てか、戦闘シーン書きたい。(多分初戦闘が演習になるんじゃないですかね)
査察によって、着任先が予想以上にとんでもないことになっていることが発覚してから早数日。
後々よくわからない勢力が動き出して、泊地の乗っ取り計画に巻き込まれやしないかとヒヤヒヤしながらも今は目先のことに集中しようと俺は、変わらずも提督業に努めていた。
(装備開発については順調……予想はしていたが、建造だけじゃなくこっちも影響を受けてるようだな)
作られる装備は案の定と言うべきか、未実装であるはずの海外産装備のオンパレードであり、粘りに粘って出た国産装備に関しては名前とレアリティが明らかに一致していない、異彩の輝きを眩しいぐらいに放っている始末だ。……こりゃあ、他の鎮守府やらと演習するする際にお披露目なんかしたら、何処で手に入れただの譲ってくれだの詰められるに違いない。
まあ、海外艦が大量に在籍している時点で何か言われるのは前々から覚悟済みだけどもね。
(言われたとしても互換性はあるのかわかっていないしな……そこら辺、可能であれば横須賀鎮守府に協力を仰ぐのもありだろうか)
配置換えなど起きていなければ、横須賀に居るのは先輩・後輩の関係であると同時に、此処に来るまでに受けた座学の講師と生徒という間柄にある提督だ。
何度か会話したこともあるが、確か初期の戦いの頃に艦娘たちの受け皿となっていたらしく、その経験を買われて鎮守府を任されたのだとか。ちなみに、初の女性提督であり、階級は特に昇進していなければ大佐であったはずだ。
正道の奴以外にコネクションを持つ相手としては申し分がなく、友好関係を築きつつ味方に引き込めれば、気にしている同名艦周りの問題解決のための糸口にきっとなってくれるだろう。
(一つでも問題が減るだけでこちらとしては万々歳なんだ。結果的に、その分リソースが浮いて他の問題も片付けやすくなるしな)
身内の問題は出来るだけさっさと片付けて、深海棲艦と戦いに専念したいものである。
そんな当たり前に近い事を思いながら俺は、一日の疲れを癒やそうと時間帯を指定して貸切状態にした入浴場の暖簾をくぐり、脱ぐものを全部脱ぎ捨てて誰もいない湯船の中へ身を深々と沈めた。
「ふぅ~……」
デスクワークによって痛めていた体の節々が暖められ、自然と気持ちよさを表す声が口より漏れる。
いやぁ、身を狭めずにお風呂に入れるっていいねぇ。誰の目も気にしないでのびのびと寛げるのもあって開放感が違うよ。
「――ふぅん、ニヤけるほどに気持ちが良いのね」
「………」
聞こえるはずのない誰かの声が耳に届いた瞬間、俺は瞬時にタオルを変身ヒーローよろしくスピーディーに腰へ巻いて浴場を出るフォームを取った。
しかし、いざ足を外に出した途端にがら空きだった腕をむずんと掴まれる。……男性ではない、明らかな女性のサイズの手だが掛かる圧が一般女性のそれではなかった。即ち、声から察するに―――
「何故、お前が居る……プリンツ・オイゲン」
振り向いたら終わりだという予感に従って目を瞑りつつ応対するは、ドイツもとい鉄血生まれの艦娘である銀髪に赤のメッシュが特徴的なプリンツ・オイゲン、その人であった。
「どうしてってそれは、寝てたらこんな時間で入浴時間に間に合わなかったからよ」
「だからって、平然と男風呂に突入してくるバカが居るかっ!!」
「――えっ、別に指揮官一人なんだから良いじゃない。貸切なんでしょ」
抵抗感がある様子を欠片も見せずに彼女は、このまま入り続ける気満々で答える。
「……なら、俺はもう出るから!」
「駄目よ、あんたも入るの。それに、まだ入りたてで身体も洗ってないの丸わかりよ」
掴んでいた腕を引き寄せるように引っ張ったオイゲンは、こちらの反応を楽しむのを目的に人差し指を口に含んだ。
途端に、アイスキャンディーにでも見立てているのかというくすぐったい感触が伝わり、連鎖的に段々と全身の力がへなへなと抜けていく。
「お、おい……」
「あらあら、腰がガクガクよ。弱いのかしら舐められるの」
挑発的な言葉に何か返す余裕もなく、気づけば俺は湯船へと腰を沈めて逆戻りしていた。
そこへしめたとばかりに彼女の腕が絡みつき、逃げられぬようガッチリとホールドされる。
「何時まで目を背けているのかしら?」
「いやだってお前、風呂に入ってきてるってことはアレだろ。タオル巻いてるかあるいは――」
「裸だって言いたいのかしら。……お生憎様、流石に着てきてるわよ水着ぐらい」
ははっ、そうだよな。でないと痴女かよって疑いたくもなる。……ったく、そうならそうと早く言えよ。
「―――」
安心しきって目を開き、彼女を見てコンマ数秒。
宣告通りに水着を着ているかと思いきや、白い布すら巻きつけてなくて彼女はそこに存在をしていた。
そして、騙されてやんのという表情が強烈に瞳の奥へと焼き付く。
「騙したなお前!?」
「だって普通、水着でお風呂になんて入らないでしょうが」
「――正論だけどさ! 此処は恥じらいを持って着ていて欲しかったわ!」
「ふふん、興奮しないの♪」
キレてるだけだっての。オメーが望んでいるような興奮の仕方なんざしてないわ!
「いいのよ、触りたいのなら触っても」
「……許可取る以前に自分から触らせようとするの、止めてくれないですかねぇ」
「嫌よ」
即答かよ。少しぐらいは躊躇いの態度ぐらい取ってくれたっていいじゃねえかよ。
つーか、どうせ襲われないと高を括っている感あるよなコイツ……もし此処で逆に強気に出たら一体どう出るんだろ。いきなりしおらしくなるとかあり得るのだろうか。
(待て待て、冷静になれ俺……加減を間違えば一発で憲兵呼ばれるようなことになるぞ)
なので、本人が許可を出している素振りを見せているからと言って真に受けていてはいけない。受け止めつつ、ギリギリのところでアウトラインを超えないようにしなければ……。
妥協めいた決断に迷いに迷った結果、俺は考えるに考え抜いた策を躊躇することなく実行に移す。
「わかったよ……お前がその気ならこっちだって本気を出そう」
「――えっ?」
「動くなよ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいって!!」
脅しとも受け取れる物言いにたじろぐ彼女。だが、そんな姿を無視して俺は拘束されていない右腕を動かすと、オイゲンの体に100%触れる気で差し伸ばした。
「――ッ!?」
……触れる肌と肌。華奢な体に重なった瞬間にばくばくと心臓の鼓動が信号として伝達された。解読するに、相手は物凄く混乱をしている!!
「――は、えっ?????」
それもそのはず、掌にたわわに実った果実を収めるかと思いきや、俺の腕はその向こうの背中の方に回されていた。傍から見れば、その体勢は胸に抱き寄せているとも捉えられるだろう。
「し、指揮官、あんた何やってるのよ……!?」
「なにって、お前を抱きしめているだけだが」
「う、ううぅぅぅ~……!!!」
耳を真っ赤にして呻く彼女は、自分から風呂を温めるかのように熱くなり、熱暴走気味に呂律が回らなくなった。
見たか、これぞ秘策中の秘策……拘束からの逆拘束とも言うべき封じ込め戦法だ。これなら胸元を直視することもなく、視界は肌色にもピンク色にも染まらない。
「……きゅうぅ」
「おっと?」
内心は実は初だったオイゲンがだらしなく寄りかかってきたと思えば、完全にダウンして気を失ってしまったようだ。仕方なしに俺は、彼女が持ってきても使っていなかったとされるバスタオルを急ぎ確保して、裸を極力見ないよう工夫をこらしながら包んでやると、己の身体を高速で清めた後に更衣室へ運び込んだ。
それからとりあえず、秘書艦であった祥鳳に連絡して彼女の分の着替えを見繕ってもらい、落ち着いた頃にその場を後にした。
***
「――ということがあったんだけどさ。関連した話をしてもいいか?」
「え、今の本題じゃなかったの?」
査察中に頼んでいた物資を届けてもらうついでに、再び正道に泊地へ立ち寄ってもらった俺は、自宅に遊びに来た友人をもてなすように部屋へと呼び込み、酒とつまみを喰らいながら軽い世間話のノリで最近あった出来事を報告していた。
なお、たった今語り終えたことは前フリに過ぎず、真に語りたいことについてはこれからであった。長ったらしくてすまんな。
「聞いていた通り、意図せず俺は艦娘と短い間だが混浴をしてしまったわけだが、直に触れてしまったなかでふと思ったんだよ」
「何にだ?」
「いや……ほらさ、うちの赤城を始めとした一部の連中ってさ、結構大胆なアプローチをしてくるんだよ」
「ああうん、そうだったな」
「――で、それが段々とエスカレートした場合、その――男女の仲になっちゃったらどうなるのかと」
「あー……」
いずれ男性提督が存在する場所では抱えることになるだろう問題に、正道はわからんでもないという反応を取った。
「そもそも、関係を結んじゃったとして法律では認められていない……禁断の愛ってことになるよな」
「禁止をしているわけでもなければ、許可を出しているわけでもないが……一応は艦娘に対して、人並みの権利を最低限保証する決まりにはなっているぞ」
最低限ねぇ……言い方的に、法整備はまだ始めたばかりってところか。
であれば、サンプルケースとして今のような事例は存在していないどころか、想定はまだされてないってわけになる。
「不味いんじゃねーか、これ」
仮に艦娘が人間の女性のように誰かを愛して子供を身籠れたのなら、その後の扱いやらは一体どうなるのか未知数である。
もっと詳細に言うと、生まれてくるのが普通の人間であるのか生まれながらの艦娘であるのかによっては、もう一波乱を呼ぶことに繋がりかねない。
「極めてデリケートな問題だ。後者なら、居るか知らんが妙な過激派が動き出す火種になっちまうぞ」
「……トチ狂って量産化計画だなんて進められたら大問題だな。倒されてしまっても代わりが居るから安心、だとか宣うやつが出てきたらこの国もいよいよ終わりだ」
防止の為には早急な権利まわりの追加整備が求められる。
また平行して、狂気の考えが正当化され支持を受けないように徹底した各拠点の戦線維持が必要となるだろう。
「戦線を拡大した場合に伴う提督の増員にも注意が必要かな。俺の同期では危険な趣味をしている奴はいなかったが、次もそうなるかは流石に保障が出来ない」
「そこにも予め策を巡らせておくべきか。……やれそうな事と言えば、お前の言う同期との交流を密にするといった相互的な監視体制の確立がベストなところだな」
「こちらの事情的になるべく避けたいところではあったけども、作戦中に嫌な話は聞きたくないからな。背に腹はかえられないってやつだ」
体制面における問題へのアプローチはこのぐらいで良いだろう。
――が、それはそれとして、根本的な問題である子供の処遇を如何様にすればよいのかを考える必要がある。
まあ、手っ取り早くチョメチョメするのは禁止と定めてしまえば表面上は問題の解決を図ったことにはなるのだけれども、それで事態が終息しないのが世の中の悪いところだ。
「法で厳禁と縛っても、ルールは破るものとしてひっそり盛っちゃうやつは間違いなく出るだろう」
「一番最悪なのは、そのタイミングで子供がどのような在り方であるのかが判明することだ。不祥事として揉み消すついでに利用するって輩が出ないとは言い切れない」
「やはり、前例がないのが問題になるな……変なタイミング作られる前に、いっその事許可された状況下でケースを作れれば良いんだが」
「それが出来たら苦労はしねえよ。何だ、調査のために『艦娘と結婚させてください』って頼み込むってか?」
真っ当な理由じゃねえことこの上ない。
仮に調査という部分を抜いたとしても、聞いた側は白目を剥くこと間違いなしである。それに最悪待っているのは提督やめろというお達しだ。早々にバッドエンドかよ。
「隠れて盛るのも駄目、堂々と許可を得ようとするのも駄目……だったら残る方法は何だ?」
「方法と言われてもな……指揮する立場の人間が明確な意思を持って『被疑者』のように行動を起こすのがアウトなら、後は『被害者』になる以外に―――」
「――それだッ!!」
突然大声を上げた正道は、まるで天啓を得たと言わんばかりにリアクションを取ると、こちらに指を差して意味不明なことを述べる。
「押して駄目なら引いてみなだ……つまり――」
「つまり?」
「……艦娘が『攻め』で、お前が『受け』になるんだよ!!」
「おいやめろ」
酷い例え方をされた挙句に、さらりとお前がやるんだよと宣告された俺は全力で抵抗の意思を示した。
問題を提議した言い出しっぺの法則? 知らんがな。
「されるがままになれってか!?」
「いやだって、提督業始めてまだ僅かなお前並みに艦娘から好感度を抱かれている奴他にいねえだろうし。ケースとしての観測のしやすさがな?」
「しやすいとかしにくいとかそういう問題じゃなくてな。……結局のところ、俺が彼女達にヤラれるのを黙ってみてるのか」
「うん」
「――即答するなよ!?」
理屈で言えば問題の拡大を最小限に抑える形で解決できる方法であるのだが、被害者たる立場に置かれた人間はきっと人として何か大切なものをその時失うことになる。
「失うって言っても童貞だけだろ」
「殴るぞお前」
「殴ってから言うなよ」
綺麗な右ストレートをおみまいしてやったところで、話は適度に艦娘に対して無防備な状態を晒しておけという投げやりな対応を取ることで纏まった。……いや全然纏まってないし納得もしていないけれど、押し切られたので消極的にならざるを得なかった。
「大丈夫だ、骨は拾ってやる」
「本当に骨になりそうで怖いわ」
――後日、セキュリティ強化の為という名目で長い時間身を置きそうな場所に隠しカメラが設置され、自分で自分の近辺を監視するという奇妙な任務が毎日の中に加わることになったのであった。
守るぜ、俺の童貞!!(どうせ守れない)
正直なところ、蛙の子は蛙なのか明言されてないので明言できないという(
サンディエゴが射出されたら続く。