悪魔の妖刀   作:背番号88

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30話

 投手二人体制の『ドラゴンフライ』……この変幻自在なる戦術(パターン)を、潰す。

 一度見せた手は、通じさせない。帝黒アレキサンダーズの全員がその場で学習し即実践できるだけの対応力を持ったエース級。

 対し、センスがあっても、連携の練度の深さは足らない即席のオールスター。バリエーションがそう多く用意できているわけではない。

 プレイする毎に手札は切り詰められていく。

 地道に東京の攻撃を攻略し、そして、追い詰める――

 

(『電撃突撃』……!)

 

 超高速で大和が特攻を仕掛けるプレイ。

 それが徹底して連続する。ボールを持っていようがいまいが関係なく、長門を自由にさせない。

 これで『ドラゴンフライ』の肝であるクォーターバック二人のボール回しを阻止する。

 

(いや、ブリッツ二枚だと……!)

 

 ――だが、それなら、強引にでも無理を押し通す……!

 

 長門村正、大和猛からの強襲を警戒するあまりに生じた隙へ帝黒ライン・安芸礼介からタックルをもらいながらも、パスを投げる。

 それはアメリカNASAエイリアンズのクォーターバック・ホーマーと同じ。強靭な上体を持つから可能とする力技。

 

「鷹!!」

 

 だが、そのパスコース先にも回り込まれた。

 

「!!?」

「あの体勢からでも投げられる。だけど、それは低いパスだ。さっきのようにはいかない」

 

 倒されながらの姿勢では、当然、発射点も傾く。それでも高い空を駆けていくのだが、最高点――『エベレストパス』とはいかない。

 桜庭春人への高弾道パスを、本庄鷹が弾く。

 パス失敗。

 そして、これで東京は次が最後の攻撃権となる。

 

 

「ボールを運べるのはここまでのようだ。――後は頼んでもいいかい?」

 

「おうよ、ここまで運んでくれれば十分! 俺がスマートにキックを決めてやる!」

 

 東京の指揮官・キッドは、今の帝黒の守備を破るのは相当に厳しいと理解する。審判が時計の針を気にする時間帯であるのを考慮し、これ以上の攻めは無理だと判断した。

 であれば、長距離砲。帝黒の守備を徐々にだが押し上げてキックゾーンまで進めている――

 

 

『さぁ東京オールスターズ! 前半最後の攻撃となるこのプレイで選択したのは、コータローくんのフィールドゴールキックです!』

 

 キック、か……。

 帝黒守備についた赤羽からも窺える、キッカーが助走位置に着いたその陣形の意味は明らかだ。

 ゴールポストまで50ヤード(46m)。かなり長い。帝黒キッカーの布袋福助でも最高飛距離は49ヤードで、赤羽が知る限り、一年前の佐々木コータローでは届かなかった距離だ。

 ここは無理にゴールを狙わずパントキックで、次回の守備を楽にしてやるのがセオリーだ。

 士気を高める攻めの勢いを断ちたくはなかったのだろうが、これは調子に乗ったか。

 

(ここで、コータローのキックを失敗させて、帝黒に流れを持っていく……!)

 

 

 ――ここで俺の脚に託した。

 

 最初のキックを失敗している。さらには風吹き荒れて難しい場面。

 それでも、満場一致でキックだった。

 

(ったく、まいるぜ)

 

 プレイ開始のコールと同時にスタートダッシュを切った赤羽を唯一その技に対抗できる長門が抑える。そして、パワー・スピード・高身長とキックの天敵なステータスとを備えた大和には複数人がかりでしがみつく。

 全員が一丸となって、このプレイを成功させようとしている。

 

「決めて、コータロー!!」

 

 観客席から、元同級生同士の試合を複雑そうに見守っていた盤戸のマネージャー・沢井ジュリからの声援が、最後、この背を後押しした。

 

「これを決めなきゃ、男じゃねぇ!!」

 

 仲間(チーム)が俺を信じている。

 そして、俺も仲間を疑わねぇ。

 

「―――」

 

 そのとき、赤羽隼人が視たのは、帝黒のプレッシャーなど眼中になく、ただ先を――ゴールのみを見据える佐々木コータロー(キッカー)の姿。ブロックされながらも伸ばそうとした赤羽の手を、その指先も掠らせぬ彼方へとボールは蹴り飛ばされた。

 

『風の流れも計算の内、コータロー君のキックは完璧に追い風を味方につけて、ゴールポストへと吸い込まれていくように飛んでいくーっ!!』

 

 そうして、東京オールスターズ最後の攻撃……先程外した佐々木コータローのキックを選択し、成功させる。

 

 

『東京キッカー・佐々木コータロー、フィールドゴールキック成功ー!!』

 

 

 リードを広げて、11-7。

 

 

「残り時間もわずかだ! ゴールラインまで相手にボールを運ばせるな!」

 

 その後、東京守備の王城ディフェンス陣が意地を見せ、帝黒オフェンスを前半終了まで阻み切った。

 プレイはリセットされ、ハーフタイムに入る。

 前評判を覆して、東京地区優勢。

 しかし、静かにプレイを邪魔する焦りを呑み込むチームメイトたちへ、帝黒のエース・大和猛は言う。

 

「まだ慌てる点差じゃない。一タッチダウンで覆せる」

 

 

 ~~~

 

 

 20分の休憩時間。

 この間に、徹底的に体を休める選手、テーピングの補強をやり直す選手、陣形の確認に余念のない選手、あと栄養補給(ドカ食い)に勤しむ選手と様々

 

「脚の調子はどうだセナ?」

 

 入念にストレッチを行う長門。

 隣で同じように真似をして体を解しているセナへ半身捻って顔を向ける。

 

「泥門ではいつも両面を強いられていたが、攻撃に集中できる。でも、楽じゃあないだろ?」

 

 この半ば確信めいている調子の問いかけに、こくん、と頷くセナ。

 勝っているけど全然楽じゃない試合展開。いつもよりプレイ量は減っているはずなのに、消耗具合はいつも以上な気さえする。

 

「そりゃあ、猛に対抗して常時全力疾走でフィールドを突っ切っているからな。トップスピードを出した直後のセナは少しだがどうしても走りのフォームがふらつく」

 

「うん……」

 

 セナは自分の脚に焦点を合わせる。長門の言う通り。40ヤード走4秒2のスピードを出せば、その反動からか筋肉痛に悩まされる。

 

「でも、大丈夫! 今はそれほどの痛みはないから! 後半も全然走れるよ!」

 

 確かに『一人デビルバットダイブ』の着地をした時は脚の筋肉が悲鳴を感じるのを感じた。しかし、決勝の王城戦で進清十郎と競った時は、脚が折れるかもしれないとさえ思ったのだ。それと比べれば大分マシである。

 

「やっぱり攻撃に専念できるおかげなのかなあ?」

 

「それだけじゃない。合同練習で、進清十郎や甲斐谷陸と競り合い続けた成果が出ているんだ」

 

 今度は体を反対に捻り、背中を見せながら長門は指摘する。

 

「最初に限界を破る時は、体力や筋力だのよりも気持ちだ。気持ちひとつで壁を超える。だが、二度目からは気持ちだけではどうにもならない。もう一度、壁の先のステージを行くには、最初に壁を超えたとき以上の力がどうしても必要になる」

 

 スクエアランで自分と同じくらい速い相手に只管に追いかけられ続ける。全力疾走が強いられる練習をし続ければ、いやでも脚力がつく。

 

 王城学園での、東京トッププレイヤーが集っての合同練習。それはすごく厳しかったけれど、いつもの泥門では学べないような環境だった。

 だから、そう、セナに、焦るな、と。着実に成長しているのだと教えるように長門は言う。

 

 ……でも、それを言うなら、大和君。

 両面に出て、それも第2クォーターからは長門君に全力疾走でブリッツを仕掛け、当然、攻撃面でもほとんど40ヤード走4秒2のスピードを出していた。そう、セナは一度も抜けていなかった。

 だけど、彼にはまだ余裕があるように思える。苦しいのは向こうも同じはずなのに、大和は最後まで走り抜けると思えてしまう。

 同じランニングバックでも、格に違いを実感する。

 セナも道半ばで脚が尽き果てるつもりはないけど、やはり遠い――

 

「セナ、俺は魚屋に野菜を注文するような無茶は言わないつもりだ」

 

 長門はそんな前置きを入れてから、ゆっくりと深呼吸、胸の奥から吐き出すように、

 

「――走れ。大和猛は、時代最強のランナー(アイシールド21)で、今、ランニングバック(おまえたち)の先頭を行く者だ。小早川セナの前を走っている壁だ」

 

「長門君……」

 

走り屋(ランナー)なら前を見ろ。余計な焦燥なんかに駆られる前に、一心に駆け抜けろ。全てを使って追いかけなければ、あの背中には届かないぞ」

 

 遠い。でも、その背中は捉えられてはいるのだ。目標にさえできないほど彼方に置いていかれているわけではない。

 

 

「ああそれと、帝黒の守備で体感したことはよく覚えておけ」

 

「う、うん。王城とはまた違うけど、凄い守備だし」

 

「それもあるが、昨年の全国大会決勝で神龍寺ナーガを降した帝黒アレキサンダーズの『ドラゴンフライ』への対処は、見本(イメージ)としてはうってつけの教材だからな」

 

「へ?」

 

 

 ~~~

 

 

『ああーっと、風で流されたーっ!! さしもの花梨&鷹ホットラインもパス失敗ー!!』

 

 後半、東京のキックオフから始まった大阪の攻撃(ターン)

 天候が荒れてきたフィールドで、花弁(ボール)は強風に散らされてしまう。

 

「これは、追い風か」

 

 荒れ狂う猛風に柔らかい――逆風を突っ切るだけの鋭さが足りないパスでは流される。『花弁の(フローラル)シュート』は、自殺行為に等しい。

 小泉花梨にとって、この悪条件は投手として役割をほとんど果たせなくなってしまう。帝黒学園はラン中心の攻めをせざるを得ない。

 

 そして、この機に、まだ後半が始まって早々であるが、手札を切る。

 

『ここで選手交代です東京オールスターズ! ――! この陣形はもしや巨深ポセイドンズの――!』

 

 東京守備ラインの王城選手のひとり、渡辺頼広と交代し、長門村正を投入。後衛守備のラインバッカーを一枚増やす。

 筧駿、進清十郎、長門村正、葉柱ルイ――ラインバッカー四人体制のフォーメーションは、『ポセイドン』!

 

 

「SET! HUT!」

 

 帝黒のプレイは、赤羽をリードブロッカーに入れての大和の疾走。アレキサンダーズ最強の突破力を誇るランプレイ。

 

 東京は後衛を増やした『ポセイドン』でもって、究極のボディバランスから為す、光輝く道筋(デイライト)が駆け抜ける大和に対応しようというのだろう。

 だが、大和の走りは、幅広いだけではない。破壊力がある。抜き去るのではなく、突き破ることも大和にはできるのだ。さらに、『リードブロックの魔術師』である赤羽がサポートに入れば、薄い壁など容易く突破してしまえる。

 その守備陣形は、大和の走りを捕らえられるかもしれないが、止め切ることはできない――!

 

 壁一枚減らした分、手薄となった中央を突破する。

 ――だが、その先には“海の魔物”が待ち構えていた。

 

「くっ」

 

 リードブロックに入っている赤羽と当たった長門は、組み合い、そして、強引に押し寄せられた。

 それは、大和が走ろうとした光路(みち)を遮る形で、やむを得ず、それと反対のルートへ曲がりを切る。

 

 ――そこへ、鉄砲水の如き平手突き。

 

「ついに捉えたぞ、アイシールド21――大和猛!」

 

 ランナーは、味方がブロックに入るのを待つのがセオリー。

 だが、その一瞬、ブレーキがかかったところに、一手打つ。0秒で相手を押さえ、如何なる攻撃パターンも阻止する、筧駿の『モビィディック・アンカー』

 

「危ない……っ!」

 

 圧されたが、ここは強引に抜きに掛かる。安定感のあるパワーボディ。そして、押し込まれた力のベクトルを流すよう回転(スピン)。怒濤の激流を切り分ける大和は、先へ――

 

 

「いいや、その走路(ルート)は行き止まりだ」

 

 

 大和が筧を抜いた先は、三叉の槍が待ち受ける処刑(ギロチン)台。

 回転した直後の、姿勢が揺れてるその時に、高校最高の守護神は容赦なく穿つ!

 

 進清十郎……っ!

 

 『トライデントタックル』が、不屈の帝王を貫いた。

 

 

 ~~~

 

 

 大和猛……アイシールド21を誘導した先で仕留めたそれは、『ランフォース』

 

 海の魔物『クラーケン』やら海神『ポセイドン』やら三叉槍『トライデント』が敷いたのは、立ち入った船を呑み込む魔の海域だった。

 

 前半、長門村正は、守備に参加せず帝黒の攻撃を観察していた。

 『速選(オプション)ルート』の雪光学のように見に徹し、この赤羽隼人のお株を奪うような『ランフォース』を築き上げるまでにその精度を高めていた。

 そして、筧駿の考案した『ポセイドン』フォーメーションに合わせた。

 高波はただ船を沈めるだけでなく、押し流すように誘導もできる。流動する迷路封鎖、それが『バミューダトライアングル』

 

 

「……おい、大和君が倒されたトコを見るなんて初めてちゃうんか」

「ああ、あれは完璧に“大和殺し”やった」

 

 長門村正に走路を制限され、筧駿に隙をつかれてバランスを崩したところを、進清十郎のタックルがトドメを刺す。

 こんなのたとえアイシールド21、大和猛でもたまらない。

 

 日本で初めて倒されたエースが、ショックを受けたのかと心配するチームメイトだったが、それは杞憂であった。

 

「……俺を倒す守護に最強のライバル――いいじゃないか。ますます勝ち(ぬき)たくなったよ」

 

 すぐに立ちあがる大和は笑っていた。

 

「断言できる。今の俺はベストコンディションになっている!」

 

 最高潮に達しても上昇が止まらずに更新され続ける。

 この苦境を、全身全霊で歓迎しよう――!

 

 

 ~~~

 

 

 そして、試合(ゲーム)は……大阪地区――帝黒アレキサンダーズが、徐々に押していく。

 

 

 ~~~

 

 

 大和猛の走りでも抜き去れない広範囲の守備に、大和猛の走りを見切った連携、これに後半直後に衝撃を受けた――だが、穴があった。

 

「策としては完璧やったかもしれないが、それを実現させる兵までは揃えないと机上の空論や」

 

 動きの切れはいい。これは積み重ねた反復練習の賜物に違いない。だが、才能がない。スピードもパワーも、大和の障害となるには足りない。

 

「あの葉柱っちゅう選手だけ、精々四軍止まりやな」

 

 『ポセイドン』の軸となる四人体制のラインバッカーのひとり、葉柱ルイは、“穴”だと帝黒に早々に見切りをつけられた。

 

「「おああああああああ!!(あ゛ァアアアア!!)」」

 

 大声で迫った葉柱だが、それをかき消すほどの気迫。

 タックルを決めた。葉柱はその腰にしがみついた。だが、大和は止まらない。そして、圧倒的な力についていけず振り払われる。

 

「おあァアアア!!」

「フー……」

 

 赤羽のリードブロックを破ろうとして、一瞬で吹っ飛ばされる。

 この一瞬で回り込んで封鎖した長門と筧が大和を止めたが、それでも前進を許す。

 

 そして、葉柱の補佐に入ろうとするために、その守備陣形に偏りが生まれる。

 それを逃さぬ帝黒ではない。

 

 

 強風が荒れ狂うフィールド。

 ラン一択で攻めざるを得ない……と向こうは思っている。

 ――だから、今こそパスだ。

 相手の“穴”をついてランでも進めているが、しかし時間がかかり過ぎる。『ポセイドン』は時間をロスする逃げ切りの策でもある。後半に入ってから、点の取れない膠着状況に陥ってしまっている。

 それを打破するためにも、ロングパスで一気に大量の距離(ヤード)を稼ぐのだ。

 

「――花梨、俺にロングパスをくれ。東京はラン守備に意識が寄っている。葉柱ルイへのカバーに入るのもあって、パスへの警戒が薄い」

 

 作戦会議で、本庄鷹が申し立てる。

 平良と安芸はあまりいい顔をしなかった。

 

「……危ういな、それは」

 

「あそこの穴をついて大和君が着実に前進できてる。ロングパスなんつうリスクを取る必要あるんか?」

 

 この発言に、鷹は静かに、沸々とした内心を垣間見せるような声音で、

 

「リスク? ――そんなものはないよ。俺が絶対に捕るからだ」

 

 最終的な判断は、帝黒の司令塔・花梨に託された。

 そして――

 

 

「うおおおおお!!」

 

 一度大和にハンドオフされたボールが、ラインにぶつかる間際にバックトスされる。

 返されたボールを肩より上の高さに構え、投球体勢。この時に、パスだと気付くが、その時すでにエースレシーバーは駆け上がっていた。

 

「だが、小泉花梨のパスは風の影響をモロに受けるはず……!」

 

 その通りに、回転数が極端に少ない柔らかいロングパスは、横風に煽られて軌道を曲げられてしまう。

 これはパス失敗する……はずであった。

 

 

 風が強い。ボールが流される。――だから、何だ。ボールは、許すな。

 

 父・本庄勝は、最強の外野手。そのプレイは、大きく打ち上げられたホームラン級の大飛球(フライ)が、風に流されようと、確捕(キャッチ)した。

 野球ボールよりも幅の大きいアメフトボールは風を受ける面積が大きい。それだけ流される。この感覚を補正するのに、時間がかかってしまったが、もう“鷹”の目は、風を読む。これは並外れた彼のセンスに、数多の練習が築き上げた経験則によるもの。

 

 花梨が投げた正確無比なパスは、注文通りの方向へ行っている。そこから風に流されるも予想通り。曲がり流される、この風に舞う花弁(ボール)の軌道は、鷹が頭の中に思い描くものとほぼ一致している。

 

「くっ!」

 

 長門村正が跳んでボールを弾こうとしたが、ボールは逃げる。

 そして、その先へ鷹は飛んでいた。

 前半の東京キッカー・佐々木コータローの『オンサイドキック』を押さえたように、風に流されることも計算に入れて動いている。

 

(ボールは、逃がさない……!)

 

 跳んだ直後に、予期し得ない突風に乗せられたボールだったが、片手でもキャッチが可能な広いカバー力を誇る鷹は、逃さずに伸ばされた右手で掴み獲った。

 

 

『一歩も退かない大阪代表っ! なんという自信! なんという威信……!! ゴールライン目前、残り4ヤード――!!』

 

 今のロングパスですり込んだ。

 東京の守備には“パスもある”と頭にあるはずだ。

 これで、思い切ったラン集中はできない。

 

「最後は、大和の走で仕上げてくれ。この短距離なら俺のパスよりさらに大和のパワーランが確実だ」

 

「ああ、そうだな……!」

 

 強敵手との対決への情熱と同時に持つ冷静さ。

 それでこそ“頂点”だ……!

 

 

 ~~~

 

 

『タッチダーゥン! 大阪オールスターズ! 苦しい逆境を跳ね除けての逆転です!!』

 

 こちらのリードを一度のタッチダウンに覆される。

 

「っそが……!」

 

 相手に合わせるのがカメレオン流。

 相手に合わせて流動する陣形は、葉柱ルイの主義に沿った、得意とするもののはずだった。

 なら、どうしてこんな足を引っ張ることになっている?

 簡単だ。誰にだってわかる。自分の選手としての格が、足りないのだ。帝黒の連中を相手するのに力不足。だから突破を許す。“穴”にされる。

 

(こんなの、許せるはずがねぇ……!)

 

 チームメイトに恵まれた同類(ヒル魔)を羨んだが、この全員が必死に勝ちに行く東京メンバーで負けるようなら言い訳にならない。アイツに負けたことになる。所詮井の中の蛙だとはなから勝負を捨てたアイツらに何も言えなくなっちまう。

 俺は、泥門戦で怪物(ながと)にぶちのめされたまんまなのか。

 いいや――

 

(カッ! 生まれながらに賢かねぇんだよ、畜生……!)

 

 俺には何にもねぇ……それは認める。

 もう隠すもんも、守るもんもねぇ。

 誰にバカにされようが、どんだけみっともなかろうが、知ったことか……!!

 たとえどんなに場違いで、どれだけ恥をかこうとも、たとえそれが叶わぬモノだろうとも俺は――

 

 

『どんな凡庸な誰にも一つだけ許された権利がある。それは群れのボスに戦いを挑むこと。君はその権利を使って生きても使わずに生きてもいい』

 

 

 その何もかも背負った一人の雄は、“頂点”に戦い挑むと決めていた。

 

 

 ~~~

 

 

 トライフォーポイント――

 このボーナス点を得るキックゲームで、向こうは栗田良寛、進清十郎、長門村正から来る中央の突破力でもって、キックを潰しに来る。

 風が荒れてる、プレッシャーも相当なものだ。図太く面の皮が厚い布袋氏も、視線だけで切るような威圧感にゴクリと息を呑む。

 

(それに、11-14では、キック一本で並ばれてしまう点差だ)

 

 先程の佐々木コータローのキックが脳裏に過ったそのとき、蹴り込まれたキッカーの脚からボールを取り上げる赤羽。

 急遽、二点狙いのタッチダウンに切り替える。

 瞬時に、赤羽は自分でボールを持って大外から回り込んでゴールを狙う――!

 

「やらせっかよ!!」

 

 葉柱ルイが、前を阻む。

 キックを潰そうと中央に守備が寄っていたが、外側にいた葉柱は赤羽のプレイに反応した。

 だが、これにも赤羽は落ち着いて、素早く対応。左腕でボールを抱え込んで、右手で相手を制する。

 力押しのみのハードブロックタイプの相手なら、重心移動のタイミングさえ間違わなければ片手でも倒せると踏んで。

 

 わかってんだよ、進たちと比べて俺なんかゴミだってのは!

 だけど、こっちにだって意地がある!

 

 長く、そして柔軟な葉柱の腕は、進清十郎の“槍”の片手突きのように真っ直ぐに最短を突き進むようにはいかないものの、鞭のようにしなって相手を捕らえる。

 絡み付く。

 押し倒せずとも、粘り強くしがみつく。

 重心移動を見誤らなった赤羽は、葉柱を突き飛ばしてみせたが、意地でも手は離さない。倒されながらも引っ張る。死んでもゴールへは行かせない。

 

「ああ、絶対に行かせねぇ!」

 

 そして、葉柱の腕を振り払おうとそちらへ気を取られた赤羽へ、筧がセカンドタックルでボールを弾いた。

 

 大阪地区、ボーナスゲームを失敗させられる。

 

 

 ~~~

 

 

 11-13。

 逆転を許してしまったが、依然と東京の士気は高い。高まっている。

 葉柱が執念で赤羽を阻止したプレイに発奮されているのだ。

 

 大阪・帝黒アレキサンダーズもこれを受けて立つ。

 一進一退の攻防。東京オールスターズはただひたすらにゴールへ前進し続ける。

 

 

『試合時間残り2分! わずか2点差を追う東京!! 東軍西軍両雄一歩も譲らぬ試合の行方はまったくわかりませんッ!!』

 

 

 そして、“頂点”に挑む最強の挑戦者たちは、最後の勝負に出る。

 

「行くぞ、セナ!」

「うん、長門君!」

 

 この勝負所で司令塔・キッドが選んだのは、『鳥の叉骨(ウィッシュボーン)』。

 最初に甲斐谷陸を駆け抜けさせて、次の小早川セナへボールを渡す。そして、その前にリードブロックに長門が入り、セナの爆走ランをサポートする。

 

(――村正ごと、セナ君を倒す!)

 

 己を上回るパワーを有する好敵手と、己に迫りうるスピードを有する挑戦者。

 小早川セナを率いた時のリードブロックは、一段と凄みが増す村正。道を阻む相手を倒さんとする『護る為に殺意』を解放している。

 このタッグを破らんと最高速の『帝王の突撃』を敢行しようとする大和猛。

 だが、その『帝王の突撃』で突貫するギリギリ力を溜めて踏み込む脚――――その一瞬の間を衝く。

 

「猛、お前の重心(うごき)は、肌を合わせずともわかる」

 

 一気に、前に来た。

 “起こり”のない挙動から詰める接近。初速における制圧力においては、進清十郎をも上回る『縮地』なる体技。

 そして、筧駿にも劣らぬ長腕で、0秒で相手を押さえるハンドテクニック。

 さらにそれは相手に踏み込みのタイミングをピンポイントに突いた、赤羽隼人の『蜘蛛の毒(スパイダーポイズン)』と同じであったか。

 

「――ここだ!」

 

 思いきり後ろ足に力を押し込んでいたところを、一押し。

  挙動を押さえ込む先手に、後ろ足をつかされる。

   デコピンの要領で握り込みながらの追撃に襲われ。

    態勢がぐらついたところに、抉り込む肘打ちが炸裂。

 

「かっ――」

 

 三連打というより、三つ同時に重なった一撃。『妖刀』の『三段打ち』が、不倒の帝王を強襲。

 スピード、テクニック、パワーとすべてをこのライバルに打ち込んで、道を切り開く!

 

 

「いいや、まだだ。ゴールはさせない」

 

 『鳥の叉骨』に、本庄鷹の守備を釣ることはできたが、帝黒アレキサンダーズの最終防衛線にはまだひとりいる。

 セーフティーに入っている赤羽が、ゴール目前で立ち塞がる。

 

(ダメだ。赤羽さんはフェイントに掛からない。動きが読まれてる……!)

 

 開始のプレイで、赤羽隼人に甲斐谷陸は抑えられた。

 フェイントを入れるが、それに誘われる気配が微塵もない。冷徹に、こちらの動きを見つめられている。

 

(どっちに抜いてくる。左か、右か――)

 

 いや、どちらであろうともパターンは把握している。

 徹底して対戦相手を研究し尽くす赤羽には、超スピードの『デビルバットゴースト』でも逃さない自信がある。

 

 

 ……スポーツなんて、ドッジボールとかしかやったことがなかった。

 

『お前は今日からアイシールド21だ!』

 

 いきなりヒル魔さんにそう突き付けられた。その背番号がどんな称号(いみ)かさえ最初はまったく知らなかった。

 

『本物のアイシールド21は、その破壊的なラン。完璧なランナーだった』

 

 だけど、今は――

 

 

 そのセナの走りは、曲がる気配がなかった。

 数多の選手の重心移動を瞬時に見切ってきた己の感性に疑いを抱く。

 

(……右にも、左にもカットを切ろうとしない――まさか、上に跳んで……)

 

 『一人デビルバットダイブ』か! と前半のプレイが脳裏に駆け巡った赤羽。

 

 

 ――だが、違う。

 あの顔に浮かぶは恐怖、それと恐怖への覚悟

 すれ違いざまにヘルメットの奥を垣間見た瞬間、ランナーとしての直感が、大和に訴える。

 

「突っ込んでくるぞ、赤羽……!」

 

 小早川セナは、スピードだけなんかじゃない。

 自分から敵の懐に飛び込むエースに相応しい闘志を持ってる。

 

 赤羽隼人はそれを見誤り、直前まで察知が遅れた。

 

 無茶苦茶にも、力ずく、体当たりで、直球の力勝負を挑みに来る。

 40ヤード4秒2の人間砲弾が、赤羽隼人という壁を、こじ抜ける!!

 

「おおおああああ!!」

 

 相打ちか!?

 赤羽を吹っ飛ばしたが、ボールはゴールラインを越えていない……!

 

「止、まっ……」

 

 が瞬間、密着している体勢から、さらに勢いが回転する。

 力ずくで倒したこちらの身体を回転の支点に、『垂直デビルバットハリケーン』……!

 

 胸を打った響く衝撃(ショック)に瞠目し、そして、己の上を駆け上がった“もうひとりのアイシールド21”を見上げて、赤羽はポツリと呟く。

 

「セナ君――君の走りは、本物だ――」

 

 

 ~~~

 

 

『小早川セナ! タッチダーーーゥン!!!』

 

 

 歓喜に湧く東京オールスターズ。

 試合終了ギリギリで、ランニングバック・小早川セナが、タッチダウンを決める。その後のボーナスキックも決めて、これで、18-13。キック一本決めても覆せないだけの点差(リード)を築く。

 

 

「ゲームクロック残り……3秒!!!」

 

 

 そして、時間もほぼゼロだ。

 キックしてゲームが終了する。

 

 

「これで決まったな。この試合……東京(おれたち)の勝ちだ」

 

 

 山本鬼兵が、確信を抱いて宣言した。

 東京は、勝利を目前にした。もうほとんど手中に収めていると言っても過言ではない。

 静まり返っている大阪……帝黒アレキサンダーズの陣営。

 

 キックオフしてからボールキャッチしても、タイムアップのブザーが鳴るのだから。

 

 ・

 ・

 ・

 

 ただしそのラストプレーだけは、止められるところまで走ってもいいというルールがある。

 

 

 ~~~

 

 

「――行くでぇ、帝黒アレキサンダーズ!!」

 

 主将・平良呉二の号令が、フィールドに轟く。

 静寂は、諦観によるものではない。この最後の最後に全てを爆発させるタメだ。

 

「まだワンチャンスある! ここでサヨナラ逆転満塁ホームランや!」

 

 帝黒学園は一丸となって、一発逆転のキックオフリターンを狙う

 タイムアップのブザーを鳴り響かせながら飛んできたボールをキャッチするや、一斉に駆け出す。

 

 現代の主義に沿ったスピードフットボールチームのアレキサンダーズは、全員がスプリンター。

 その中でも特にスピードのある面子――大和猛、赤羽隼人、本庄鷹、天間童次郎の4人が一ヵ所に固まり、鷹が捕まえたボールを身体で四方を隠し覆う目隠し(かべ)とする。

 ――そして、誰に渡ったのか、ボールの行方を見せずに、四方からそれぞれゴールを目指して駆け上がる。

 

「どこだ、ボール……!?」

 

 まさか……このトリックプレーは、ハチの巣を突いたように広がる――『殺人蜂(キラーホーネット)』!!

 

「うおおおお!? 誰だァァ、誰が持ってる!?」

 

 常識で考えれば、この大事な場面でボールを託されるのはエース・大和猛に決まっている。

 だが――帝黒アレキサンダーズは、全員がエース。全員がゴールを狙えるだけの実力がある。

 その一瞬の逡巡――0.1秒の迷いに抜き去る。

 

「大和猛――っ!?」

「おっといかせへんで、進清十郎!」

「お前の相手はひとりじゃ無理やけど、二人がかりながら!」

 

 平良呉二と安芸礼介が挟み撃つ息の合った連携で、高校最速の守護神を押さえる。

 東京オールスターズは、大阪のオールスターよりも全体的にパワーがあるが、スピードでは負けている。5秒の壁を切れないものはこの速攻に追いつけないでいた。

 

 まさしくこれは、大坂夏の陣で日本一の将兵と謳われた男が、多数の影武者を引き連れて東軍の本陣に切り込んだ特攻のよう。

 

「これ以上行かせるか!」

 

 筧駿が、大和猛の前に立つ――が、動けなかった。

 

 それは見えているのに反応できない、凄まじく滑らかな走り。

 カットステップとクロスステップのみ。ただひとつひとつのステップワークの(クオリティ)が高すぎで、その繋ぎがあまりに流麗(スムーズ)

 そして、そのスピードは光速の4秒2で行われる。

 基本に忠実。洗練された超正統派。

 

 バカな……っ!?

 筧駿から後続の葉柱ルイさえ瞬く間に置いてけぼりにされた。誰も反応できずに抜かれる。

 それは、かつて筧がアメリカで対戦した時のより、倍は速く見える。

 

 ――そして、ライバルと邂逅する。

 

 

(―――ッくッ!!)

 

 脚も限界だ……

 体も息がうまくできていない……

 筋肉がガチガチに固まってきている……

 

 ……フィールドで……ここまで苦しんだのは、久しぶり……いや、初めてだ……

 

 一歩一歩ステップを切るたびに悲鳴を上げる。

 全身が針金に縛られたようで、今にも走るのを止めて膝を屈しそうになる。

 ――だが、その顔には満面の笑みがある!!

 

 無我夢中となるまで追い詰められたからこそ、限界を超えた走りを、見せられるのか。

 

 ――村正、君は強い!!

 

 試合も終盤、これがラストプレイ。

 息も上がって、脚も震える。

 なのに、身体の奥が熱くなってしょうがない。

 0.1秒でいいからこのライバルの反応より先に動け、と心臓がポンプする

 

 

 ――だから、思う。君がいたから俺は強くなれた。ありがとう、村正!!

 

 

 相手に圧倒されるのは、弱さがあるから。

 だがそれは同時に相手を認める強さだ。

 それが、敵となる者がいない日本という環境で、大和猛が育めなかったもの。

 

 強大な敵に立ち向かおうとするとき、人は限界を超えようとする。そのぶつかる力は遥かに強大。

 

 このクロスゲームでしのぎを削り合うミックスアップ。

 ライバルと対決するたびに成長する実感がある。

 

「来い、猛……俺達の勝負に退路などないッ!!」

 

 まだ3mの距離があるが、あと一歩で危険区域――長門村正の制空圏に突入する。

 深く練り込まれた超集中と、剥き出しにされた野生の直感。何人ものエースを、あの『黒豹(パンサー)』さえ仕留めてきたエースキラー。その激しく燃え上がる眼光に射抜かれて、武者震い(みぶるい)を禁じ得ない。

 

「ああ、村正。俺も、一歩も退かん……!!!」

 

 そして、この最後の最後のプレイで見せるのは、大和猛の120%の全力疾駆(オーバーラン)――

 

 疾走へ釘刺すような片手(スピア)タックルーー

 ――右へ躱す。

 逃がさず反応――。

 ――左へ行くと見せて右。

 切り返し(フェイント)に惑わされず――。

 ――腕を突き出す。

 手刀で弾き逸らす――。

 

 抜こうとするが、抜けない。

 捕まえようとするが、捕まらない。

 刹那に交わされる幾度の攻防。

 付かず離れず、火花を散らす様に会場の全ての目を奪い、ずっと続くかに思わせた。

 それほどに両雄は拮抗していたのだ。

 

 だが、決着は、訪れた。

 

 ――回転で抜きにかかる。

 仰向けに倒れ掛かりながらの後退――。

 

 ここだ!

 エイリアンズ戦、パトリック・スペンサーを止めた、後ろ方向への『縮地』。この重力を味方につけた後方への超速の重心移動でもって、己よりも速い相手を仕留めた。

 ――だが、そのバック走は、重心が後ろに大きく傾いている。

 

 ――『帝王の突撃(シーザーズチャージ)』!!!

 

 『長門村正を倒すのなら、このタイミングだ』と重心の見切りを教授してくれた赤羽氏が提示した機が今まさに訪れた。

 そう、抜くのではない、倒す。

 それこそが大和猛の組み立てた長門村正の攻略。

 光速を超える一歩で、全身全霊全力で当たりに行く。

 

 

「長門君が、倒された……!?」

 

 

 セナは驚愕した。

 あのどんな相手にも当たっても背中を地面につける青天を食らうことがなかったチームメイトが、倒された。

 

「いや、まだ終わっちゃいねぇ……!」

 

 受け身を決めて、0.1秒で立て直す長門。そして、即座に食らいつく。

 ――たが、その指先が、残像の背中を舐めるように、空振る。

 

「おおおおおおお――ッ!!」

 

 長門村正よりも、大和猛の方が、速い。一度でも縦に抜かされてしまえば、追いつくことは叶わない。

 長門が伸ばした手の指間に見える大和の背中が小さく、遠くへと突き放されていく――

 

 

『タッチダーーーーーゥン!!!』

 

 

 ~~~

 

 

 18-19。

 東京地区と大阪地区のベストイレブン同士の親善試合は、西の勝ちで終幕となった。

 

「……一点差。キック一本3点でひっくり返ってたじゃねぇか。俺が前半のキックを決めてりゃ……畜……生……畜生ォオォオオ!!」

 

 帝黒学園を見返す――

 如何にキックが重要かということを思い知らせる――

 この親善試合で人一倍に意気込んでいた佐々木コータローが失態を振り返っては堪えようのない叫びをあげる。

 そこへ声をかけるのは、かつてのチームメイト。

 

「ああ、キック一本の差だった。今日の試合で、キックが重要ではないという者はいない」

 

 そう背中を向け合った会話で静かに告げて、これ以上赤羽は何も言うことはなく振り向かずに去っていく。

 

 畜生……

 もっともっと究極スマートに磨き上げて、来年、今度は盤戸スパイダーズで全国大会決勝で勝ってみせる……!

 キックゲームでよ!!

 

 

 そして――

 

「……っ」

 

 最後、捕えることのできなかったその手をフィールドへ打ち付けたまま動けないでいる長門。

 勝ちたかった。

 本気で、全力で勝ちにいった。

 だが、勝てなかった。勝たせることができなかった。

 

「俺の勝ちだ」

 

 そんな敗者(ながと)の前に、勝者(やまと)は立ち、言う。

 

「だが、俺達の百一戦目は、全国大会決勝(クリスマスボウル)だと約束した。

 ――だから、その舞台まで勝敗は預けよう。不戦敗にしたくないなら、勝ちあがってこい、村正」

 

 ……ああ、絶対に、勝ち逃げなんてさせない。頂上で待っていろ、猛……!!


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