初めましての方もいるかと思います。息抜き程度の作品ですので、あまり過度な期待とかはしないでください笑
外より圧倒的に科学が進んでいると言われている学園都市でも、夏は暑い。
道行く人は汗をかき、手で顔を仰ぎながら歩く人もいる。俺は能力の関係上汗はかかないが、視界から入る情報だけで気持ち汗をかく。
首元のリングペンダントをいじりながら、特に寄り道することもなく家を目指す。学園都市に来る前、西葛西に住んでいた頃、幼少期に幼馴染からもらった指輪。学園都市に来てからは会っていないが、元気だろうか。
「あ、
「ん……あぁ、美琴か。そっちも?」
学校の帰り道。俺はひとりの少女に声をかけられた。
茶髪の短髪、身にまとっている服は学園都市で暮らす人なら、知らない人はいないんじゃないかというほどの名門校、常盤台中学の制服。
知る人が見れば、常盤台のエース、
俺の言葉に、美琴は頷いた。近くには美琴の後輩……たしか白井黒子、だったか。いつも連れてるが、まさか美琴には友達がひとりしかいないのか?
……まぁ、友達は人数じゃないとは思うけどな。
「なに、こっからどっか行くの?」
「黒子の友達が私に会いたいって言ってるらしくてね。あんたも来る?」
「んー……そうだな、お金をおろしたら合流するよ」
「了解、後で連絡するわね」
それじゃ、と美琴。俺は手を振り返して銀行へと向かう。昔、美旅にぃ! とか言って所構わず抱きついてきた可愛さはどこに行ったのだろうか。もう見る影もない。
「あれ、帰ったんじゃなかったのか?」
「おーう……少し用事ができてな」
銀行に向かって歩くこと数分。見知った少年に出くわした。
「そっちは?」
「もうすぐ夏休みだと思うとテンションが上がりましてね。散歩」
「……補習で潰れないことを祈っとくよ」
「ははは……潰れるんだろうな。不幸だ……」
かわいた笑いで、上条はそう言った。まぁ、
「それじゃ、また明日な」
「おう。じゃあな」
軽いやりとりをすませ、再び俺は銀行へと歩を進める。向かう銀行はふれあい広場前のいそべ銀行という銀行。まぁ、学園都市のどこにでもある平凡な銀行だ。
途中、クレープのチラシを受け取りながら歩くこと数分。目的地へとついた。
「……あ?」
「え?」
銀行の中には、顔に白い布を巻いた3人の男がいた。白い布は見るからにオシャレ目的というわけではなく、顔を隠すために巻いているものだ。
「……運が悪かったな。お前もあっちへ行け」
「……はい」
頭によぎった銀行強盗の4文字。上条ではないのに、こんな不幸にあうのは理不尽だと思う。
銀行強盗の指示に従い、恐らくは客と店員であろう人々の中に移動する。
科学が進んでいて、利便性に優れ、学生は超能力を使えるという夢の都市と言われてはいるが、その実ここは治安が悪い。
まぁ、精神の発達途中である学生が分不相応な力を手にしたら、こうなるのが普通なのかな。俺も学生だけど、俺の能力は攻撃系じゃないし、こんな大それたことはできない。
そんなことを考えているとき、ジリリリリという音とともに、防犯シャッターが入り口を封鎖した。
「あぁ!?」
強盗のひとりが、怒声にも似た声をあげた。どうやら、店員のひとりが防犯シャッターを作動させたようだ。
……しかし、この状況になっては手遅れだと思うんだけど。もしかして、客より金の方が大事なのか?
「ちっ……早く金を詰めろ!」
「は、はい!」
手に炎を浮かべ、店員を脅す少年。どうやら
「……あのさ」
「黙ってろ!」
「……こんなことして、
頭の中に浮かんだシンプルな疑問。この都市は治安が悪いぶん、治安を守る方もそれなりの力を持っている。
とくに、警備員はいざとなったら銃火器も持ち出せる。風紀委員も本来戦闘はダメとはいえ、能力者もいるし、それなりの戦力を持つ組織だ。そんなふたつから逃げられるとは、到底思えない。
「それは……」
「おい、準備できたぞ!」
口ごもる少年。それと同時に、3人組の他の少年が、現金の詰まったバッグを手渡した。
「あとは……!」
手に火球を浮かべた少年は、それをシャッターに投げつけた。シャッターは外に向かって大きくひしゃげ、爆発した。
「逃げるぞ!」
そう少年が叫ぶと、3人組は爆煙の中へと消えていった。
「……ま、いっか」
どうせ風紀委員とかが捕まえてくれるだろうし、なんて考えて俺は出口へと踏み出す。
「……ん、美琴かな?」
何歩か歩いたところで、ポケットの中のケータイが震えた。先ほど、後で連絡すると言っていた美琴かとあたりをつけてケータイを取り出す。
「……ふれあい広場?」
内容は、今はふれあい広場でクレープを食べている、というものだった。