甘兎の千代子さん   作:赤山グリテン

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みなさまお久しぶりです。
遅くなりましたが、再開します。

調子はあまり良くないのと、仕事が多忙なため、
不安定な更新になりますが、ご了承下さい。

それでは、お楽しみいただけると幸いです。


第19羽 少女はチノちゃんを伴い汽車に乗りて昼夜の鉄路を行く(その1)

 

???「千夜ちゃん、千夜ちゃーん」

 

千夜「あれ? ここは甘兎庵… どうしたんだろ、私」

 

???「チョコだよ。いつもどおり、バイトに来たよ、千夜ちゃん」

 

千夜(いつもの甘兎庵の着物姿だけど、チョコちゃんにしては、何か違和感が… 絶対ココアちゃんだわ)

 

千夜「…あなたはココアちゃんでしょ?」

 

???「違うよ、チョコだよ」

 

千夜「私はココアちゃんとチョコちゃんの区別はつくわ。ココアちゃん、私をからかうのはやめて…」

 

ココア「…ふーん、パンの匂いも消していたのに、さすがは千夜ちゃんだね。それでこそ私の親友だよ」

 

千夜「ココアちゃん、どうしたの?」

 

ココア「千夜ちゃんに相談があるんだよ」

 

パッ

 

千夜「あれ、ここはいつもの学校… ココアちゃんも私も学校の制服に…」

 

ココア「千夜ちゃん大好き…」ダキッ

 

千夜「!」カァァ

 

ココア「目をつぶって、千夜ちゃん…」

 

千夜「……」メヲツムリ

 

チュッ

 

千夜「」

 

ココア「千夜ちゃん、こっちこっち…」

 

タッタッタッ

 

千夜「あ、ココアちゃん、待って〜」

 

千夜(あれ、いつの間に深い森の中に…)

 

千夜「ココアちゃん、捕まえた〜」

 

ココア「捕まっちゃった。実は、私が千夜ちゃんに相談したいことはね〜」

 

千夜「?」

 

ココア「チノちゃんのことで、なにか私に隠してないかな?」

 

千夜「…」ギク

 

ココア「親友なら、隠し事は無しだよ〜」ニコ

 

千夜「あ、そ、そのことなら、チノちゃんに置き手紙をするように言ったから、コ、ココアちゃんそれを読めばわかるようにしたわ」

 

ココア「ふ〜ん、そうなんだ。だったら…」

 

千夜「だったら?」

 

ココア「この夢は終わりにして、今すぐ鳴ってるスマホに出てね。お願い…」

 

千夜「夢が終わらなかったら?」

 

ココア「シャロちゃんのワイルドギースの時みたいに、朝までぐっすり爆睡だったら、もう絶交…しちゃうかな?」

 

千夜「イヤよココアちゃん、絶交なんて。私とココアちゃんは親友でしょ?」

 

ココア「そう、千夜ちゃんは私の大切なお友達で親友だよ。だからすぐに目を覚ましてね」

 

ココア「じゃーね、私の大好きな千夜ちゃん」スゥ〜

 

千夜「あ、待って、ココアちゃん…」

 

ココア「目が覚めなければ、もうこれっきりだからね〜」ニコ

 

千夜(どんどんココアちゃんが遠くに…待って〜ココアちゃーん…)

 

千夜(追いつかない…そうだ、私が夢から覚めないと、ココアちゃんと絶交に…)

 

千夜(そんなの絶対イヤーーーーーーーーーーーーーー!)

 

パチッ

 

千夜「あれ、ここは私の部屋。夢だったのかしら? あれ、なんか音が…」

 

ヴーーーーッ ヴーーーーッ ヴーーーーッ(スマホのバイブ音)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ーラビット・ハウス(チノの部屋)ー

 

深夜

 

チノ「さて、千夜さん、チョコさんとの打ち合わせどおり、真夜中から準備を始めて、いま完了です…」

 

チノ「おじいちゃん、お父さんとココアさんには置き手紙を準備しました」

 

チノ「チョコさん、千夜さんと早朝、木組みの街中央駅で待ち合わせ…」

 

チノ「始発の臨時特急に乗って、チョコさんと2人旅です」

 

チノ(本当は黙って出かけるのは気が引けますが、おそらく相談しても、解ってもらえず反対されるだけで終わりでしょう。)

 

チノ(自分のことですから、自分で解決しなければなりません…)

 

チノ(これ以上、皆さんに迷惑かけるわけにも行きません…)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ーココアの部屋の前ー

 

チノ(お父さんには、部屋の前に手紙をおいてきました)

 

チノ(おじいちゃんへの手紙もそこに置いたので、おじいちゃんも読んでくれるでしょう)

 

チノ(荷物も持ったし、後は出かけるだけです)

 

チノ(最後にココアさんには寝ててもいいので、ひと目会ってから出かけたいです…)

 

チノ(いまココアさんは熟睡しているはずです…)

 

ギイー(ココアの部屋のドアを開ける音)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ーココアの部屋ー

 

ココア(すー、すー)

 

チノ(今、目の前にココアさんが寝ています)

 

チノ(布団を全部かぶっているので、顔はわかりません)

 

チノ(寝息だけが聞こえてきます)

 

チノ「(小声で)ココアさん、しばらく留守にします。身勝手な妹でごめんなさい。留守の間、皆さんをよろしくお願いします」

 

チノ「では、行ってきます」

 

ココア「ま〜て〜」

 

チノ(えっ…布団から手が!)

 

*ガシッ(チノの腕をつかむ音)

 

チノ(わっ)

 

チノ(ココアさんの布団の中に、強い力で引きこまれて…)

 

ココア「こ〜ら〜 お姉ちゃんに黙って出かける、悪い妹はいねが〜」

 

チノ(いまココアさんと布団の中でもふもふ。でもココアさん秋田の「なまはげ」のような低い口調で怖いです)

 

チノ(当然怒ってますよね…)

 

チノ「ご、ごめんなさいココアさん」

 

ココア「ゆるさないぞ〜」

 

チノ「…」プルプル

 

*1分経過

 

ココア「なーんちゃって」ニコ

 

チノ「えっ?」

 

ココア「事情は千夜ちゃんから聞いたよ。あ、私が深夜、千夜ちゃんに携帯鳴らして、無理に聞き出したんだ。千夜ちゃんを責めないでね…」

 

チノ「ココアさん、凄いカンですね…」

 

ココア「でも私、チノちゃんがそこまで思い詰めてたの、ぜんぜん解ってあげられなかった。お姉ちゃん失格だよ…」

 

チノ(ココアさんの顔を見ると、涙のあとが、すじになって夜の月明かりに映って…)

 

チノ「私こそ、初めにココアさんに打ち明けておくべきでした。ごめんなさいお姉ちゃん」

 

チノ(こんな大事な人に、心を閉じていた私が恥ずかしいです…)

 

ココア「でもチノちゃんが、出発前に私に会いに来てくれたの、とっても嬉しかったんだ…」

 

チノ「ココアお姉ちゃん…」ダキッ

 

ココア「チノちゃん…」ダキッ

 

*しばらく二人は抱き合った

 

ココア「そういえば、朝の4時ごろ中央駅集合だったよね。そろそろ行かないと…」

 

チノ「そこまでお見通しなんですね」

 

ココア「お姉ちゃんも一緒に駅までチノちゃんを見送るよ! 千夜ちゃんとチョコちゃんにはもう話してあるし」

 

チノ「ココアさん…」

 

ココア「実はもう着替えてあるんだ。すぐ出発だよ!」

 

チノ「はい!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ー木組みの街中央駅1番ホーム、午前3時50分ー

 

チョコ「結局、ココアちゃんには、話が伝わって、わかってくれたんだ…」

 

千夜「ええ。深夜、ココアちゃんから急に電話があって、お話ができたの…」

 

シャロ「ココアのチノちゃん思いの強さは相変わらずね。それで、チノちゃんを見送りに一緒に駅まで来るのね」

 

千夜「そう。それとココアちゃんに伝わると、もちろん他の友達にも…あの近づいて来る人影もそうね」

 

シャロ「あの人影は…リゼ先輩とマメちゃん?」

 

千夜「うまく伝わったみたいね。良かったわ」

 

チョコ「全員集合ですね」

 

リゼ「…おはよう、みんな。千夜もシャロも見送りか?」

 

マヤ「結局みんな揃ってるじゃん。おはよーっす」

 

メグ「おはようございま〜す(ね、ねむいよ〜)」

 

シャロ「リゼ先輩にマメちゃん、みんな来てくれるなんて…」

 

チョコ「リゼ先輩、おはようございます。マヤちゃん、メグちゃん、おはよう」

 

千夜「リゼちゃん、マメちゃん、ありがとう。お話はココアちゃんから聞いてるわよね」

 

リゼ「ああ、最初聴いた時は驚いたよ。」

 

マヤ「チノが自分から行動を起こすって、よっぽどの事じゃん」

 

メグ「チノちゃんは私達の大切な友達だからね〜。マヤちゃんと応援するって決めたの〜」

 

リゼ「ところで、チノとココアは?」

 

千夜「まだ来てないわ」

 

シャロ「んもう、なにやってるのよココアは」

 

(つづく)

 

 

 




列車が発車するまで書きたかったのですが、
ここで今回は終わりです。

不定期更新になることをお許しください。

拙いこのssをお読みいただき、ありがとうございました。

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