突然だけど、私ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔の実力は『恐ろしい』。その一言に尽きるの。
え?なんで恐ろしいかって? それはつい数日前にさか戻ることよ・・・。
~数日前~
私はいつものごとく爆発を起こしてしまい、後片付けをしていた。使い魔もきちんと後片付けに協力してくれた。・・・図体がでかいせいか逆にホコリをまき散らしてたけど。
というわけで私は使い魔に自由に行動していいと命令した。すると使い魔は素直にどっかヘ行ってしまった。・・・本当に自由に行動しなくてもいいじゃない。
そんなことを考えながら後片付けを終えて食堂に向かうと何か騒がしかった。
何事かと思って人をかき分けていくとそこにはガタガタと生まれたての小鹿のように震えているあのメイドとそれに対峙しているギーシュの姿がッ! しかもギーシュの頬には二つの紅葉のマークができている。とりあえず私は近くにいるキュルケに話しかける。
「ねぇ、キュルケ」
「ん、なにかしら?」
「これ、何があったの?」
「ああ、実はね・・・」
するとキュルケは話してくれた。
彼が落とした香水を彼女が拾ったこと。それで二股がばれてビンタをくらわされたこと。そしてその席にを彼女に擦り付けて始めたこと。そして今に至ること。
・・・うん。
「止めに行くわよ」
「あなたならそう言うと思ったわ」
私が一歩踏み出そうとした次の瞬間、使い魔は現れた。あのメイドの後ろに背後霊のように立ち、じぃっ…とギーシュを見ている。
「な、なんだい、君は?」
使い魔は答えない(そもそもしゃべらないので答えることもできないが)。じぃっとギーシュを見つめている。
「・・・あぁ、よく見たら君はあのゼロのルイズの使い魔じゃないか。引っ込んでくれたまえ、君には関係ないことだろう」
しかし使い魔はうんともすんとも言わない。ただギーシュを見ている。というよりにらみつけているに近い気がする。なんかわかる。
「ふん、どうやら聞く耳も持たないようだね。使い魔を見るときは主人を見ろ、主人の実力は使い魔を見ろというが…、ルイズと同じように君も大したことないようだね」
私は思わずカチンときた。そして思わずこんなことを思った。
苦しめばいいのに
次の瞬間、使い魔は行動に出た。メイドの前に進んで彼に向かっていった。
「ん、何をする気だい? 君に何g」
全員が驚愕した。なぜかって?
使い魔がギーシュの首をつかんだからよ。
しかも地面にねじ伏せたのよ。なんと
そしてそのままぎりぎりと絞め上げていくの。一気に気絶させるんじゃなくてじわじわとなぶって殺しに行ってるみたい。
どんどん彼の顔が赤く染まっていくのよ。だけど気絶してない。どうやら気絶しないぎりぎりの力で絞めてるみたい。・・・何で掃除すらまともにできないのにそこだけ器用にできるのかしら。
「かッ・・・ごぇッ・・・ががッ・・・」
彼はもがきながら杖を握ろうとするが空気が足りないのか手が震えてうまく握れてない。というよりつかめてもあの状態じゃ詠唱できやしないだろう。詠唱は唱えなきゃだめだし。
そんなことを考えていると段々ギーシュが白目をむき始めた。私ははっとして叫んだ。
「やめなさい!」
すると使い魔はパッと手を放して私に向かってきた。皆が私から離れていく。
使い魔は私をじっと見る。私も負けずににらみつける。
するとギーシュが復活してむせながら私と使い魔に話しかけた。
「き、きみたち・・・僕の誇りに泥を塗ってくれたな・・・」
こいつはいったい何を言ってるのだろう?
「ヴぇ・・・ヴェストリの広場で決闘だ・・・」
「貴族同士の決闘は禁止されてるわよ?」
「僕の首をよくも絞めてくれたな、使い魔…!! これは『死』を持って償わせてやる…!!」
次の瞬間、使い魔は私とメイドをつかんでテーブルの上にほうるとギーシュの肩をグワシと掴んだ。
「な、なにをする・・・!! はなッ・・・!!」
次の瞬間、異変が起こった。ギーシュの指がボロボロと崩れ始めたのだ。
「な、なんだぁ――――――――――?!!!!」
彼が叫ぶ。全員が一体どうしたのかとギーシュに近づいた。すると全員にも同じような効果が表れたのよ。
「う、うわぁああああああああ~~~?!!」
「わ、わたしの指がぁああ~~~~~~!!」
「いやぁあああああああああ!!!!」
私とメイドは訳が分からず机の上でガタガタと震えていたわ。その間にも異常事態はどんどん加速していくのよ。よく見ると使い魔の管という管から緑色の何かが噴き出してるの。私はあれが原因じゃないかって直感で思ったの。
私は呼びかけたわ。
「やめなさい!」
するとピタッと異常事態が止まったの。傷口はそのままで。ギーシュはほぼ死にかけていたわ。
この後聞いた話だけど学園中の人間や使い魔がカビに侵されていたらしい。
ちなみになぜ首を絞めるのに器用かというと元の本体の影響です。