甘兎の千代子さん   作:赤山グリテン

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みなさま、お世話様です。
投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。

それではお楽しみいただけると幸いです。



第14羽 Call Me Sister(その1)

―お嬢様学校への通学中―

 

シャロ「今日は、憧れのリゼ先輩にこのプレゼントを渡そうと思うの」

 

チョコ「綺麗なマグカップね。リゼ先輩ってシャロの憧れのひと、だったっけ」

 

シャロ「そう。私が兎に襲われそうになった時に、助けてくれたカッコいい先輩なのよ」

 

チョコ(ラビット・ハウスでココアちゃんチノちゃんとバイトしてる、あの軍人ぽいツインテの方ね)

 

シャロ「あ〜思い出すだけでも、ドキドキしちゃうわ〜」

 

チョコ「シャロは本当にリゼ先輩の虜ね〜」

 

シャロ「そう。でも、いっっつも、先輩の前だと肝心なときにアガっちゃって失敗しちゃうから、悪いけど手伝ってよね、チョコ」

 

チョコ「わかったよ〜。応援しているよっ 成功するといいねっ」ニコ

 

シャロ「ありがとう〜チョコ〜。持つべきものは、やっぱり友達だわっ」ニコ

 

チョコ「えへへ〜 ありがとう、シャロ」テレ

 

*校内、始業前

 

シャロ「この校舎の階段をあがって、2階がリゼ先輩の教室よ」

 

チョコ「うん、前の学校でもそうだけど、上級生の教室って緊張するね…」

 

シャロ「そうね。でもチョコと一緒だから、心強いわ…」

 

チョコ「まずは挨拶して、シャロをリゼ先輩に印象づけてもらうのね」

 

シャロ「そう。一人の時は緊張でどうしようもなかったけど、二人なら…」

 

チョコ「この教室、だっけ?」

 

シャロ「そう、行くわよ」

 

チョコ「教室の扉は開いてるよ」

 

シャロ「じゃ、中にリゼ先輩がいるから、ここから目線送って、挨拶よっ」

 

チョコ「ラジャー」

 

シャロ・チョコ(リゼ先輩、どこかな〜)

 

 

リゼ(あれっ、教室の入口にいるの、シャロとチョコじゃないか…)

 

シャロ・チョコ(リゼ先輩、おはようございます…)ペコ

 

*リゼがシャロとチョコに会いに、教室の扉付近まで出迎える

 

リゼ「おはよう、シャロ、チョコ」ニコ

 

シャロ・チョコ「おはようございます、リゼ先輩」ペコ

 

リゼ「二人とも、この前はラビット・ハウスであんなに手伝ってもらって、あと服のバーゲンセールも…本当に悪かったな…」

 

チョコ「大丈夫ですよ」

 

シャロ「いえいえ、トンでもありません。リゼ先輩のためなら…」カァーッ

 

リゼ「ああ、みんなバイトで忙しいのに、すまんな…」

 

シャロ「リゼ先輩のためなら、何でもしますぅ〜」アセアセ

 

チョコ(いい雰囲気。これなら大丈夫そうねっ)

 

リゼ「チョコもありがとう」

 

チョコ「どういたしまして、リゼ先輩!」ニコ

 

リゼ(ドキ……こ、これは…)カァァ

 

シャロ「んもう、リゼ先輩、どうしたんですか? 顔、真っ赤ですよ…」

 

リゼ「あ…ああ、何でもない、ちょっと今日は暑いからな…」

 

シャロ「そうでしたら、あとで冷たい飲み物でも。リゼ先輩は何がお好きでしたっけ…」ペラペラ…

 

リゼ「ああ…そうだな」

 

チョコ(シャロがあれだけ熱心にアプローチしてるのに、何で私を見てるんですか先輩!)

 

キーンコーンカーンコーン

 

チョコ「ホームルームの予鈴が鳴りましたよ」

 

リゼ「もうそんな時間か。シャロ、チョコ、自分の教室に戻った方がいいんじゃないか?」

 

シャロ「あっもうそんな時間ですか。そ、そうですね。それでは失礼します。リゼ先輩!」ペコ

 

チョコ「私も失礼します」ペコ

 

*シャロ・チョコの教室

 

シャロ「やったー、ついに第一アタック成功!」

 

チョコ「よ、良かったね。シャロ」

 

シャロ「あとは、第二のアタックよ」

 

チョコ「シャロが買ったあのマグカップを、とうとうリゼ先輩に渡すんだね!」

 

シャロ「そう、この手紙をつけて。私、アッタマいいー」

 

チョコ「シャロ、応援してるよっ」

 

シャロ「それで、悪いんだけど」

 

チョコ「?」

 

シャロ「チョコから、それ渡してくれないかな…」

 

チョコ「えっ シャロからじゃないの?」

 

シャロ「サプライズよサプライズ! ネットで見たのよ! 誰かに渡してもらうといいって」

 

チョコ「ネットの情報って正しいとは限らないよ」

 

シャロ「私とチョコの仲じゃない? お願い!」

 

チョコ「わ、わかったよ。シャロには世話になりっぱなしだし…」

 

シャロ「頼んだわよ、チョコ」

 

チョコ「う、うん」

 

*放課後

 

チョコ(シャロったら『わたしバイトあるからっ』って行っちゃった)

 

チョコ(信用されてるんだか、何だか。うーん、本当に忙しいのね。シャロ…)

 

チョコ(私は甘兎庵のバイトまではまだ時間あるけど…)

 

チョコ(リゼ先輩だってラビット・ハウスでバイトがある筈。それまでに渡さなきゃっ)

 

タッタッタッ

 

チョコ(あ、リゼ先輩見っけ… 一人で周りも誰もいないし、チャンスだよっ)

 

チョコ「リゼ先ぱ〜い」

 

タッタッタッ

 

リゼ「あ、ああっ。チョコかっ」ポッ

 

チョコ「はあ、はあ、こ、これ…リゼ先輩に…」

 

リゼ「!」カアア

 

リゼ「こ、これは、綺麗なマグカップだな。チ、チョコが選んだのか?」ドキドキ

 

チョコ「シャロからです! リゼ先輩のために、選んだカップですっ」

 

リゼ(なんだ、チョコからじゃないのか…)

 

チョコ「中にシャロの先輩を想う手紙がはいってますっ。受け取って下さい!」

 

リゼ「ああ、わかった…ありがとな、チョコ」

 

チョコ「よろしくおねがいしますっ」

 

リゼ「それはそうと、チョコ、時間はあるか? そ、そのへんでお茶でも」カァァ

 

チョコ「リゼ先輩ごめんなさい。この後、甘兎庵でバイトがあるので…」

 

リゼ「そ、そうか。私もラビット・ハウスでバイトがあるからな…」

 

リゼ「メルアドとSNS、こ、交換してもいいか…チョコ」

 

チョコ「うん、リゼ先輩なら大歓迎だよっ」ニコ

 

リゼ「あ、ありがとう、チョコ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

―ラビット・ハウス―

 

*更衣室

 

リゼ「♪〜」

 

ココア「あ、リゼちゃん、何か今日機嫌がいいね。なんかいいことあったの?」

 

リゼ「ああ、そうだな。良い事…だよな」ポッ

 

ココア「顔が赤いよ〜」ニコ

 

リゼ「今日は少し暑いよな…」

 

リゼ(なんか、ココアを見てるとチョコに見えてくる。そっくりなんだから当然なんだが)

 

ココア「そうかな。寒い気もするけど」

 

リゼ「そ、それでココア、頼みなんだが、私のお嬢様学校の制服、今着てみてくれないか?」

 

ココア「え、いいの?」

 

リゼ「ああ」

 

ココア「リゼちゃんの制服、うれしいな〜」

 

ゴソゴソ

 

ココア「はい、着たよ〜 私も今日からお嬢様〜」クルッ

 

リゼ「おお、似合うな」

 

ココア「ほんのちょっと服が大きいけどね…」

 

リゼ(でも、こうしてみると本当にチョコだ…)

 

リゼ「そ、それで悪いけど、ココア、私をモフモフしてくれ、頼む」

 

ココア「え? この格好で? リゼちゃんだって今下着だよ?」

 

リゼ「頼む、一生のお願いだ…」

 

ココア「うん、リゼちゃんの頼みなら…」モフモフ

 

リゼ「ありがとうココア…」モフモフ

 

リゼ(ココアってチノの言うとおり、本当に小麦粉の匂いがするんだな。これがチョコだったらどうなんだろう?)

 

ココア「リゼちゃん?」

 

リゼ「しばらくこのままでいてくれ、ココア…」

 

ココア「うん」

 

リゼ(チョコに抱かれている気分になってきた…なんか気持ちい…)カアア

 

ガチャ(ドアの開く音)

 

チノ「リゼさん、ココアさん、お店始まっちゃいますよ。急いで下さい」

 

リゼ「チノ!」

 

ココア「チノちゃん」

 

チノ「リ、リゼさん! こ、これはどういうことですかっ」

 

リゼ「いや、あの」

 

チノ「そういう卑怯なやり方で、ココアさんを誘惑して私から取らないで下さい!」

 

リゼ「誤解だ、チノ!」

 

ココア「リゼちゃんの頼みで、寂しそうだったから、私がもふもふ…」

 

チノ「ココアさんは黙ってて下さい!」

 

ココア「はい」

 

チノ「私に無くて、リゼさんにあるものをココアさんに見せつけて、モフモフさせるなんて最低です!」

 

リゼ「いや、そんなつもりは…」

 

チノ「今日から3日間、おやつは抜きです!」

 

バタン(扉を閉める音)

 

タッタッタッ

 

リゼ「あ、ちょっとチノ〜、説明するから待ってくれ〜」トタトタ…

 

ココア「リゼちゃん、下着のままだよ……あ、チノちゃん追いかけて出てっちゃった」

 

ココア(チノちゃんはその後、数日間、リゼちゃんは勿論、私にも口をきいてくれませんでした)

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

―リゼの部屋―

 

リゼ(チョコと会いたい、と思っても、この前のように無理をすると、友達関係にヒビが入ってしまう)

 

リゼ(私のわがままなのに、好意で協力してくれたココアに、悪いことをしてしまった)

 

リゼ(チノは許してくれたが、次はそうは行かないだろう。直接チョコを先輩風吹かせて誘っても、シャロとの関係が悪くなる…)

 

リゼ(なあ、どうしたらいい? ワイルド・ギース)

 

ワイルド・ギース(…人形のため無言)

 

リゼ(夢は結局、夢で終わるか…)

 

リゼ(いや、夢なら、あの手があったか…なんで気づかなかったんだろ、私)

 

リゼ(早速準備だっ)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

―甘兎庵―

 

チョコ「リゼ先輩、私、なんか別人みたいです〜」

 

リゼ「とっても似合ってるぞ、チョコ」

 

千夜「とってもお似合いね」

 

チョコ「男装、じゃないけど、結構ボーイッシュな格好ですよね。いつもの私じゃないみたい」

 

千夜「でもあくまで女性よ。こざっぱりした感覚にコーディネートしたの」

 

リゼ「シャロは、『どてらを着てパーティーには出れない。バイトもあるし』って誘えなかったんだ」

 

チョコ「そうだったんですね。確かに、シャロは今フルールでバイト中です」

 

千夜「シャロちゃんも出ればいいのに…」

 

リゼ「チョコは、転入生だし、早くこの学校の感覚に慣れたほうがいいと思って、無理に誘ったんだ」

 

千夜「衣装は甘兎演劇のストックだから、無料よ」

 

チョコ「いいの? 千夜ちゃん、こんな高そうなの」

 

千夜「経営者たるもの、従業員を慮らないと!、な〜んて、ね。いつまでもチョコちゃんにはウチにいてほしいの」

 

チョコ「千夜ちゃん…」

 

千夜「チョコちゃんには、甘兎庵で仕事してよかった、楽しかったって言ってもらえるよう、がんばるわっ」

 

チョコ「ありがとう! でもこの格好、まるで仮装パーティーみたいだね」

 

リゼ「ああ、名前は進級記念パーティーとか銘打ってるけど、中身はストレス解消、仮装お祭り大会だぞ」

 

チョコ「そうなんですか。楽しみ〜」ニコ




 今回ココアは被害者でした。チノが更衣室ドアをノックしなかったのは、前から扉越しにリゼとココアのやりとりを聞いてて、怪しい行為の様子を確認したかったからです。
 それと短めで続き物になってしまいました。ご勘弁下さい

 今回もこの拙いssをお読み下さいまして、ありがとうございました。

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