DS - ダイアグラナル・ストラトス - 作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)
ホームドラマのコメディなどでのツッコミからサスペンスや推理もので行き詰まった状況まで幅広く対応できる単語なのに、「What!?」だけでだいたい状況が理解させられるので、最近使われなくなったらしい。
投稿してたと勘違いして、ルビコンでコーラルに焼かれまくってた作者です。修正しまくってたら誰得1万5千字オーバー……
リアルも忙しいのでまだ2週目が終わったばっか。ログだのパーツだのも集めきってないどころかSランククリアもしてないよ(´・ω・`)
その頃、最初に一夏に接触したIS襲撃部隊の二人は装甲車部隊に回収され、事情を聞かれていた。
「気がついたか。何があったか話せ」
「……ファーストアタックに失敗した。あのガキ、ただの中学生じゃなかったわ」
「あれからどうなっている?」
「
チッ、と舌打ち。自分達のISを強奪してそこまでできる少年に、嫉妬とも恨みともつかない感情を持て余す。
「二次対象だった例の少女達は?」
「ドイツと合流し、日本政府の関係者に保護を受けた。未確認ではあるが、これには篠ノ之博士も一枚噛んでいるとの情報もある」
これには彼女達も驚いた。こちらは可能な限り戦力を秘匿するように動いていたのに、博士には筒抜けだったのか。
「ということは
「
「ならこのまま撤退?」
「いいや、可能な限り騒ぎを拡大させる」
言って、手元にあるクーラーボックスに偽装した弾薬箱から缶ジュースを数本、後ろにあったダンボールから小型のリュックサックと予備の携帯を取り出す。
「これは?」
「撤収用のバルーンとC4だ。お前達は織斑家に向かい、これをセットした後に例のポイントで回収してもらえ」
それは事前に計画されていた事だった。もしも作戦が失敗し、撤退を余儀なくされた自体に陥った場合、先んじて一夏が使用しているPCにあるデータを回収し、ついでに家を吹き飛ばして惨事を拡大させる、という最終計画だ。
彼女達は黙ってそれらを受け取り、歩道の陰に隠れるようにして降車。人の流れに合わせて避難する一般人を装って織斑家へと向かっていった。
「
ビルト・フルーク・プッペ――直訳すれば『野生の証明・
この機体はあの場所にあったパーツの寄せ集めの再現機だと思っていたが、そのパーツそのものを組み換え、全く違うモノへと昇華し続けている。その成長速度は目を
その変貌を
(DSOのローカルメモリー、か?)
家から出てくる際、オーグマーに入れていたナビアプリの渋滞情報を利用して人の流れから敵位置を予測し、その後も一般の中学生を演出する小道具として首にかけたままだった。この中にはこれまでイチカとしてプレイしてきたDSOの経験のみならず、それまで作ってきたDSの
ISを身につける時は邪魔だからと
一夏が知る限りでは
間違いなく“あいつ”の仕業だろう。
(ったく、どこが
ご都合主義、ここに極まれり。
今もめまぐるしくステータスが更新され続けているので一夏にもスペックは把握しきれてはいないが、機体の素材にこそ不安はあるものの、現時点でDSの第3世代相当のスペックには到達している。
そうなると、次に気になるのは敵の残存兵力だ。
「残っているのは――例の黒幕気取りぐらい、か?」
あの黒幕気取りが用意した表向きの主要戦力は、一夏が単独行動をした事で戦力が分散された結果、ほぼ潰せたと思う。ダメ元である程度の
千冬が動いている以上、テロリストのIS部隊はもういないだろうし、最悪気付かれなくても
残る仕事はこの騒動を引き起こした黒幕気取りを探し出し、全ての無人機とその拠点を潰せれば幕引き。問題はその
日本政府をはじめとした各国の情報網に
普通に考えれば日本国内は除外。国外や上空であれば衛星の監視もあるので、他国や束の情報網に引っかからないはずがない。
残された選択肢は海中。それも一夏達が戦闘をしていた接続水域外周辺(※1)の外、より見つかりにくい排他的経済水域。そして拠点はおそらく武装した潜水艦、もしくは潜水可能な空母。それも長射程・高火力という
連中の
「――いた!」
地上から東に50キロ、水深80メートルに無人島サイズの巨大建造物が移動しているのをハイパーセンサーで
左右に巨大な剣にも似たユニットが前に突き出し、その中央にはステルス機のような機体が上下に2つ、4つの縦長のユニットで
一夏はこの機体に見覚えがあった。
「ベースはDS型
とあるストーリーミッションの最終防衛ラインに君臨する、
異常なまでの硬さとシューティングゲームばりの弾幕でなみいるプレイヤーを寄せ付けないだけでなく、理不尽な防御力は高火力プレイヤーが数人で囲ってもなかなかダメージが通らず、手持ちの武装を使い切る勢いでなんとか機動要塞を倒しても、中から冗談の様な防衛力を持つ広域近接戦特化のDSが出てくるという鬼畜仕様。
それ以前の公式記録では、最少人数のRTAで挑んだ最大手クラン『ディビジョン』が達成した8人。それもヴェクター率いる全員がエキスパート以上で挑み、最後にヴェクターがギリギリ生き残って勝ちを拾ったという超難度。幾つか違う部分も見受けられるが、あの無人機を運用しているなら、それを支えられる
再構築が完了するまで残り700秒。現時点でも、あの無人機であれば10機程度が一気に出てきても対処だけなら可能。あの機体もDSOと同じ機能があるなら、撃墜は難しくともなりふり構わなければ無力化するぐらいはなんとかなる、かも知れない。
ドイツも弾も、敵勢力のテロリストを黒幕の主要戦力として考えていたから、雲隠れしようとしている黒幕気取りを見落とした。逆に束達は一夏とイチカのバイトにまつわる損得から敵を割り出したが、肝心な所に気づかずに千冬にISを
こんなのを一人で相手取るのは、いかな一夏とて無謀と思えたが、アレに対する優位性を示さなければ、黒幕の思い通り泥沼の経済戦争に発展してしまう
最悪の結果を回避すべく、イチカは武器を構えた。
『新型のIS? ――あの子が来たみたいよ』
「あのガキ、ここまで邪魔しに来たの!?」
スコールの報告と共に、ウインドウに表示された
「
「一人でテロリストのIS4機も潰せたからワンチャン、とか思ったんじゃない?」
「引っ掻き回すんだったら、テロリストにもう何機かISを都合しとくべきだったかしらねぇ」
「最も警戒していた
テロリストが使用していた、未登録の新規コアが搭載されたIS。それは彼女らが用意したものだった。
表沙汰にできない潤沢な資金とISコアを
ただでさえ貴重なISコア、それも足がつかない新規コアと大量の兵器や資金を提供してくれる彼女らは、テロリストにとっての
テロリストが用意したパイロットは、あえて口を出さない事で必然的に三流以下を選出し、意図的に一夏を含めた一般人にISが渡ってコラテラルダメージが発生しやすい状況を作り上げた。
その後の展開に各国が介入できる下地を作ろうとしたが、一夏達が予想以上に動けたのが裏目に出た。
『篠ノ之博士が絡んでいる以上、こちらの手の内はある程度読まれていると見ていいわね』
「博士にも困ったものね。情勢が有利な方についてくれないと、時勢はより混乱するものなのに」
一度は潰した
束から新型機を
「あのガキに現実ってモンを教えてやるのも大人の努めってヤツなんだし、出せるだけの無人機出して潰しちゃいましょうよ」
「そうね――スコール!」
『もう出してるわ』
スコールは一夏が現れた時点で、既に現状出せる10機の無人機を全て出撃させていた。
牽制として出した2機は標的を追い詰めるべく、マイクロミサイルとパルスマシンガンによる弾幕を展開。予想通り弾幕を回避している所へ、拡散ビームがミサイルを巻き込みブラザーキル。爆風と爆煙を使って更に一夏を追い込んでいく。
通常であれば悪手だが、この爆煙にはハイパーセンサーを狂わせるチャフの効果があり、海中に伏せている無人機の存在を隠す。そして相手が少ないと油断した所へ複数機で囲って無力化するという、シンプル故にリカバリーが難しい強襲戦法。
千冬でさえ、初めて無人機と遭遇した時は寸前まで奇襲を察知できなかった。それも今度はスコールが直接コントロールする10機の無人機。ISに不慣れな一夏に対して明らかなオーバーキルだが、過去に遭遇した
先の戦闘を見た限り、あの少年は素人なんて生易しいモノではない。
現に回避中にも関わらず、空中にいた2機のハイパーセンサーを正確に撃ち抜いただけでなく、真下から奇襲してきた1機を蹴り飛ばし、それに追随してきたもう1機を
「え?」
「は?」
「う、そぉ……」
ミサイルの群れは水飛沫によって計器を狂わされあちこちに飛び交い、先程蹴り飛ばされた1機に命中して爆発、そのタイミングで浮上した4機にも命中。爆発と爆風によって損傷しただけでなく、大きく吹き飛ばされて隊列を乱された所に一夏が一閃。更に1機が胴から泣き別れする。
(姉も姉だけど、弟も凄まじいわね)
ファーストアタックから15秒、たったそれだけで10機中6機もの無人機が無力化された事に内心舌を巻くが、スコールはダメージが残る4機に武装展開させ、弾幕を張りつつやられた無人機に指示を飛ばし、海中にある黒い卵に近づける。
壊れた無人機は
『なによそれ!?』
自ら弾幕の中に突っ込んでいき、進路上にあるミサイルを正確に撃ち抜きつつ、
そのダメージも
(まさか――あんな超高速機動を制御した上に、爆発の影響を受け
あれだけの爆発の中、それだけのダメージで済ませる機体制御だけでなく、強固な無人機のシールドバリアを無視するような火力と精密射撃で撃ち込む
スコール自身、同じ事をやるなら事前に相当な集中と覚悟が必要になる。かの
現時点において、既に技量も胆力もスコールを
間違いなく、彼は今後自分達の脅威となる。
そう判断したスコールの決断は早かった。
いざという時に準備していた、虎の子の新規コアを搭載した無人機が12機、更に
こんな所で新規コアだけでなく、機動要塞も使おうとするスコールに岸が焦る。
「スコール! なに勝手な事を――」
『今のでわかったでしょ、アイツは
スコールらしからぬ冷静さを欠いた言動に、岸がヒステリックに反論する。
「あんなガキ相手に何を言って――」
『素人は黙ってなさい!』
「くッ……」
彼女の機嫌を損ねる危険を察して岸達は押し黙るが、そこには抑えきれない不満がありありと浮かぶ。
そんな彼女達を無視し、スコールは既に展開している機体に弾幕を張って抑えるように指示しつつ、新たに展開した無人機は一夏を囲う様に環状に配置して浮上、こちらも即座に武装を展開し弾幕を張って一夏を遠ざけている間に、真下に位置する本体を浮上させつつ全武装を展開する。
中型のミサイルハッチが12基×12門の計144門、マイクロミサイルハッチが24基×18門の計432門、大口径のレールガンが32門、無人機にも搭載されているパルスマシンガンが24門、更には
スコール自身、どこかに
映画でもなかなか見られない、ド派手な戦闘が始まった。
「チッ、思った以上に保有戦力があるな」
四方八方から受ける集中砲火を
少しばかり派手な動きをして
それだけでなく、再構築の影響か
再構築完了まで残り520秒。万全でも怪しい戦力差だが、現状の装備では一人で相手をするのは無茶を超えて無謀。無人機を相手にしながら機動要塞を潰すというのは絶望的だった。
――
「ま、やりようは幾らでもあるさ」
あえて気楽に
多少の被弾は
爆発は連鎖し、右サイドに設置された中小のミサイルハッチとレールガン4基が吹き飛び、装填されていた弾薬にも引火。周辺の装甲を巻き込んで大爆発を起こし、右翼に展開している3基のCIWSが基部から吹き飛ばされ、機動要塞は左に傾いただけでなく、右主砲のフレームも歪む。護衛として周りに配置していた4機の無人機も爆発に巻き込まれ無力化された。
「次ッ!」
延焼を恐れてか、要塞はミサイルハッチと周辺ユニットをパージ。歪んだ右主砲が残っているのをノイズだらけのハイパーセンサーで認識し、その場で反転して両手にライフルを装備。
空中に展開していた無人機2機と、浮上してきた1機のハイパーセンサーを正確に撃ち抜いて無力化し、横合いからの
ビリビリと衝撃を受ける中、一夏はダメージを無視してPICをカット。主砲の衝撃を利用してあえて吹き飛ばされ、大きく距離を取りつつ高周波ブレードを取り出すと、目の前には主砲の一撃で分断された無人機が1機。
ブレードを前に突き出し、
機体を利用されると思ったのか、ブレードに刺さった無人機はユニットをパージ。光学兵器のジェネレーターを暴走させて自爆させようとすると、それを察した一夏は瞬時加速中にも関わらず機体を反転。遠心力を利用してブレードに突き刺さった無人機の残骸をブン投げる!
飛んでいった先は機動要塞の真上。自爆のエネルギーは無人機が内蔵する兵装と周りが発射したミサイルも巻き込んで連鎖的な爆発を起こし、周囲を紅蓮に染めあげた。
爆発で吹き飛ばされた機体の破片はシールドバリアを突き抜け、要塞本体と周辺兵装にも相当なダメージを与え、機動要塞は右後方に展開していたミサイルユニットと4基のジェネレーターが爆発して周辺ブロックごと崩壊。その余波で歪んでいた右主砲は砲身を折られて使用不能、右翼に展開していた8基のパルスマシンガンは基部フレームが歪んで射角を制限され、10基のレールガンはユニットごと破壊されるかフレームが歪むなどして使用不能となり、ミサイルユニットに至っては展開している半数が使用不能になった。
機動要塞の周辺にいた2機もPIC発生機器とスラスターを破壊され行動不能にされ、爆発に近かった4機は爆風をモロに喰らって撃墜。
その隙に一夏は太陽を背にして機動要塞の真上500メートルに位置。主砲の斜角から外れると共にCIWSやレールガンの射角限界ギリギリをキープしながら動き続け、爆風から逃れた1機のハイパーセンサーをライフルで撃ち抜きつつ、バリアで弾かれるとわかっていながら、その向こうにいる
やられた全ての無人機がユニットをパージして新しいボディを回収しに行き、目の前に展開されている無人機は7機。全戦力を投入してから2分足らずで無人機は3分の1になり、機動要塞もかなりのダメージを負っている。
今の攻防でミサイルは利用されると思ったか、警戒してパルスとCIWSをメインにした弾幕を張って近付けまいとし、一夏も要塞の真上という位置を維持しつつも大きく距離をとる。それを好機と見たのか戦線に復帰した無人機を広く展開し、パルスとビーム砲による追撃で牽制して一夏を近づけさせないようにプレッシャーをかけ、左側の主砲が使えるように移動するが、一夏は距離を維持するに留め、今の結果に困惑していた。
「――思ったより柔らかい?」
疲労のため肩で大きく息をしているが、機動要塞がDSOの仕様より装甲が薄くてダメージが通る事に驚く。
冷静に考えてみれば、DSOばりの理不尽仕様を実現するなら、国家総予算並みの資金を投入しても再現不可能な事に気づいて内心苦笑する。知らず知らずの内に結構テンパっていたらしい。
機動要塞は結構な被害を受けて死角を隠すべく、無人機に弾幕を張らせて移動しているが、一夏は意図的に太陽を背にして上空から死角に回り込むように見せかけつつ、無人機の展開をコントロールして武装と射角を制限。残りの無人機が復帰するまでの一時的なものではあるが、今のやりとりでミサイルを使うのは警戒するだろう。
「上手くハマってくれた、か?」
一夏が最も警戒していた武装はミサイルだ。
あのチャフ機能もウザかったが、本来の目的である爆風と衝撃波のよる面制圧も地味にシールドバリアを削る為、使わせない状況を生み出して仕切り直すタイミングを
再構築完了まで残り400秒。初期投入された分の
こちらが中近距離の兵装しかないのをいい事に、相手は遠距離からのビーム砲で撃ち落とそうと戦線に復帰した無人機を広く展開して数の暴力で圧をかけてくるが、太陽を背にしていれば無人機とて視認しての射撃制度は落ちるし、向こうがまいたチャフのお陰で無人機のハイパーセンサーも狂っているのか、かなりの数があさっての方へ撃っている。
それに、いくら連射が可能で威力があっても
一夏は体力を温存するため、あえて距離が開いたままスラスターを使わずPICのみで小刻みに動きながら、要塞からの攻撃を回避する。CIWSの射角にも入ったが、意図して射角ギリギリにいるため散発的にしか届かない。
この状況を逆手に取り、休憩を含めてちょいちょい動きを止めて体力を回復させながらも、あえて向こうの攻撃をダメコンに見せかけたギリギリの位置でかわし、わずかな体捌きも入れて8秒以上停滞し――中指を立てて、
「あんッの、クッソガキャぁぁ!」
「目上のモンに敬意払えやこの○○○○!」
「この(作者検閲)が!」
「(怒られる前に自主規制したくなる暴言)」
「(もはや言葉にすらなってない叫び)」
大量の無人機だけでなく、自分達の財産ともいえる機動要塞もボロボロにされた上でのこの煽り。
(その気になればこちらを追い詰められるのに、なぜ追い詰めない?)
一連の動きを見る限り、こちらを潰そうと思えばすぐに実行できそうなのに、このタイミングでの
(わざと煽って無人機と分断? いえ、まさかより警戒させて休憩する時間を作りたい?)
どちらの狙いかも分からず、退いても深追いはせず無人機による波状攻撃で一夏を追いかけるが、先程とはうってかわって瞬時加速を多用せず、緩急織り交ぜた曲線的な動きでビームやパルスを回避している。その動きは
弾幕の中をノーダメで回避され続ける状況にしびれを切らしたのか、女性権利者達がスコールに意見する。
「何してんのよスコール、さっさとあのクソガキ潰せやァ!」
「相手はISに乗って数時間って素人よ。たった1機になに振り回されてんの!」
「アンタの方がISの操縦歴長いんでしょ。早く潰しなさいよ!」
口々にスコールを非難するが、その言葉の中にひらめく物がある。
(操縦歴の長さ……経験――!?)
『ふふッ――ぁはははっ!』
「スコール……?」
急に笑い出したスコールに岸達は困惑するが、何がツボに入ったのか、構わずスコールは笑う。
『あの子、あの戦法が成功したから味をしめたのかしら?』
「……? どういう事よ?」
『さっきのIS戦でテロリスト達を煽って冷静さを奪ったの、覚えてる?』
説明しながらも、スコールは無人機に警戒して使わなかったミサイルの発射を指示。それも数機はロックオンせず放射状に撃ち、ビームやパルスで撃ち落としつつ自爆。爆炎に隠れてロックオンした本命のミサイルを撃つと、先程まで余裕で回避されていたのが嘘の様に慌てて回避し、逃げ切れないものは撃ち落とされるが、それでも爆風と爆煙は徐々にダメージを重ねていく。
「これは……」
『あの子も相当ジリ貧みたいね。最初の猛攻で
「それで私達怒らせ深追いしてきたのを各個撃破しようと狙っていたけど、あなたは見抜いたと。そういうワケね」
策に気づかされると、それまで激高していたのが嘘の様に冷静になった。
天丼戦術は危険、というのは岸でも知っている。どれだけ練りこまれた戦術であろうと、一度見た戦術は早急に対策されるからだ。いくらゲームで通用する戦術であろうと、IS戦に
『意外すぎる戦術に驚かされたけど、実情を知ってしまえばこんなモノね』
「小細工を弄するだけのガキに踊らされたのは
スコールが不敵に笑った。
一夏が動き出す少し前、弾の指示でラウラたちは行動を開始し、エーリヒが引率するラウラ、クラリッサとドイツ部隊15人は更識と同行。ドイツが用意したIS3機は、更識が用意した対人装備の一部を借り、少女達が乗るマイクロバスに一緒に搭乗して警護。それぞれが散開して作戦を開始した。
千冬も動き出そうとしたが、弾から「一夏を追い詰めたくないなら絶対に動くな」と厳命され、
弾は言わずもがな、数馬、詩乃は頭を抱え、鈴に至っては驚愕とも呆れともつかない表情を浮かべて千冬を
蘭と箒は千冬が現れた時点で希望を
「なんなのだ、一体――」
「千冬さん、それ本気で言ってる?」
「今は千冬さん自身が爆弾だって気づいてないの?」
「千冬さんは確かに現状最強に位置するけど、今は諸刃の剣なのよ」
上から数馬、鈴、詩乃とそれぞれ千冬の存在のデカさを物語るが、どうにもネガティブな意見が多い。IS学園に関する問題は解決させてきている、というのに気づいていないのだろうか?
「IS学園の方なら既に辞表を出してきた。問題はないはずだぞ?」
「千冬さん
苦笑する数馬に蘭と箒が困惑する。功績欲しさにIS学園が辞表をもみ消す可能性はあるが、この暴動の鎮圧に千冬というビッグネームは効果的なのではないのか。
「お兄、これってどういう――」
「詳しい話は後だ。とにかく、千冬さんは絶対に自分から動かないでくれ」
「お願いですから教官は大人しくしててください。あなたの行動次第では、最悪イチカは世界の敵になりかねない」
世界の敵。そう言われて一夏が一人で何もかも背負い込もうとしているという束の言葉を思い出し、話を聞こうとした所へ束からのオープン・チャネルが入り、ウィンドゥを展開する。
『ちーちゃん、まずい事になった。いっくんがトンデモないのを相手にしてる!』
「何があった?」
これ! とリアルタイムの映像が展開され、そこには巨大な空母と
「一夏!」
「ぃちか、さん?」
「なんて無茶を、って――」
「まさか……」
「これって……」
事情を知らない箒や蘭は驚愕するが、鈴は一夏が駆る機体に見覚えがあり、弾と数馬もその機体と相対する巨大兵器にも見覚えがあった。
「一夏が乗ってるのって、もしかしてビルト・フルーク?」
「DSOで一夏が乗っていたという機体か? なぜ
「それに
「DS型
『ンな事話してる場合じゃない! ちーちゃん、すぐにでもいっくんの援護を――』
「悪いが千冬さんも博士も、一夏の為を思うならあいつの所に行くのはやめてもらおうか」
束の要請を弾がピシャリと
「博士、
『一体何を依頼したんだい?』
「それはおいおい。今はアメリカとロシアの部隊が問題だ。一夏がヘイトを稼いでくれたお陰で被害は最小限に抑えられちゃいるが、未だ敵戦力は健在だ。どっちかが
ざわ、と周りが騒ぎ出す。今の今まで動きがない海外勢力が一体何をするというのか。
『アメリカの部隊なら、例の無人機にやられてほぼ壊滅状態。いっくんの助力でこっち側についてくれたけど』
「ならロシアはこっちか。
ドイツのIS部隊は暫し熟考し、現実的な答えを出した。
「……第3世代が2機以上いたら厳しいですね」
「最初からIS戦を想定していたとはいえ、あくまで第2世代の量産機が前提です。数の有利も潰されたら――」
「そこに千冬さんが加勢したら?」
「なに?」
『なに考えてるのさ!?』
意外な質問に千冬だけでなく、束もたまらずツッコミを入れた。たった今千冬が表舞台に立たせられないと言ったばかりなのに、ここで千冬を使う提案はなんなのか。
「勘違いすんな。一夏の所に千冬さんがいることが問題であって、こっちにいるのはむしろ一夏の力にもなりえる」
その際には博士が表舞台に出なきゃいけないんだけどな、と続けると、詩乃と鈴は「ああ!」と察したが、箒と蘭は話が見えず困惑し、千冬は嫌な予感がする。
「だが、一夏の方はどうする?」
「……あいつが
『で、ちーちゃんがドイツと行動する理由は?』
「博士がいるお陰で、千冬さんとドイツが一緒にいる意味を持たせられる。場合によっちゃ、IS学園に辞表を出したって話も
そう説明され、束は数秒熟考。確かにこのタイミングであればドイツと千冬が一緒に行動していても問題ない。むしろ一夏にとってはプラスに働く。
『……ちーちゃん、ドイツと一緒に行動して』
「束!?」
『こうしてる間も、いっくんがいつ落ちるか
ぐ、と千冬が
「とにかく時間がねぇ。千冬さん達は今の立場を理解してないみたいだから情報共有の為に説明はしたが、これ以上いちいち聞かなきゃ動けないなら――」
「残念。どうやら時間切れみたいだ」
数馬がバスの窓を指すと、ビルの合間をぬって姿を見せるISの姿。その機体には千冬のみならず、ドイツにも心当たりがあった。
「あれは――ロシアの第3世代!?」
「
「馬鹿な。
第3世代が現れたと知って詩乃や箒達が顔を青くするが、言うよりも早くドイツ組はバスを飛び出してISを展開。自身を囮にロシアのヘイトを買おうと
『プロトタイプというより
「一夏の仕事が相当よかったんだろうな。能力も半世代ぐらい底上げされてると思った方がいい」
「冷静に分析してる場合か!」
言いつつ、千冬も遅れてバスを飛び出しISを展開。
右手にブレード、左手にライフルという得意のスタイルで、いつでもドイツ部隊と連携を取れる位置をとって、ロシア軍と
『ちーちゃん、連中を市街地から追い出すことを優先して』
『まずはこっちから攻撃せず、所属を聞き出してくれ』
「何も答えなかった場合は?」
『テロリスト扱いで撃墜してくれて構わない。そういう前準備は揃えてある』
用意周到な弾に内心舌を巻きつつ、千冬は了解の一言で済ませた。
諸々の問題だったり突っ込みたい部分はあると思いますが、とりあえず修正版投稿。
プロローグは1話ぶん追加。何も考えずに戦闘パート作ってたら文字数増えてもうた。。。
次回、いろんな意味でブッ壊れ回確定。ようやくはっちゃけられると思ったのに(´・ω・`)
現時点でも敵味方問わず、意図的に行動が繋がっていない部分を残してあるので、読者が考えつかなかったor見落としていた部分が出てくる、かも?
先の展開が読めた、という方は自分で話を書いてみた方がいいです。まず間違いなく、自分よりいいもの書けると思うんで。
【今回の設定】
※1 接続水域
いわゆる24海里。領土権を主張できる範囲で
最初に一夏が戦っていた場所は海上50km地点で、接続水域と排他的経済水域の境界。ここで戦闘をしたのも理由があり、答え合わせ回で出せる、かも?
※2
イメージしやすいのはゲッター2のマッハスペシャル、もしくはトールギスFの擬似トランザム。DS上位プレイヤーは必須技能で、ISなら千冬も(集中すれば)使用可能。
DSOなら鈴と蘭以外は戦闘に織り込めるレベルで使用可能で、鈴は集中すればギリ使えるけど曲芸レベル。一夏や弾クラスになると相手はヤムチャ視点で捉えきれない。
※3 あらゆる軍縮条約
ワシントン海軍軍縮条約、ロンドン海軍軍縮条約、ベルサイユ条約などが有名。
ざっくりした説明をすると「戦争すんのメンドいし、こっちも侵略する気ないから軍事予算削ってその分世界平和に回そうぜ。この条約無視して軍備増強したり侵略したら加盟国からフクロにされても文句ねぇよな?(圧」といった感じの条文もあり、この世界も(表向きは)守ってますが、アラスカ条約と相反する部分もあって、ISがこの条文に加入するかどうかを各国でもめてる状態。
なので機動要塞は条例的にはグレーだけど、使ったら速攻アウトな核兵器ばりの存在。
まがりなりにもこれをボコってるいっくんェ……
話はもう佳境だというのに、相変わらずの遅筆進行。
気が向いたら暇潰しに読んでくだせぇ。