魔法科高校の魔術使い   作:快晴

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第17話

 

顔のない王(ノーフェイス・メイキング)

 

元は中世イギリス、シャーウッドの森を拠点として活動していた伝説の義賊、ロビンフッドが生前に顔や素性を隠して圧政者と戦ったという伝承が宝具となったもの。緑色のフード付きの外套で完全なる透明化、背景との同化が可能になる。

 

それを士郎が持っていたのは、この世界に来て魔術の有無の手掛かりを探すためにまわった博物館の中で見つけたからだった。

 

幹比古の索敵で感知されながらも姿が確認できなかったのは士郎がこれを纏いながら移動をしていたためである。

 

「………アーチャー‼︎」

 

アサシンの足元に倒れた達也。

それを見た士郎の眉間が微かに動く。

 

「随分と好き勝手にやってくれたようだな」

 

冷静な口調で話す士郎だが内心は当然穏やかではない。

 

「………」

「話さずか。まあいい。この濃霧もあと僅かで晴れる。それまでに決着をつけさせてもらう」

 

アサシンにダメージが残るうちに士郎が仕掛ける。干将と莫耶を投影しアサシン目掛けて投げつけた。

 

孤を描くように飛んでいった双剣は正面からの攻撃ということもあり当然避けられるがそれでいい。アサシンの意識が剣に逸れた一瞬を利用して顔のない王(ノーフェイス・メイキング)で士郎は姿を隠す。

 

「自身が狙われる気分はどうだ?」

 

霧の中から聞こえる声に辺りを見渡すアサシンだが宝具で姿を隠した士郎を当然見つけることはできない。

 

数秒の沈黙のあと、痺れを切らしたアサシンがその場から離脱しようと足を動かしたその瞬間、閃光が光る。

 

「ぐっ⁉︎」

 

咄嗟に体を傾けたアサシン。喉を狙った矢の一撃は逸れ、肩の肉を大きく抉り取る。

 

痛みを堪えてすぐさま閃光が飛んできたと思われる方向に投擲剣(ダーク)を飛ばすアサシンだがそんなもの擦りもしない。

 

敏捷のステータスが高いとは言え、攻撃そのもののスピードはアサシンの反応速度では遅すぎる。

 

四方八方、あらゆる場所から飛んでくる矢にその場に釘付けにされたアサシン。

 

打開策を考えるが妙案は浮かばない。

 

一瞬の隙。それさえあれば濃霧に紛れて逃げ切れる可能性もあるのだろうが、その一瞬を作り出すのが何よりも難しい。

 

佐々木小次郎のようにセイバークラスとさえ一対一で戦えるアサシンならまだしも、基本的に気配を消して相手の隙をついて戦うハサンのようなアサシンが、相手に一方的に姿を捉えられているこの状況は間違いなく勝負がついたと言っていいものだった。

 

(くっ……、どうにか機をつくらねば……)

 

思考を巡らす。何か使えないかと辺りを見渡す。

 

そしてアサシンはそれに気がついた。

 

(……使わせてもらおう)

 

アサシンがたどり着いた答えは、足元に横たわる達也の死体だった。

 

身につけていたマントを周囲からの視線を遮るよう円を描く様に取り外し、自身は身を屈め、足元にあった達也の死体に手を伸ばす。

 

「なっ⁉︎」

 

だが、アサシンは死体を掴むことが出来なかった。手が触れるその瞬間。先程まで間違いなく死体だったそれが起き上がったからだ。

 

自己修復術式。

達也の持つ再成の派生魔法。戦闘に支障をきたすダメージを受けた場合に自動的に発動する達也の切り札の一つ。これにより達也は死の淵から舞い戻った。

 

「がぁっ‼︎」

 

完全に意表をつかれたアサシンは達也が拾い、隠し持っていた投擲剣(ダーク)を深々と喉に突き刺される。

 

反射的に距離を取るがすぐさま達也が魔法式を展開。先程と同じように力強く地面を踏み、その振動を増幅させることでアサシンのバランスを崩す。

 

離された距離を再び縮めた達也はアサシンの腹に重い一撃を加え、体をくの字に折り曲げさせると、今度は落ちてきた顎に強烈なアッパーカットを叩き込む。

 

これに対してアサシンはというと完全に無抵抗。自身の状況を理解できておらず、その体は力なく伸びきっていた。

 

そのアサシンに向けて達也はCADを構え、引き金を引く。

 

質量爆破(マテリアル・ブラスト)

 

アサシンの喉に深々と突き刺さる投擲剣(ダーク)が熱に代わる。

 

「ーーー‼︎‼︎‼︎」

 

喉を焼かれたアサシンの悶絶が響く中、達也はそれに追撃を加えずバックステップで距離をとる。

 

痛みから立ち直ったアサシンがそれを見て達也に襲いかかろうとした時、首筋が凍る。

 

アサシンは忘れていた。

自身が狙われる立場であることを。

 

一閃。

 

士郎が振るった赤剣はアサシンの左腕、その肘から下を綺麗に斬り飛ばした。

 

「ちっ」

 

自身の直感を信じ、腕を後ろに振るったことがアサシンの命を繋ぎ、この場を離れる最後のチャンスを作った。

 

トドメを刺そうと踏み込んできた士郎の顔に流れ出る大量の血液を目潰しとして飛ばし、達也に対しては投擲剣(ダーク)をばら撒く。

 

そして自分は達也の頭上を大きく飛び越え、射線が被ることですぐには士郎が弓での狙撃ができないようにすると霊体化でその場を離脱した。

 

「逃げたか…」

「追わなくていいのか?」

「問題ない。種は仕込んだ」

 

そう言って士郎はアサシンの血がついた赤剣に目をやる。

 

「宝具か」

「ああ。フルンディングと言ってな。詳しい話は省くが、これで相手を追跡できる」

「なるほど。わざと逃したわけか」

「いつまでも後手というわけにはいかないからな」

 

そんな会話をしているうちに、徐々に辺りの霧が薄くなり始める。

 

「詳しい話は……」

「ああ。後でする。それより」

「どうした?」

「その身なりだけはどうにかした方がいいだろう」

 

士郎に指摘されて自分の姿を改めて確認する達也。身体はボロボロ、服に至っては心臓を潰された時に口から漏れた血と、ナイフによる切傷で見事に赤黒く染まっていた。

 

「……そうだな」

 

達也は再成を発動し出血が酷かった部分の血液だけを消す。

 

「どうだ?」

「全部治さないのか?」

「ある程度傷は残さないと不自然だからな」

「……そうか。なら問題ない。場所は後でメールしよう」

 

そう言い残し士郎はその場から姿を消した。

 

数秒後、モノリスを入力するタイプ音が聞こえ、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

 

「「達也‼︎‼︎」」

 

達也が自陣に戻ってくると帰還を喜ぶように声を上げたレオと幹比古だったが、その姿を見てすぐに心配の言葉へと変わった。

 

「おい達也!大丈夫かよその傷!」

「レオの言う通りだ!すぐ医務室に行こう!」

「ああ。見た目は酷いが傷一つ一つはどれも浅い。幹比古の言う通りとりあえず医務室で軽く治療してもらえれば大丈夫だ」

 

達也のしっかりとした受け答えを聞いた二人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「っとそうだ!達也、幹比古が見たっていう髑髏の仮面のやつはどうしたんだ⁉︎」

「逃げられた。どうにか隙を作ってモノリスを入力したら試合終了のブザーの後にすぐにな」

 

それを聞いてレオは拳と手のひらを強く打ち当つける。

 

「落ち着きなよレオ。悔しいのは僕も一緒だけど、達也が大事……、ひとまず無事に帰って来て試合も勝ったんだ。これは十分すぎる結果だよ」

「……、まぁそれもそうだな」

 

そう言ってレオは最後にもう一度強く拳を打ちつけ気持ちを切り替えた。

 

「よっしゃ。そんじゃとりあえず医務室行こうぜ」

「いや、医務室の前に大会委員会に今回のことを報告する」

「なんでだ?試合中は報告しないようなこと言ってたじゃないか」

「試合中と試合後じゃ状況が違う。他の試合の為にもこれは報告すべきことだ」

 

とはいえ達也の身体を見たレオは顔を顰める。

幹比古も医務室の後でもいいのではないかと言いたげだ。

 

「レオと幹比古の言いたいことは分かるがこれは相手と相対した俺が報告すべきことだ。それにこう言った情報は早ければ早いほどいい」

 

達也の顔を見て説得は無駄だと判断したのか、二人はそこまで言うならと言った様子で達也と共に大会委員会の元へ向かい侵入者について報告した。

 

「意外と早く終わったな」

 

一時間は時間を取られると考えていた達也だったが、実際は三十分ほどでことが済んだ。

 

「達也がテキパキ質問に答えてたからな」

「それ以上に達也の傷を見て向こうも気を使ってくれたんだと思うよ。大会委員会の人、一目見た時に目を見開いてたし、最後に早く医務室に行きなさいって言ってくれてたもの」

 

今一度身体を見直す達也。

 

「さっきも言ったが酷いのは見た目だけなんだがな」

「見た目だけでも酷い時点でアウトだろ。だってそれを見た人はーー「お兄様‼︎」ほら」

 

あまりにも帰りが遅い兄を心配した深雪が達也の前に現れた。

 

「お兄様‼︎なんて酷い傷!」

「深雪これはーー「あぁ……ここも、ここも、こんなになられて」いや、深雪……」

「早く医務室に‼︎すぐ手当を‼︎」

「いや、たしかに見た目は酷いが傷は浅い。だからそんなに心配する必要はないよ」

「何を言ってるんですか‼︎傷の程度なんて関係ありません‼︎すぐに医務室へ」

 

その勢いは怒涛。まるで濁流のように押しよる深雪に達也はほとんど抵抗できない。

 

「達也さん⁉︎」

 

そこに遅れてやってきたほのかが加わる。

これはある意味達也の終わりを意味していた。

 

「……」

「……」

「幹比古、俺はこれから食堂で軽く腹ごしらえするが一緒にどうだ?」

「ありがとう。でも僕は遠慮しとく。少し展望台あたりで気持ちを落ち着けてくるよ」

「そうか」

「うん」

「…………」

「…………」

 

二人は心の中でそっと手を合わせ、達也に背を向けた。

 

 

 

 

 

「遅くなってすまない。……少佐、申し訳ありませんでした」

 

医務室から無事に抜け出した達也が士郎にメールで指定された場所に着くとそこには風間の姿があった。

 

「気にするな。それよりかなり苦戦させられたらようだな」

「…藤村から話をお聞きに?」

「詳しい話はまだだ。聞いたのは二体目のサーヴァントが出現し、それと交戦したということだけだ」

「そうでしたか。ところで藤村の姿が見えませんが?」

 

風間が指を達也が入ってきた扉の屋上に向ける。そこには先程の緑色の外套ではなく、いつもの、達也にとっても比較的見慣れた赤い外套を纏った士郎が試合会場を鋭い眼差しで監視していた。

 

「藤村」

「ああ」

 

短い返答をした士郎は天井から飛び降りると軽やかに着地する。

 

「足を運ばせてすまない。話を始めよう」

 

そういって士郎は達也と最後に話をしてから試合の裏でどのように動いていたのかを説明し始めた。

 

「少佐にスタジアム内のカバーを頼んだ私は、このホテルが全試合会場の中間地点に当たることを利用して屋上から監視し、会場自体がかなり入り組むモノリス・コードだけは一高の試合に狙いを絞り、会場内での監視をする形をとった」

 

士郎が風間に相互確認を取るように視線を向けると風間は黙って頷く。

 

「そして最初の事件。

新人戦四日目のモノリス・コードでの過剰攻撃(オーバーアタック)。その時私は先程説明した通り会場内で身を潜めていた」

「そうすると、森崎を瓦礫から救ったのはやはり藤村か」

「ああ。本当は魔法が発動する前に止めに入りたかったがそれには邪魔が入った」

 

邪魔。このタイミングで士郎を邪魔することのできる相手など決まっている。

 

「サーヴァントか」

「はい。少佐のおっしゃる通り。ランサーが作戦失敗防止のため配置されていました」

「よくランサーと対峙している状況で森崎を助けられたな」

「本人曰く、魔法の発動を邪魔させないのが命令で、発動した後は知ったことではないと」

「相手側も全員が同じ考えではないわけか。藤村、ランサーをどうにかこちらに引き込むことは?」

「無理でしょう。いくら気に入らない主人であったとしても、ランサーはマスターとサーヴァントの関係である限り決して裏切り行為はしません」

 

予想通りの答えに風間は士郎に話を続けるように促す。

 

「では、話を戻します。ランサーと対峙した私はそこでいくつかの情報を得ました。得た情報はランサーのマスターの名前と私がこの世界に来た原因です」

「「なに?」」

 

まさに予想外。士郎の話に風間と達也の声が重なった。

 

「藤村、ランサーのマスターの名前。それが判明したのは以前からお前も心当たりがあると言っていたからまだわかる。だが、この世界に来た原因がわかったとはどう言うことだ」

「ランサー本人が答えたのです。この世界に来た原因、それはお前の予想通りだと」

「それは以前お前が軍で言っていた……」

「はい。聖杯です」

 

聖杯。

 

これについて風間と達也は信頼できる人間として、軍内で士郎の口からこの世界に迷い込んだ原因の一つの可能性として話を聞いている。万能の願望器。御伽噺のような話だが魔術や宝具を知った風間はこれを馬鹿げた話だと一蹴しなかった。

 

「藤村、聖杯が原因ということは、こちらの世界で聖杯が出現しているということなのか?」

「ああ。マスターにサーヴァント。この二つが揃った上、ランサーの口から聖杯と出たんだ。ほぼ間違いなくこちらで出現している」

「ならその聖杯はいったいどこに」

 

一番の問題だが既に士郎の中では目星がついている。

 

「藤村が言う言峰綺礼の手元だろうな」

「はい。おそらく」

 

言峰綺礼が初めに伝えて来た『君の願いは再び叶う』という言葉。ランサーの、士郎がこの世界に来た理由を知っているかのような口調。

仮に言峰の手元になかったとしても、相手側の近くに聖杯があるのは確かだった。

 

「聖杯が手中にあるにもかかわらず行動を起こさない理由はわかるか?」

「聖杯はそもそも器でしかありません。その中身自体は空。そのため聖杯戦争と呼ばれる戦争で七人のマスターが七人のサーヴァントを従え戦う。そして負けたサーヴァントたちが聖杯の中身、魔力リソースとして活用され初めて聖杯は願望器として作用します」

「つまり動かないのではなく。動けないと」

「断定はできません。聖杯は願いによって必要とする魔力の量も変わります。簡単な願いであればわざわざ七人のサーヴァント全てを贄とする必要はありませんから。ただ、こちらにわざわざ情報を漏らしながら行動しているのを見るに、動かないという面が強いかと」

「空とはいえ、後は中身を入れるだけの願望器を持ちながら動かない理由か……」

 

相手の目的はなんなのか。こればかりは相手にしかわからない。

 

だが一つ、それが間違いなく士郎に関わっているということを、口にはしないが達也も風間も確信していた。

 

「まあ良い。これ以上先は情報不足で話が進まない。話を変える。藤村、先程の試合で交戦した二体目のサーヴァントの情報を頼む。」

「はい。サーヴァントのクラスはアサシン。真名はハサン・サッバーハ」

「ハサン・サッバーハ。これはイスラム教の伝承に残る暗殺教団の教主の名前だったか?」

「ええ、よくご存じで。このハサンというサーヴァントは特殊で、サーヴァントととして召喚される場合、歴代の十九人の当主のうち誰か一人が召喚されます。そして、今回相手にしたのはその中でも呪腕と称されるハサン」

 

呪腕。それを聞いて達也の頭にあの不気味な右腕が頭に思い浮かぶ。

 

「呪腕か。たしかにあれは呪いと称されるにふさわしい」

「特尉、確認したのか?」

「はい。ですが宝具と同じようにこの目(精霊の目)でも分析できませんでした」

 

それに、と付け足し達也はアサシン自体にも自分の眼が通じなかったことを伝える。

 

「藤村の事前の情報通りといったところか」

「はい。ですが眼が通じなかっただけで魔法が全く通じないと言うわけでは無さそうです。相手を直接対象にしない魔法。今回の場合は地面やただの武器を対象にしたものは少なくとも通ると言うことがわかりました」

「なるほど……」

 

この情報は風間にとっても達也にとっても価値のあるものだった。何せ少しでも反撃する手段があると言うことはそれだけで相手の隙を生み出すチャンスに繋がる。

 

「藤村」

「はっ」

「こうして二体目が現れた訳だ。戦力(サーヴァント)はあとどれだけあると考える?」

「ランサーを除いて最低でも四体かと」

「その根拠は?」

「聖杯戦争。こちらに接触してきたランサー、そしてアサシンは私のことをアーチャーと言った。聖杯戦争は七体のサーヴァントをそれぞれセイバー、アーチャー、ランサー、キャスター、ライダー、アサシン、バーサーカーの七種のクラスに分けて戦う。現状をこれに当てはめると私を除いて四体残っていると考えられます」

「残り四体か」

「はい。とはいえですが少佐、根拠に出したこの聖杯戦争、これが実際に起きているのかは分かりません。私がもしサーヴァントとしてこちらの世界に来ているのであればマスターが存在するはずですし、聖杯からこの世界に関する知識が送られてきているはずです。何より、こうして肉体を持っているのはサーヴァントとして召喚されたのであればありえない」

「ありえないか。可能性とその矛盾でどうにも話が進まない……。藤村、今あげたサーヴァントの中で最も危険と思われるのはどれだ」

 

思考を切り替えた風間が士郎に尋ねる。

 

「単純に考えれば高い対魔力と戦闘能力を持つセイバーとランサーですが、現状、私はキャスターが最も危険だと考えます。セイバーとランサーのように戦闘能力に関しては高くありませんが、魔術は他の追随を許さないうえに、何より策を巡らせるのが上手い」

 

強さとは何も正面から相手を叩き潰すだけのものではない。策を練り、相手を落とし入れて倒すことも強さの一つ。圧倒的に情報が足りない士郎たちにとって、自らの情報は漏らさず、一方的に攻撃をしかけるだけの能力を持つキャスターは間違いなく最凶と言える。

 

「そのキャスターがこの九校戦内で動いている様子は?」

「今のところは。ただこれだけ広い会場ですし、キャスターの魔術の技術は私よりはるかに高い。動いていて気づいていないと言う可能性も十分に」

「こちらでも捜索にあたるか?」

「いえ、それは危険すぎますし、そもそも魔法師では魔術の痕跡を察知できませんので」

「……分かった。だがどうする藤村、キャスターについては置いておくとして、既に確認しているランサーとアサシンは放っておく訳にはいかない。このままではいつまで経っても後手のままだ」

「そこは問題ありません。既に手は打ちました。」

 

士郎は宝具を使って相手の居場所を追跡していることを伝えた。

 

「居場所が分かり次第すぐに仕掛けるのか?」

「いえ。ここで急いてようやく作ったチャンスを潰したくはありません。一度準備を整えてから仕掛けます」

「ならその時は連絡を入れろ。可能な限りサポートする」

「はっ」

「そろそろ戻る。特尉は?」

「ご一緒に。俺もやらなくてはいけないことがありますので」

 

士郎に一瞥して風間と達也が屋上を後にする。

 

残された士郎はゆっくりと屋上の端に近寄ると、布に包んで置いていたフルンディングを拾いあげる。

 

アサシンの血が染み付いたフルンディングは、士郎の手に収まると、その腕を軽く引いて獲物の居場所を教えてくれる。

 

「……」

 

邂逅の時は近くまで迫っていた。




作者「皆さん、fate系でこれとクロスオーバーして欲しいとかありますかね?気分が乗れば短編でも書いてみようかと。」

エミヤ「貴様はなぜ自分の首を自分で絞める?」

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