とある少年の生体適応   作:まうんてんうちうち

2 / 3
ようやくテストが終わったので、書き始めます。
更新速度は遅いと思いますが。


2話

「おいおいおいおい……ウソだろ?」

 

 なんでもないメールの内容。ふれあい広場でクレープ食べてるから、来れるんだったら連絡ちょうだい。

 

 普通なら、本当になんでもない内容だ。あ、そうなんだ。今から行くね、で済む内容。

 

 ふれあい広場の目の前の銀行で、銀行強盗が起きてなかったら、の話だが。

 

 銀行から外に出て、あたりを見回す。すぐ右では、白井が金属製の芯のようなもので銀行強盗のひとりを制圧していた。

 

「あら、そこにいましたの」

「ああ……ひどい目に遭った。美琴は?」

「お姉さまなら……あそこにいますわ」

 

 そう言った白井は、ふれあい広場の方に視線を向けた。美琴は何やらあたりをキョロキョロと見ていて、何か、あるいは誰かを探しているようだった。

 

 道路を挟んで向かい側にあるふれあい広場。俺は車が来ていないことを確認して道路を横断する。

 

「何探してんの?」

「ん……あぁ、美旅。早かったわね、どこにいたの?」

「あの煙上げてるとこ。おかげでエライ目にあった」

「どうせ怪我ひとつしてないんでしょ。それより今男の子を探してるから、手伝って」

「すこしは心配してもいいと思うんだけど……なに、迷子かなんか?」

 

 俺の言葉に、美琴はコクリと頷いた。どうやら、学園都市の見学バスに乗っていた乗客のひとりである男の子が、広場から消えたらしい。

 

「じゃあ、俺は広場を探すよ」

 

 そう言って、俺は広場へと入って迷子を探す。

 銀行強盗にあったり、迷子探しをしたり……今日はなにかと忙しいな。

 

「きゃあっ!」

「ん?」

 

 広場に入って十数秒。そういえば、男の子の特徴とか聞くの忘れてたなーと考えていた時だった。

 女性の叫び声が、広場のすぐ外から聞こえた。

 

 反射的に、声のした方を向く。そこには小さい男の子を抱えた黒髪の女の子と、そこから走り去っていく銀行強盗の少年。

 

「黒子ぉ!」

 

 広場に響き渡った美琴の怒声。ここまで怒っている声を聞いたのは久しぶりだ。

 

「あの……大丈夫?」

「はい! ……えっと?」

「ああ……美琴に呼ばれてきたんだけど。今日会うって言ってた友達?」

 

 俺の言葉に、黒髪の少女は頷いた。

 

「その連れですけどね」

「なるほど……大丈夫? ……少し腫れてるね。すぐに冷やさないと」

 

 どうやら銀行強盗に何かされたようで、頰は赤く腫れていた。殴られたか、蹴られたか……傷が残らなきゃいいけど。

 

「あ、あの……御坂さんが」

「ん……あぁ、美琴か。大丈夫でしょ」

 

 そう言うと同時、道路の上を閃光が駆け抜けた。

 

「……ほらな」

 

 美琴の代名詞、超電磁砲(レールガン)が車を撃ち抜いた。ふん、と髪を払って不機嫌に言う美琴。車は放物線を描いて飛んでいき、地面に激突した。

 

***

 

 警備員(アンチスキル)の事情聴取を終えた俺は、伸びをして美琴の元へと向かう。

 

 しかし、このリングペンダントに傷がつかなくてよかった。子供の頃から大事にしてるものだから、傷ついてたら強盗がどうなってたかわからない。

 

「まさか美旅が強盗に巻き込まれてるなんてね」

「直前に不幸なやつにエンカウントしたから……移ったのかな」

「風邪じゃないんだから」

 

 はぁ、と呆れたようなため息を吐いた美琴。

 

 こんな事件に巻き込まれるのなんて初めてだな。本当に上条の不幸が移ったのかな……

 

「それで、美琴に会いたいって子はどこなの? あの黒髪ロングの子は違うでしょ?」

「あぁ、佐天さんね。なんか無理やり連れてこられたらしいけど」

「しかし、美琴があんなにキレたところ久しぶりに見たな」

「そりゃ怒るわよ。今日初めましてだったとはいえ、友達に暴力振るわれたんだし」

 

 それもそうか。俺は上条とか土御門ならわかるけど、あの青い変態はどうも何があっても助ける気はしないけどな。なんか、何もしなくてもなんとかなりそうだし、そもそも、あいつが巻き込まれるようなことなんて関わりたくもないし……

 

「でも、少し意外だったわ」

「なにが?」

「美旅が遊びに来たこと。普段私のこと誘わないし」

「それは美琴が反抗期入ったかどうか分からないから手を出しにくいんだよ」

「反抗期なんか身内なんだから気にしなくても……」

「アホ。超能力者(レベル5)の反抗期はなんかですまないから。軽く天災だっつの」

「……それじゃあ、傷ひとつ負わないあんたはなんなのよ」

「能力なんだから仕方ないだろ。美琴は俺に怪我してほしいの?」

「そうは言ってないわよ」

 

 少しムッとした表情を浮かべた美琴。いかんいかん、少しいじりすぎたか……電撃がとんでくる前にクールダウンさせないと。

 

「すいません、ようやく後処理終わりました……そちらの方は?」

 

 後方から、小走りの音と少女の声が近づいてきた。その声はどこか聞き覚えがあって、どこか俺を懐かしくさせた。

 

「あぁ、初春さん……ほら、私に会いたいって言ってた」

「初春……?」

 

 初春、という名前には聞き覚えがあった。俺の知っている初春という人物は、頭に花飾りをした少女で、西葛西にいた頃遊んだことのある、幼馴染といえる人物だ。

 

 後ろを振り返り、自身の中に浮かんだ予想と、現実とを答え合わせする。

 

「飾利……か?」

「……美旅くん?」

 

 あっけにとられたような表情で、目の前の少女はポツリと言った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。