悪魔の妖刀   作:背番号88

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28話

 長門君は、泥門でも皆とは一味違うトレーニングをする。

 

 高山環境に近しくするためのマスクトレーニング。だけど、長門君は口だけでなく目も覆うことがある。

 目隠しをして練習する長門君にその理由を尋ねてみると、

 

『人間は目を閉じていても、ある程度の感覚把握が可能だ。いわゆる心眼だとか言われる肌感覚ってやつだ。こうして、人間が最も情報取得する視覚を閉ざして、その微弱な信号を感じ取るセンサーを鋭く研ぐ。ぶっちゃけて言えば、“勘”を鍛えるためのトレーニングで、それに己の動作を自覚できる』

 

 NASA戦の前から始めて、今も続けている階段昇降と同じ。

 長門君がする目隠しも暗中模索で動くために、普段は大して考えない情報すらイメージ処理しなければならないし、常に現状体勢を思い描けなければ転んでしまう。

 

『ま、目隠し(これ)は慣れないうちはおすすめしない。怪我をするからな』

 

 長門君はそこで僅かに上に顔を上げる。アイマスクをしたままだけど、遠く高い空の果てを見据えるように。

 

『力だけで勝てるのは小学生くらいまでだ。上に行けば行くほど自分よりパワーもスピードもある奴が出てくる。そんな体力や筋力に勝る相手に勝とうと思うのなら、制御する性能が重要になってくる。

 たとえば、空手を一通り習った人間が、決められた型通りに動けるだけでは一人前とは言い難い。自分で自分の思うように動ける、もっと言うなら型に嵌らない自己の精神を会得できて初めて一人前を名乗れると俺は思う。武道とはそれを得るための道として型を倣う。だから、達した者に型はないし、たとえどの道でも達観した精神さえあれば一流なりえるだろうな』

 

 

 ~~~

 

 

 本庄鷹。

 彼は最初からアメリカンフットボール、もしくはタッチフットをしていたわけではない。

 元プロ野球選手である本庄勝からの野球の英才指導を受け、同年代に対等に渡り合えると思える存在がいなくなって、アメリカンフットボールへ転向した。

 そして、大和猛と同様に、一年生にして入部一日で帝黒の一軍入りを果たした。

 日本一の跳躍力という身体能力を買われてスカウトはされただろうが、しかしその時の彼の実績があるのは野球であって、アメフトではない。本場アメリカでノートルダム大のエースとして揉まれていた大和ほどスカウト陣から期待はされてなかったはずだ。まずはじっくり一年、帝黒学園でアメフトの基礎を学ばせて育てると考えていたはずだ。だが、本庄鷹はその才能と、“野球”という一つの道を修めた者として、型に囚われない達人的な感性を既に得ていた……

 

泥門(うち)でも、野球から転向したキャッチの達人がいるが……)

 

 才能(モノ)が違う。

 ヒル魔先輩が、部室に置いてあるアメフト月刊誌にわざわざ(姉崎先輩にやらせて)添削(切り抜き)している理由がわかる。

 いずれはぶつかり合わなければならない相手だが、この情報は、重い。モン太が、偉大なるフィールドプレイヤー本庄勝に憧れている。それだけにこれは重い。知るだけで押し潰されてしまいかねない。

 雷門太郎が、東京地区ベストレシーバーに選出されなかったのは幸運と見るべきか。

 

 それだけ、本庄鷹は、こちらの二強(ベスト)レシーバーを寄せ付けなかった。

 

 あれから試合は、帝黒アレキサンダーズがフィールドを支配している。

 

『こ、これは……赤羽君! 光速のアイシールドこと小早川セナ君をも上回る超速スピードでいとも簡単に止めてしまったァァー!?』

 

 地上(ラン)は、“隼”が鋭く眼を光らせる。

 赤羽の『ランフォース』。作戦(トリック)を駆使し全体の試合の流れを引き寄せる戦略とは分野が異なるも、赤羽隼人のワンプレイごとの戦術的なアメフトIQはヒル魔先輩よりも上だ。こちらの走者の行動を瞬時に予測し、そして、選りすぐりのエリートが集った帝黒選手を指揮してそれを袋の小路へと誘導してしまえる。どんなに足が速かろうが通るルートを把握していれば止められないわけがない。

 

 そして、空中(パス)は“鷹”が誰よりも高く舞う。

 

『『エレベストパス』こと桜庭春人君からパスを許さない! 鳥人、本庄鷹――!!』

 

 桜庭春人よりも身長がない、しかし桜庭春人よりも高い到達点。

 この空を歩く鷹が目を光らせている限り、長いパスはまず通らないだろう。

 

『大阪地区オールスター、関東の東京地区オールスターに格の違いを見せつけるように圧倒しています……!!』

 

 向こうも最初は手を抜いていたわけではない。

 火が点いたのだ。これまで敵無しで不敗を貫いてきた帝黒がこちらを敵と見なした。

 

 『ランフォース』ではタイトエンドとしてリードブロック等のサポートに入りたいが、そうなると必ず即座に長門には大和が邪魔しに来て、その仕事をさせてもらえない。

 鷹もキャッチにはこだわらず、こちらの気配を察知するやボールを遠くへ弾く。それでインターセプトは防げているが、確実に東京オールスターの攻撃を潰していく。

 

 頂点の中でも更に突出した三羽烏にして、漆黒のユニフォームを纏う三本足の八咫烏。本庄鷹、赤羽隼人、大和猛は、大阪地区大会で一度たりとも抜かされたことがない最終防衛線(セーフティ)は、帝黒アレキサンダーズを勝利へと導く。

 

 長門も一対一では互角に渡り合う自信はあるが、超人クラスのプレイヤー三人全員の対応までする余裕はない。

 現状を打破するためにもどうにか風穴を開けたいが、

 

「セナ、赤羽の『ランフォース』を攻略するのは無理そうか?」

 

「いや、その……走るルートがバレてても、赤羽さんが先回りする前に超々スピードでワープっぽく抜けないかな~なんて、思ったり思わなかったりして……」

 

「セナ……お前、泥門じゃいつもそんなことを試合中にしてるのか?」

 

「あ゛ははは、そそそうだよね無理だよね!」

 

 兄貴分陸の呆れた反応にセナが焦って頭を掻く。

 

「ま、物理的にありえない話であるが、そのくらい賭けに出ないと向こうの守備陣は抜けない」

 

 せめて長門以外にもうひとり、セナと陸の一流ランナーの俊足に追走でき、かつ帝黒の壁を破れるリードブロッカーがつければ、迷宮を打ち破れるかもしれない。

 

(これに最もうってつけなのが、進清十郎……パワー、スピード、そして経験も備えたあの人なら赤羽隼人が敷く『ランフォース』を攻略できるはずだ)

 

 しかし、王城ホワイトナイツで、ラインバッカーの進清十郎が攻撃参加したという話は聞いたことがない。やろうと思えばできるとは予想しているが、それまでだ。

 

 となると、ランがダメなら、思いつくのはもう一つ。――パスになるわけだが、

 

「飛ぶ鳥を撃ち落とすのに定番なのは、銃。そして、こちらには銃撃の名手がいらっしゃるんだ」

 

 

 ~~~

 

 

「SET!!」

 

 東京オールスターズの陣形が、変わる。

 

(リズムを、変えてきたか)

 

 ランニングバックの甲斐谷陸とタイトエンドの長門村正が前に出て、ワイドレシーバーの桜庭春人と鉄馬丈に並ぶ。パスキャッチ要員を四人配置して、的をひとつに絞らせないフォーメーションは、『ショットガン』

 

 西部ワイルドガンマンズの得意とした戦術で、東京地区ナンバーワンクォーターバック・キッドの『神速の早撃ち』を活かせる陣形だ。

 投手潰し(ブリッツ)を許さぬ0.2秒を切るクイックドロウの発射台。そして、ヒル魔妖一をも上回る計算速度の持ち主であるキッドは、四人のレシーバーの位置取りをあまさず把握し、抜けた穴を正確無比に射抜く、判断力とコントロールに長けている。

 相手のマークを外せば、必ず見つけてくれる。

 

「フー。東京はパスでくるか」

「どうやら、そうみたいだね、赤羽氏」

 

 アイシールド21……小早川セナに勝負を挑ませるも帝黒に敵わ(ぬけ)ないと判断して、パス中心の陣形に切り替えた。

 その迅速な判断は間違っていない。こちらに本気になった本庄鷹がいなければ、だが。

 

「大和、ここは俺がやる」

 

 誰の、とは明言しないが、鷹が見定める相手は決まっている。

 目の色を変えた鷹は既に、東京ベストレシーバーとの勝負を制し、格付けをした。この試合で、己の勝負ができると見込んでいるのはやはり一人。

 個人的にこのマッチアップを譲りたくない大和だが、チームメイトのモチベーションに関わる。

 あまり鷹を夢中にさせないでくれよ、と目を細めた一瞥を、向こうの幼馴染に送り、ポジションにつく。

 

 

「――HUT!」

 

 

 センター・栗田から、司令塔のキッドへボールが渡る。

 すぐさま帝黒の守備も動く。

 

 アレキサンダーズは、鷹、赤羽、大和だけのチームではない。選手全員がどこへいってもエースとして通用するオールスター。

 

『出たァア! 織男の『パンチングブローック』!』

 

 発進した『人間重機関車』鉄馬丈の前を遮るのは、アレキサンダーズの背番号19。帝黒学園の三年選手で、元沖縄高ボクサーズ主将の『寡黙な拳闘士』渡嘉敷織男。通称オリオン。

 

 腕をたたみ、肘を脇につけた構えから繰り出す拳打は、相手の胸に強烈な一撃を加えてバランスを崩す。原理は『粉砕(ジバー)ヒット』とほぼ同じだが、こちらは力のタメが(はや)い。

 プロボクサーを親に持つ渡嘉敷の突きは、全身運動を用いて体当たりの威力を拳一点に絞り込む長門村正のとは性質が異なり、上半身、特に背筋をうまく利用して放っている。

 球技であり格闘技であるこのアメリカンフットボールで、渡嘉敷は何人もの相手選手を沈めてきた。

 その渡嘉敷をして、この東京屈指のパワータイプレシーバーのアイアンボディは、鉛でも打ったかのような手応えだった。

 

「―――!」

 

 この西部ワイルドガンマンズの十八番であった『ショットガン』戦法を崩すには、キッドと鉄馬丈のホットラインを断つのが定石。『ブリッツ』が無理な速さで投球するキッドとは違い、鉄馬は『バンプ』を躱さない。だが、鋼鉄の機関車(アイアンホース)が脱線事故を起こしたのは地区大会でも一度限り。

 そして、鉄馬丈は絶対順守の命令を破れさせたあの敗北を忘れない。

 

『おおーーっ! 織男君の『パンチングブロック』にも止まらないぞーーっ!!』

 

 隙の少ない拳突きは迅速な連打を可能とする。糸を引くような軌道を見せる渡嘉敷の追撃の二打目(ワン・ツー)。これを跳ね除ける『人間重機関車』。

 

「なに……っ!」

 

 寡黙な強打者が、無言実行の鉄人に目を瞠る。

 そして、鉄馬は渡嘉敷を強引に押し通る。帝黒の一軍は全員が40ヤード走5秒の壁を切るスプリンター。当然、渡嘉敷は40ヤード走5秒0の鉄馬より速いが、すぐには追いつけない。マークが外れた。独走を許した鉄馬の走りが、帝黒の守備網を広げる――

 

 そして、逆サイドでもうひとりのパスターゲットがノーマークになっていた。

 

 二枚のパスターゲットが敵陣に躍り出る。この状況で、クォーターバックはキッド。相手を見切ってから後出しでも間に合わせる早撃ち、そして、相手に見切らせない二丁拳銃。泥門戦の試合記録を見たが、その神算の頭脳は侮れるものではない。

 

(この場面においても揺るぎのない目……ここまでリズムが読めない相手だとは驚きだ)

 

 選択は二択だが、読み切れない。

 試合前に集めた多量のデータから観察し、アイシールド21・セナの光速の走りを読み切り、迷路のような陣形で袋小路に追いやってきた“隼”の眼をもってしても、キッドのパスは読めなかった。

 

 そして、銃弾(バレットパス)が投げられる。

 

 このパスに、帝黒の守備は反応が遅れる。

 キッドが狙った的は、鉄馬ではなく、もう一枚のレシーバー――『妖刀』長門村正。

 

 

「だけど、鷹はそれでも振り切れない」

 

 

 帝黒と試合したチームは全て思い知るだろう。

 この“鷹”がいるアレキサンダーズと空中戦に挑むという行為がいかに愚かなのを。

 

 勝負だ、長門村正……!

 迫る鷹。

 これに長門、超速のカットバックで切り返し、抜き去ろうとする。

 だが、鷹は距離を離さない。追い縋り、詰めてくる。

 

(試合開始直後とは全く違う集中力だ!)

 

 こちらの一挙一動を見逃さない。許さない。

 開眼した“鷹”の重圧――これを振り切る跳躍。

 

「高ぇええええ!」

 

 クォーターバックから放たれたパスをキャッチするにはもっと前に行かなければ届かない、そう思われた距離差を覆す、『エレベストパス』をも上回る極限の高さ。片腕を伸ばしてボールを捕まえる長門のスーパープレイ、ワンハンドキャッチ。

 

 キッドはそれを思い知っている。

 今は味方だが、敵として対峙した泥門戦でされた、こちらの予測を超えるプレイは今でも脳裏に焼き付いている。だからこれは届く。投じられたそのパスコースは、長門村正の最高打点にストライクする完璧なコントロールだった。

 

 

「そう――君ならそこからでも届くとわかっている」

 

 

 そのプレイは、予測済み。

 ボールに長門の手は、届く。

 

 さて、どうする。

 この距離の差、体勢の差は、ただでさえ自分と競り合うことのできる長門村正がさらに彼自身の限界点を超える先へ手を伸ばしたことで結実した差だ。そして、これはいつも練習相手を頼む大和よりも高く、険しい。

 

 たかがパス一回じゃないか。

 通してやれ。

 

 普通ならそう考える。

 だが、本庄鷹は譲歩しない。

 

『キャッチの辞書に“捕れっこない”はないんだ。あるのは“捕れな()()()”だけ』

 

 幼き日、守備練習のノックに付き合った父・本庄勝は叩き込んだ。

 

『ボールを()()な。死の果てまで。

 そうすれば、鷹……お前は俺のように、空を歩ける……!!』

 

 キャッチの頂点・本庄選手の息子、生まれながらの優位(アドバンテージ)を背負ったそのプライドが、頂点を塗り替える。

 

 ワンハンドキャッチを狙う長門に、鷹もまた衝突覚悟で飛び掛かり片腕を伸ばす。位置取りからして鷹は飛んでくるボールに対して後ろ向きの体勢。しかしそれでいて、“背中(バック)”の眼はボールを捉え、その右手はボールを確実に捕らえる。

 背面片手キャッチ(ワンハンド・バックファイア)――!

 

(まったく、そっくりだその目つき)

 

 二人の右手が、がっちりと噛み合うようにひとつのボールを奪い(とり)合う。そして、二人の身体はクラッシュする。体格として劣る鷹だが、競り合いの最中にもボールの行方は逃さない。死の果てまで――

 

(練習だろうが全力(MAX)真剣勝負を挑んで(ぶつかって)くるキャッチ馬鹿(らいもんたろう)とな!)

 

 長門村正はそんな死ぬ気で、キャッチに命を賭ける男を知る。

 ボールを捕らえ、更に肘を捩り入れて手首を巻き込む。ボール回しの高等テクニック『ストリッピング』の要領で、ボールから鷲掴みにする鷹の手を引き剥がす。

 

「鷹からボールを獲った……!?」

「いいや、まだだ! 鷹はまだ許さない!」

 

 “鷹”の鉤爪(ゆびさき)は、ボールの縫い目の角を引っ掛けていた。長門の手力はそれを強引に外したが、手の内でボールが弾む。掴み取りされた魚のようにもがくボール。このままでは勢いを殺し切れずにキャッチは失敗してしまう。

 

「引き分けか――だが、俺はチームを勝たせる!」

 

 遠心力を味方に付けるように腰を捻り、腕を振り回し、ボールを斜め後方にスルーする。

 

 

「――頼んだ、セナ!」

 

 

 乱戦にもつれ込んだ空中で、咄嗟にバックトスに変更。

 長門村正は、ボールの動きを捕らえる背中(バック)の眼は持たないが、それでも心眼が全速で駆け込んでくる味方を捉えていた。

 

 普通ならば、キャッチ勝負に割り込める距離ではない。セナの脚を以てしても遠すぎる。

 しかし、キャッチに入る前に長門は一度切り返している。そのタイムロスが光速のフォローを間に合わせた。

 

 さながらサッカーのポストプレイ、或いは野球のクラブトスのように進行方向先へ落とされたボールを、胸で抱き留めてキャッチするアイシールド21。

 そして、赤羽の支配圏が及ばぬうちに速攻で切り込む。

 

(長門君が作ったチャンス! 絶対に逃さない……!)

 

 赤羽隼人は、鉄馬丈が走り込む中央密集地帯へ突っ込んでおり、周囲の“壁”に邪魔されてしまっていて、回り込めない。

 『ショットガン』で、アイシールド21のランへの警戒レベルを下げていた。

 本庄鷹も長門村正を相手して、他に気を回せる余裕などない。

 

 そして、このフィールドで、小早川セナのスピードに追いつける帝黒アレキサンダーズの選手はいない。

 

 ――ひとりを除いて。

 

 

 ~~~

 

 

 エイリアンズ戦で、あの自分よりも速い『黒豹(パンサー)』を倒してきた。

 であるならば、俺も負けるわけにはいかない。

 村正……君の最大のライバルであることをここで証明する――!

 

 

 ~~~

 

 

 来る……!

 進さんのように速く、長門君のように高い、本物の時代最強ランナー(アイシールド21)

 巨人の如き帝王の威圧感が襲う。背後からの重圧(ビハインドプレッシャー)に、防具下が鳥肌立つ。

 

(でも、これでまでのプレイ……僕の方が速い!)

 

 距離がある。あそこまで離れているのなら、このまま逃げ切ることも不可能じゃない。自由に走路が開かれていれば、誰にも捕まらない。

 パワーもテクニックも格が違う相手だけど、スピードだけは負けられない!

 

 そう、これは理屈じゃ追いつけるはずがなかった。

 

「凄いな……セナ君は、速い。()()()俺よりも速かった」

 

 光速の世界。

 そこに踏み込んできた相手はいなかった。フィールドを只管に独走してきた。

 

 その背中に、手が届く。

 

 

 猛……!

 競り合った鷹ともつれ込みながら長門は、視界から仲間(セナ)の走りに割って入ってきたライバル(ヤマト)の背中を目撃する。

 そう、縦に抜かれれば誰も追い縋れない小早川セナの光速に、()()()()()()その突撃を、長門村正は確かに見た。

 あの速さ、信じがたいが比較対象(セナ)と並走できることから明らか。

 

(二人のスピードは、同じ。だが、猛には――)

 

 人間の限界値40ヤード走4秒2。

 ふざけたことに、己のライバルは、完全に隙のない怪物(パーフェクトプレイヤー)であった。

 

「――でも決まってる。勝つのは俺だ!!」

 

 小細工はない。真っ向勝負で、敵を打ち倒す。

 

 親を除いて本気で競い合える相手がいなかった孤独な本庄鷹とは違う。

 対等に渡り合える好敵手(ライバル)の存在があった。その経験は己よりも格上の存在がいた本場にいた頃でも色褪せることのないものだった。

 それが、大和猛を強くさせた。

 

 

 僕の――たった一つの得意技。

 ずっとパシらされて鍛えてきたすばしっこさ。

 それだけが取り柄だったのに。

 その“スピード”すら超えられる――これが、本物のアイシールド21……!

 

 セナに追いつき、そこから長門と同じ、筋力任せの強引な加速と長身の身体を倒し込むダイブ――この大和猛の大きな一歩は、光速を追い抜く超光速に達する。

 

『止めたァアアアアア!! 大和猛、東京最強ランナー・小早川セナを一対一で降すー!!』

 

 

 ~~~

 

 

 止められはしたが、セナの疾走で大きく前進することができた。

 しかしそこから帝黒の牙城は崩れることなく、東京オールスターズの攻撃を阻む。

 

 そして、最後の攻撃権で、タッチダウンを諦め、キックゲームに臨む。

 

「やらせるかっ!」

 

 迫る『帝王の突撃(シーザーズ・チャージ)』。

 固定されたボールを蹴りに行くキッカーが、敵のチャージを躱すことはできない。壁役の長門が受けて立ち、大和を押し止める。

 

『猛を足止めできるのは、3秒だ』

 

 ボールをセットする前に、長門が言った。

 だが、その3秒は死ぬ気で稼ぐとも。

 

 絶対に倒れず高身長なパワーボディと人間の最高速のスピード。

 阻まれても届いてくるプレッシャーは、キックの精度を微妙に狂わせてくる。

 

 だけど、そんな最強の連中を見返すために、佐々木コータローはキックを蹴り込んできた。これを跳ね返せずに何だというのか!

 

絶対(ぜって)ェ決める! 俺のキックで帝黒に風穴を開けてやる!)

 

 成功率99%を誇るキックの体勢(フォーム)に、ブレはない。

 だが、最後の一歩を踏み込む直前に、それが来た。

 

「何ィイイイイ!!」

 

 ボールをスナップした、東京地区最重量戦士・栗田良寛。絶対に崩れぬ壁だと思っていた中央の要が、吹っ飛ばされた。

 

「フー――残念だが、コータロー、キックは決めさせない」

 

 腕力も体重も明らかに押し合いの要素で負けているはずの栗田を押しのけて、接近してくるのはかつてのチームメイト。赤羽隼人。

 これに佐々木コータローの精神は激しく揺さぶられた。

 

「クソおおおおお!」

 

 蹴り飛ばされたボールが、コースを遮った手に弾かれて、キックは外れた。

 

 東京オールスターズから、帝黒アレキサンダーズに攻撃権が移る。

 

 

 ~~~

 

 

『さあ、ついに登場です! 帝黒アレキサンダーズの紅一点にして、エース投手(クォーターバック)、小泉花梨――!!』

 

 攻守入替して、帝黒ベンチからフィールドに歓声に出迎えられて現れたのは、テンパり気味な選手だった。

 長髪を三つ編みにまとめたその背番号6は“手弱女”という単語がぴたりと当て嵌まる。印象的にとてもアメフトをやるような選手には見えない。というか、紛れもなく女性である。

 これに長門はつい馴染みの大和へこの他所のチーム事情に対して口をはさんでしまう。

 

「……泥門(こちら)虚弱児(セナ)を引き入れた手前言い難いんだが、お前よく本気でアメフト選手をやらせる気になったな」

 

「ははっ! 相手のことまで気にかけるとは村正も心配性だな。けど、心配ないさ、花梨なら。――なにせ、あの鷹が力を見込んでスカウトした逸材なんだからね……!」

 

 大和はそう太鼓判を押すのだが、この幼馴染が割と人の話を聞かずに我が道を行く性格であるのを知る長門としてはあまり保証にしたくはないところである。

 

 それに、こちらには東京地区で最優秀選手に選ばれた、高校最強の守護神がいる。

 

 

「ぅぅぅぅ――! 本番って、何べん出ても怖いわぁ……」

 

「あー、花梨、覚えとるか? 東京守備(ディフェンス)で気ィつけんとあかん奴」

 

 緊張する花梨へ、帝黒の主将・平良はおふざけなしの目で忠告する。

 

「進清十郎。高校最速のラインバッカーでごっつうえげつない“(スピア)”で投手(クォーターバック)……つまり花梨、お前のことを潰しに突っ込んで来よる。40ヤード走4秒3にベンチプレス140kgやで!? ありえへん! あのパーフェクトプレイヤーの怪物は鷹に赤羽でも難しい。真っ向から対抗できるんは帝黒一軍でも大和しかおらんわ」

 

 先輩からのわりとマジな忠告に、花梨はちらと東京守備の中核にいる進清十郎を遠目で窺い……あの一切手を抜いてくれなさそうな目に、ビクゥッと震えが走る。ついぺこぺこと頭を何度も下げてしまう。

 女性であることもさることながら、闘争心のない姿勢は実にアメフト選手とは思えない。

 何だかシンパシーを感じ取ったセナは心配してしまう。

 

「大丈夫かな、長門君。進さんの『スピアタックル』をされたらひとたまりもなそう……親善試合で怪我人なんか出ちゃったら大変なんじゃ……」

 

「ヒル魔先輩だったら、容赦なく腕を折りに行かせそうだが。でも、その実力は確かなのだろう。元から日本人が美徳とする謙虚さと言うのに乏しくて、それをさらにアメリカに置き忘れている猛だが、あいつは結構シビアな実力主義だ。その猛が認めている。少なくともこの親善試合に出ているということは、大阪地区を勝ち抜いた帝黒アレキサンダーズの一軍として認められていることは違いない」

 

 

 そして、帝黒の攻撃が行われる。

 最初に仕掛けたのは、一軍投手の力を知らしめるような、また先程の『ショットガン』をやりかえすような、パスプレイ。

 

「ボールが止まってるみたく綺麗に回って……」

 

 11人中8人が鉄壁の堅守を誇る王城ホワイトナイツの選手で占める東京オールスターズの守備陣の頭上を、時間が止まったかのように、緩やかに、滑らかに弧を描く投球。

 繊細な指先の感覚を持つ小泉花梨の究極に正確で、究極に柔らかいパス――『花弁の(フローラル)シュート』。

 

 本庄鷹と言うレシーバーを擁する帝黒アレキサンダーズに変わった戦術は必要ない。ただ“捕り易さ”こそが最強のホットラインにする。

 

 

『帝黒、ロングパス成功! 連続攻撃権獲得(ファーストダウン)――!!』

 

 

 帝黒エースレシーバー・本庄鷹が、背面片手捕り(スーパープレイ)をしてみせる。

 普通なら一か八かの危険度の大きいプレイだが、あの捕り易い球ならば邪魔されぬ限り万が一にもキャッチミスはない。そして、マークについた東京コーナバック・井口広之では、本庄鷹を邪魔することはできない。『ワンハンド・バックファイア』の必要もない程に実力差は圧倒的だ。

 だから、これは明らかな挑発(メッセージ)――ベンチにいる攻撃側選手(タイトエンド)である長門村正への。

 

 一度目の競り合いは油断を突かれてボールを弾かれてしまった。

 二度目の競り合いでキャッチ勝負では互角にもつれ込んだが、アメリカンフットボールのプレイとしては上を行かれた。

 

 ここまで、負けっ放しにされたのは、生まれて初めての経験になる本庄二世は、戦意を剥き出しにし隠そうとはしなかった。

 

 

「カッ! こっちはまるで眼中にないってことかよ!」

 

 それが、守備に就いている葉柱ルイには気に食わなかった。

 負けて悔しい。負けっ放しなのは嫌だ。当然の感情だ。だが、こうして目の前にいるのに無視されているのは葉柱が舐められているということ。

 

 ぶっ潰してやる、帝黒最強コンビをよ……!!

 本庄鷹のキャッチは、この長い腕を伸ばしても届かない高みにある。だが、あそこの女は違う。女だろうがこのフィールドに出ている以上は関係ない。容赦なく潰す。

 

(投げる前に潰しちまえば、そこでおしまいだ!)

 

 ラインバッカー・葉柱が果敢に『電撃突撃』を仕掛ける。

 カメレオンの舌のように長い腕を伸ばし、投手の命である利き腕を狙う。

 その間には、ランニングバック・大和猛がいたがお構いなしに――

 

 

「取り決めていた通り、進清十郎以外、俺は止めないよ。いいね、花梨」

「は、はいぃ……」

 

 

 割って入れる位置にいた大和は庇わず、前に出る。

 そして、葉柱ルイの鞭のようにしならせた腕――『カメレオンの舌(ハント)』が何の障害に阻まれずに敵投手に襲いかかる。

 

 

 小泉花梨は、絵を描くのが趣味である。

 密かに(部内では公然のものになっているけど)同人漫画も描いていたりする。

 しかし、彼女の描く絵には、ひとつの欠点がある。

 それは、どんな場面(コマ)を切り取っても静止画になってしまうこと。彼女が描く背景、キャラクターは、勢いというのが死んでいる。

 なかなか、躍動感のある絵が描けない。

 その原因は、写真のように視たモノを見切れてしまう、小泉花梨のずば抜けた動体視力にあった。

 

 

「は……?」

 

 花弁を摘み取るはずだった捕食者の舌先は、ふわり、と躱される。

 

 強引な勧誘から流れで帝黒アレキサンダーズに入部して、しくしく泣きながらもとにかく避ける練習をたくさん積んだ。タックルされたらか弱い女性の身で、屈強な男性プレイヤーに敵うはずがない。

 だから、避ける。一切、触れさせない。

 

 『神速の早撃ち』で襲われる前に投げてきた東京ナンバーワンクォーターバック・キッド。

 これに対し、大阪ナンバーワンクォーターバック・小泉花梨は、襲われようが躱して投げる。

 大阪地区大会において、小泉花梨に触れた選手はおらず、当然、一度もサックを食らったことがない。

 

 

「猛が来るぞ――!!」

 

 

 葉柱を躱して投じられたトスは、前に出ていた大和へ渡る。

 

「好き勝手に独走させるかよ!」

 

 これに真っ先に反応したのは、ラインバッカー・筧駿。

 アメリカでの因縁。あの時、交わした約束をここで果たす。フェニックス中対ノートルダム大付属の試合では手が届かなかった完璧な疾走へ筧が迫る。

 ――その前に立ちはだかるリードブロッカー。

 

「フー。こちらも好き勝手はさせる気はないよ」

 

「邪魔だどけ!」

 

 その真紅は、停止を強制させる赤信号のよう。

 エースランナーの走路を確保せんとする赤羽隼人。これを瞬殺せんと0秒で間合いを押し潰しに行く筧のハンドテクニック。

 しかし、赤羽はタックルに行くその瞬間――踏み込むために一瞬だけ重心が後ろに下がるのを見逃しはしなかった。

 

「くっ!」

 

 長い腕で組みつかせずに押し倒すはずが、押し込まれる。またも、アイシールド21の突破を目前で許してしまう。

 

 

「ここで、止める大和猛!」

 

「一騎打ちだ、進清十郎!」

 

 

 進清十郎と大和猛。

 東京と大阪地区の最優秀選手が激突する。

 

 最大の好敵手(ムラマサ)をして“単独では抜けられない”と実力を認める高校最強のラインバッカー・進清十郎。

 これに大和が興味でないわけがない。今日の親善試合で是非とも戦ってみたかった相手だ。

 

 

 今日の親善試合、王城の司令塔・高見伊知郎より、“革命的な戦術(バリスタ)”は披露しないようにと言われている。

 だが、己自身が体得した技は別。

 全国大会決勝(クリスマスボウル)まで進めば必ず試合うことになるであろう相手。ならば試せる絶好の好機は逃さない。

 

 小早川セナ(アイシールド21)の疾い脚に、長門村正の屈強な身体を併せ持つ大和猛。春季大会においてパワーとスピードを役割分担した二人(タッグ)に押し込まれていたが、それをそのままに看過しておけるほど進清十郎は己に甘い性格ではない。

 

 

「見ておけ、セナ。手の付けられない努力する天才を――」

 

 

 ~~~

 

 

『『ロデオドライブ』の走法を知りたい』

 

 甲斐谷陸はこの言葉に、思わず聞き返してしまった。

 

 大阪オールスターズとの親善試合に向けての合同練習。

 そこで一緒に練習に付き合ってもらっていた進清十郎に呼び出され、そして、教えを()()()()

 

『『ロデオドライブ』でスピードに緩急をつけ、いざタックルに行くその瞬間のみ120%のスピードで当たれば、最高速度で上回る小早川セナを捕らえることができる』

 

 雲の上にいる超人が、格下の自分の技を会得したいという。

 

 もしも、片腕で襲えるだけの力がある進清十郎の『スピアタックル』に、自分の『ロデオドライブ』が合わさったら、それは――――きっと、子供でも分かる簡単な答えだ。

 槍の如き強力な片腕が、暴れ馬の急加速で懐に伸びてきて、ボールを直撃する。敵を確実に仕留める中央を貫く長い(スピア)三つ叉槍(トライデント)へ昇華されたそれは、究極のディフェンス――

 

 これこそ進清十郎が、己よりも速い相手(セナ)を倒すために構想した技であり、そのためにタックル直前の急加速をずっと磨き続けていた。

 あと一歩。

 『ロデオドライブ』の極意が加われば、すべては完成する!

 

 ―――

 

 ……そんなの教えられるわけない。王城はこの先の関東大会で当たるかもしれない相手だ。

 いやそれ以前に進さんは雲の上の人。何で格下の俺なんかに教わりに……!

 

 自分でもよくわからないものに衝き動かされて吠えた。問うた。どうして?

 何処までも純粋に高みを目指す超人は、これに簡潔に答えてくれた。

 

『走りの技術を学ぶためだ。お前の方が、技術力が高い』

 

 自分を高めることならば、誰であっても見込んだ相手ならば、教わることに何の躊躇はない。

 逆に進さんは、俺やセナが何を聞いても躊躇いもなく教えるだろう。

 

 まったく自分が情けなくなる。

 それに自分の間抜けさにも。

 

 進清十郎(このおとこ)のMAXの力が見てみたい……!

 そんな理由で自分の技の核を漏らしてしまったのだから。

 

 

 ~~~

 

 

 兄貴分の陸の言葉。それがなくてもチリチリとした感覚にセナは襲われた。

 おそらく……いやきっと、高校アメフト界で頂点に立つ二人の対決。無意識の瞬きを忘れて見入る。一瞬でさえ見逃さぬように。

 

 ――来る! これが……!!

 

 自分のよりもはるかに安定感のある走りで、自分と同じ光速領域(4秒2)のスピード。大和猛は、疑いようのない“アイシールド21”を名乗るに相応しい時代最強ランナー。

 衝突する刹那に三つのステップを激しく刻むランテクニックとボディバランスはセナには真似できない。

 

 しかし。

 セナが超えたいと思ってやまない背中は、この超スピードに惑わされない。

 マンツーマントレーニングで教わった。

 

 ランナーの脚や頭の動きに釣られるな。

 身体の中心線だけに集中しろ。

 相手より先に動くな。

 極限まで引き付けて――跳べ。

 

 躱す大和の脚を、捕える進の腕。

 相手が駆け抜けようとする方向へ、曲がりながら急加速する。

 

 左右に逃げ場はない三つ叉の矛(トライデント)――それが進清十郎の『トライデントタックル』……!!

 

 

「なんて……選手だ。村正以外に止められるつもりがなかった、『帝王の突撃』を……!」

 

 三叉槍が帝王を射止める。

 進清十郎は、大和猛の独走を阻止した。

 だが、倒れない。仕留めきれなかった。

 

「だが、それでも倒れるわけにはいかない! 勝つのは、俺だ!!」

 

 この男、完成した『トライデントタックル』ですら倒せず、それどころかこちらを押し切ろうとする。

 以前、小早川セナの質問に答えた通り。

 同じスピードで、体格とパワーの違う二人がいてどちらが厄介であるかという問いかけに何の迷いもなく当然の解答を口にした。

 大きく、力の強い相手だ。

 そして、こう付け加えた。

 初めから(まけ)ると思っているようでは、勝ち目などないとも。

 

 大和猛は、小早川セナに匹敵するスピードでありながら体格もパワーもあり、そして、“絶対に相手に勝つ”というメンタルがある。

 120%に加速してぶつかってもなお、不倒。大和猛は生半可なタックルでは止められない

 阻んだが、強引に2ヤードも押し切られて、やっと帝王は膝をついた。

 

 進清十郎でも完全に止めることが叶わない――

 これは東京地区に少なくない衝撃を与えた。メンバーの大半が王城ホワイトナイツであるだけに、チームのエースの苦闘の影響力は大きい。

 

 本庄鷹との空中戦に、東京地区ベストコーナバックは敵わない。

 三人のラインバッカーも、葉柱ルイは小泉花梨を捕まえられず、筧駿は赤羽隼人を倒せず、進清十郎は大和猛を止め切れない。

 そして、王城の守備は、帝黒の攻撃に圧倒される。

 

『ミコトくんの必殺プレー! 『超低空シャチホコキャッチ』!』

 

 背番号89。『低空を制する軽業師』、元鯱ゴールデンズのエースレシーバー三年生・佐野ミコトが柔軟な身体を逸らしながらの地面スレスレの飛びつきで、捕りづらい低空のボールを抑えてみせる。

 

「俺の走りを観客に魅せるには一番近いサイドライン際走らねーとね!」

 

 背番号33。『サイドライン際の魔術師』、元神龍寺ナーガのエースランナー三年生・天馬童次郎。あえて危険なサイドラインスレスレを走ることで片側しか敵が来ないのを逆手に取る。甲斐谷陸の『ロデオドライブ』走法に近い、軽やかな緩急のステップだけで抜き去って、ゴールラインを抜けた。

 

『タッチダーーーゥン! 東京地区対大阪地区の親善試合! 先制点を決めたのは、西のオールスターズだーー!!』

 

 その後のキックゲームでも、

 

「おっほっほっ、東のナンバーワンキッカーはなんか偉い荒れてらっしゃるけど、だめでんなあ。一流キッカーのスキルは、スマートさよりもどんなプレッシャーもなんっとも思わない図太さでして」

 

 背番号19。神経図太い皮肉屋キッカー・布袋福助。そのキック成功率は99%。

 ボーナスゲームを外させようとする東京オールスターズの守備だったが、布袋は図太いキックでボールをゴール枠内へと蹴り飛ばした。


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