甘兎の千代子さん   作:赤山グリテン

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仕事が多忙であったため、更新が開いてしまい、申し訳ありませんでした。
ラビット・ハウスで、萌夏が歌を歌います。

チノだけは、少し様子が変です。

それでは、お楽しみいただけると幸いです。



第7羽 ひと聴きで、尋常でないもちもちと気付いたよ

てくてく・・・・

 

 

千夜「あれ、あそこに歩いている娘、ココアちゃんじゃない?」

 

チョコ「もうひとりの私が、別のホームからこちらの改札へ歩いてますね」

 

千夜「ココアちゃ〜ん、ココアちゃ〜ん」

 

ココア「あ、千夜ちゃん、おはよ〜・・・あれ、チョコちゃんもいる、どうしたの?」

 

千夜「おはよう、ココアちゃん」

 

チョコ「妹を迎えに千夜ちゃんと駅に来ていたんです」

 

萌夏「ココアちゃん、初めまして、チョコの妹の相須 萌夏です。よろしくお願いします」

 

ココア「萌夏ちゃん、よろしくね〜」

 

萌夏「ココアお姉ちゃん大好き。これはまさに運命の出会いだよ。モフモフ〜」モフモフ

 

ココア「うわっいきなりもふもふ? 積極的だね〜 妹がまた増えたみたい」モフモフ

 

チョコ「こらっ萌夏、姉は私だよっ 負けないよ〜」モフモフ

 

千夜「萌夏ちゃんが、2人のお姉ちゃんに挟まれてダブルモフモフ…」ヨダレタラー

 

チョコ「ところで、ココアちゃんはどうするの?」

 

ココア「ラビット・ハウスは今日も営業だから、すぐ帰って、仕事しないと・・」

 

チョコ「私と萌夏は、千夜ちゃんのお祖母様にご挨拶したら、ラビット・ハウスに行くつもり。千夜ちゃんは?」

 

千夜「そうね。私もチョコちゃん達と一緒にラビット・ハウスにおじゃましてもいいかしら?」

 

萌夏「私もココアお姉ちゃんのお店を、是非見てみたいな。甘兎庵も見たかったけど休みだし…」

 

ココア「じゃみんな、ラビット・ハウスで待ってるね〜」

 

チョコ・萌夏「ココアちゃん、また会いましょう」

 

千夜「ココアちゃん、チノちゃん達にもよろしく伝えてね」

 

ココア「うん、楽しみだよっ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

―ラビット・ハウス―

 

チノ「それで、ココアさんのお母さんは大丈夫なんですか?」

 

ココア「もっと居るつもりだったけど、早くラビット・ハウスに戻れと母に実家を追い出されたので、帰ってきました〜」

 

ココア「それとおみやげのパンだよっ モカお姉ちゃんの作だけどね」

 

チノ「美味しそうです」

 

ティッピー「うまそうじゃの…」

 

ココア「冷めてもお姉ちゃんのパンはもちもちで断然おいしいもんね…」

 

ココア「早く私も、そういうパンを作りたいな」

 

チノ「ココアさんも、そのうち作れるようになりますよ…では…」

 

ココア・チノ・ティッピー「「いっただきま〜す」」

 

もぐもぐ

 

 

※しばらくして

 

ギイー(ラビット・ハウスのドアが開く音)

 

千夜「おはようございま〜す」

 

ココア「あ、千夜ちゃん、待ってたよ〜」

 

チョコ・萌夏「おはようございます。お世話になります」

 

ココア「あ、来てくれたんだ〜。大歓迎だよっ」

 

チノ(チョコさんの妹さんも来ちゃったんだ…)

 

チノ「チョコさんと、萌夏さんですね…」

 

萌夏「チノちゃん、初めまして〜」モフモフ

 

チノ「な…なんですかいきなり…離れて下さい…」モフモフ

 

チョコ「こら、萌夏、初対面の娘にモフモフしちゃだめでしょ」

 

萌夏「え〜っ 私、初対面でも5秒で友達がモットーなんだけど」モフモフ

 

ココア(私より2秒遅いんだ…)

 

チョコ「チノちゃん、嫌がってるよ」

 

萌夏「おかしいな〜 なんでダメなんだろ〜 ごめんね、チノちゃん」

 

チノ「悪いのは私です。気にしないでください萌夏さん」カァァ

 

ティッピー(ほんとに萌夏はあやつ(チノの母)そっくりじゃ。チノもいやがってるんじゃなくて、恥ずかしいんじゃな…)

 

チョコ(でもチノちゃん顔が赤くなってる…恥ずかしいのね)

 

ココア「萌夏ちゃん、お姉ちゃんが例を見せるね。 チノちゃん、モフモフ〜」モフモフ

 

チノ「ココアさんは、本当にしょうがないココアさんですね〜」モフモフ

 

チョコ「私も負けないよっ」モフモフ

 

チノ(ぽ〜〜〜〜っ)カオ マッカ

 

萌夏「チノちゃんだけずるい〜」

 

ココア・チョコ「「萌夏(ちゃん)にもダブルモフモフ」」モフモフ

 

萌夏(ポ〜〜〜〜〜っ)カオ マッカ

 

千夜「ほほえま〜」

 

チノ「ところで、萌夏さんは、歌とかお得意と聞いてますが」

 

チョコ「うん、上手いよ〜」

 

萌夏「(チョコ)お姉ちゃん、そんなでもないのに、恥ずかしいよ〜」

 

千夜「萌夏ちゃん、ちょっと聴いてみたいわ」

 

ココア「私も聴きたいな〜」ワクワク

 

チョコ「萌夏、皆さん聴きたがってるから、お願い〜」

 

萌夏「しょうがないチョコお姉ちゃんですね。恥ずかしいけどお姉ちゃんの頼みなら…」

 

萌夏「ジャズなんですけど、ではアカペラ(伴奏なし)でワンコーラス(1番だけ)…」

 

チノ(どんな歌なんでしょう)

 

萌夏「『All of me』を歌います」

【注:All of me→歌詞は、何故私の全てを奪ってくれないの?〜という内容の、ジャズでは有名なラブソングです。スタンダードナンバーであり、ジャズヴォーカルを目指す場合、初期に必ず学ぶ曲の一つです】

 

一同 パチパチパチパチ〜

 

♪〜「All of me…

 

千夜(いい声ね。とっても上手。癒やされる歌声ね)

 

ココア(凄い。これはプロの歌姫だよ…)

 

ティッピー(若きヘレン・メリルを彷彿とさせる声…あやつ(チノの母)の歌声じゃ…)

 

チノ(遠い記憶に残ってる、母の歌声そのものです…)

 

Why not take all of me?……〜♪(歌終わり)

 

一同 パチパチパチパチ(拍手)

 

 

萌夏「おそまつさまでした」ペコリ

 

千夜「萌夏ちゃん、凄い上手。もっと聴きたいわ〜」

 

ココア「アンコール、アンコール…」

 

ティッピー(本来騒がしいのは嫌なんじゃが、この落ち着く声はもっと聴きたいの〜)

 

チノ「………」

 

萌夏「(チョコ)お姉ちゃん、伴奏がないと辛い〜」

 

チョコ「そういえばあそこに、アコースティックギターが置いてありますね」

 

チノ「はい、あれは最近バータイムで、青山さんが余興で弾き始めたギターです」

 

ティッピー(昔からウチの倉庫に眠ってた、古い物じゃがな…)

 

チョコ「お借りしてもいいですか」

 

チノ「いいですよ・・・はい、これです」ヒョイ

 

チョコ「ありがとう、チノちゃん」

 

チョコ「これのチューニング(弦の音あわせ)するから待っててね…」

 

プー ペンペン…(調子笛(調律用の小さい笛)でギターを調律するチョコ)

 

ココア(そういえば、モカお姉ちゃんもギター弾いてたな…)

 

千夜(チョコちゃん、ギターも弾けるのね。楽しみだわ〜)

 

チョコ(これ古い楽器だけど、弦は張り替えてあってメンテナンスしてあるから大丈夫ね…)

 

チョコ「では、お待たせしました」

 

萌夏「萌夏(もか)とチョコで、『もちもちバンド』ミニミニライブ〜」

 

千夜「よっ待ってました〜」パチパチ

 

チノ「もちもちバンドなんて、変な名前です…。ね、ココアさん?」

 

ココア「もちもちバンド…」キラキラ…

 

チノ(ココアさん、気に入っちゃってます…)

 

チノ「でもギターと歌じゃ、バンドじゃないですよね…」

 

????「ならば、私も遊びに加えてもらって、バンドにしないかね?」

 

チノ「お父さん!?」

 

タカヒロ「素晴らしい歌声が聞こえて来たからね。私もこれで混ぜてもらえないか?」

 

千夜「チノちゃんのお父さんが持ってきた楽器、大きいバイオリンみたい」

 

ティッピー(息子の奴、とうとうウッドベース(コントラバス)を持ってきたか)

 

チノ「お父さん、前はサックスだったんじゃ…」

 

タカヒロ「確かにここでジャズを()ったときはテナーサックスだったが、青山君とギターをあわせる余興の時は、このベースが好評でね…」

 

ティッピー(ワシがうるさいのが嫌いだから、ベースを勧めたのもあるのじゃな。アコースティックギターとウッドベースだと静かな演奏に向いとるし)

 

ココア「ラビット・ハウスの木の内装と、ベースのニス塗りの雰囲気が本当に似合ってる…」

 

タカヒロ「PA(ピーエー)にこのベースを接続したから、ギターもこの線に繋ぎなさい」

【注:PA→音響拡声装置:ライブに使う、マイクや楽器からの音声のミキサー(混合器)や、エコーやリバーブなどの音響効果を付加するエフェクター、拡声装置(アンプ)、スピーカー等の、装置の総称。(操作する人の意もありますが、ここでは無人の簡易PAなので…)】

 

チョコ「わかりました(このギター、よく見るとピックアップがあって、エレアコに改造してある…)」

【注:「ピックアップ」→ギター弦の振動を磁気等で読み取って、アンプにつなげる部品。「エレアコ」アコースティックギターにピックアップをつけたギターで、エレキギターと違い、柔らかい音が鳴る】

 

タカヒロ「あと、ヴォーカルも、マイクとスタンドを準備したから、萌夏くんもそれを使って欲しい。」

 

萌夏「なんか本格的〜」

 

ココア「チノちゃん、ウチの店ってPAなんてあったっけ?」

 

チノ「ラビット・ハウスのPAはカウンターの下にあって、直接見えない位置にあるので、気づかないんです」

 

ココア「へー、そうなんだ。知らなかった」

 

チノ「ジャズをしてた時は大活躍だったようですが、今は店のBGMのアンプとして、電源のオンオフだけしか触らないから、忘れてしまいますよね」

 

千夜「甘兎庵は、BGM用の小さいアンプと店舗用の埋め込みスピーカーね。別に古いカラオケ装置があるけど、繋がってはいないわね…」

 

ティッピー(ワシが機械が目立つのは嫌じゃ、と反対したので、息子が気を使って、配線は隠蔽(いんぺい)配線、スピーカーもどこにあるかわからないように隠してセットしてあるのじゃ)

 

タカヒロ「時間がなかったので、返し(自分の演奏を聴くためのスピーカー)までは準備出来なかった。みんな、隠しスピーカーから近いのでその音を聴いて勘弁して欲しい」

 

萌夏・チョコ「わかりました。大丈夫です」

 

タカヒロ「他の調整は終了、最後にヴォーカルの音質・音量調整をするから、萌夏くん、声を出してくれないかな?」

 

萌夏「はい、あ、あ、テスト、テスト…」

 

タカヒロ「リバーブはこんな感じかな…」

【注:リバーブ→音響効果で、リバーブを強くすると、お風呂で反響するような音に変わる】

 

ティッピー(午前中だから、いままでお客はゼロじゃな。この歌を聴けるお客がもし来たら、その客は本当に幸運じゃ)

 

タカヒロ「調整完了、チョコ君、萌夏君、開始して大丈夫だ」

 

チョコ「ありがとうございます。チノちゃんのお父さん。記念にこのライブをスマホで録画させて下さい」

 

タカヒロ「ああ、OKだよ。私も青山君に見せたいので、録画させてもらうね」

 

萌夏「それでは、もちもちバンド+1(プラスワン)、ミニミニジャズライブの始まり〜」

 

千夜「いえーい」パチパチ

 

ココア「いよっ日本一!」パチパチ

 

ティッピー(楽しみじゃの〜)ピョンピョン

 

チノ「…………」

 

チノ(こんなに目を輝かせて、子供の様に、はしゃぐ父は初めて見ました。)

 

チノ(娘の私に対しては、今まで一度も見せたことのない、表情と行動です…)

 

チノ(昔、母がジャズライブする時もきっと、そうだったのに違いありません…)

 

チノ(私のすることで、父がこのようになることは、今後もきっとあり得ません…)

 

チノ(私は容姿も、性格も、得意分野も、父や母に全く似ていないのですから……)

 




 最初はアカペラ(無伴奏独唱)だったのに、チョコのギターが加わり、さらにタカヒロさんが加わって、どんどんジャズライブ化してきてしまいました。その中で、PAとか専門用語が頻出してきて解説に悩みました。
 少しでもミニライブの臨場感が出せればいいなと思いました。

 チノ母のヴォーカルスタイルは、ヘレン・メリルのようだとしてしまいましたが、これは独自設定です。
 
 拙いこの台本形式SSをお読みいただき、ありがとうございました。

*18年2/25追記
 【「もふもふバンド」が「ラビレンジャー」になっちゃった】
 この話に出てくる「もちもちバンド」は、2017年2月号まんがタイムMAX連載の6本目の、ココアが「もふもふバンド」と命名→チノが気に入る、をもじったのですが、単行本化(第6巻)の際、「もふもふバンド」のセリフそのものが、「ラビレンジャー」に変更されてしまいました。
 連載話そのものが第6巻の冒頭部分(カラーページ)に順番入替され、その中身もコマの修正、オチの入れ替え等大幅に変更されています。
 結局、「もふもふバンド」は、単行本化時、お蔵入りエピソードになってしまったのでした(甘兎庵では時代劇のBGMを流す等と同様)。
 単行本派の方は、ご注意をお願いします。

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