インフィニット・ネクサス   作:憲彦

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溝呂木
「今回で7回目。もう総集編ではなく再編集版になってるな。まぁそんなの気にしたら負けだな。終わったら本体の方の再編集版だから、首を長くして完結を待っててくれ」

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再編集7

鈴が溝呂木に負けてから1週間程の時間が経った。その間に何かあったかと言えば、特にそんなことはない。強いて言えば、鈴が自主トレを始めた事と、中国のIS委員会から溝呂木の調査結果が来たくらいだ。だが、

 

「何これ……どう言うこと?」

 

委員会の調査報告には、過去の経歴一切不明と書かれており、日本国内において溝呂木信也と言う人間は少なくとも1年前までは存在しないとの事だった。結局、戸籍に偽造の疑いありと言う事以外は全く掴めていない。

 

「これだけ!?何してんのよ委員会は!もっと情報取れるでしょ!?……ん?追記?」

 

『追記

中華人民共和国 国家代表候補生 凰鈴音に指令。溝呂木信也の暗殺、もしくはハニートラップによる生体データの収集を命じる。なお、失敗し命を落とす結果になったとしても、我々は一切関知しないのでそのつもりで』

 

バキッ!

 

「さぁ~てと。朝ご飯食べに行こ~。もう二度とあの老害共に頼るのは止めよ」

 

端末を真っ二つに割ってゴミ箱にダンクシュート。財布を持って食堂へと歩いていった。後から委員会の連中にグチグチ言われることは間違いないが、恐らく一切取り合うつもりは無いだろう。そもそも子供にあんなふざけた指令を出すような連中と真面目に話をする筈がない。

 

そして放課後。いつも通り空いているアリーナに訓練のために溝呂木が向かっていくのだが、凪がいない。

 

「休みか?」

 

「あ、溝呂木」

 

「お前か。何やってんだこんなところで」

 

「見ての通り訓練よ。あ、西条なら今日はトレーニング室よ。伝えとけって」

 

「そうか。礼を言っとく……操縦訓練より基礎体力を上げとけ」

 

「え?」

 

鈴にそれを伝えると、アリーナを出てトレーニング室へと向かう。トレーニング室は地下に設立されており、運動部が冬期間に使うことを目的にされているが、そもそも室内にも巨大な競技場があるために使われることは少ない。教師や生徒がたまに使うくらいだ。

 

「見付けた。何やってんだ」

 

「アガッ!?」

 

中では凪が必死に腹筋をしていたが、額に拳骨を落として運動を止めさせた。

 

「いっ……何すんのよ!」

 

「お前こそ何やってんだ」

 

「筋力が足りないから足せって言ったのアンタでしょ?だからここでやってんのよ」

 

「バランスも悪いと言っただろ。更に悪くしてどうするつもりだ?お前がやるのはこれだ」

 

そう言って1冊のファイルを凪に渡す。開いて中を見てみると、そこには行うべき体幹運動と筋力アップの訓練内容が細かく書かれていた。A4サイズのファイルで60ページあり、そこにビッシリと内容の書かれた紙が入っている。1週間でこれを全部まとめたようだ。

 

「お前は体幹が弱い。余分な体力も使うし無駄な動きも大きくなる。まずは体幹を鍛えろ。そして筋トレをするなら部分的な物ではなく全身を使うものにする。水泳が手っ取り早い。1人でやるならそのファイルを参考にしろ」

 

「やれば嫌でも体力増えそうね……」

 

実際はずっと戦っていた方が良いのかも知れないが、学園内で出来る最大限の訓練方法。しかも続ければ確実に今後に繋がる物ばかり。凪の成長を見極めた上での訓練メニューなのだろう。

 

「じゃあ~な」

 

「え?一緒にやらないの?」

 

「明日はクラス別対抗戦だ。俺個人の訓練もある。今日は付き合ってられん」

 

「ここでやれば良いのに」

 

「部屋でも出来る。それに1人の方が集中できるからな」

 

凪の誘いを断って自室に戻っていく。そして床に座り込み、静かに目を閉じて瞑想を始めた。どうやら体を動かす訓練ではなく、対戦相手の動きを頭の中でイメージして、それの対応を考える訓練の様だ。端から見れば目を閉じてるだけでなにもやっていない様だが、実際は頭の中で何千何万もの戦いが繰り広げられており、体や脳にかかる負担はかなり大きい。そんなことを日付けが変わるまでずっとやっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迎えた次の日。この日はクラス別対抗戦当日。朝から学園中は賑い、アリーナでは観戦席確保の為にアリーナ解放前から入り口には長蛇の列ができていた。中には明らかな徹夜組までいる。

 

今日ここに集まった観客の注目対戦。それは1組と2組のクラス代表である溝呂木と一夏の対戦だ。世界初の男性IS操縦者であり、2人とも確かな実力者。代表候補生、国家代表レベルの強さと言っても差し支えない。その2人の戦いだ。自然と注目が集まってしまう。しかもそれが第1試合で行われるのだ。徹夜組が出るのも仕方無いのかもしれない。

 

「溝呂木……君は、あの時の巨人なのか?」

 

「今頃か?入学早々に気付いたかと思ってたんだが、鈍感なのは相変わらずの様だな」

 

「大きなお世話だ。君が黒い巨人と言う事は、君は僕の……」

 

「あぁ。お前が無くした半身だよ」

 

「やっぱりか。なら、僕たちが半分に別れた直後の記憶、君は持っているか?」

 

「さぁな。知りたいなら俺を倒せ。倒せるんならな」

 

「あぁ。そうさせて貰う」

 

それ以降はお互いに口を開かなかった。ただ剣を構えて開始の合図を待つ。2人が構えるのを見ると、観客席にいる生徒たちも私語を止めて溝呂木と一夏を見つめる。そして、

 

『試合開始!』

 

その合図の直後、2人は観客の目の前から消えた。そして空気を切り裂くような音と、金属と金属のぶつかり合う音だけが響き渡る。圧倒的の一言では片付けられない試合の光景に、誰もが固唾を呑んだ。世界大会レベルでも見れるか見れないかの試合だからだ。

 

(成る程。機体を自分用にチューニングしたのか。第一形態移行したとは言え、自分の能力に合わせないと戦えないと判断したか?)

 

(白式に言われた用にチューニングして助かった!じゃなきゃ僕の体も白式もバラバラになるところだったよ)

 

この2人、試合開始直後から瞬間加速を連続して発動しているのだ。勿論そんなことを学生である2人が出来る事は異常事態。溝呂木は完全にISを支配しスペックの全てを無理矢理引き出し、一夏は調整をして白式の力を最大限に使う。故に戦いがここまで激しい物になっているのだ。

 

(強い!機体を自分に合わせたとは言え、本当に勝つことが出来るのか?)

 

『マスター!迷いは戦いに置いて禁物です!目の前の戦いに集中してください!』

 

「ッ!ゼェイ!!」

 

「チッ!自分の機体に助けられたな!これでどうだ!」

 

「ハァ!」

 

白式に意識を目の前に引き戻され、雪片を全力で振り下ろす。それを刀で受け止め、打鉄のもう1つの武器であるサブマシンガンを取り出して一夏に構える。それに気付いた一夏はすぐに雪片で真っ二つにする。だが、

 

「やるなら銃弾も真っ二つにしろ!」

 

弾薬の後端にあるプライマーを1つ1つ正確に刀の先端で突いていく。

 

「ウワッ!?何で?!」

 

銃弾は薬莢の後ろに付いているプライマーに圧力が加わることで弾を撃ち出す火薬が発火される。そして銃弾が飛び出すと言う構造になっている。つまり銃がなくてもプライマーにさえ圧力を加えれば発砲されるのだ。

 

「グッ!零落白夜!」

 

「ヌアッ!チッ!ウラァ!」

 

「ガッ!ッ!?ダァ!」

 

零落白夜を発動されて距離を取るが、使っていた刀は弾き飛ばされてしまった。だがその直後に溝呂木は一夏の手首を蹴って自分と同じ様に武器を弾き飛ばす。お互いに武器が無くなってしまい、拳と蹴りと言った体術で戦いを続行した。

 

「ハァ!ゼェイ!」

 

「フッ!ハァァァア!!」

 

「ウワァァア!!クッ!オリャア!!」

 

一夏の拳と蹴りを受け止めて、脚を掴んでアリーナの地面に叩き付ける。だが一夏もただ叩き付けられるだけではなく、無理矢理体を捻って溝呂木を全力で殴り飛ばした。結構な勢いで飛ばされたが、地面を転がりながら勢いを殺し再び一夏に向かって全力で突っ込んでいく。

 

「ウオラァァァァ!!!」

 

「ウガァ!!」

 

一夏の胴体にしがみついて壁にめり込ませ、そのまま壁を破壊しながら巨大なアリーナを1周。そして客席を保護するために張られている頑丈なシールドに向かって蹴り飛ばす。

 

「ガァ!ハァ!」

 

「ッ!?ウワッ!」

 

シールドに全身を強く打ち付けたが、すぐにシールドを蹴ってスピードを上げながら溝呂木に突っ込む。溝呂木はアリーナの地面を抉りながら飛ばされていき、一夏は扱えないスピードに対応が出来なくなり自身も地面に体を打ち付けてダメージを負ってしまった。この時点でアリーナは半壊状態。シールドも所々に亀裂が入っている。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……クソ。ここまでやられるとは」

 

「ガハァッ!はぁ…はぁ……白式、機体状況は?」

 

正に死力を尽くした戦い。お互いに出せる限界の場所で戦っている。だが、そんな戦いは誰もが予想しなかった形で終わりを迎えることになった。

 

ドカァァン!!

 

「ッ!?」

 

「あの野郎……とうとう仕掛けてきたか」

 

上空に張られたシールドを突き破って何かがアリーナに侵入したのだ。一夏はそれに驚いたが、溝呂木は相手の正体を知っているようだ。ついでに送り込んだ人間の事も。

 

弾かれた刀を取ると、一夏に背を向けて入ってきた4機のISに向かって飛び出した。そして刀を構えると一気に斬りつけた。

 

「よせ!人が乗ってる―」

 

「黙ってろ!!」

 

敵のISは攻撃するために腕を伸ばしたが、溝呂木はそれを斬り裂いた。斬られた腕から血液に近い色をした液体を流している。しかし、全く反応を示さなかった。それどころか、再び攻撃するために斬られていない腕を伸ばしてきた。

 

「何で……腕を斬られてるのに……」

 

『マスター。敵ISから生体反応が感じられません。無人機の様です』

 

「無人機……?」

 

『はい。零落白夜を有効に活用して倒してください』

 

「成る程!その手があった!!」

 

一夏も弾かれた雪片を手に取り、エネルギーを集中させた。すると雪片が光りだした。これは白式の単一。シールドエネルギーを無視して機体その物に直接ダメージを与えることが出来る。いつも使われている有人の機体には使えないが、無人機が相手である今の状況。これ程までに有効に活用出来る場面はないだろう。

 

「ハァァ!!」

 

溝呂木が1人で4機を相手しているが、そこに一夏が加わった。零落白夜で、早速1機を撃破した。

 

「何か用か?」

 

「別に。コイツらをやっつけに来ただけだよ」

 

「足を引っ張りに来たの間違いだろ」

 

「こっちの台詞だよ!」

 

そう言うと、無人機1機を連れて離れていった。一夏が離れると、溝呂木は早速1機破壊した。破壊と言うより、首を斬り落としただけだがな。もう1機も同様だ。首を落としてサクッと終わらせた。そして一夏はと言うと、

 

「ヤバイ!動きが鈍く……!!」

 

零落白夜を使った影響だろう。零落白夜はシールドエネルギーを大量に消費する。ただでさえ直前の戦いで大きくエネルギーを消費しているのだ。全体に回すエネルギーが無くなったのだろう。

 

『マスター、下がってください。これ以上の戦闘は危険です』

 

「ダメだ!ここで下がったら、上にいる皆が!!」

 

上は完全にパニック状態だ。ここで戦いを放棄すれば、怪我人だけではなく死人が出てしまうだろう。

 

「何をやってんだ。もう息切れか?」

 

「うるさい!まだまだだ!」

 

「はぁ……まぁ精々頑張るんだな」

 

打鉄に入っている残りのエネルギーを白式に渡すと、ISを解除して帰っていった。恐らく戦いに興味が無くなったのだろう。

 

『マスター!先程渡されたエネルギーで、もう一度だけ零落白夜を使えます!一気に決めましょう!』

 

「ッ!分かった!」

 

零落白夜が一度だけ使えることが分かると、白式の指示通りに一撃で決めた。

 

『マスター。お疲れ様でした……エネルギーの補充が完了するまでの間、私は機能を停止いたします』

 

「うん。分かった。ご苦労様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生。無人機の解析は?」

 

「先程完了しました」

 

薄暗い場所。辺りが精密機械の画面の光で照らされている以外に光の無いこの場所に、千冬と真耶がいる。

 

「解析の結果、無人機の内2機は未登録のコアが。残りの2機は、先日盗まれたイタリアのコアでした。あと、この機体には、人間の脳が積まれていました……」

 

「はぁ……こんなバカなことを考え付いて、実行に移せるのは1人しかいないな……あの男か……」

 

「織斑天十郎……今世紀最大の犯罪者にして第1級危険人物。織斑先生と一夏くんの父親ですよね?」

 

「あんな男。父親と思ったことなど一度もないですよ。しかし、まさか生きていたとは……死んだものと思っていました」

 

随分な言いようだ。相当嫌っている事が伺える。

 

「未登録のコアについては?」

 

「ISのコアであることに間違いは無いのですが、従来のコアとは少し違う点が幾つか……」

 

「と言うことは、あの男の作った物ですね……」

 

織斑天十郎。超がつく天才の科学者。しかし、ISが出てからと言うもの、危険な研究に手を伸ばして科学者仲間から危険視されるように。実験と称し、人を殺した事は数知れず。千冬と一夏達が幼い頃に学界から追放。その後すぐに姿を消した。それ以降の事は分かっていなかった。しかしその姿は様々な場所で確認されており、現れた場所では必ずIS絡みの大規模な事故や事件が起きる。結果、全世界から第1級危険人物に指定され、今世紀最大の犯罪者と呼ばれるようになった。

 

「学園長に警戒を強めるように依頼をお願いします。警戒レベルはレッドで」

 

「はい!」




溝呂木
「全く余計な事をしてくれたもんだ。せっかくの戦いが台無しになったな」

❤26/99
…………ツラい。モチベーション上がることがあれば良いのにな~。お気に入り増えるとか感想が沢山来るとかランキングに乗ってしまうとか推薦小説にされるとか高評価されるとか。まぁ全部あり得ないんですけどね笑。なかんもう疲れてしまったよ。リアルに執筆から離れないとですね。それか気晴らしに新しいのを書くとか。


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