闇の方の一夏が数年間身を置いていた組織。そこで施設と、破壊不能と言われていたISのコアを破壊する数十時間前の事。とある研究室らしき場所では、千冬から依頼を受けた束が一夏について調べていた。
「あの、束様。そろそろ休んだらいかがですか?」
「クーちゃん、いくらクーちゃんの頼みでも、それは無理だよ。早く見付けないと……早く」
恐らく、3年間の間ほとんど休息を取っていないのだろう。髪の毛はボサボサになり、肌はガサガサ。目の下には大きな隈が出来てる。かなりヤツレているのは見ただけで分かる。専門家でなくとも危険な状態と判断するだろう。
「……コアネットワークを調べれば何か出てくるかな……」
全世界の監視カメラや、道行く人の使用している携帯、スマホ、パソコンにカメラ、大きいもので使われなくなった人工衛星。あらゆる物をハッキングしてあの時の事を調べている。映像のデータだけではない。音声なども含めてだ。
「確かに、コアネットワークを調べれば出てくるかもしれません。しかし、彼が変わってしまったのは3年前ですよ?その時のデータとコアをピンポイントで探し出すなんて、ほとんど不可能です」
「不可能も可能にする……それが、今の世界を作り上げた天災のやることだよ」
調べる日付は決まっている。3年前の第2回モンド・グロッソの決勝戦の日だ。しかし、コアネットワークは全ISのコアが見たもの、聞いたもの、体験したもの、感じたものを他のコアと共有する膨大なものだ。しかもその日は世界大会の決勝戦とあって、入ってくるデータは日常の比ではない。そこから情報を探し出すなど、常人には無理なことだ。
「本当にやるつもりですか?」
「当然だよ。集中するからしばらく話しかけないでね」
そう言うと、パソコンに向かってあの日の捜索を開始した。あの日ドイツに集まっていたISのコア。その情報の中から見つけ出す。
(大会に出てるISのコアは除外。軍隊のも除外。展示用も除外。目的もなく動いてたコアは……どこだ!早く見つかれ!早く!早く!!早く!!!)
目から、耳から入ってくるその日に稼働していたISコアの情報。普通の人間がやろうものなら脳ミソが追い付かない程の情報量だ。処理落ちは確定する。束ですらも負担がかかるのか、大量に鼻血を流している。額からは脂汗を流し、顔色がどんどん悪くなっていく。
「見付けた!!これだ!」
物の数時間で、あの情報の波の中から一夏の情報を見付け出した。あの時交わされた会話の内容。闇と言う単語。脱け殻。そして、コアの中に入っている妙な数字と英語のスペルで出来た文字の羅列。
「これは……人間をデータで表したときの羅列!?何でこんなものがコアに?もしかして……」
束も昔興味本位でやったことがある。手近にいる家族や友人を使ってだ。記憶、性格、性別、身長、好み、そう言ったもの等を複雑な文字で表す行為。そしてその時のデータを束は持っている。USBの中にしまってあるので、それを呼び出して見てみた。
「やっぱり……いっくんのデータだ……でも少し違う……いっくんのであることは確かなのに……闇……脱け殻……まさか!?」
行き着いた答え。それを確かな物とするために、コアに保存されている映像のデータを探してみた。しかし、砂あらしが酷く、分かる状態ではなかった。
「でも分かることは分かった!早くちーちゃんに報告しなきゃ!」
束は焦っているときにメールを出すと、述語が抜けてしまう癖がある。今回も、千冬には『完了。ISコア、光、闇、分離』と送っている。その時だ。ISのコアの反応がいくつか消えたのだ。たまにネットワークから自分を切り離すコアは居るが、今回はそれとは違う。消滅した。と言う方が正しいだろう。
「ッ!?何で!!」
それに気付いたと同時に、ここに誰かが侵入したとの合図が入った。侵入者は束の作った防衛システムが勝手に排除してくれる。だが、それらの全てが破壊されてしまった。
「ッ!?どう言うこと……」
「束様!早く逃げて!逃げて下さい!!」
「黙れ」
「あぐ!……うぅ……」
「クーちゃん!?誰が……!?」
「久し振りだな。篠ノ之束」
「その声……いっくん!?どうしてここに……イヤ!違う!?いっくんじゃない……まさか!?」
「流石に勘が良いな。それに気付いてるって事は、全部知ってんだろ」
「……うん。あの日、あの場所で、君は2つに別れた。ISのコアの力によって。今ちーちゃんと過ごしてるのは所謂光の存在。元々いっくんの精神にある光。そして君は、その反対。いっくんの精神にある闇の塊……」
「正解だ。流石はISの産みの親。じゃあ何で俺がここに来たのかも当然知ってるよな~?」
遊びに来た。そんな雰囲気では無いことは容易に判断できる。一夏がここに来た理由。それは、
「ウグッ!」
「復讐だ。全ての元凶である、お前を殺しに来た」
首をガッチリと掴み、壁に叩き付けた。
「な、何で!闇であっても、君はそんな人間じゃ無い筈だ!いっくん!!」
「その名で俺を呼ぶな。虫酸が走る。俺がこんなんになったのも、アンタがIS何て言うガラクタを作ったからだ!俺は3年間人を殺し続け、全てに復讐を誓い、この世界を一度完膚無きまで叩きのめすと決めた。そんな俺に、君はそんな人間じゃ無い筈だ?笑わせるな」
「全て……まさか!ちーちゃんまで!?」
「あぁ。体を取り戻し、俺が表の人格となって叩き潰す。俺にはその力がある」
「ッ!?逃げて!クーちゃん!!早く!!!」
「俺が、ここから人を逃がすような甘いヤツに見えるか?」
不気味な笑みを浮かべると、ダークエボルバーを後ろに構えて黒い光弾を放った。その1発は、正確に、そして無慈悲に、クロエ・クロニクルの心臓を撃ち抜いた。
「クー……ちゃん……」
「ハッハッハ。どうだ?目の前で大切な物を失う気分は?悲しいか?辛いか?苦しいか?憎いか?俺を殺したいか?体から魂が抜けるような感覚はどうだ?……次はお前だ。安心しろ。すぐに同じ場所に送ってやるよ」
「あぁグ!!ンッ!!」
束の首を掴む手に力を入れ始めた。そして、
グカッ……
その音と共に、束の体からは力が抜けた。
「さぁ~てと。少しこれを借りるか」
束がさっきまで使っていたパソコン。それを使って自分の戸籍を偽造した。溝呂木信也と。そしてパスポートも作っておいた。巨人の力があれば問題ないが、万が一と言うこともあるからな。
「……ふん」
2人の死体を見て。その後は無言でここを出ていった。ここなら、死体の処理をする必要は無いからな。そして彼が次に向かうのは、自分の故郷である日本。だが、本人すら気付いていなかった。闇と光。その2つに別れているとは言え、元々は同じ存在。片方が力を得れば、必然的にもう片方も力を手に入れる。得るもの、考えるもの、物の言い方、望む結果は逆の物になろうとも、片方が強く願えば、もう片方もまた……
コアネットワークの事、チラッと見たときのうろ覚えなので、合ってるかは分かりません。そんな感じの物だろうと言う、うp主の感覚です。
次回からようやく原作突入。まさかここで、原作におけるほとんどのイベントの要因であるキャラを殺すことになるとは……
次回もお楽しみに!感想と評価もついでにお願いします!!