DS - ダイアグラナル・ストラトス -   作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)

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時間的に結構飛びます。そしてついにあの事態が!

更に意外な展開を盛り込んでみます。もう原作の影も形も残ってねぇや(今更


00-06 総合進学案内と異変

 それから一週間後。一夏は鈴と一緒に弾や数馬と一緒に総合進学案内の会場に来ていた。

 R2を導入するだけあって、来場者には可能な限りオーグマーをはじめとしたAR機器の使用を推奨しており、一夏と鈴もつい先日、数馬の伝手(つて)で初期型のオーグマーを都合してもらい、DSOで稼いだポイントも使用して超格安で入手。弾と数馬もこの機を利用し、先月発表されたばかりの最新のAR機器『オーグマーⅡ』を入手していた。

 最も、一夏はオーグマーを入手してから即座に魔改造をした上、DSOのローカルメモリーをナーヴギアからコピーし、これをサブで使う気満々なのを鈴に(たしな)められたが。

 

 今日の一夏は鈴がコーディネートしたのだろう、白の半袖Tシャツに黒のベスト、黒のイージーアンクルという格好で、首にはアクセントでシルバーリングのついたレザーネックレス。髪もセットしてさわやか系。いつも付けているリストとアンクルも一つのアクセサリとなる配慮がなされている。

 弾は緑のカーゴパンツに赤を基調とした迷彩シャツ。腕にはゴツい腕時計をあしらい、ストリートミリタリーで統一。トレードマークの長髪とバンダナも相俟って、ワイルド系イケメンに化けた。

 数馬は七分袖の薄水色のYシャツとベージュ色のスラックスでスラリとした線を強調、革製の腕時計をアクセントに、カジュアルにまとめられ、実年齢より2つか3つは年上に見え、このメンバーでは引率の戦士と言われても違和感がない。

 鈴もトレードマークであるツインテールをおろし、リボンを使って襟足でゆったりとまとめ、薄いクリーム系のラッフルブラウスに空色のパラッツォパンツ、足回りも低めのミュールに履き替え、普段と違っておしとやかなイメージに変貌。グロスとファンデで軽く化粧もして、一夏と並ぶと絵になり、一見すれば知的なカップルにしか見えない。

 

 それに気づいた弾と数馬が二人を見てニヤニヤし、一夏と鈴は顔を見合わせた。

 

「なんかヘンなものでも食べたのか?」

「ンなワケあるか! その服、鈴のコーデだろ?」

「なかなか鈴もスミにおけないねぇ。こういう所で無言のアピールとは」

 

 一夏は二人が何を言っているのか理解できなかったが、鈴は速攻で気付き、自分の服と一夏を交互に見比べると、急に真っ赤になって否定しだした。

 

「いや、あのっ、ち、違うからねッ! これ虫除け防止だから!」

 

 会場内は昨今の男女比で男が少ないことを考慮し、自分が虫よけになって一夏の負担を減らそうとコーディネートしたが、落ち着いて考えれば計画的犯行にしか見えない。

 ついでに『虫除け防止』だと意味がかぶり、一周回って寄ってくる意味になることに気づいてすらいない。

 

「いやいや。今回僕たちはお邪魔虫だと思いませんか、弾さん?」

「そうですねぇ、これは是非とも鈴さんに頑張って貰いたい所です」

「ねぇ、ホント違うから!」

 

 真っ赤になって否定すればするほどドツボにハマっていくが、一夏一人が理解できず、話についていけてない。

 そうしている所で、鈴のオーグマーにメッセージがポップ。何かと思って開くと、数馬からのメッセージで『一夏は気付いていないから、このままなし崩しにオトしてしまえ』とのアドバイス。なんかイッパイイッパイになった鈴が数馬にドロップキック。肉盾にされた弾の急所に突き刺さった。

 

「ヒールはやばいだろぉぉ……」

「残念、ミュールよ!」

「男として十分殺傷力ありすぎなんだけど」

 

 結局、騒いでいる所をスタッフに注意され、一夏達はそそくさと会場の中に入っていった。

 

 ちなみに二人がついて来たのは、単純にR2を導入する学校がどういうものか興味があったのと、条件さえよければ志望校にしようと思ったからだ。

 

「おいおい。ここ、IS学園も入ってるぜ」

「IS使えない男子もISに触れらる体験も出来るみたいだね」

 

 弾がARによって空間投影された案内から、目ざとくIS学園の項目を見つけ、数馬も紹介文を見て興奮している。

 DSOプレイヤーであれば――プレイヤーでなくても本物のISを見られるというのはロマンをくすぐるし、千冬がこのパンフを持ってきたのも理解できる。

 というか責任者に織斑千冬の名前がある時点で色々察してしまった。

 

 ……どことなくIS学園が出会いを求めているような気がするのは気のせいだ。そう思いたい。

 

「で、どこから見るの?」

「とりあえず就職率の高い藍越(あいえつ)。自由な校風と学費が安いってのも気になる」

 

 鈴は一夏と一緒に回ろうと色々眺めている。IS学園も気になるが、切実な現実の方が先だ。

 

「俺は相越見て来るけど、皆はどうする?」

「あたしも見てみる」

「俺もまずはそこかな」

「なら僕も一緒に。IS学園は余裕があったらついでに見てみようよ」

 

 オーグマーを手に「藍越学園」と呟くと、空間投影されたナビが起動。一夏達はそれに従って歩を進めた。

 

 

 

***

 

 

 一通り進学校案内を回り、IS学園のブースに回った頃には、男性陣は既にクタクタになっていた。

 

「む、来たか――って、どうしたそれは?」

 

 一夏達を見つけた千冬が一行を見て驚く。

 一夏のシャツはヨレヨレ、ベストやズボンのポケットからはクシャクシャになったメモが飛び出し、髪もまるで暴風に晒されたかの様にボサボサで、その隣で鈴が不貞腐(ふてくさ)れている。

 後ろにいる弾や数馬も似た様なもので、数馬は首筋に虫刺されのような跡もあるし、弾に至ってはトレードマークのバンダナがなく、胸元や頬にはグロスでつけられたキスマークがチラホラ見えていた。

 

「千冬姉、女子高生って怖いんだな……」

「あぁ、そういうことか」

 

 なんだかんだ言ってこの3人が3人ともイケメンの部類だ。

 数馬の優男系、弾のワイルド系、一夏の微ショタ系とジャンル別けもされており、それに()てられたお姉様方にもみくちゃにされた訳だ。

 特に一夏がもみくちゃにされたのは、ショタ系に目覚めちゃったお姉様方にチヤホヤされた挙句、連絡先を貰った事で鈴が不機嫌になってこの状況が出来上がった、といった所か。

 

「その向こうにメイク室がある。私の名前を出して直してもらえ」

「……そうします」

 

 鈴が一番ヘロヘロな一夏を引っ張り、ゾンビの如く二人がそれに続いた。

 

 

 

***

 

 

 20分ほどして4人が揃ってやってくる。一夏はシャツも用意されたのか、着ていたTシャツは半袖のYシャツに代わり、数馬もホスト系に着替えさせられている。弾に至っては長い髪を(まと)められ、服装もミリタリー系からロック系に変わっていた。

 

「IS学園の人達って優しいんだな」

「まさか服まで用意してくれるとか思わなかったぜ」

 

 生徒達からこうなる可能性を示唆され、予算内で適当な衣装を用意しておいたが、まさか本当に使う事になるとは千冬も思わなかった。というか一夏のYシャツは確か去年の学園祭で生徒が使ったヤツじゃなかろうか?

 

「着ていた服はどうした?」

「ボロボロだから処分してくれるって」

 

(絶対お持ち帰りする気だろ、あいつら)

 

 服は後で千冬が回収しようと決めた。何に使われるかわかったもんじゃない。

 ついでに室内カメラもあるかどうか確認しておこうと決めた。

 

「とりあえず、IS学園の案内を見ていくか? 鈴は適性も検査してもらえるぞ」

「あ、ちょっと気になるんで受けてみます」

「んじゃ俺達もそれについてってみます」

「ああ。男子のIS体験は向こうでやっているから、そちらも見ていくといい」

 

 皆で一礼して鈴の適性検査の方へと向かっていく姿を見て、一夏は志望校が見つかったかちょっと心配になった。

 

 

 

***

 

 

 適性検査の方は意外と閑散としていた。

 どうやらピークを過ぎたらしく、人もまばらになってきたタイミングで来たようで、数分と待たずに鈴の順番がやってきた。

 

凰 鈴音(ファン・リンイン)さん、適性検査の結果はAですね」

 

 周りから感嘆の声が上がる。適性Aともなればかなり高い適性だし、技量さえあれば代表候補すら狙える。

 適性結果に満足したのか、こちらに向かってドヤ顔でピース。ああいう所さえなければおしとやかで通せたのに、と3人はお互い顔を見合わせて苦笑する。

 

「この適正ならこのままIS学園の推薦も受けられますが、どうします?」

「いいえ、今日は検査だけで」

 

 あっさりと引いた鈴を見て、弾と数馬が思わせぶりな視線を一夏に向ける。男女間のネタで言い返せるだけの語彙(ごい)力など一夏にはなく、不貞腐れる様に明後日の方を向いた。

 

「さて、あっちでISのふれ合い体験あるみたいだし、行ってみよっか」

「いいのか? その気になれば代表候補とかも狙えるのに」

「一夏がいないもの。行く理由がないじゃない」

 

 弾の質問にあっさりと答える鈴に、二人が一夏を見た。

 また弄られそうな気配を感じ、黙って体験会場の方へと歩き出す。

 

「いちか……?」

 

 ふいに後ろから声をかけられ、ふとそちらを振り向く。

 そこにはポニーテールの少女が驚いた顔をしてこちらを見ていた。

 

「ほう、き……?」

 

 古い記憶の中から、どうにか似た人物の名前を挙げてみる。少女は名前を呼ばれ、涙を浮かべて一夏に飛びついた。

 

「一夏だ、やっぱり一夏だ!」

「ぅおッ、ひっさしぶりだな、(ほうき)!」

 

 少女――箒は泣きながら一夏の名前を連呼して抱きしめてくる。鈴と同い年なのに色々大きくて柔らかいのが当たるが、空気を読んで黙る。

 鈴より大きいからとかいう理由ではない。だから抱きしめられて柔らかいのが当たってるのも仕方ない。仕方ないのだ。

 

「ちょっ、二人とも離れなさいよッ!」

 

 二人抱き合っているのが面白くない鈴が、間に入って二人を引きはがす。更に一夏を盗られまいとするかのように一夏の前に立ち、箒を睨む。

 いきなりの展開に弾と数馬はフリーズ、男三人を放置して鈴と箒による修羅場が唐突に開始された。

 

「あんた何よ、公衆の面前でいきなり抱きついて来るなんて!」

「あ、ああ、すまない。久しぶりに一夏に会ったので我を忘れてしまった。私は篠ノ之(しののの) (ほうき)。一夏の古馴染だ」

 

 箒はぺこり、と一礼して自己紹介。鈴は怪訝(けげん)な表情で箒を見るが、後ろの二人が“篠ノ之”という名前に反応する。

 

「篠ノ之、って、まさかあの篠ノ之!?」

「もしかして、束博士の関係者!?」

 

 いきなりのビッグネームに二人が興奮するが、一夏のひと睨みでここがどこかを思い出して自重する。

 こんな場所で篠ノ之 (たばね)の関係者がいるなんて大声で叫べば混乱は必至。ただでさえ数少ない男が固まっているのに、これ以上の騒ぎを起こせば千冬にも迷惑がかかる。

 

「しっかし久しぶりだな。かれこれ3、4年ぶりぐらいか?」

「もうそれぐらいになるのか。一夏もここに来ていたとは思わなかった」

 

 場所が場所だけに、偶然ではないだろう。ISが発表されてから3年ほど過ぎた頃、要人保護プログラムによって篠ノ之家が散り散りになり、最期の挨拶すらできないまま、彼女が転校して約4年。

 お互い色々あったが、突然の再会に何から話したらいいのか思いつかない。

 

「その、剣道はまだ続けているのか?」

「道場が閉鎖してから他の所に行く気がなくてな。今も鍛錬は続けてるけど、剣はDSO寄りの剣術に変わっちまった」

「でぃーえすおー?」

 

 聞きなれない単語に首を傾げる。それは一体どんな武術だ。

 DSOプレイヤーではない箒に懇切丁寧(こんせつていねい)に一夏が説明する。周りにいる皆もクラスメイトでDSOプレイヤーだと告げると、箒は「そうか」と一言だけ呟き、少し淋しそうな顔をした。

 彼女にとって、剣道は一夏との繋がりの一つと考えていただけに、彼が剣道をやめていたのは少し寂しいものがある。が、彼女の方も剣道は自己鍛錬のためだけに留め、部活に入ってまでやるものではなくなったという。

 それよりも気になったものに目を向けた。

 

「それで、その、彼女は?」

「こっちは「わたしは凰 鈴音(ファン・リンイン)。一夏を振り向かせようとしてる真っ最中よ!」

 

 挑戦状の如く、一夏の言葉を遮り自己紹介。ウソでも彼女と言わないのは鈴なりの矜持か、もしくは一夏へ再確認させる意味で言ったのか。

 箒も箒で鈴の言い放った言葉に何か含みを感じたのか、鈴を上から下へと眺め――胸元で視線が止まり、フッと鼻で(わら)うと、自前のそれを腕を組んで持ち上げてみせた。

 鈴の蟀谷(こめかみ)に血管が浮いた。一夏はその意味を理解したが、なるべく目線をそちらへ向けないように努める。巻き込まれるのはゴメンだ。

 突然の修羅場に一夏が一歩引くと、弾と数馬の二人が一夏に近付く。

 

「な、なぁ、彼女は一体?」

「ああ、箒は前に通ってた道場の娘さんで、一緒に剣道やってた仲だ。千冬姉とも面識あるぞ」

「知り合い、っていう割にはなんかそれ以上の感情持ってる気がするんだけど」

 

 そうかな? と呟き、一触即発の二人を(なだ)めようと一夏が二人の間に割って入った。

 

「と、とにかくここじゃ騒ぎになるし、場所変えようぜ、な?」

「む」

「そ、そうね」

 

 二人はあっさり頷く。どこで騒いでいるかを理解したのか、鈴が一夏の右腕にしがみつく。それを見た箒がムッとし、左腕にまわってそっと右腕を絡ませた。

 

「ちょっ、二人とも――」

「さあ、場所を変えよう」

「そうね、こんな人通りの多い所じゃ騒ぎになるもの」

「その前に手ェ離して、自分で歩けるから!」

 

 半ば引きずられる様にして歩いていく一夏を見て、弾と数馬はアイコンタクトで確認。新たな修羅場が起きると見た二人は、状況を楽しもうとモブに徹する事に決めた。

 

 

 

***

 

 

 紆余曲折あって、皆はISふれあい体験会場にやってきた。展示されているのは日本の主力量産機である打鉄(うちがね)と、フランスの量産機であるラファール・リヴァイブ。

 共に第2世代機で、世間でも割と知られているISだ。弾と数馬は一夏達を放り出し、早速打鉄へと足を運ぶ。

 本物のISを前に弾と数馬が興奮しているが、一夏は一歩引いた先で乾いた笑いを浮かべた。

 

「やっぱ、本物を前にするとダメだなぁ……」

「一夏……」

 

 鈴がそっと一夏を支えるように抱きしめ、箒は事情が判らず困惑する。

 あの日の出来事を越えられたと思っていた。思いたかった。それでもいざISを目の前にすると、あの日の出来事がフラッシュバックする。

 

第2回モンド・グロッソ。

 その陰で一夏を中心に起きた要人誘拐事件。

 後に『モンド・グロッソの悲劇』と呼ばれるようになったそれは、大会そのものを中止するに至り、ISが現行する兵器以上の機動力を見せつけると共に、どこまで行っても兵器でしかない事を世に知らしめ、死傷者多数の大惨事となって世界を震撼させた大事件となった。

 あの事件に巻き込まれて以来、ISに対する感情は複雑だ。憎めばいいのか、恨めばいいのか、それとも――単純に兵器と割り切ればいいのか。

 仮想の空でDSを纏い、あらゆる戦場を経験してきたからこそ考えさせられる。いっそ自分も使えたら何か変わるのだろうか。

 

 そこへ、IS学園の制服を着たスタッフが数人、こちらへやって来た。

 

「あなたもISに触れてみますか?」

「あ、いや、俺は別に」

「大丈夫。男の人では起動しませんし、滅多にない経験ですから」

 

 やたら推してくるスタッフに流され、一夏達はISの前に連れていかれる。妙に上気したスタッフを見て、鈴はまたかと内心呟く。

 この人達も一夏のかわいらしさに充てられてふれあいたかっただけだと理解し、これは何のふれあいなのかと問い詰めたくなる。

 箒も事情を察し、何かされるんじゃないかと心配になって一夏についていき、三人はISの前に立たされた。

 

「お連れの女性はISに触れないで下さいね。起動してしまいますから」

「あ、はい」

 

 鈴が答え、ISの周りには別のスタッフが予防線を前に女性たちを監視していた。そこに箒が呆然とする一夏と一緒になって目の前のラファールを見た。

 

「これが、姉さんの成果か」

 

 感慨深く箒が呟く。確かに初めて出撃した時はテロリストが発射した核ミサイルに巨大隕石の破壊だ。そこだけ見れば人類に大きく貢献したといってもいいが、周りにもたらした被害も甚大だ。

 

「箒。その、あれから家族とは?」

 

 無言で首を横に振る。束を重要視した政府が発動させた要人保護プログラムは、篠ノ之家を崩壊させ、箒の人生を滅茶苦茶にした。

 

「束さんは、今のISを見てどう思うんだろうな」

「急にどうしたのよ?」

 

 鈴が怪訝な表情で一夏を見る。

 

「DSOをやってるせいかな。ISに助けられた人達が、ISを作った束さんの家族を崩壊させ、本来の目的とは違う兵器に仕立て上げて、国同士でケンカしてる――更にはモンド・グロッソの悲劇をも引き起こした」

「姉さんは……いや、姉さんが失踪したのも解る気がする。自分が作ったもので世界に悲しみを拡げていたと知れば、私も耐えられそうにない」

 

 何か言いかけたのを訂正して箒が素直な感想を()べる。

 ISの本来の目的は宇宙開発を主軸としたマルチプラットフォーム・スーツだ。決して現在の様な国家の防衛戦力でも、国威宣揚(こくいせんよう)のためのパワード・スーツなどでもない。

 束が失踪したのは、自らが望んだ形でISが活用されなかったからだと、今はそう思える。それを知った所で何ができるかと問われれば、何もできない自分の無力さを見せつけられてしまう。

 

「あなたもISに触れてみない?」

「え?」

 

 空気を読まないスタッフに声をかけられ、気付いたら両脇を二人の女性にがっちりと捕まえられていた。

 ISに集中していたとはいえ、いきなり現れたスタッフに一夏が困惑する。

 

「あの、ちょっ――」

「大丈夫、滅多にできない経験だし」

「そうそう。気になる事があったらお姉さん達が優しく教えてあげるから」

 

 あれよあれよという間に予防線の中に連れていかれ、監視していたスタッフも参加し、箒と鈴もいきなりの展開に慌てて止めに入るが、スタッフに止められて目の前の展開を見守ることしかできない。

 

 そして一夏はスタッフの手によってラファールに触れる――触れてしまう。

 

(え……?)

 

 瞬間、現実ではありえない光景が展開する。

 絶対防御、バイタルデータ、シールドバリア、ハイパーセンサー、PIC出力、拡張領域(バススロット)、あらゆる機体情報が展開され、それら全ての情報が直接脳内に入ってくる。

 突然の出来事に困惑しながらも、DSOプレイヤーとしての習性でそれらの情報を把握し、理解し、整理した頃、自分がISを纏っている事に気付いた。

 

「うそ……」

「お、男が……ISを起動させた!?」

 

 困惑する本人を余所に、事情が伝播していき周りは騒然となっていく。

 遠くで弾と数馬の驚いた顔と、鈴と箒の何か変なものを見たような目が強く印象に残った。




ようやくというか、一夏がIS起動させました。
原作より2年近く早い起動ですが、早い段階でこのイベントを消化しないと他の所が動かせなかったのでこうなります。
箒も早い段階で接触させたのも重要だったり。後で驚く展開となればいいのですが。

Q:オーグマーがあるって事は、OSも絡むの?
A:現時点ではシステムまで。それだけでも本編に重大に絡みます。
 ISとの技術レベルから、あってもおかしくないガジェットであるのと、今後の展開で重要な部分を占める技術なので入れてます。対極に位置するあのシステムも絡めることができますし、IS側のアレにも関係してくるので。
 後々出てきますが、かなり深い部分に食い込んできます。少し脳ミソ使うかも?

Q:箒さん、剣道少女じゃなくなった?
A:力と暴力の違いを理解してるどころか、暴力に対して忌避感持ってます。
 この辺は後々明らかにしていきますが、最も身近で間違いを矯正できる存在がいたのが分岐点。
 今後、箒の成長に大きく関わってくる人達。人選に関しては王道から外れてないはず。むしろ原作でどうしてコレをやらなかったのかと。

Q:この事態は束さんが仕組んだもの?
A:原作同様、束さんは直接関わってません。
 束さんが関わったのはナーヴギアの魔改造のみ。
 むしろ○○が仕組んだ展開。ある意味予想外で計画通り、といった所です。
 ちなみに今あなたが考えたのは半分ハズレ。既に答えのヒントとミスリードは作中に出ています。

Q:男達、モテ過ぎない?
A:一夏世代の男は希少なので、ハロー効果が重なればこうなります。

 ※ハロー効果とは身形(みなり)を清潔に保ち、自信を持つ自分を演じる事で、周りに好印象を与える心理効果。要はリア充になる手段の一つで、ある程度なら顔や趣味は妥協できるようになるらしいです。
 論文も出ていて、ネットでもある程度調べられます。気になる方は調べてみて下さい。

次回、早々に次の展開へ進みます。

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