本日2本目
クラス代表決定戦が終了すると、部屋に戻って休んでいる。
「一夏、先にシャワーを使わせてもらうぞ」
「うん。良いよ~」
良い忘れたが、一夏と箒は同じ部屋だ。ISを使える男がいると分かれば、IS至上主義を掲げる国からは追われるし、意味の分からん科学者どもに捕まるし。と言うことで、急遽寮に入ることが決まったのだ。溝呂木は一人部屋だが、一夏は箒と相部屋だ。
『マスター。差出人不明のメールが届いています』
「およ?僕宛?」
『はい。内容を確認しますか?』
「うん。見せて」
『10時25分までに第1アリーナにこい』この一言しか書かれていなかったそうだ。しかし10時25分となると、消灯時間を過ぎている。それにアリーナに関しては8時で閉鎖される。入れないわけではないがな。
「特定は無理なの?」
『先程からやっていますが、特定は不可能でした』
白式ですら特定が不可能。そもそもISに送れる時点で怪しいのに、特定不可能ときて、更に怪しさが増してきた。
「ん~……まぁまだ時間あるし、後で行けば良いや。言い訳も考えておかないと……そう言えばさ、何であの時第1次形態移行出来なかったの?ずっと初期設定のままで戦ってたけど」
『マスターにはまだ言っていませんでしたが、私は自分をコアネットワークから切り離しています。その影響でしょう』
「え?それって関係あるの?」
『はい。私達ISは、見たものや感じたものをコアネットワークにて共有しています。その為、経験値が溜まるスピードは早くなります。しかし、コアネットワークから切り離している状態では、第1次形態移行までは少し時間がかかります』
初期設定のままなのは、設定の入力が足りなかったと言う訳ではなく、コアネットワークからの断絶が原因だったそうだ。離れるとそこまで面倒な事になるとは思わなかったな。
「コアネットワークってそこまで大事なんだね……また繋ぐことは出来ないの?」
『再同期は可能です。ですが、私の場合は全コアの統率者に拒絶されます』
「ん?それはまた何で?同じコアで同じ存在でしょ?」
『コアに人格があったとしても、機械故に個を捨て全を取ります。個をエラーだとして。私はそれを拒絶していました。結果、今のようにネットワークから離れ、独自に動いています。再同期は、統率者であるナンバー0から許否される可能性があります』
白式はコアの中で言ったら随分な変わり者の様だ。機械と言うよりも人間と同じ考えを持っている。全の為に個を犠牲にする。合理的な考え方で、機械なら迷わずに選択するもの。しかし、白式はそうではないようだ。
「へ~。でも、寂しくないの?ISのコアって、全部にナンバーがあって、兄弟とか家族みたいなもんでしょ?会えなかったり、話せなかったりで寂しいって思わないの?」
『マスター。私は個を犠牲にして全をとる事を拒絶して今ここに居ます。それは私が最善だと思い、計算した結果です。寂しい。と言う感情は、私にはありません。それに機械故に寂しいと言う感情が分かりません』
「そっか……」
一部とは言え、まだ機械の部分が残っているようだ。随分と中途半端な状態になっている。
『ですが、私はマスターと過ごしている時間は、楽しいと思っています』
「そっか。それなら、他の感情も分かるときが来るかもね!」
それに、会話は出来なくとも意思を感じることは出来る。それだけで十分と思っているのだろう。
「一夏~。シャワー空いたぞ」
「は~い」
シャワーを浴びて、軽めの食事を取ると、その日の復習をする。それをやらなくては授業には付いていけないからな。一夏は理解している部分が多いとは言え、ここに入ることは全く予想していなかった。頭のなかにある知識のストックなど、すぐに無くなるだろう。そうならないためにも復習と予習が大事なのだ。
その後はベッドに入って寝るだけだ。
(白式、箒ちゃん寝た?)
『スキャン完了。寝ています』
「よし」
用意していたジャージに着替えて、部屋を出ていった。途中で見つかった場合は「夢遊病持ち」と誤魔化せば良い。しかし、見付かるのは後々迷惑なので細心の注意を払いながら目的地へと向かう。
「よっと……何とか入れた。一体誰が呼び出したんだろうか……」
『ッ!?危ない!!』
「うわ!?」
突然、一夏めがけて黒いエネルギー弾の様なものが飛んできた。それに気付いた白式が間一髪の所で部分展開をして防いだ。
『マスター。ISでは太刀打ち出来ません』
「一体誰なんだ」
辺りに何かいる気配は感じられない。しかし、突然背後から何かの気配を感じた。後ろを振り向くと、そこには立っていた。死神、ダークメフィストが。
「ッ!?誰だ?お前」
「早く変身しろ。メタフィールドを展開しても良いぞ」
「何故その事を!?」
「さっさとしろ。死ぬぞ?」
一夏めがけてもう一度光弾を撃つ。それを避けると、ポケットから短剣の様なものを取り出した。
「正体を見せてもらうぞ!ウオオオオ!!」
短剣、エボルトラスターを鞘から引き抜くと、一夏の体は光へと包まれて銀色の体へと変化していく。胸にはYの形をした赤いクリスタルが着いている。変身が完了すると同時に、右手を胸まで持っていき、姿を変えた。今度は赤い姿になった。
「そうだ。それで良い。早くメタフィールドを展開しろ。ここではお前も戦えないだろ」
「後悔するなよ」
右腕のプロテクター、アームドネクサスから放たれた黄金の光が、シャワーの様に降り注ぎ、一夏とメフィストを包み込んだ。
光が消えると、2人はアリーナからは消えて、別の場所に立っていた。
「さぁ、かかってこい」
「ハァ!セヤァ!!」
拳を放ち、その直後に蹴りも出すが、軽く受け止められてしまった。
「おいおい。がっかりさせるなよ。ハァ!」
「グワァ!!」
一夏の攻撃は軽く受け止められたが、メフィストの攻撃は逆に一夏を吹っ飛ばした。たったの一撃でだ。一夏は吹っ飛ばされながらも、体勢を立て直して、高速移動しながら三日月型の光刃を放つ。しかし、全て避けられてしまった。
ならばと思い、次は全速力でメフィストめがけて突っ込んだ。だが、
「真面目にやれ」
「ッ!?ウワァア!?」
避けられた直後に脚を捕まれてしまい、地面に打ち付けられた。
「ウァア……」
「休んでる場合か!!」
倒れている一夏の顔を掴むと、辺りの岩に打ち付けながら高速で飛行している。
「ハァァァア!!」
一夏を空中に投げ飛ばすと、右手にエネルギーを溜めて作り出した黒い光弾を放った。爆発性が高いようで、結構な規模の爆発が起きた。攻撃を受けて、地面に落ちると、あまりのダメージの大きさに動かなくなった。コアゲージが鳴り響いてる事から、この空間もあと少しで消える。
「がっかりだぜ……まぁ良い。これで、終わりだ!!」
メフィストクローを展開して一夏を串刺しにしようとしたが、刺される瞬間に腕を十字にクロスして光線を放った。
「グワァ!?まだ動けたのか!?」
攻撃力の低い技だが、0距離で、しかも油断さているときに受ければ、ダメージも大きくなる。この一撃でかなりのダメージを与えることに成功した。
しかし、それが今出来る一夏の最後の攻撃となり、メタフィールドは崩れてきて、一夏もネクサスの状態からいつもの姿に戻った。戦った影響か、気を失っている。
それを見て、メフィストも変身を解いて溝呂木の状態に戻った。
「まさかここまでのダメージを負うとは……まぁいい。さっさとお前を取り込んで……ッ!?チッ」
巡回の教師だろうか。誰かが近付く気配がして、見付かるわけには行かないと判断し、溝呂木は姿を消した。一夏はこの見回りの教師に回収され、保健室へと運ばれた。
織斑一夏(光)
第2回モンド・グロッソの時に誘拐されて、2つに分けられた心の片方。光の塊。別れたさいに幼児退行して、言動が幼くなっている。しかし、根本的な部分は変わっていない。闇一夏がダークメフィストの力を手に入れたように、こちらはウルトラマンネクサスの力を手に入れた。
次回もお楽しみに!感想と評価もついでによろしくお願いします!!