最も有効なのが、モン太への『デビルレーザーマグナム』だ。主軸のそれが機能しないと判断されれば、泥門の攻撃は半減する。もうパスが捕れないくらいへばっていることは絶対にばれないように気をつけろ)」

 

 と蹲ったモン太の腕を引いてから、長門は“指揮官としての言葉”に続けて、“個人的な意見”を述べた。

 

「だがまあ、仕方がない。ガンガン行かなければ、No.1レシーバーにはなれないんだろう? 常に全力(MAX)が雷門太郎のスタイルなんだろう? だったら、貫けよ。指揮官としてはあまり言うべきではないだろうが、いちいちスタミナ管理だとか気にして手を抜くような真似はお前には似合わない。責任を感じるのは結構だが、もう自分を“バカ”と略すな。ボールを見れば飛びつきたがる野郎に相応しい文句は“キャッチバカ”だ」

 

「長門……」

 

「それに無理を強いたのは俺の指揮だ。半分以上は指揮官である俺の責任だ。モン太はそれに応えて、バカな失態してもおつりが出るくらいの活躍をしたんだ。ヘマした時は俺がケツを拭いてやる」

 

 一人立てるようになったモン太の肩を軽く叩いて、長門は再び戦場(フィールド)へ向かうチームの先頭に立つ。

 

 ったく、すげぇよ。

 器のデカさMAXだ。チームの中で一番負担が大きいっつうのに、まだ余裕をかませんのか。

 

 気合が、入った。

 これは、手刀一発よりも奮起してしまう。もう無理はできないと体が訴えているのに、あの背中を追いかけろと心が急かしてくる。

 

 ああ、そうだ。負けられないのは味方にもいる。

 “本庄二世”と肩を並べる最強……長門、お前だって俺の目標だ。

 

 

 ~~~

 

 

「…………そろそろ、だな」

 

 

 ケケケ、と目覚めた悪魔は笑う。


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