インフィニット・ネクサス   作:憲彦

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まさかの3本目!?


バルタン星人

一夏がIS学園に戻ると、その付近で既にIS委員会の連中とバルタン星人の戦いが始まっていた。だが、バルタン星人にはISの攻撃も大して効果が無かった。委員会は数で攻めようとするも、それら全てが無駄になっている。これだけでもう何人の人が死んだか。

 

「頼むバルタン星人!攻撃を止めてくれ!!話を聞いてくれ!!」

 

呼び掛けるも、最早地球人と交渉するつもりはないと言う言葉通り、全く耳を傾けてくれない。一夏の呼び掛けを無視して戦い続けている。

 

「……使うしか無いのか?」

 

『無茶は止めてください!体が持たないと言ったはずです!』

 

「でもこれしか方法が!―ッ!?ウワァァ!!」

 

バルタン星人が高速で自分の所に飛んできていたが、避けることが出来ずに機体がバルタン星人と接触。空中でバランスを崩し、墜落していった。

 

「一夏!?出るなと言ったのに何故ここにいる!?」

 

「千冬姉……」

 

「兎に角、早くこっちにこい。全く……」

 

体にダメージを負った一夏を担ぎ、千冬はテントが張ってある場所まで運んで手当てをした。現時点でバルタン星人に対抗するために組まれた場所のため、ISやら兵器やらが大量に置かれている。当然そこには、IS学園の専用機持ちも数名いる。

 

「一夏!アンタ大丈夫なの!?」

 

「ミサイルに吹っ飛ばされてたが、無事だったのか?」

 

「箒、鈴……あぁ、俺は大丈夫だ。それよりも、早く委員会の連中とバルタンを止めないと」

 

「今は休んでなさいって!そんなんで戦える筈が無いでしょ!」

 

「安心しろ。これだけの兵力だ。じきにバルタンを倒すことが出来る。お前が戦う必要は無いだろ」

 

「それじゃ駄目なんだ!」

 

箒と鈴の言葉に、一夏は珍しく怒鳴った。バルタンを倒す。それは目の前の2人だけの考えじゃない。交渉が不可能になった今、誰もが思っている方法だ。バルタンを殺さなくては、被害はとんでもないことになる。戦場になっている日本は、このままバルタンと交戦を続ければ国としての機能が停止する可能性もある。だから一刻も早く倒さなくてはならない。だが、一夏だけは違った。

 

「バルタンも人間も、戦う意味は無いんだ。必要もない。なのに何故啀み合う必要がある?彼らは自分達の住める星を探していただけだ。でも、人類は地球を自分達の所有物であるかの様に振る舞い、挙げ句無抵抗だったバルタン星人達を攻撃した!その上殺す?何のためにだよ?何のためにだよ!!?」

 

一夏は立ち上がると、白式を外しその場に置いて、テントから飛び出していった。そしてエボルトラスターを手に取り、鞘から引き抜いた。

 

「ウオォォォォ!!」

 

ネクサスになると、バルタン星人目掛けて一直線に飛んでいった。千冬たちもその後を追いかけていく。そして、離れている所に待機していたオルコット、デュノア、ラウラも、ネクサスの姿を確認したので急いでその場に向かった。

 

「シュワ!!」

 

再び、1420MHzの周波数で会話をしている。今回は一夏の意思でだ。

 

『宇宙船へ戻ってくれ。今は自分の星に戻ってくれ。……いや、帰らぬ。地球を奪う』

 

一夏とバルタン星人の会話を、白式がリアルタイムで翻訳してくれた。バルタン星人は完全に地球を奪うつもりでいる。その会話が終ると、バルタンは両方のハサミから光線をだし、一夏を狙い撃った。

 

「っ!ハァ!」

 

それを避けると、バルタンは自分の宇宙船の方へと飛んでいき、一夏もその後を追い掛けた。

 

「不味い!一夏行くな!罠だ!!」

 

バルタンの宇宙船に降り立つと、バルタンは地面に自分のハサミを突き立てた。すると地面が光りだし、無数の刃が一夏を囲むように出現した。バルタンの合図でそれは一夏に迫ってくる。

 

「ハァァ……シュワ!フン!」

 

両腕を広げ、高速で回転して迫り来る刃を粉々に粉砕した。それを見ると、バルタンは一夏に光線を放ち、ダメージを負わせようとする。だが、一夏は拳を前に突き出すと、光線を2つに割きながらバルタンとの距離を詰め始めた。

 

「グゥ!?ディヤァ!」

 

光線が駄目だと分かると、今度はハサミから光弾を放った。だが、これは避けられ一夏から攻撃を食らいそうになった。急いで飛び上がり、再び地球に降りると、一夏もその後を追って船から出てきた。

 

 

降りると、バルタンは光線技の効果が薄いと分かったのか、肉弾戦へと切り替えてきた。巨大なハサミから出される打撃は強力で、細身の体からは理解できないほどの重さがある。高く跳んで回避すると、後ろに回り込んでバルタンを掴み、全力で投げ飛ばした。投げ飛ばした先にはIS学園の今は使われていない古い倉庫があったが、それが粉々になった。

 

バルタンが一夏から投げ飛ばされ、着地すると同時にIS委員会の連中も攻撃をしてきたが、一夏はサークルシールドを張り、人間からバルタンへの攻撃を防ぎ、シールドを通り越してしまったミサイルなどはパーティクル・フェザーを使って破壊している。攻撃を防ぎ終ると、一夏はバルタンに視線を戻した。すると、バルタンの姿が徐々に変わっていく。ハサミが巨大なブレードと槍の様な物に変化し、黒い甲冑の様な物を身に付けた禍々しい姿になった。

 

「姿が変わった……」

 

「ディヤ!!ハァ!!」

 

繰り出される強力な斬撃をかわして、攻撃をしようとするが、隙の無い動きでなかなか攻撃が入らないでいた。

 

「ヴァァァァ!!」

 

巨大なブレードを一振りすると、大量の斬撃が空中を飛んで一夏を襲ってきた。だが、一夏はそれを冷静に砕いていく。何度も繰り返し繰り出させるこの技。だが、苦戦する様子もなく砕いていく。だが、

 

「ハァ!」

 

「ッ!?」

 

自分の背後に来た物を破壊し終えた時、背後から光の鞭を使って一夏を拘束した。

 

「ハァァア!!」

 

「ウワァア!!」

 

電撃が鞭を伝って一夏を襲った。その様子を地上からは不安そうな目で見ている千冬達がいる。

 

「ハァァ……ハァア!!!」

 

エナジーコアを光り輝かせ、コアファイナルでエネルギーを放出して光の鞭を破壊した。拘束から出ると、マッハムーブを使って距離を取る。そして、右腕をエナジーコアまで持っていき、降り下ろすと、赤い姿、ジュネッスに変身した。

 

「ディア!!」

 

互いに走り出し、距離を詰めて攻撃に入ろうとする。バルタンは一夏が近付くと、右腕で全力で殴ろうとしたが、一夏はその拳を破壊した。だが、すぐに鉤爪に変えて、一夏と向き合った。

 

「ハァ!ディヤァ!」

 

バルタンも攻撃を入れるが、パワーアップした一夏に攻撃を受け止められ、一夏に攻撃を入れられた。姿を変えたことで、力の差が埋まったのだろう。

 

「ハァ!」

 

「ヴァア!!」

 

攻撃を受け止めていなし、隙を作り攻撃を入れる。バルタンの姿が変わった瞬間は一夏が劣性だったが、ジュネッスになることでそれが変わった。更にマッハムーブを使い、スピードで相手を翻弄しながら戦っている。が、バルタンもただやられる訳ではない。一夏を囲むように影が広がり、6体に分身したのだ。

 

「デュア!」

 

それに合わせて、一夏も自分を6体に増やした。

 

「嘘だろ……」

 

「驚いたな……」

 

千冬たちは一度巨人同士の戦いを見たことがある。それも十分に人知を越え、非常識な戦いにも思えるが、今目の前で見ているこの戦いは、あの時の比ではない。ブリュンヒルデの称号を持つ千冬でさえ唖然としている。

 

「デヤァア!!」

 

「ハァア!!」

 

どの分身もお互いに全く引かない戦いだ。だが、一夏が大きな攻撃を入れようとすると、全員消えてしまい、声だけが聞こえるようになった。これを見ると、一夏も分身を解いていつでも動けるようにしておいた。

 

「デェエ!!」

 

バルタンが再び出てくると、一夏はバルタンに近付いて攻撃を叩き込んだ。徐々に一夏がバルタンを押し始めたのだ。

 

「トァア!!」

 

バルタンに大きな一撃を入れると、バルタンの体を持ち上げて全力で投げ飛ばした。大分ダメージが出てきたのか、ふらふらと起き上がった。だが、それでもバルタンの闘志は収まらない。肩のアーマーを無数の針へと変えて、一夏に放ったのだ。

 

「ディィイ!!」

 

だが、一夏はサークルシールドを張り、全て弾いた。攻撃が止むと、これ以上バルタンを傷付けないために、戦いを終わらせようとした。

 

「ハァァ……ディヤァ!」

 

オーバーレイ・シュトロームだ。だが、威力はセーブしてある。死にはしない。戦意を喪失させるくらいに加減してある。

 

「ウワァァァァ!!!」

 

地面を抉りながら、バルタンは後ろに吹っ飛ばされた。これでもう戦う気力は無くなった筈だ。だが、それでも前へと歩いてくる。もう戦いたくないとは思いながらも、一夏は構えを取った。だが、バルタンは手を前に出し、もう戦うつもりは無いと意思表示をした。バルタンの目からは大粒の涙が溢れている。そして、

 

「グゥ!!ガアアアアアアア!!ウゥ……」

 

自爆をして自ら命を断った。助けようと一夏は手を差し伸べるが、力なく倒れるバルタンを見て、手を降ろした。

 

『自爆したようです。バルタン星人は、せめて自分達の子供だけでも、この星で幸せにしてあげたいと望んでいたのかもしれません……』

 

白式の言う通りなのかもしれない。自分達の星ではいずれバルタンと言う種族は滅びる。自分達の犯した罪でだ。だが、子供たちにもその罪を背負わせたくは無かったのだろう。

 

「ハァァ……シュワ」

 

一夏は光を集中させると、姿が変わってしまったバルタンに浴びせた。すると、禍々しい姿から元のバルタン星人の姿に戻った。そして、一夏もアンファンスの姿へと戻っていった。

 

そしてその頃、学園の付近に停めてある車の中では、IS委員会実働部隊の作戦参謀のシゲムラが、ミサイルの照準を一夏の急所に合わせていた。

 

「照準はいいか?絶対に外すなよ。1発で殺さないと面倒なことになる」

 

「照準OK」

 

「よし。今だ!」

 

一夏に照準を合わせると、発射用のボタンを押そうとフタを開けた。だが、ボタンを押す直前で邪魔が入った。

 

「シゲムラ!お前何やってんだ!?」

 

千冬が車の中に入ってきたのだ。そしてシゲムラを掴んでボタンから引き剥がした。

 

「お前、ウルトラマンに何をしようとしている!」

 

「グッ!ウルトラマンであろうとETであることに変わりはない!人類にとって危険なものは全て!」

 

「貴様ァァ!!」

 

シゲムラを抑えていると副官が邪魔をしてきた。だが、それを殴って再びシゲムラを抑えようとする。しかしボタンは押されてしまった。止めるためにパネルを操作しようとしたが、邪魔されて車外へと引きずり出されてしまった。

 

「え!?織斑先生!?」

 

「ミサイルを止めてくれ!」

 

箒と鈴やその他馴染みのメンバーが車に入ってきた。千冬は箒たちにミサイルを止める事を頼むと、シゲムラと副官を1人で抑えようとした。

 

「えぇ!?これどうやるのよ!?」

 

「取り敢えずボタンを弄ってみろ!!」

 

見たこともない機械ゆえ、戸惑っている。確かにミサイルを止める為にどうにかしてくれと言われれば、当然戸惑うだろう。箒と鈴はパネルのボタンを色々と操作して、残りの3人はしたから配線を弄っていた。

 

千冬も外で抑えているが、2人相手にするのは厳しいようだ。が、そこに1人の助っ人がやって来た。

 

「織斑先生!シゲムラをお願いします!」

 

「はい!」

 

香華だ。香華が千冬を助けに入ったのだ。副官の方を抑えると、千冬にはシゲムラの方を任せた。2対1ではキツかったが、今は2対2。数のハンデは無くなった。香華は副官の攻撃を全てかわし、腕を掴んで間接技を決めて固めた。倒れた後に後頭部に拳を叩き込んだので、しばらくは動けないだろう。

 

「20秒切ったぞ!」

 

「あぁ、もう!皆離れて!!」

 

時間が無くなることに焦り、鈴は全員をパネルから離れさせると、甲龍を展開して、パネルに衝撃砲を入れた。これで、車の中ではパネルがあった場所には風穴が開いて、かなり強引だがミサイルの発射を中止させた。鈴の大胆な行動に、見ていたメンバーは若干引いている。

 

千冬もシゲムラを一本背負いで投げると、間接技で動けなくした。そこに車から箒達が出てきて、発射停止成功の知らせを受けた。

 

「あぁ。なぁシゲムラ!お前は恥ずかしくないのか!?ウルトラマンはな、命を懸けて私達を守った。それを見ていたらな、無条件で信じたくなるもんだろ!」

 

そして一夏は、バルタンの亡骸をバルタン星人の子供達に受け渡した。バルタンを受け取ると、バルタンの子供達は、地球に向けてメッセージを発信した。

 

『そして、私達自身が汚してしまった星を、私達の星の運命と共に過ごします。さようなら。そして最後に、地球の子供達へ。決して夢を失わないで下さい。大人達が夢を捨てて、現実だけを追い掛けた結果が、私達の星の破滅だったからです』

 

その言葉を残し、バルタン達は自分の星へと帰っていった。だが、一夏の表情は暗く、その背中からは悲しみが感じられる。




ネクサスには分身はありませんが、今回は大目に見てください。

次回で最終回!多分。次回もお楽しみに!感想と評価、活動報告もよろしくお願いします!!

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