甘兎の千代子さん   作:赤山グリテン

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相須 千代子こと、チョコは、シャロの家に荷物を置いた後、甘兎庵でのお仕事を開始します。千夜も大喜び。
それでは、お楽しみいただけると幸いです。


第3羽 甘兎庵にて

―木組みの街、甘兎庵への石畳の道にて―

 

てくてく

 

チョコ「わー、素敵な街・・・」

 

チョコ「ここなら楽しく暮らせそう・・・・」

 

千夜(この娘と一緒に仕事できるなんて、とっても仕合(しあわ)せ・・・)

 

シャロ(私もなんかワクワクしてきた〜)

 

 

――――甘兎庵の前――――

 

千夜「ここが、甘兎庵よ。私とお祖母様で切り盛りしてま〜す」

 

チョコ「素敵なお店ですね。ここで働けるなんて、幸せです」

 

千夜「向かって右隣の慎ましやかなお家が、シャロちゃんのお(うち)よ」

 

シャロ(どう取り(つくろ)っても物置にしか見えない・・・。恥ずかしい)

 

チョコ「きれいにしている家ですね」

 

シャロ「ここでホームステイして、私と暮らすんだけど、大丈夫?」

 

チョコ「はい、今からワクワクしてます。シャロさん、千夜さん」

 

チョコ「ところで、この台車で転がしてるトランクとか、どうしましょう」

 

千夜「それならば、シャロちゃんの家に大きい荷物置いてから、甘兎庵に来るといいわ」

 

チョコ「はい、わかりました」

 

千夜「シャロちゃん、悪いけど・・(仲良くやってね)」

 

シャロ「・・・わかっているわよ」

 

 

――――シャロの家――――

 

チョコ「おじゃまします」

 

シャロ「チョコさん、ほんとになんにもない家だし、ボロだし、ごめんね」

 

チョコ「部屋の間仕切りがなくて、開放感のあるお家ですね」

 

チョコ「天井も広いし」

 

シャロ(単純に建築予算の都合で天井貼ってないだけで、屋根の骨組みが丸出しだけなんだけど……)

 

チョコ「わたしも、こういうお家に住んでましたし、清潔できれいですね」

 

シャロ「えっ」

 

チョコ「私、この家、気に入っちゃいました! シャロさんもいい方で、良かったです・・」

 

シャロ(チョコさんも、私と似た境遇なのかしら・・)

 

チョコ「これは、母からつまらないものですが・・」ゴサゴソ

 

シャロ「ご贈答用のお土産・・そんなに気を使わなくてもいいのに」

 

チョコ「でも、もらって下さい。」

 

シャロ「じゃ、遠慮無くいただくわ。ありがとう」

 

チョコ「改めてよろしくお願いします。シャロさん」ペコ

 

シャロ「私こそ・・」ペコリ

 

 

 

 

――――甘兎庵――――

 

チョコ「お祖母様、初めまして。相須 千代子です。母がいつもお世話になってます。不束(ふつつか)者ですが、どうぞよろしくお願いします」ペコ

 

お祖母様「ああ、おまいさんの力で、千夜を助けてもらうからね!」

 

チョコ「これは、母からつまらないものですが」ガサゴソ

 

お祖母様「お土産かい、悪いねえ。気を使う必要ないのに……でも、お言葉に甘えて頂戴するよ。」

 

千夜「お気遣い嬉しいわ。ありがとう」

 

お祖母様「チョコさんにはこれを」ペラ

 

千夜「労働条件通知書よ。甘兎で働くので、従業員の方には雇う前にみなさんにお渡ししてるのよ」

 

お祖母様「チョコさんのお母さんの要望も入れて、作ったのさ」

 

千夜「雇用期間は卒業までにしました。まだ働く前だからチョコさんの要望があれば、いまなら直せるので言ってね」

 

チョコ「中身を確認しましたが、これで了解しました。シフト制なんですね。がんばります」

 

チョコ「特売の場合は勤務は考慮する、兼職禁止(二重就労禁止)はしません・・とか書いてあるのが嬉しいです」

 

お祖母様「こちらこそ、頼んだよ。あとは千夜によく聞いておくれ」

 

お祖母様「台の上にあるモナカと羊羹は、今日食べないとダメになるから、さっさと食いな。始めるのは食ってからでいいから」

 

チョコ「はい、ありがとうございます」

 

お祖母様「喉がつまったら、このお茶だ。好きなだけ休みなー」

 

バタン(障子がしまる音。お祖母様は部屋から出て行った)

 

チョコ「おいしい〜。やさしい味」

 

千夜「でしょう。自慢のおばあちゃんと和菓子よ」

 

※和菓子お茶摂取終了〜

 

千夜「では、改めて、よろしくね。チョコさん」

 

チョコ「こちらこそよろしくお願いします。いろいろ教えて下さい」ペコ

 

千夜(チョコさんって敬語なのね。それでいておっとりほんわか。でも笑うとココアちゃんね)

 

 

―甘兎庵更衣室―

 

チョコ「千夜さん、さっそく着付けからすみません。早く覚えなきゃですね」

 

千夜「私のことは『千夜ちゃん』でいいわよ。同い年だし。」

 

チョコ「では、千夜ちゃんと呼ばせていただきます」

 

チョコ「この着物、濃い緑で白いラインが入ってる、とっても素敵ですね」

 

千夜「嬉しいわ。この着物、前はココアちゃんとか、お手伝いに来た時に着たことあるのよ」

 

チョコ「そうなんですね」

 

千夜「はい、着付け終わり。(ほんとにココアちゃんみたい〜)」

 

チョコ「似合いますか?」

 

千夜「似合う、似合う。とっても素敵よ」

 

千夜「じゃ、チョコちゃん、少しずつ憶えていってね」

 

チョコ「ドキドキです・・」

 

 

―甘兎庵、店内にて―

 

※1時間後

 

チョコ「らっしゃい! 本日のおすすめは、花の都三つ子の宝石だよ!」

 

チョコ「メニューで〜す」

 

チョコ「ご注文を承ります!」

 

チョコ「お茶ですね!」

 

チョコ「上がり2丁! それと、翡翠(ひすい)スノーマウンテン追加で! 千夜ちゃん、お願い!」

 

千夜「あいよっ 削りたての氷、ぴっちぴちよ」

 

千夜「凄い。こんなに気持ちが良くて楽しい仕事、本当久しぶり〜」

 

千夜(以前ココアちゃんと一緒に仕事して以来、全くなかった感覚だわ。夢じゃないかしら〜)

 

チョコ「千夜ちゃん、お土産コーナーにお客来たので、コーナーに出るね!」

 

千夜「了解!」

 

千夜(チョコちゃんて、テンション上がると、ココアちゃんみたいになるのね。おもしろい)

 

チョコ「千夜ちゃんには、まだまだ私と踊ってもらうよ〜」

 

千夜「うふふふ」ニコ

 

チョコ「あはははは」ニコ

 

※あんこを中心としてクルクル回転して踊りだす千夜とチョコ

 

お祖母様「ふん・・」ニコ

 

 

―仕事終了後、甘兎庵更衣室―

 

千夜「チョコちゃんが来てくれて、いつもの3倍楽しいわ」

 

チョコ「はい、私も謎の充実感がありました」

 

千夜「ウチの店には、同世代の子がいなかったから、チョコちゃん来てくれて本当に嬉しい」

 

チョコ「私も、千夜ちゃんのところでお仕事出来て、うんと(たの)しかったです」

 

千夜「毎日がこうだと良いのにって、ずっと思っていたわ」

 

千夜「だから・・・」

 

チョコ「?」

 

千夜「すぐに着せ替え出来るように、頑張るわっ」シュッ

 

※チョコの着物の帯をもって、こまのようにチョコをクルクル回す千夜

 

チョコ「脱ぐのは一人でできます〜」クルクル

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

千夜「今日はチョコちゃんありがとう。今度は隣でシャロちゃんとね」

 

チョコ「はい、家の鍵はシャロさんから合鍵を渡されました」

 

千夜「そろそろバイト先から戻ってくる頃よ」

 

チョコ「お風呂がシャロさんの家はなかった気がします。どうしてるんでしょう」

 

千夜「お風呂はウチの風呂を使ってるの。また一緒に入りに来てね」

 

チョコ「そうなんですね。わかりました」

 

千夜「今日はありがとう、チョコちゃん」

 

チョコ「どういたしまして。私もとっても楽しかったです」

 

千夜「チョコちゃんと、いつまでも仕事したいわ。じゃ…」

 

チョコ「また明日ですね…」

 

 

※チョコは甘兎庵を後にし、隣のシャロの家へ…

 

 

 




 チョコの性格ですが、最初はココアと同じにしようかと思っていたのですが、中の人(佐倉彩音(あやねる)さん)のアニメ化当時の単行本から受けるファーストインプレッションが、おっとりな印象(アニメ公式ガイドより。確かにその時点の原作を読むと、そうとも読める)・・ということからおっとり落ち着いた印象になりました。(→その後、他作品の例にもれず、原作がアニメ声優の演技に引っ張られてココアが「ヴェアア」とか超元気になっていくのは周知のとおりです)。
 どうしても、頭の中でキャラを動かしてもチョコは敬語しか話さなかったのですが、テンションが上がったらココアのようになったので、そのままそれを採用してしまいました。
 拙いこの作品をお読みいただき、ありがとうございました。

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