インフィニット・ネクサス   作:憲彦

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1組のクラス代表決定戦です。

あ、タグにもあるように、白式は性格や性別が変わっています。おもいっきり。

溝呂木信也(闇一夏)

誘拐されたときに分けられた心の半分。闇の塊。組織に連れていかれた後は、3年間と言う短い間だが暗殺を行っていた。この短い期間に二つ名の暗殺者になるほどの実力を持っており、同業者からは「殺し屋殺しの殺し屋」とまで言われたことがある。「優れた暗殺者は万に通ずる」その言葉通りに、様々なことをこなせる。
一夏の半身であるので似ている部分もあるが、顔付きも体つきも違うので、気付く者はまだ居ない。怪しんでいるのは二人ほどいる。
無慈悲で冷酷な性格だが実は……


クラス代表決定戦

「クラス代表をまだ決めてなかったな。期日もあるので、この時間で決めようと思う。自薦他薦は問わないから、誰か居ないか?一応、推薦された生徒が受けることになっている」

 

本来なら、この時間はISのコアについての授業の時間だったのだが、一夏や千冬の自己紹介でSHRの時間に伝えることは出来ず、1時間目は千冬不在のため普通に授業。2時間目の数学は逆に真耶が不在で言うことが出来ずに、ここまで来てしまった。

 

「はい!織斑君を推薦します!!」

 

「私も!」

 

「戦うショタ……嫌いじゃない!!」

 

「むしろウェルカム!!!」

 

このクラスでは当然のように一夏に推薦が集中した。まぁ2組に関しては、溝呂木はこの話が出る前にサボりシートを記入して出ていっている。集中砲火を受けることはない。

 

「織斑以外の推薦は無いな……織斑、出来るか?一応ではあるが専用機は渡されるぞ」

 

「ん~……まぁ推薦されちゃったし仕方無いよね。出来るだけの事はやるつもり―」

 

「お待ち下さい!納得出来ませんわ!!」

 

机をバン!と叩き、認められないの一言と一緒に1人の生徒が立ち上がった。さっき一夏に絡んできたオルコットだ。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

「そうよ!そんなひ弱そうな男に任せられる訳ないでしょ!みんなも目を覚ましなよ!」

 

「それに、ここはISと言う神聖な物を扱う神聖な場所。男がいることで穢れが生まれることも理解できないのですか?この国の人は」

 

オルコットの一言で、他の女尊男卑の人間も声をあげ始めた。どれもこれも日本人では無いけどな。恐らく、IS至上主義を掲げている国の人間だろう。ISが広がってからと言うもの、国ぐるみで女尊男卑に染まるのが多くなった。理由もなく男が刑務所に入れられたり、男を殺しても女だからと言う理由で無罪放免になったり、逆に女が殺されると、男と言うだけで死刑になる事例もある。この場合は軽くぶつかっただけでもだ。女尊男卑が生み出した行き過ぎた政策。それは世界中にある。勿論日本にも。

 

「そして、実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然!それを、物珍しいからと言う理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこの様な島国でISの技術を学ぶために来たのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

文化や価値観に違いはあれど、イギリスも日本と変わらない島国の筈だがな。

 

「良いですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは、この学年の首席であるわたくしですわ!大体!!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛ですわ!!」

 

この発言で、1組の空気が更に悪くなった。とても重苦しい。日本人の生徒や、親日国出身の生徒、彼女たちと同じくに出身だが、日本を好きな生徒の顔色はどんどん悪くなっていく。千冬と真耶も止めているが、全くその声を聞かずに話を進めている。

 

「それに、ここまで言われて、反論の1つも出来ないような情けない弱虫が、このクラスを引っ張って行けるとでも?そんなこと出来る筈がありませんわ!!」

 

「はぁ……別に反論出来なかった訳じゃないさ。意見を聞くのは大切だよ。相手がどんな人間であってもね。確かに君の言うように、日本はイギリスに比べたら、経済的にも文化的にも後進的な国と言えるよ。産業革命以降は世界最高の経済大国でもあったし、今でも様々な分野で国際的な影響力を持っている。それに君は専用機持ちの代表候補生。僕としては君に任せても良いと思ってるよ」

 

「あら?下等な猿の分際でも、それくらいの知識とかは持っているようですわね。なら、貴方はクラス代表を辞退してわたくしに―」

 

「でもね、自分のクラスの人に平気で嘘を吐いて、僕だけじゃなくて他の人も嫌な思いにさせた君に、悪いけどクラスの代表は任せられないよ」

 

「……ほう?男の分際で、このわたくしにその様な無礼を言うとは……。任せられないとは、まさかとは思いますが、決闘で決めるとでも?」

 

「争い事は嫌いだけど、この際仕方無いね」

 

最早お互いに引っ込めることも、話し合いで解決することも出来なくなった。その為、一夏の専用機が到着する予定の1週間後に試合が設定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1週間後。1年生が早々に決闘と言う名の試合をやると言うことで、学園中が大騒ぎになった。普通なら騒ぐことでもないが、片方は男性の操縦者で、もう片方がイギリスの代表候補生。しかも、試合の理由は本来なら国際問題レベルに発展する物だ。生徒も教師も気になるのだろう。

 

「あ、溝呂木くん。今日の1組の代表決定戦見に行く?」

 

「あ?興味ない」

 

サボりシートをいつものように提出すると、屋上へと向かっていった。いつも通りにすぐに寝た。と思ったが、ポケットから色々な端末を取り出した。

 

「チョロいな……この学園、防犯システムとかは世界最大の筈なんだがな……」

 

ハッキング。溝呂木にはこれくらい適当な道具でもすぐに出来る。アリーナの試合の様子を見るそうだ。

 

そしてその頃、アリーナのピットでは

 

「織斑くん!ようやく届きましたよ!専用機が!!」

 

「織斑。時間がない。初期設定の状態で出てもらう……ハッキリ言って、不安でしか無いんだがな」

 

「大丈夫大丈夫。どうにかするよ」

 

千冬に乗り方を教えてもらいながら、専用機に乗った。背中を預けるようにするらしい。

 

『起動を確認。メイン登場者、織斑一夏確認』

 

「ん?声?」

 

『操縦者レベルの設定。マスター、操縦経験の申告をお願いします』

 

「マスター?操縦経験?ん~1時間くらい?」

 

『了解。白式、サポートします』

 

機体に乗った瞬間、一夏が誰かと話し始めた。千冬でも真耶でもない。男の声だ。

 

「一夏、誰と話してるんだ?」

 

「え?お姉ちゃんと山田先生には聞こえてないの?」

 

その声は一夏にしか聞こえず、他の人には聞こえていないようだ。千冬も真耶も少し驚いている。

 

『マスターの神経を通って、直接脳に話しかけています。マスター以外の方にも聞こえるようにしますか?』

 

「ん~後でで良いや。今は試合!」

 

『了解。白式、発進』

 

白式がピットから発進され、アリーナへと飛び出した。既にアリーナ上空ではオルコットが待機していた。

 

『ブルー・ティアーズ、私と同じ第3世代型のISです。エネルギーライフル、ショートブレード、ビット兵器を積んでいる遠距離型の機体です』

 

「急に相性の悪い機体だね」

 

「ようやく来ましたわね。逃げずに来たことは褒めて差し上げますわ……しかし、武器を展開していない所を見ると、諦めたのですか?」

 

「悪いね。僕は諦めるのは苦手なんだよ」

 

「貴方に最後のチャンスをあげますわ」

 

「チャンス?(白式、いつでも動けるようにしておいて)」

 

『了解』

 

右手の人指し指を一夏に突き付け、チャンスを与えると言ってきた。しかし、試合開始まであと少し。油断させる為の可能性もあるので、白式に動けるように頼んでおいた。

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは明白の理。ですから、ボロボロの惨めな姿をさらしたくなければ、今ここで謝りなさい。そうすれば惨めな姿を晒さずに済みますわよ」

 

『マスター。敵に右肩をロックオンされています』

 

(それルール的に大丈夫なの?)

 

『ルール上では、試合開始前は弾の装填までは認められています。ですが、安全装置の解除とロックオンはルール違反に当たります。山田先生と織斑先生に報告しましょうか?』

 

(大丈夫。報告しなくて良いよ)

 

「だんまり……ですか。では、さよならですわ!!」

 

試合開始の合図の直後に、白式が一夏に警告を出した箇所に撃ってきた。しかし、あらかじめ場所が分かってれば避けるのは造作もない。避けると同時に、一気に上昇した。

 

「な!?避けた!?」

 

『マスター、後方より狙撃が来ます。左に旋回して回避してください』

 

「了解!」

 

白式の的確なサポートのお陰で、被弾はゼロだ。その様子を見ていた千冬と真耶も、一夏の動きに驚いている。初心者ではあり得ない動きだからだ。

 

「すごいですね!織斑くん。初めての専用機をここまで使いこなすとは……しかも初期設定のままなのに」

 

「ISをうまく使いこなすには、3つの方法があると言われています」

 

「3つ?」

 

「はい。と言っても、束から昔聞いた話ですがね。1つは、私たちの様に地道に努力を重ねる方法です。これなら比較的誰でも上達できる。時間はかかりますがね。2つ目は、今のアイツの様に楽しむこと」

 

「楽しむこと……ですか?」

 

「えぇ。私は昔1度負けました。当時専用機を使っていたのに、打鉄をまとった同期の訓練生に」

 

「え!?でもそんなデータはどこにも……」

 

「公式戦ではありませんでしたので。その時はデータの保存も義務付けられてませんでしたから」

 

それは恐らく、IS学園が操縦者育成学校だったときの話だろう。ISが出てからすぐに作られた学校で、規模は今ほど大きくはなく、ただただ操縦者を育成するだけの学校だった時代だ。その時に千冬は1回負けている。専用機を持ち、学校トップの実力を持っていた千冬がだ。

 

「彼女は、実力は高い方ではありませんでした。むしろ下から数えた方が早い。しかし、ISに乗ることを誰よりも楽しんでいた。その人に、私は一方的に負けてしまったんです」

 

笑いながら楽しそうに話している。今となっては良い思い出なのだろう。今は教師をしているそうだがな。

 

「そうなんですか~……あの、3つ目は?」

 

「……これは確実な方法とは言えません。ISを作った束ですら不確実と言った方法です」

 

「どんな方法なんですか?」

 

「ISのコアを支配する。らしいです。しかし、理論上は可能でも、出来る者は居ないでしょう。そんなこと、体と脳が耐えられませんからね」

 

ISを支配する。束が言うのなら可能なことなのだろう。しかし、それは理論上の話。千冬の言うように、体への負担が大きいものをやる人は居ないだろう。

 

そして一夏は、千冬の言う2番目に該当する。彼はこの状況を楽しんでいる。自分のISと共に空を飛び、戦うと言うことに。

 

『マスター。ビット兵器の展開を確認しました』

 

「対抗する方法は?」

 

『破壊するしかありません。視界にルートを表示します。その通りに動いてください』

 

攻撃を避けながら、白式の表示したルートに沿って動いている。

 

「ブルー・ティアーズに初見でここまでもったのは貴方が初めてです。素直にお褒めしますわ。ですが!逃げてばかりでは勝てませんわよ!!」

 

ビットの攻撃が更に激しくなってくる。なんとかそれを避けているが、初期設定の状態ではそろそろ危ないだろう。

 

「おっと!危なくなってきた」

 

『ご安心ください。相手は、ビットを使ったままの行動が出来ないようです。私の意識がある状態では落される事はありません。指定のポイントまで急いでください』

 

ビットの攻撃が激しくなってからは、白式が回避を行ってくれている。意識がある状態なら落される心配はない。そして指定された位置に着いた。しかし、囲まれている。

 

「ふん!自分から囲まれるとは……良いでしょう!お望み通り落として差し上げますわ!!」

 

『今です!上昇して下さい!』

 

「っ!」

 

ビットからレーザーが放たれた瞬間、白式の合図で上昇した。すると、レーザーが交差して対角線上にあるビットを撃ち抜き破壊した。

 

『成功です。マスター』

 

「これが狙いだったのか……」

 

『一気に接近してください。勝負を決めましょう!』

 

ビット4つを一気に破壊されたことで、一瞬オルコットの思考が停止した。白式はそれを見逃さない。ブレードを展開して一気に決めるように言った。一夏もそれに従い、加速を付けて斬りかかった。

 

「は!?しまった!!キャアアアア!!!」

 

防御が間に合わず、この攻撃でシールドエネルギーが全て持っていかれた。

 

「おっと」

 

落ちるオルコットを掴むと、ゆっくりと地面に降ろした。初期設定の状態で勝ったのだ。

 

『敵の撃破を確認。お疲れ様です』

 

「やったぜ!勝てた!」

 

『はい。おめでとうございます』

 

これで、めでたく一夏がクラス代表の座を勝ち取った。一夏の実力が全クラスに証明されただろう。そしてそれを屋上で見ていた溝呂木は、

 

「ふん。この程度か……まぁ良い。今夜辺り行ってみるか」




白式

コアの人格が表に出ている一夏の専用機。性別は男。コアネットワークから切り離された存在。と言うか自分から切り離した。待機状態でも意思疎通が可能。独自の判断で動くことが出来る。場合によっては登場者である一夏の命令とは別の行動をとる。ギンギラをイメージしています。

次回もお楽しみに!感想と評価もついでによろしくお願いします!!

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