魔法科高校の魔術使い   作:快晴

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士郎「………何か言い訳は?」
作者「続きが全く思いつかなかった」
士郎「せめて下手な言い訳でもしたらどうなんだ⁉︎」

というわけで、お久しぶりです。そして同時にこんな次話投稿が遅くなって大変申し訳ありませんでした。

相変わらず内容はショボいですが皆様の暇つぶしになれば幸いです。


第13話

ランサーと出会ったその日の晩。エリカたちに余計な心配をかけないようにしっかりとバイトをこなした後、士郎は一人、人気がないホテルの外れである人物を待っていた。

 

「遅くなってすまない」

「いえ、私こそ突然の電話で呼びつけてすみません。風間少佐」

「問題ない。それで話とはなんだ?」

「今回、九校戦の裏で動いている組織。その中に私に関係のある人間が紛れていることが分かりました」

 

士郎の言葉でピクリと風間の眉間が動いた。

 

「それは間違いないのか?」

「はい。向こう側から接触をしてきたので間違いありません」

「なんだと?」

 

これには風間もさすがに声を出さずにはいられなかった。なにせ相手の方から接触を図られるということは行動を起こせるだけの情報が外部に知られている可能性があるということだ。

 

しかも今回は超極秘に当たる士郎に関しての情報。その他の極秘情報に関しても何か知られているのではないかと自然に考えが至る。もし他にも情報が漏れているとなれば呑気に九校戦を観戦している場合ではない。

 

「………、お前に接触したという相手はどうした」

「この九校戦で何かが起きるということをほのめかして早々に去っていきました」

 

それを聞いて風間は黙り込む。

 

「藤村、お前はこれからどうするつもりだ?」

「その関係者を見つけ出して必要に応じては始末する。と、言いたいところですが、こちらには何も手掛かりがありません。業腹ではありますが相手が行動を起こすのを待つつもりです。無論、ただ待っているというわけではありませんが」

「そうか。ならその件に関してはお前の判断に任せる。ただし、これからは常に俺と連絡を取れるようにしろ。こちらでも何か掴め次第連絡する。」

「了解しました」

 

 

 

 

 

九校戦三日目の早朝。風間との密会から一日という時間が経過したが、今のところ問題は起きていない。

 

いや、一高男子の試合結果が悪いという問題が発生していたりするのだが、現状そんなことは士郎にとってどうでもいいことだった。

 

ーー同調、開始

 

目の前の柱。今日試合が行われる会場を支える数多ある柱の最後の一本に自身の魔力を流し込み異常がないかを確認する。

 

……とりあえず問題はないようだな。

 

何の異常もないことを確認した士郎はひとまずホッと胸を撫で下ろすが、すぐに気を引き締め直すと今度は警備に忍び込んだことがバレない様に注意しながら二度目の観客席の確認を始めた。

 

そう二度目。今まで行っていた柱の確認もすでに一度、深夜のうちに済ませてあり、この他にも試合設備などの確認も行なっていた。

 

士郎がここまで神経質になる理由はもちろんランサーとそのマスターの存在だ。特にマスターである人物が士郎の予想通り、あの神父であるのならばこれでもまだ足りないくらいだと考えている。

 

そのため本音を言ってしまえばこの九校戦自体を今すぐにでも中止にしてしまいたい所だが、それを決めれる立場どころか一介の選手ですらない士郎ができることは、こうして会場に忍び込み事前に安全を確認するくらいしかできなかった。

 

相手の目的が分かればまた違う対応も取れるのだがな。

 

素早く迅速に、それでいて丁寧に観客席のチェックを済ませながら思考を巡らせるが、ランサー達のことを知ってからまだ二日目。しかも情報収集はレオやエリカ達に不審がられないよう、バイトをこなしながら行わなければならないこともありほとんど進んでいない。そんな状況ではろくな予測すら立てることも難しい。

 

ただ……

 

「私に関わる何かに危険が及ぶ可能性は高いだろう」

 

なんといってもわざわざランサーを差し向けてまでこちらに存在を伝えに来たくらいなのだから。

 

そうすると可能性として一番高いのはやはり一高の生徒。特に私の友人や関わりの深い生徒会や風紀委員のメンツだが、向こうがそう単純に動いて来るとは思えん。何よりランサーが言っていたあの言葉……

 

『久しぶりに歯ごたえのあるやつと戦えると思ったんだがな』

 

あの口振りからしてランサーはこちらの世界ですでに戦闘を行なっている。それも蹂躙に近い一方的な戦闘を。そんなことをあの男が自身の考えでランサーに指示するとは思えない。おそらく何かの組織、それに属するにあたって上からの命令、あるいは信頼を得るために仕方なくといった形だろう。

 

「………、どちらにせよ些細な差か」

 

これ以上考えても無駄だろう。

 

結局のところ、衛宮士郎という人間は今でも苦しむ人々全てを助けたいと考えてしまう。

つまりそれは見ず知らずの人間でも苦しんでさえいれば士郎にとっては関係のある人間にたってしまうのだ。

 

ならばそれをよく理解している相手はいくらでもやりようがある。今回、この九校戦に出場する生徒から観客までが士郎にとっては関係のある人なのだから。

 

そう判断した士郎は会場の安全確認に集中するが、幸い二度目のチェックでも会場の異常は確認されなかった。

 

試合開始までは残り数時間。本来ならこのまましばらく監視を続けるのがベストなのだろうが士郎は同室のレオや幹比古に心配をかけない様に一度ホテルに戻ることにした。

 

さて、できれば二人とも眠ったままでいてくれれば言い訳をする必要がなくて楽なのだがな。

 

別に言い訳を考えるのが面倒という訳でもないが、やはり危険なことに自ら首を突っ込み始めた以上、余計な不信感や心配をさせたくはない。

 

「おーい」

「む?」

 

そんなことを考えながらホテルに向かって歩いていると後ろの方から声が聞こえた。何かと思い振り返ると、そこには白のランニングウェアに身を包んだ摩利の姿があった。

 

「おはよう士郎くん。真由美から来ているとは聞いていたが、まさかこんなところで会うとはね」

「おはよう。私も朝から先輩の顔を見るとは思わなかった」

「その言い方だと私に会いたくなかったかの様に聞こえるんだが?」

「それは誤解だ。私はただ、今日この後に試合を控えた人間が、こんな朝早くからランニングをしてるとは思っていなかっただけだ」

 

今日は男女ピラーズ・ブレイクと男女バトル・ボードの各決勝が行われ、摩利はその女子バトル・ボードに出場する選手の一人だ。

 

「……はぁ、まあそういうことにしておこう。

それより、君はこんな朝早くからなにをしていたんだ?」

 

これから起こるであろうトラブルへの対策。などと正直に話すつもりは毛頭ない士郎は適当な理由をつけてその場を流す。

 

「日課の朝の鍛錬を少し。これをしないとどうにも落ち着かなくてね」

 

日課と聞いて改めて士郎の服装を見直した摩利であったが、今の士郎は昨晩の闇に紛れるための黒いズボンと黒のタンクトップを着用し、確かに身体を動かすには不自然ではない格好をしていたためすぐに納得してもらえた。

 

「そういう先輩はどうしてそんな可愛らしい格好で?」

 

「なっ、可愛らしいだと⁉︎」と一瞬動揺を見せた摩利であったがすぐにコホンと咳を入れ気を取り直りなおした。

 

「なに、少しばかり気が昂ぶってね」

「意外だな。そういうのとは無縁かと思っていたのだが」

「士郎くん?君はあたしのことをいったいどんな風に思ってるのかな〜?」

 

ちょっと掃除が苦手でちょっと見栄っ張りな風紀委員長。などと当然言えるはずもない。

 

「正義感が強く真っ直ぐとした芯を持つ尊敬できる先輩。と言ったところか」

「口調からは全くそれが感じられないのだが」

「なら今度からは言葉遣いを改めた方がよろしいでしょうか。渡辺先輩?」

「………いや、いい。士郎くんにお店以外でそう言った言葉を使われるとなんだかすごく違和感を感じるし、何より小馬鹿にされてる気がして仕方がない」

「そうか。なら今まで通りに行かせてもらうとしよう」

 

そんな士郎の態度に微妙な顔をした摩利であったがすぐにフッと小さく笑みを見せた。

 

「なんだか士郎くんと話をしてたらだいぶ落ち着いてきたよ」

「私はただ会話をしただけなのだが…、まあ、それが結果的に先輩の力になったのなら良しとしよう」

「ああ。良しとしておいてくれ。さて、あたしはこのままホテルに帰ろうと思うのだが士郎くんはどうするんだ?」

「一通りやることは済ませたのでな。ホテルに戻るつもりだが」

「よし。それなら尊敬される先輩から後輩へのプレゼントとして、ホテルまでの護衛任務を与えよう」

 

何を言い出すかと思えば、さっきまで一人で護衛も付けずにランニングをしていた人間が何を言う。

 

「拒否権は?」

「もちろんない」

「さては先程の内容に少し腹を立ててるな?」

「そんなことはないさ。そら、ホテルに戻るからしっかり尊敬する先輩を護衛するんだ」

「……はぁ、了解した」

「うんうん。あと、今日のレースはもちろん観に来るだぞ」

 

最後に「なんたって尊敬する先輩の試合だからな」と言った摩利の言葉を聞いて、少しからかい過ぎたと士郎は心の中でため息をつきながら反省した。

 

 

 

 

 

「さて、どうしたものか」

 

無事に摩利をホテルに送り届け、自室へと戻ってきた士郎は、幸いまだ夢の中のレオと幹比古の二人を横目に自分のベットに寝転がり今後のことを考えていた。

 

現状できることは行った。

トラップの確認と投影したセンサーによる侵入者の感知システムの設置。風間が裏で色々と行動していることを考えるとこれで大抵の相手ならば問題なく対処できるだろう。

残る課題としては二種類の種目の決勝がほぼ同時進行している点と、ランサー、あるいはまだ見ぬサーヴァントが存在し行動を起こした場合。

 

「風間の協力を惜しまなければ同時のトラブルはまだどうにかなるが……」

 

サーヴァントの方は別だ。こちらはただ人員を割けば解決するという訳ではなく、むしろ被害者が増えて状況が悪化する。出てきたクラスにもよるが、最低でも達也や九重クラスの身体能力がなければ魔法を使う前に殲滅されてもおかしくない。

 

士郎が相手をするのは決定事項。だがそれはあくまでサーヴァントが一体の場合。サーヴァントがそれこそ同時進行中の各決勝にそれぞれ出現した場合はどうしてもどちらかを切り捨てる必要があった。

 

「………」

 

ーーちょっと、何辛気臭い顔してんのよーー

 

ふと、そんな声が聞こえた気がした。

 

ーーあんたはどこまでいってもポンコツなんだから、そんな先のことで悩んでもしょうがないでしょうがーー

 

懐かしい。思わず泣きたくなるようなその声。

 

ーーいい。あんたの場合はね、その時になって考えるくらいがちょうどいいのーー

 

自然と、いつのまにか強張っていた身体の力が抜けていく。

 

ーーえ?それで失敗したらどうするのかって?そんなの、その時はその時よ!ーー

 

自然と心が穏やかになる。

 

ーーというか、失敗した時のことなんか考えるな‼︎ ーー

 

そして最後には思わず笑みを浮かべていた。

 

「ふっ、そうだな。可能性の話しで悲観的になっても仕方ない」

 

 

 

 

 

九校戦、女子バトル・ボード準決勝。

試合開始まで残り僅かというギリギリのタイミングで合流してきた達也とともに、士郎はスタートの姿勢をとる摩利の姿を見守っている。

 

時折、視線を会場全体に移して不審な物がいないか確認もしていたが以上は見られない。

 

………だというのになんだこの違和感は?

サーヴァントの出現の予兆か?だとすればなんともお粗末すぎる。

 

だがどこかおかしいのは確か。朝のチェックや先程のレースまでは感じられなかった何かを感じる。

 

サーヴァント………っ!この間抜けが‼︎

 

「お、おい⁉︎ どうしたんだ士郎‼︎」

 

突然席を立ち上がり駆け出した士郎に、レオが驚き声をかけ、達也がスッと目を細めるが無視して屋上を目指す。

 

あれほどサーヴァントの存在を気にかけていたのになぜ魔術の存在を忘れていた‼︎

 

士郎の身体能力に魔術と魔法による強化でほぼ跳ぶ形で屋上に到着するのと、全神経を魔力感知に集中させる。

 

どこだ?この違和感の発生源はどこだ?

 

懸命に探知を試みるが、もともと士郎は特別魔力を感知する能力が優れているわけではない上に、感じるそれも魔力と似てはいるもののどこか微妙に違うことからはっきりと場所を掴めない。

 

そうこうしているうちに試合の方はとうとうブザーが鳴り三人の選手がコースに飛び出し開始する。

 

くそ!

 

悪態をつきつつも必死で感知を続ける。すると、どういう訳か先程より違和感の存在が大きくなっており……「あそこか!」それがスタンド前の蛇行ゾーンを抜けた先にあるコーナー付近で強く感じられることに気がついた。

 

選手はすでに長い蛇行ゾーンを抜けてポイントに差しかかろうとしている。

 

士郎はすぐさま馴染みの黒弓と歪な形をした短剣を投影、矢として弓に番える。

 

……

 

これから士郎が矢を放つ上での一番の問題は射ぬけるかではなく、いかに射抜くか。

これから放つこの短剣は歪な形をしている。普通の矢であれば多少水面が揺れるくらいで済むだろうが、この形とこの位置から狙撃を間に合わせるためのスピードを考えると下手に放つと水面を大きく揺らし、新たな事故の原因にもなりかねない。

 

魔法を付加してそういう対策をできればいいのが、あいにくこの剣の持つ全ての魔術を初期化するという概念は魔法にも適応されるため無意味になる。

 

あくまで士郎の技術のみで決して水面を荒立てることなく放つ必要があるのだ。

 

私とて元々アーチャーの名を冠するサーヴァント。このぐらい当然のようにこなしてみせよう。

 

そして……

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!」

 

その矢が空を裂き、一直線に目標へと放たれた。

 

 

 

「オーバースピード⁉︎」

 

誰かの叫び声がした。

 

七高の選手が大きく体制を崩したまま飛ぶように水面を滑る。

 

そして最悪なことにその先には摩利の姿が。

 

七高選手が突っ込んでくるのを察知した摩利は前方への加速をキャンセルし水平方向の回転加速に切り替え。

 

そのまま綺麗にボードを反転させると迫りくる七高選手を受け止めるべく新たに二つの魔法をマルチキャスト。

 

ボードを弾き飛ばすための移動魔法と自身が飛ばされないようにするための慣性中和魔法だ。

 

そして、いよいよ摩利と七高の選手がぶつかると思われた時、水面が不自然に沈み込もうとし、そこに一つの閃光が奔る。

 

バターを切るかのように水面を切り裂いたその閃光は、水面に起きようとしていた変化を抑え、そのまま綺麗にコースの水底に突き刺さった。

 

摩利と七高選手がぶつかる直前、閃光によって変化が抑えられたものの、若干のラグを出して発動した魔法が二人の体を包み。コースの淵ギリギリでゆっくりと摩利の身体が停止した。

 

九校戦、女子バトルボード準決勝。

 

それは原因不明の七高選手のオーバースピードによる一高選手との接触事故及び、試合中、監視装置が捉えていた狙撃と思われる閃光により無効試合に終わった。




やったぜ摩利さん退場回避!

……させたのはいいけど続きどうしよう。自分で自分の首を絞めてしまった。

とりあえず頑張ってみますが、次話の投稿も遅くなりそうです。申し訳ありません。

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