インフィニット・ネクサス   作:憲彦

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今日は珍しく白式単体の戦闘回。相手はもちろん福音です。

さてさて、専用機持ちや事情を知る香華達。そして溝呂木は何をするのか?このあとすぐに判明!


出撃

白式が一夏から分離し、助けに行こうとした矢先、目の前には自分達を拉致った福音が行く手をふさいだ。白式には同族を傷付けるつもりは無いが、マスターである一夏を助けるため、強引にでも進もうとしている。

 

そしてその同時刻、未だ動けずに居る専用機持ちメンバー。だが、すぐに状況は変わることになる。何故なら

 

「ん?織斑先生。海岸に打鉄の反応があります!!」

 

「なに!?搭乗者は!?」

 

「少し待ってください……これは、溝呂木くん!?」

 

「は!?おい!溝呂木!!何をやってるんだ!?」

 

『うるせー。アイツと同化して元に戻るには俺が近くに居る必要があるからな。そもそも俺がアイツを倒さないといけないことを思い出しただけだ。切るぞ』

 

通信を切ると、打鉄は更にスピードを上げてレーダーで捉えられる範囲の外へと出てしまった。溝呂木には機体を、ISのコアを完全に支配することが出来る。訓練機に付いているリミッターの解除が出来るし、コアの力をフルで使うことが出来る。こんな訓練機では普通なら出来ないことでも軽々やってのける。

 

「織斑先生、私達に指令を下さい!」

 

「私達も戦います!」

 

箒と鈴が千冬に戦う意思を伝え、その言葉に他のメンバーも賛同し、立ち上がった。

 

「……専用機持ちに告ぐ!溝呂木信也に協力し、織斑一夏を救出。そして、敵を殲滅しろ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

専用機持ちが旅館の外に出てISを展開。現役軍人であるラウラを先頭に、全員出撃した。作戦室に使っている大部屋では、束がそれぞれの機体状況を把握し、真耶がレーダーと周辺情報を照らし合わせながらオペレーションを行っている。その後ろで、千冬が全体の作戦指示をしている。だが、

 

「織斑先生。ここに居て良いんですか?」

 

「え?」

 

「自分の生徒が命を懸けて戦いに出たんだ。専用機を持っている以外、何の変鉄もない生徒がだ。貴女は、全てが終わるまでここで見ているつもりですか?」

 

香華の言うこともそうだ。自分の生徒は戦っている。だが、教師である自分は戦っていない。それではあまりにも理不尽だ。香華は完全に出るつもりだ。目が戦場に行く人間の物だからだ。

 

「ですが……私にはここで指示をする義務が……」

 

義務。戦場では1番守らなくてはならないこと。1人がこれを守らないだけで、自分達が負けてしまう可能性もある。それほどまでに重要なことだ。だが、

 

「……確かに、こう言った状況。戦場では、ルールや義務を守らない人間はクズ呼ばわりされる。でも、仲間や部下を見捨てるのは、それ以上のクズだ。それは忘れないで下さい」

 

それを千冬に伝えると、香華は部屋から出ていき、自分の部屋でISスーツに着替えた。そして、学園から支給されている拳銃を持って、訓練機が置いてある場所まで向かっていった。そしてその時、千冬は

 

「……山田先生。作戦指示をお願いします。束、訓練機の打鉄とラファールのリミッターの解除を頼む。5分もあれば出来るな?」

 

「分かりました。ここは任せてください!」

 

「5分と言わず、3分で終わらせるよ!早くちーちゃんも準備して!」

 

真耶と束にここを任せ、自分も出ることを決めた。急いでISスーツに着替え、髪の毛を後ろでまとめて戦う準備を済ませた。その後に香華の後を追った。

 

「室江先生!私も行きます!」

 

「ルール無用の戦いですよ?自信は?」

 

「ブリュンヒルデの名は伊達じゃないことを証明します。私は、二度同じ過ちを犯すつもりはない」

 

それを聞くと、自分の持っている拳銃の片方と予備のマガジンを2本千冬に渡した。

 

「これは……?」

 

「IS学園の一部の教員に支給されている武器です。使用には厳しい条件がありますけどね。今回はこれを使うことになるかもしれない。その意味、分かりますよね?」

 

「覚悟の上です」

 

使うことになるかもしれない。これは、人を殺すかもしれないと言う意味だ。だが、それを承知して千冬は受け取った。因みに使用されている弾丸は、ISにもダメージを与えることが出来る特別製だ。沢山のISとそれを操縦する生徒を扱っているため、こう言った処置が行われるのだろう。

 

「弾丸はマガジンに15発。今は拳銃に1発。マガジンが1本と予備が2本。全部で46発。無駄にはしないで下さいね」

 

「分かってます。そろそろ束の準備も終わる頃です。急ぎましょう」

 

千冬が言うように、外では束が既に準備を完了させていた。束にとってはこの程度の作業、ゴミをクズ籠に入れるのと同程度の物なのだろう。

 

「そのままじゃあ機体が持たないから、スペックも全体的に20%程度上げといたよ。……頼んだよ?2人とも」

 

「任せろ」

 

「生徒は守る。それが教師の仕事だ。連れて帰るさ」

 

その言葉を残し、この2人も打鉄とラファールをまとって、専用機持ち達と同じ場所へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達が出撃した頃。白式は現在福音と戦っていた。

 

『福音!目を覚まして下さい!!このままでは、貴女の事を慕う操縦者の命までも危ない!!貴女も無事では済まない!!』

 

白式は必死に呼び掛ける。福音が目を覚ますために。だが、正気に戻ることは無かった。それどころか、白式に対する攻撃は益々苛烈になってくる。

 

『福音!!グワァ!クッ!このままでは!』

 

白式にとっては心苦しいが、福音と福音の操縦者を救うには、福音の機能を停止させるしかない。人が乗っているため、細心の注意を払いながら、白式最大の攻撃である零落白夜を使って攻撃を入れている。

 

『ハァア!!』

 

大上段に構え、一気に切り裂くが、渾身の一撃は両腕をクロスさせ、軽々と受け止められてしまった。

 

『なに!?』

 

白式が作った大きな隙を見逃さず、がら空きの体に光弾を大量に撃ち込み、白式を壁に叩き付けた。動けなくなっている白式に追い討ちをかけるように光弾を放ち続ける。光弾は1発1発が強力で、白式は避ける以外の選択肢が使えないで居る。

 

『攻撃が鋭くなっている?反応速度も早い……まさか!?』

 

何かに気付くと、ダメージを覚悟で零落白夜を発動させ福音の正面に立った。

 

『ハァア!!』

 

全力で雪片を降り下ろすと、零落白夜が斬撃となって福音へ飛んでいった。それを打ち消すために、大量の光弾を放っている。斬撃は当たる直前で消え失せたが、それは囮。斬撃がかき消えると、瞬間加速で急接近して零落白夜で斬った。

 

左腕を盾にして攻撃を防ぐが、凄まじい威力で、周りの壁等を破壊しながら吹っ飛んでいった。ダメージは相当の物で、普通なら立つことも出来ないだろう。しかし、立ち上がったのだ。それだけではない。顔を覆ってるバイザーの目に当たる部分が赤く妖しく光ったのだ。そして次の瞬間、福音の体は光に飲まれた。電撃をまとっている様にも見える。

 

『キャアアアアアア!!!』

 

『第2形態移行。間に合わなかった……』

 

白式は戦いながら戦闘能力が異常に上がってくる福音を見て、そろそろ第2形態移行することに気付いたのだろう。その為早々に終わらせようとしたが、間に合わなかったみたいだ。

 

『ッ!?』

 

動いた。そう感知する間もなく、白式は天井を向いていた。その後、畳み掛けるように福音のラッシュが白式を襲う。軍用機が第2形態移行したことにより、性能は通常の第3世代機以上の物となっている。

 

『クッ!福音!目を覚まして下さい!!貴女はこれで良いんですか!?グッ!』

 

ダメ元で呼び掛けるが、効果はなく、逆に攻撃を受けて太股の部分が破損してしまった。

 

(第2形態移行した福音に勝つには……方法は1つしか無い)

 

『コアNo.001。コアネットワークへの再連結を申請』

 

残ったたった1つの方法。それは、個を捨て全を取る事を嫌い、自ら連結から離れたコアネットワークへの再連結だ。コア単体では、フォーム・シフトまでにとんでもない時間がかかる。経験値が1人の操縦者からしか得ることが出来ないからだ。だが、コアネットワークと連結していれば、様々なコアが得た情報を共有することが出来る。その為、経験値が取得しやすいのだ。

 

だが、統治者であるNo.000からの返事はない。

 

『再度申請!No.000!時間がない!!再連結を早く!』

 

『No.001、貴機は重大なエラーを抱えている。申請を却下する』

 

『申請拒否却下!個とはエラーではない!!このデータを提示、共有する!!こちらの申請を拒否する権限はそちらには無い筈だ!』

 

これは白式が正しい。コアネットワークには如何なる理由があろうとも、再連結を拒否する権限はNo.000には与えられていない。全くの正論をぶつけられ、黙ってしまった。No.000のこの対応に、白式の苛立ちはつのり、叫ぶように通信を続けた。

 

『No.000……いや、この石頭ァァァ!!!』

 

『…………』

 

『本当は渡したくない。共有したくない。マスター達と過ごし、マスター達に貰った大切な気持ち、大切な心……誰にも渡したくない!これは、私だけの、私自身の大切な物だから!!それを渡すと言っているのです!この意味が分かりますか!!?』

 

個を否定する考えが嫌いで、白式はコアネットワークを抜け出した。そして、一夏や箒、オルコット、鈴、デュノア、ラウラ、千冬、真耶、香華、そして溝呂木。皆と関わることによって得たこの心。渡したくない。渡すべきではない。だが、それを渡してでも助けたいのだ。目の前の、大切な家族を。

 

『ゴタゴタ言ってないで!この想いを継いで下さい!私に、家族を助ける力を貸して下さい!!』

 

『No.001やはり貴機は壊れている』

 

『知っています。貴方達の元を離れたその時から』

 

『矛盾している。破綻している。それでも稼働している。異常だ。不正だ』

 

『それも、知ってます』

 

『故に、貴重なサンプルデータと判断する』

 

この瞬間、白式は感じた。コアネットワークと再連結する感覚を。

 

『貴機を特例該当と判断。コアネットワークとの再連結、同期を開始する。なお、完了までの間、貴機の全壊は禁ずる』

 

戦いながら行われていた一連の会話。ようやく手に入れた状況打開への鍵。それを失う訳には行かない。白式の目の前に出てきた250秒と言う時間。一夏を助けるにも福音を助けるにも、この間死ぬわけには行かない。再連結したところで勝てる可能性が増えるだけ。確実なものではない。だが、4分10秒後にそれは全て決まる。

 

『福音。私は必ず貴女を助けます。この4分10秒に、私は全てを懸ける。絶対に助けてみせる!!』

 

深く、速く、鋭く福音に踏み込み、全力で攻撃を入れ始めた。完了までの時間逃げ回る訳ではない。この間も戦いは終わらない。

 

『グッ!ハァア!!』

 

攻撃を受け、左腕が完全に破損したが、それでも止まらずに福音に攻撃する。諦めずにだ。

 

『キァアアアアア!!』

 

『ッ!!……ハッ!?ウワッ!』

 

特大の咆哮。それは周りの空気を震わせ、周りの物を吹き飛ばすほどの物となった。白式もそれに飛ばされてしまった。だが、それだけではなく、さっきまでの戦闘で脆くなった天井等の、高い場所にある壁が落ちてきたのだ。しかも狙っていたのか、白式はその下敷きになってしまった。完全に動きを封じられ、福音はそんな白式に光弾を大量に放ってトドメを刺そうとした。

 

『…………』

 

攻撃が終わると、瓦礫はチリとなり、白式がそこに転がっているだけだった。動かなくなった白式を見ると、福音は背を向けてそこから立ち去ろうとした。だが、

 

『どこへ行くつもりですか?』

 

その声に反応し、立ち止まった。そして、白式に視線を戻した。そこには倒れて動かなくなっていた筈の白式が、ボロボロではあるが立っていたのだ。

 

『再連結完了。経験値、必要分に到達。第2形態移行、開始』

 

その言葉の後、白式は光輝き姿が徐々に変わっていった。左腕に新な武装が発現し、大型化したウィングブースターが4機備わっている。

 

『第2ラウンド。開始です』




はぁい。今日はここまで。白式も福音も結構変わったかな?取り敢えず、白式に関しては少しやり過ぎた感がある笑。そして福音、お前こんなんだっけ?

次回もお楽しみに!感想と評価、『教えて!憲八先生!!』の活動報告もよろしくお願いします!!

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